あべこべ世紀末、転生先は地獄だぜ   作:abc2148

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エピローグ2

「知らない天井だ」

 

そう言って男は目を覚ました。如何やら上等な寝具の上で寝ていたらしく寝起きは非常に気持ちの良いものであった。

 

そして横になっていた状態から起き上がり辺りを見回す。どうやらそこそこ大きな部屋らしく、いくつかの調度品が置かれている。派手過ぎず、かと言って地味なものではないそれらは一目で高級なものだとわかる。

 

そんな事を考えながら男は部屋を見渡していく。そして頭が本格的に活動を始めると共に部屋の異常に気が付いていく。

 

「窓がない……」

 

部屋には窓が一つもない。そして大して広くもない部屋を調べれば異常な点が直ぐに見つかる。

 

「監視カメラ……」

 

天井の四隅には監視カメラがあった。部屋の全体をカバーするように設置され、部屋の中に死角は無い。そして何を監視するのか、その目的は、その答えは簡単に出せた。

 

「ここは牢屋か」

 

そして監視対象は間違いなく男だ。つまり男は今現在囚われているのだ。

 

そして非常に……、誠に……、全くもっっっって不本意であるが男にはこのような事を行う人物に心当たりがあった。

 

「どうやら目が覚めたようだね」

 

そして丁度よく件の人物が部屋にある唯一の扉を開け入って来た。輝く金色の髪、透き通った空色の瞳。誰もが心奪われるであろう美貌を持つ女が男の前に現れる。

 

「シルビィア・アークライト……」

 

「そんなに警戒しなくてもいいよ」

 

そう言って女、シルビィアは男に歩み寄る。だがシルビィアが一歩踏み出すたびに男は一歩下がる。それは男が目の前の相手に警戒しているからだ。

 

「記憶が確かなら機体を切り刻まれているんだけど」

 

「それは済まなかった。だけど君が悪いんだよ、僕の招待を受けなかったんだから」

 

男は後ろへと下がりながらも嫌味を口にする。だが言われた当人は軽く受け流し歩調を変えずに男に迫る。そして男の膝裏にさっきまで寝ていたベッドが当たる。勢いを殺しきれなかった男はベッドの縁に座るような体勢になってしまった。

 

そんな男の姿を見たシルビィアの笑みが浮かぶ。それは漸く探し求めていたものが手に入ることへの歓喜だった。だがそれだけでは満足出来ない、出来るはずがない。目の前にいる男の顔には様々な感情が浮かんでいる。それは怯えであり、嫌悪であり、だがそこには諦めるといった感情は無い。

 

あぁ、その顔を歪ませたい。自身に赦しを乞うように躾を施し、跪かせ、その心を染め上げ支配したい。胸の内より湧き上がる歪んだ欲望に従いシルビィアは男に一歩、また一歩と近づいていき…………

 

「だからと言って誘拐が許されるかッ!」

 

突如視界が白に覆われる。

 

なんてことはない、男がベッドのシーツを引きはがし投げつけただけの事。だがこれが男が待っていた瞬間であった。

 

全身の筋肉をバネの様に躍動させ立ち上がった男は走り出す。目指す先はシルビィア……ではなく、その後ろのある開け放たれた扉。それこそが男がこの牢屋から脱出する唯一の道だ。

 

だがシルビィアの横を通り過ぎようとしたところで歩みは止められる。

 

「悪いが君を逃がすつもりはないよ」

 

感情のこもらない、冷たい囁きと共に後ろに振りかぶった腕が捕まれる。それだけに留まらず即座に腕をねじり捻る事で男の腕に激痛が走る。痛みによって動きが止まった脚を払いシルビィアは男を取り押さえる。

 

「う、あぁ……」

 

「さて君は何処に行こうとしてるんだい」

 

倒された痛みに呻く男を見下ろしながら詰問する。男がシルビィアから逃げ出そう藻掻くが拘束が緩む事が無い。それ以前にこの世界において男は女には勝てないのだ。よって最早脱出は不可能でることは誰の目から見ても明らかだった。

 

「取り敢えず此処から出させてもらえない?」

 

「ふふ、それは許可できないよ。だけど安心してくれ、ここにいれば衣食住の全てを保証してあげるよ」

 

「代わりに首輪を付ければ……だろ。いい加減分かれよ、俺がアンタを受け入れることは万に一つもない」

 

だが男は諦めが悪い。減らず口を叩きながらも視線は動かし続け脱出の糸口を探し続ける。だがそのやり取りさえ楽しいのかシルビィアの顔には笑みが浮かんでいる。

 

「そうだね、君には何度も振られてしまった」

 

「なら……」

 

「強引な手段であることは理解している。君の意思を無視して此処に閉じ込めているのも分かっている。それでも諦めきれないんだ。君が欲しい。欲しくて欲しくてたまらない。初めて出会った時とは違う。遊びなんかじゃない、本気で君のすべてが欲しいんだ。だから……」

 

シルビィアは取り押さえた男の耳に口を寄せ呟く。

 

「あらゆる手段を使ってでも、必ず私色に染め上げてあげるから」

 

「どんな外道な手段を使うつもりなんだ、テメェはッ!」

 

最早そこにいるのは一人の男に狂った女だった。

 

「諦めて僕のモノになれ」

 

「絶対にごめんだッ!」

 

男……ソラは叫ぶ、叫ばずにはいられない。どうしてこんな事になってしまったのか。

 

目覚めた先に広がっていた世界は世紀末。無人兵器と生物兵器と無頼者が跋扈する魔境。

 

そして男よりも女が強いという事実が作り上げた女尊男卑が罷り通る社会。

 

その生まれてしまった自分。

 

もし神様がいるなら教えてください。いったい俺は何をやらかしたらこうなるんだよ!

 

だが神が答えることはない、そしてこれから始まるのは数奇な世界に生まれ落ちた男の七難八苦の物語である。




己の持つ業を詰めてみました
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