あべこべ世紀末、転生先は地獄だぜ   作:abc2148

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最善だと考えたものが……

雨が降りしきる中をソラは走っています。ある程度走ると近くにある廃墟に身を潜め呼吸を整えます。

 

警戒を怠ることなく、可能な限り早く、そのお陰で最初の頃より聞こえていた車両の駆動音はずっと小さくなりました。その結果として住処となった廃墟からは遠く離れてしまったが必要経費といえるでしょう、そう考えるとソラの胸に漸く安堵が湧いてきました。しかし油断はできません、出来ればもう少しだけ離れて野外で一泊する必要はあるでしょう。

 

そう考えて呼吸を整えると雨合羽を着直し、身を隠していた廃墟から出て行こうとし──ソラの目の前を何かが通り過ぎました。

 

「え?」

 

ソレはソラから少しだけ離れた場所に向かい地面にぶつかりました、そして小さく、しかし深い穴が一つできました。そして目の前の何かが通り過ぎたのは一回だけではありません。二回、三回、回を重ねることにその軌跡は地面に小さな穴をあけながらソラに近づいていきます。

 

「!?」

 

ソラは急いで先程隠れていた廃墟に飛び込みました。そしてナニか──いや、銃撃から身を隠しました。その後も立て続けにソラが隠れた廃墟に向かって銃弾は放たれたのか廃墟の壁面が弾け飛ぶ音が聞こえてきます。

 

一体何がどうなっているのかソラには分かりません。只分かることは正体不明の銃撃に狙われている事と射手はソラが逃げようとした方向にいるという事。これから導き出されることはこのまま逃げれば撃ち殺されてしまうという事。

 

想定外にも程がある事態にソラの頭は混乱の極致に達してしまいました。それでも何とか冷静さを取り戻し現状で取りうる最善の手段を模索しようし──それだけの時間を与えてくれる程相手は甘い存在ではありませんでした。廃墟の床につけた手からは雨とは異なる振動を感じ取りました。それは一定の間隔で尚且つ少しずつ大きくなっていきます。しかし耳に聞こえるのは雨音だけ──雨音だけでした。

 

その事を理解したソラの顔から血の気が引いていきます。何せ今のソラでは決して真似出来ない隠密技術、それを実行できる集団が近付いているのです。そんな彼らの目的が何なのかは分かりません。しかしこの廃墟に入り込んでいる以上まともな理由ではなく、そんな彼らが小さな子供を見逃してくれるのか、賭けるには余りにも分が悪すぎます。

 

そしてソラにできるのは今までの道を逆走して逃げる事だけ。

 

考える時間はありません、ソラは急いで走り出します。射線が通らないように廃墟に身を隠しながら走り続けていると次第に車両から聞こえる排気音は大きくなっていきます。だからといってギリギリまで車両に近づくなどもってのほかでした。しかし背後から迫る謎の集団からも逃げなくてはいけません。

 

押し付けられた無理難題に対してソラが出来たのは廃墟に逃げ込むことだけでした。そして廃墟の中に階段を見つけると急いで登っていき、そして最上階まで登り切ると近くの壁に寄り掛かり乱れた呼吸を整えます。そしして呼吸を整えると俄かに外が騒がしくなってきました。その音に耳を傾ければ言い争いが聞こえてきましたが会話の内容までは雨音のせいで分かりません。それでもこの理不尽な状況から流れるヒントがあるかもしれないと考えたソラは懐から取り出した双眼鏡で外から見つからないように観察します。すると視線の先には趣の違う二つの集団があり言い争ってました。何かの取引があってそれが成立しないのか、はたまた片方がごねているのだけなのかは見るだけしかできないソラには分かりません。しかし言い争っている事を覗いても視線の先にある光景は何か違和感を感じるものでした。それが何なのか解決しようと取引の現場を覗き続けると漸く違和感の正体が分かりました。

 

「女しかいない?」

 

双眼鏡に写るのは無法者で間違いは無く銃器で武装し、片やヒャッハー!と叫ぶのが似合いそうな服装をした集団、そしてもう片方は何処のマフィアですかと言わんばかりのスーツで決めている集団でした。これだけなら終末世界にも相応しい光景といえるでしょうが、その全員が女性とくれば危機的な状況にあるソラでも首を傾げてしまうものでした。

 

しかしそんな疑問がどうでもよくなる事態が起こりました。二つの集団に突如銃撃が加えられたのです。突如として始まった銃撃戦、驚くことに二つの無法者の集団は一時共闘することにしたのか第三勢力に向けて銃撃戦を展開します。しかし歯牙にもかけないとはこの事を言うのでしょう、突如現れた謎の第三勢力は無法者達に装備、練度、数、あらゆる面で優れていました。銃撃戦は一方的なものと化しまた一人、また一人と無法者達は撃ち殺されていきます。そして僅かな時間で銃撃音は消え、再び雨音だけが廃墟に響き渡るようになりました。

 

その様子を隠れて見ていたソラは気が気ではありませんでした。急いでこの現場から離れようと階段に近付き──下の階から聞こえてくる足音に呼吸が止まりました。先程の銃撃戦を制した集団が近付いてくる、その事実を理解するや否や急いで隠れようとしますが隠れられる場所なんてものはありませんでした。

 

「手を挙げろ」

 

成す術も無く立ち尽くすソラの背後から声が聞こえてきました。冷たく鋭い一言、それを聞いた瞬間にソラの命運は尽きました。そして指示通りに両手を挙げると背中から押し倒されます。その力は今のソラでは抗えないもので抵抗なんてものは無意味でした。そうして背中から取り押さえた人物はソラの身体に危険物がないか手早く調べます、しかし何故かその手が途中で止まりました。

 

「お前、男か?」

 

その人物も確証がないのでしょう。ソラに確認するように尋ねます。そして下手な嘘は身の危険が増すと考えたソラは正直に答えます。

 

「……そうだ」

 

「……そうか、そうか、ククククッ」

 

まるで想定外の面白いことがあったかのように笑いを堪える声が聞こえてきます。しかし通信か何かが入ったのか鋭く冷たい声がまた聞こえてきました。

 

「γより此方伏兵、爆発物は無し、危険はないと思われます。……はい、それでは鹵獲した車両の一台に乗車して帰投しても宜しいですか?……了解しました」

 

そして通信が終わると再び笑いを耐えるような声で囁きます。

 

「今日はついてるな」

 

そう言って動けないように拘束したソラを担いで連れ去りました。

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