あべこべ世紀末、転生先は地獄だぜ   作:abc2148

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少しだけ回る歯車

何も無い荒野。生命の息吹は限りなく薄く、辺りに広がるのは岩と砂だけの大地。存在し得るのは環境に適応できた僅かな生命体が日々を過ごしている。

 

だが、場違いにも二人の人間が荒野に立ち、そして何よりも特徴的な装いをしていた。

 

一人は全身を覆うマントを装備し、僅かに見えるマントの隙間からは装甲を盛りつけた強化服が見える。だが一番目を引くのは頭部に装着されているヘルメットだ。僅かな光を発する小型カメラが4つも付いたヘルメットはキリキリと音を立てながらレンズが稼働し辺りをくまなく見渡している。

 

そして二人目の人間は輪を賭けて奇怪だ。身にまとっている服は黒い貫頭衣、首から足先まである長さの布を幾つかのベルトで縛り服としていた。そして顔も目はベルトで覆われ手足には移動に支障がない程度の長さを持たせて拘束されている少年だ。

 

あまりにも荒野に相応しくない格好の二人組であったが、それを指摘するものは荒野には誰もいなかった。

 

そんな二人の内、ヘルメットを被った人物は内蔵されている無線機で何処かで連絡を取り合っていた。その姿をもう一人の人間は見る事は出来ない、だが塞がれていない聴覚はヘルメット越しに僅かに聞こえる声を捉えていた。

 

「こちらS7、目的地の探索終了。目標は発見できず」

 

「--------」

 

「了解、現時点を以て現在地における探索を終了。撤収を開始します」

 

「--------」

 

「……はい、撤収に合わせ機体25号を起動します」

 

通信は終わった、それが意味することを少年は未だに理解していない。

 

「チッ、今回も無駄足か、移動するぞ」

 

強化服を纏った人物の後ろを聴覚を頼りに付いていく。これが何度も繰り返されてきたことだった。

 

「最低限『鍵』として使えればいいが……」

 

聞こえてきた言葉の意味は分からない、たとえ分かったとしても少年は何もしない。

 

 

 

 

 

 

出雲都市連合の加盟都市駿河〈スルガ〉、その北東に未発見の遺跡が見つかった。

 

この場合の遺跡というのは世紀末以前の高度な文明があった時代の建造物というのが一般的な定義である。無論其処に眠っているのは嘗て栄華を極めた時代の遺物、そのため発見後は最寄りの都市に報告する義務があり後の探索、調査は都市と都市の所属する組織が主導する。

 

発見者には多大な褒章が支払われ都市は失われた技術を取り戻す、双方が特になるような仕組みであるが中には秘密裏に探索調査する違法行為を働く者も少なからずいた。

 

今回も駿河からは大規模な調査団が派遣され施設の探索調査が行われる──とはならなかった。

 

それは発見された遺跡が出雲都市連合で数多く発見された倉庫型と同一の特徴を特徴を持っていたからだ。倉庫型は文字通り倉庫であり世紀末以前の物品が保管されていることがある。しかし今回発見されたものは施設自体の風化、損傷が激しく、中に保管されている物は期待できない事。加えて事前の調査で施設規模が小さい事も判明した。

 

「つまり駿河としては外れが濃厚である遺跡に一応人員を派遣し探索調査しておくか~、ていう感じ。いや~、ソラちゃんがいてくれてほんとに助かったよ」

 

そう言いながらソラ特製のサンドイッチを食べるのはカスミの同僚で常連の軍人さん。

 

「いいですよ、その分出張料金はもらってますから」

 

そしてソラは軽トラックに詰め込んだ調理器具を展開して遺跡近くの車両待機所で昼食を作っていた。

 

「それで身の振り方は決まった?」

 

「都市の方に登録しようとしたんですが……」

 

「駄目だったんだ」

 

「癒着しまくりですよ。申請は受理してもらえず、担当さんの方が見ていて気の毒でしたよ」

 

常連である軍人さんは既にソラの事情を知っている。なぜなら青い顔をしたカスミが何とかしようと隊長に相談し、そこから広がっていったのだ。それ以降、隊長を含めた常連達は親身にはなってくれたが結局の所解決策は出なかった。

 

「うわ~」

 

「まぁ、不正なんて今に始まったことじゃないしね」

 

「それでも酷いでしょ」

 

昼食を片手に都市への不満を吐き出すが、それ以上の行動を彼女達は起こす事が出来なかった。なにせ不正が蔓延る駿河とはいえ自分たちは其の都市に雇用されている軍人。人口に対し十分な職が供給されていない現状、不正を是正しようとすれば上官に難癖を付けられて辞職、最悪の場合不幸な事故にあってしまう可能性もなくはないのだ。そんな彼女たちに出来る事はこういった調査でもソラのお店を利用することぐらいだ。

 

「それで数日以内にはギャングの傘下に入るつもりですよ。まぁ、常連に軍人がいればそこまで阿漕な取り立てはしないでしょう……、多分ですけど」

 

ソラも彼女達に職を捨ててまで助けてくれとは言えない。だからこそ出張といった機会を与えてくれた彼女達が払った金額に見合う料理を誠意をもって作るのだ。

 

「それで調査の方はどうですか?」

 

「山場は超えたかな~」

 

「ありふれた物で目新しい物は無いと思うよ」

 

いつまでも自分の暗い話題では食事も美味しくなくなるだろうと考えたソラは話題を転換する。そうすると守秘義務を考慮してか曖昧な言葉で答えてくれたが、言葉の節々から早く面倒な仕事を終わらせたいといった思いが滲み出ていた。仕事の愚痴を言いながら食事をする姿を目にしながらソラは遺跡の内部にいる人数分の食事を用意。作り終えたら容器に入れ配達に向かった。

 

軍用車両が連なる車両待機所を抜けると其処には荒野が広がっていた。何もない砂と岩だけに満ちた荒涼とした荒地、その何もない荒野に一つの大きな岩山があり、それが今回発見された遺跡だった。時間経過による風化で岩肌が崩れ落ちその下から遺跡の外壁が見つかったことが発見につながった。今現在は外壁に穴をあけ其処から探索調査を行っている。

 

遺跡に入り込めば投光器の光が内部を明るく照らしていた。車両から伸びている電源コードの類に足を取られないように進めば奥に一塊になった集団を直ぐに見つける事が出来た。

 

「昼食持ってきました」

 

「ありがとう、ソラちゃん。これで午後も頑張れるよ」

 

「ソ~ラ~」

 

「くっ付かないで下さい、仕事中ですよ」

 

「大丈夫、休憩時間だから」

 

業務中にもかかわらず素早くソラの後ろに回り込んでは抱き着いてくるカスミ。鬱陶しいと思いながらも慣れてしまったソラは黙々と持ってきた食事を手早く配っていく。

 

その姿を呆れながらも見る隊長、隊員達も慣れたもの。彼女達にとってみれば実に百合百合しい光景に見えるのだろう。

 

カスミに揉みくちゃにされつつも大変ではあるが充実しているとソラは感じていた。多分この先に待ち受けているギャングとの厳しい取引も何とかなるだろう、何とかなればいいな~、とも考えているが。

 

それでもこの何気ない日々が続いて欲しいとソラは願った。

 

 

 

 

 

──だがそれは唐突に終わりを告げた。

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