あべこべ世紀末、転生先は地獄だぜ   作:abc2148

24 / 27
可憐な少女ソラちゃん

ソラの考えた策は至って単純、嫉妬と煩悩に塗れた推理が全くの間違いであったと誤解させるだけ。だがそれを行う場合、同居人であるカスミに了承してもらわなければならないことが一つだけある。

 

それはカスミが同性愛者だと偽る事である。それも自称するだけでは説得力が無いため同僚達の前で見せ付ける事も欠かせない。男が少ないこの世界では同性愛者は珍しいが一定数は存在する。だがそんな彼女達に世間が向ける目は奇異の視線であるため、見せ付ければカスミに今後向けられる視線も変わってしまうのは間違いない。それをいかに納得してもらうか、難題に違いないと頭を悩ませていたソラだが──

 

「別にいいよ。皆からは珍しがられるけどそれだけだし」

 

同意は思いの外あっさりと取る事が出来た。ならばと直ぐに実行に移したソラは女物の衣服(骨格から推測されないようにゆとりの大きな服)を揃え着こなす訓練を行う。途中からカスミが化粧も必要ではないかと提案が行われ、妥当であるとソラは判断。カスミが化粧品を取り揃え軽く化粧を施すといった具合に残された時間を無駄なく活用していく。

 

一連の訓練を行うソラの顔に恥じらいは無い。なぜなら此処で失敗などをすれば明日の朝日が拝めなくなるかもしれないのだから。

 

そして当日、カスミの同僚達の前に現れたソラは誰が見ようと可愛らしい少女であった。厚手のワンピースを着こなし、綺麗に洗い整えた黒髪には艶があり、変声期を迎えていない声をシール状の薄い装置で調整、ボブカットに加え幼さを未だに残す顔は可愛らしい。ソラ自身でも舌を巻いたほどの擬態であった。

 

そして策は成功した。ソラとカスミが抱き合う場面を見せ付けられた同僚達はカスミを同性愛者だと信じきり、ソラをが女の子だとして疑問を抱かせる事も無く思い込ませる事が出来た。

 

それから先は問題も無く彼女達にソラの手料理を御馳走することになる。空き部屋に机を並べ、その上には現状でソラが再現できる料理が出来立ての状態で並べられている。そこから漂う香りに釣られ我先にと料理に殺到する女性たちは思い思いに食事を始めていった。

 

「「「おいしい~!」」」

 

基本的に実働部隊、それも最前線に配属さる部隊の人間は下層出身者が多くを占める。舌の肥えた上層出身者や中層出身者は大体が軍の幹部が要職に就き実働部隊に配属されているのは殆どいない。端的に言えば舌が肥えていない彼女達にとってソラの出す料理は味わった事が無いものばかりだった。

 

「それにしてもこれだけの料理をよく作れたね」

 

「両親が別の都市で飲食店を営んでいたのですが事業に失敗してしまい逃げるようにして此処に来たんです。それでも何とか再起しようとしたんですが……」

 

「色々あったんだな」

 

そんな部隊の大半が食事に熱狂している中、隊長と呼ばれた女性は食事もそこそこにソラと会話をしていた。部隊を率いる者としての責任かもしくは只の興味本位か、ソラという人物をよく知るため様々な質問をぶつけてきた。無論それを想定していないソラではない。カスミの協力の元作り上げたカバーストーリーを淀みなく話していき不信感を抱かせないようにしていった。

 

「はい、両親も死んでしまい私も下層に放り出され、それでも今まで何とか生きてきました。ですが持って一週間くらいが限界でした……」

 

「んで、うちのカスミが拾ったと」

 

「どうやらカスミさんの好みだったようで、今は此処に住まわせてもらってます。あと食事を少しでも美味しいものにしたくてちょっとした農場も作ってみました」

 

「ちょっとした……ね。確かにこういった料理に食べなれていたら此処での食事には困ったでしょうね」

 

所々で偽る事が無い本音を話したことも効いているのか隊長は訝しむことも無くソラの語る物語に聞き入っていた。

 

此処までくればソラの策は成功、あともう少しだけ接待を続けていけば部隊の誰もがソラに不信感を持つ事も無く帰っていくのは間違いない。

 

「それで~、ソラを一目見た瞬間にビビット来て、そのままお持ち帰りしたんだよね~」

 

「ひゃッ!?」

 

だが現実はそう上手くいくものではなく、予想外の所から問題が生じる事が多々ある。それが今回の場合はカスミのセクハラという形で表れてしまった。

 

「それから色々あってちょっとだけ行き違いを起こしたけど今でも仲良くやっているよ」

 

「そ、そうですね、それでカスミさんッ!?」

 

「なに~、ソラ?」

 

「身体を、弄ら、ないで下さい!」

 

艶めかしい手でソラの臀部を撫でるカスミ。流石に度が過ぎているので諫めようと振り返るが当のカスミの顔は赤く、吐く息は酒臭い。恐らく部隊の誰かが持参した酒を飲んだのか歩く酔っている状態であった。これは不味い、此処で諫めた場合酔ったカスミが何を言い出すか分からない。もしここで機嫌を損ねた発言をしてお返しとばかりに性別も暴露されては全てが水泡に帰してしまう可能性がある。

 

だからソラはカスミからのセクハラに耐えるしかなかった、尻を撫で、首に顔を埋めようとも機嫌を損ねないように。

 

「うわぁー、ガチレズじゃん」

 

「年下が好みでもアレはアウトでは?」

 

「いやでも、ここ以外に行く当てないでしょ」

 

「そう考えるとマシな部類なのでは?流石にアレには引くけど」

 

「引くどころかドン引きだよ」

 

「いやほんと人って見かけによらないんだね」

 

痴態を見せ付けられた同僚達はカスミの変態度にドン引きし、ソラには何とも言えない憐みの目を向けるが誰も止める者はいなかった。それからは美味しい食事と持参した酒で満たされた同僚達が一人、また一人と家に帰っていった。

 

「おい、このカスミに男が出来たほざいた奴は誰だ?」

 

「コイツです」

 

「よし吊し上げろ、あとこの後の飲み会の財布にしてやれ」

 

「嫌だ違う!アタシは無罪だ、それにお前たちも楽しんでいただろ!」

 

笑いながら帰る彼女達を見送っていたソラはその姿が完全に見えなくなると貼り付けていた笑顔を剥がして真顔になった。

 

「上手くいったが……疲れた」

 

だがこれで当分の間は正体を探られる心配は無い、それだけでも此処まで苦労した甲斐はあったといえるだろう。無論今後は外出するときには女装をする必要があるが、それは問題ではない。一番の問題は──

 

「それで、今日のセクハラについて何か申し開きがあるなら聞くけど?」

 

度の過ぎたセクハラに本音としては声を大にして怒りたい。それでもカスミには同性愛者という性癖を付けた負い目もあり、その時は酒にも酔っていたといたのだ。それなのに此処まで協力してくれた相手に文句を言うのは言いがかりでしかない。それでも一言だけ文句を言うのであれば許されるのではとソラは考え──

 

「気になっている男の子に女装させて、しかもかなり似合っていて、皆が女と信じきっているけど本当の正体は自分だけが知っていて……。背徳感の中でやったセクハラは最高でした!」

 

「OK、ちょっと話し合おうか」

 

余りの物言いに流石にソラの目はハイライトを失った。




返信は出来ませんが皆さんの感想には目を通しています。作品の励みにもなりこの場でお礼を申し上げます。

あと作品の冒頭部分から中盤までを改訂しようと思っています。当時の書き方がスランプ、迷走の中で書いたものなので今の書き方と全く違うのです。時期は明言できませんがご了承ください。

タグにオネショタを付けるべき?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。