ソラが廃墟に来てから半月が過ぎた。その日は雨が降っており薄暗くジメジメとした空気がソラの肌を舐めるが本人は気にする事も無く銃器の分解をしていました。何故ならやる事がそれくらいしかなく暇だからです。
廃墟に逃げ込んでから急いで生活に必要な物、その中で一人で作れそうなものをソラは一通り作ってしまいました。テント、寝袋、雨水収集機、簡易コンロ、簡易倉庫……、最低限の品質で作り上げたそれらは快適とは言い難いですがガラクタで容易に修理が可能なものです。そしてこれ以上の品質のものを作るには知識も技術も現在のソラにはありませんでした。
そんな感じで手持無沙汰になったソラは暇潰しと訓練も兼ねて拳銃を組み立てています。ですがそのお陰で最初の頃は分解するだけで元に戻せなかった拳銃も今では分解、組み立ても可能になりました。
出来ればソラもガラクタ漁りに行きたいのですが、元々命懸けのガラクタ漁りが悪天候の日では更に危険度が増してしまいます。薄暗く視界不良で転んでその音を聞きつけて色々誘き寄せてしまったり、廃墟に響く雨音でワンコの接近に気付くのに遅れてしまったり……、命懸けの逃走の末に学んだ苦い経験でした。既に多くの危険を体験し死にかけたことも両手で数え切れないほどのモノになっていますがそれでも避けられるのなら可能な限り危ない事は避けたい、こうして天気の優れない日は廃墟にこもってガラクタを弄り回すことになりました。
その一環として銃器の分解組み立てがあり、そして娯楽がない以上他にすることは無いソラは組み上げた銃器に安全策を施した上で試射も行いました。そんな日々を過ごした結果として拳銃だけなら5丁、直ぐに使えるように整備して倉庫に保管してました。
しかし残念な事に銃器を使えるようになってもソラの身体では5mも離れた的に当てる事すら出来ません。扱うには身体が小さく弱すぎ用途はこけおどし止まりになってしまいました。それでも何かに使えるのではないかと考えて拳銃の他にも幾つか銃器を拾い集めました。突撃銃、散弾銃、狙撃銃……、スクラップ寸前の銃器達を整備して何とか扱えるようにはしては廃墟の隅に積み上げていました。
そして手元にあった最後の拳銃の整備を終えたときソラは完全に暇になってしまいました。銃器や生活用具の整備を全て終えやる事なくなってしまいました。だからといって何もしないというのは避けたい、けれど出来ることは何もないという悩ましい現状でした。
「……知識が欲しい」
衣食住の基盤を何とか作り上げ精神的余裕を持てたソラ、しかし其処から先の展望が全く見えてきませんでした。だからこそ知識を求め、しかし廃墟にいるソラには知識を手に入れる伝手も方法もありません。可能性として巨大な兵器が跋扈する世界なら電子書籍という形もあり得ます。しかし閲覧するなら端末が必要であり、その端末をどうやって手に入れるのか、貧民街しか知らないソラの知識は当てにならず八方塞がりの現状です。
「……寝よ」
結局の所寝るしかありませんでした。道具の片づけを終えてはテントの中に入り寝袋に包まります。そして明日が晴れることを願って目を瞑り──
「何の音?」
しかし耳に届いた異音が眠ることを許しませんでした。その音は雨音で聞こえにくいですが一定のリズムを刻んでいます。そしてソラが今までに聞いた生物兵器たちの出す音とは趣が異なっていました。
「機械音……、車両の音?」
廃墟の地面に耳を付け伝わってくる音を注意深く聞くことで見当がつきました。しかし何故車両が此処に入ってきているのか理由が分かりません。廃墟にいるのは危険な生物兵器等で人が近づくには危険です。
「いや、だからこそなのか?」
此処に人が来るなどまともな理由ではあり得ない、しかし此処にまともでない理由でなら来るという可能性がある。その理由ならばソラには思い当たる節があります。
「後ろ暗い訳、オークション……、違法な取引?」
ならば迂闊に出歩くのは危険といえるでしょう。もし取引護衛達に見つかれば殺される可能性もあり、この場では大人しく廃墟にこもっているのが安全といえるでしょう。
──しかし、ソラの脳裏にある不吉な考えが浮かびました。
「まさか、俺を探しに来た?」
たかが貧民街出身の子供一人を探し出す為にこの危険地帯に来るなどあり得ない。しかしその可能性がゼロと断定することは出来ず、当たっていた場合は救い出すためでなく連れ去る為でしょう。ソラの脳裏に浮かび上がるのはオークション会場で自分を競り落とした人の形をした怪物でした。その表情を思い出した瞬間背筋に全身に鳥肌が立ちました。
「どうしよう!?」
無論ソラもこの予想が深読みに過ぎないとは分かってはいます。しかし、それを否定するだけの情報も確証も何も無い現状は最悪の事態を想定して動くべきでしょう。結論出したソラは急いで行動を起こします。廃墟にある生活用品やガラクタに隠蔽を施し隠します。急いで運よく死体から回収できた非常食や水をガラクタで作った雨合羽の中に仕舞い、他にも役立ちそうな小物をポッケに入れていきます。そして最後にカロリー補給でワンコの肉を胃に落とし込むと隠れていた廃墟から出ていきます。
僅かな音も聞き逃さないように神経を研ぎ澄ましながらソラは雨が降りしきる廃墟に繰り出しました。
それは最悪の可能性を避けるために、それが現状で最適な行動であると考えたうえで急ぎ車両から遠く離れるために。