この素晴らしい世界に探偵王子を!   作:パザー

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初めましての人ははじめまして。そうでない人は超お久しぶりです。
なんとなーくこのキャラをこのすばの世界にぶち込んでやりてぇ!って書き始めたので拙いところもありますがどうぞよろしくお願いします。


第1話

 明智吾郎。

 高校三年生。探偵。容姿端麗。秀才。

 冷酷。人殺し。虚飾の名探偵。

 

これが彼だ。まるで異なる2面性を操る、心に仮面(ペルソナ)を鎧し者。

ひたすらに暗部に浸り続け、復讐の炎を燃やし続けた者。ただ普通に父に愛されたかった、認められたかった者。

 

彼は結局は報われなかった。復讐を誓った父にそれを見透かされ、使い捨ての道具だと思われていた。だが彼は最後の最後に、自分の意思でライバルを助けた。自分の意思を継いでくれと。切り札(ジョーカー)に託した。

 

だが、彼は再びジョーカーと邂逅した。世界を書き換える程の力を手にした丸喜拓人の曲解の力とジョーカーの願いによって。

彼は叛逆を続ける。もう誰かの手のひらで踊らされるのはごめんだと。例えそれが自分を消滅させることにつながるとしても。

 

そして怪盗団は丸喜拓人から世界を頂戴した。

 

〜*〜

 

「ここは……」

 

  見渡す限り続く黒色の空とモノクロの市松模様をした床。

  自分は父の認知存在の自分に殺されたはずだ----だが、空気の感じを肌で感じることも、辺りを見渡して思考を巡らす事もできる。

 紛れもない現実の感覚だが、何かおかしい。現実離れという感覚が思い浮かぶ。

 

 

「気づきましたか、明智吾郎さん」

 

 

  背後からふと声をかけられた。清水のように澄み、声色からすでに優しさが滲み出ている。そんな聖人君主のような声色で既に嫌な気を覚えながらもそちらの方へと向き直る。

  装飾の施されたやけに背もたれの長い椅子に1人、青がかかった黒髪の少女が腰掛けていた。髪と同じような色をした紺色のドレスを纏い、こちらを慈悲の目で見つめてくる。

 

  正直なところ、その目や声色だけで彼の琴線は逆撫でされ続けている。仲間だの絆だのというのは下らない者だと吐き捨てている彼にとっては聖人というのも同じくロクでもない物だと考えている。

 

  どうせ、分厚い外面で汚い内面を取り繕ってるだけだろ-----かつての自分がそうだったように。

 

だが、そんな事をつゆほども表には出さずに彼は爽やかな笑みを顔に貼り付ける。

 

 

「これは驚いたな。あの、どちら様ですか?」

 

「フフッ…随分と演技がお上手ですね」

 

  見透かされていた。ハッタリやカマかけの類ではないと、そう感じだ。こんな現実離れした空間と同じくおかしな女だ。おそらくは何もかも知られていると直感する。

 

 

 

「へぇ…じゃあ率直に聞くぞ。ここはどこで、お前は誰だ」

 

「そうですね…率直に言ってしまうとここは死後の世界。私はディーテル。死者であるあなたを導く女神です」

 

「死後の世界…女神…なるほどね。じゃあ俺に地獄行きだとでも宣告するのか」

 

「本来であればそうなんですけど…あなたの生涯に目を通していて私、あなたに興味が湧きました。ですから選択肢をあげましょう」

 

「へぇ。是非聞かせてくれよ、女神様」

 

「1つの選択肢はあなたの言う通り地獄行きです。地獄でその罪を清算してもらった後、記憶も何もかもサッパリ0になって1から新たな人生です。そしてもう1つは----異世界に行ってもらう事です。その世界は魔王とその軍勢によって人々が脅かされ、著しい危機に瀕しています。なので貴方にはその世界に行って冒険者として魔王を退治してもらいたいんですが…」

 

「魔王にその軍勢…まるでファンタジーだな。ただ、心底どうでもいい。わざわざ助けてやる義理もない」

 

 

  人のいいように使われる、誰かの言いなりになるというのは彼にとってひどく忌み嫌う事だ。それに触れられた事もあり彼はそう冷酷にディーテルに言い放つ。

  素っ頓狂な話だと思ってはいるが現に自分がメメントスという異世界に潜り込み、ペルソナという異能力を使いこなす人間という事もあり、嘘ではないと何となくだが理解はできた。

 

 

「そもそもだ。俺になんのメリットがある?あまりいい気はしないな」

 

「(多少興味は湧いてるようですね…どう説得したものでしょうか…)特典としてなんでも望むものを1つ持っていけるのですが、それじゃダメですよね…そうですねぇ……本当のヒーロー、正義の味方っていうのになれるかもしれませんよ」

 

「ッ!……本当に癪に障るやつだ…」

 

 

  ヒーロー。当然彼は今となってはそんなもの望んではいない。だが、彼の叛逆の意志の象徴である怪盗服やロビンフッドというペルソナには、そういった正義に対する憧れが表れている。今更これまでの汚名をどうにかできるとは思わない。だが、心は確かに揺らいだ。

 

 

「…何点か聞く」

 

「はい。なんでもどうぞ?」

 

「地獄っていうのはどんな所だ?」

 

「…過酷なところですよ…苦痛的な意味ではもちろん、それぞれ罪人に合わせた刑罰が気が遠くなるほどの間、受け続けることになります」

 

「次に、異世界で言葉は通じるのか?そして、なんでもといったが本当に際限はないのか?」

 

「言語に関しては転生の際に自然と理解できるようになるようこちらが工面します。そして転生特典に関してですが、本当になんでもいいですよ。もちろん世界を滅ぼしかねない様な物は除いて、ですが」

 

「…ふむ……」

 

 

  癪だが、この女のせいで少し生きてきた事に対して悔いを感じてしまった。それを感じたまま地獄に行って終わるというのは少し胸糞が悪い。

  それに、彼の真実への探究心というのが騒いでいる。未知の世界についての知を渇望している。

 

 

「……分かった。その話を呑もう」

 

「フフッ…そう言ってくれると思いました。さぁ、善は急げです。何を持っていきますか?」

 

「…俺だ。ペルソナも、ワイルドの能力も、装備も、俺を作る全てだ」

 

「全く強欲ですね…ですが、捉えようによっては明智吾郎1人…分かりました。そのように計らいましょう」

 

 

  そして彼女は立ち上がると足元に青白く発光する魔法陣を浮かばせ、何やら呪文を唱え出した。すると、同じ光が明智の足元にも出現し、彼を光の柱の中に閉じ込める。

 

 

「それでは、明智吾郎。あなたに女神の祝福があらん事をーーー」

 

〜*〜

 

  視界がホワイトアウトし、しばし眩しい光に包まれる。

  10秒ほどすると自分が草原を踏み締めている感覚と、柔らかに吹きつける風を感じ始める。

 

 

「ここが……」

 

 

  ポツリと呟き、改めて自分の身体を見てみる。着慣れた制服に手袋、そして靴…頼んだはずの武器などは一切見当たらないが、本能でなんとなくだがどうすればいいか理解できた。

 

 

「…ペルソナ」

 

 

  そう呟き、精神を集中させて自身のペルソナを思い浮かべる。

  すると彼の服は白を基調に赤と金の豪勢な装飾、そして小ぶりだが極めつけには真っ赤なマントとカラス(crow)のクチバシのような顔の上半分を覆うペストマスク。怪盗を名乗っていたにはいささか派手すぎる貴族の儀礼服のような服装へと瞬時に変わる。

  そして腰には揺らめく炎を模したかのような刀身を持つサーベル、ヒノカグツチ改。ホルスターには形状だけは普通のハンドガンだが、銃身から赤く鈍い光を放つ光線銃、エンシェントデイPR。どれも最終決戦までに揃えた最高の武器だ。

  そのどれもが驚くべき変化だが、何よりも青白い光と共に背後には筋骨隆々で彼と同じような格好をし、特殊な形状の弓を構える大男ーーーペルソナのロビンフッドが顕現していた。

 

  これが彼のーーーいや、彼が所属していた怪盗団のメンバーが持つ特異な能力、ペルソナ。自身の叛逆の心が力を持って顕現した、もう1人の自分。彼らはその力を使い、パレス、メメントスという認知の世界で腐った大人たちを改心させてきた。本来であれば認知の世界でしか使えない能力なのだが、あの女神とやらが工面してくれたのだろう。これまで通りに使うことが出来た。

 

 

(少しばかり試し斬りでもしてみたいんだが……)

 

 

  そんな物騒な事を考えてはいるが、残念なことに辺りの平原は穏やかを具現化したような風景で、何か考えていたモンスターがいるような気配もない。その代わり、背後には大きな石造りの門ーーーおそらく街の入り口と思しきものーーーがそびえ立っていた。今自分はこの世界に関して何も分かっていない。なら、人がいそうなところに向かうのが安定かーーーそんな事を考えながら彼はペルソナを解いて街へと歩み出した。

 

〜*〜

 

  ここで1番情報が得られるのはどこかーーーそんな事を道すがらの人たちに聞き込みながら辿り着いた冒険者ギルドという建物ーーー途中の主婦らしき人物たちからの黄色い声に青筋をひっそりと浮かべていたのだがーーーの扉を開くとまるで大衆居酒屋のような騒がしさだった。

  おそらくまだ昼間だというのに酔って騒いでのお祭り騒ぎだ。そんな品性のかけらもないような風景に再び辟易しつつもカウンターへと一直線に向かい、受付嬢に話しかける。

 

 

「すみません、冒険者…というのに登録をしたいんですが」

 

「はい、冒険者登録ですね!ではまず手数料として1000エリスいただきます!」

 

「ーーーーー」

 

 

  栗色の巻き髪をした受付嬢がとてもはつらつとした態度で迎えてくれる。そしてこうとも言ったーーー手数料1000エリスと。そして明智はというと……無一文である。その言葉で一瞬、貼り付けた爽やかな笑顔が凍りつく。

 

 

「あっそうでしたか…すいません、持ち合わせがないのでまた伺いますね」

 

「分かりました!冒険者ギルドはいつでも新たな冒険者をお待ちしております!では次の方ーーー」

 

 

  そう言って彼は横に掃けて、備え付けの椅子に腰掛ける。もはやあの爽やかスマイルも忘れたイライラを明らかに溢れさせながら。

 

 

(あンの女神…金くらいいくらか持たせろ…頭おかしいンじゃねぇのか…)

 

 

  だがフルフルと震えながら机で悶々と悩んでいると、不意に横から明るい声が聞こえてくる。

 

 

「あのさあのさ、君ーーー持ち合わせないの?」

 

 

  視線をそちらに向けると綺麗な銀髪をした小柄の中性的な少女が彼に話しかけてきていた。と言っても顔には何か斬られたような傷跡と、格好も上半身は最低限胸周りを隠すスポーツブラのようなものに加えて、下半身もブーツとホットパンツという、日本で出会おうものなら確実に事案を疑う格好だったが。

 

 

「アハハ…実はそうなんだよね…恥ずかしいな…」

 

「やっぱりそうなんだ。この街じゃ見かけないし…ねぇ、君って戦える?」

 

「…?少しくらいなら覚えはあるけど…」

 

「じゃあさじゃあさ!前金としてアタシが登録のお金払うからさ、アタシのクエスト手伝ってよ。もちろん報酬もちゃんと分けるよ!」

 

「それは助かるけど…いいのかい?それじゃあまりに話が良すぎると思うんだけど…」

 

「いいのいいの!じゃあ善は急げって言うし、ほら早くー!」

 

「わっちょっーーーー」

 

 

  そう言うと少女は明智を引っ張って再びカウンターの前へと連れて行く。探偵王子の方のキャラで接してしまった以上、明智も下手に黒い部分を出すわけにもいかず、彼女に引っ張られるがままになっている。

 

 

「お姉さん、はいこれ!彼のカード作ってあげて!」

 

「あらクリスさん…それにさっきの彼…はい、承りました。では、こちらの水晶に手をかざしてください」

 

 

  クリスと言われた少女が革袋から1000エリス分の硬貨を先程の受付嬢に渡すと、彼女はカウンターの下から何やら怪しげな水晶と一見ボロボロに見える茶色の紙切れを取り出した。言われるがまま、彼が水晶に手をかざすとそれは怪しく光だし、あまり見えないが紙に何かが印字されていくのが見える。

 

 

「(科学とは明らかに違う…これが魔法か…)」

 

「これは…HPや攻撃力、それに魔力量がとても優れてますね!少し運は低いですが…全体的に高水準です!これなら幾つか上級職も習得できますよ!」

 

「へぇー…すごいね君!最初から上級職なんて!」

 

「なるほど…選べる候補みたいなの、見せてもらえますか?」

 

「はい!こちらをどうぞ!」

 

 

  渡された茶色の紙切れーーー恐らくこれが冒険者という事を示す免許のようなものだろうーーーを見るとそこには戦士や槍使い、ウィザードなどの誰もが聞いたことのあるような職業からソードマスターやルーンナイト、選択はできないがアークウィザードなど、恐らく上級職であろう項目が並んでいる。だが、彼の目を引いたのはーーー

 

 

「(盗賊か……癪だけど、変に戦士を選ぶよりかは怪盗に通ずるものがあるだろうし……)…盗賊にしようかな」

 

「おっいいねぇ!アタシも盗賊なんだ!いろいろレクチャーしてあげるよ!」

 

「かしこまりました、盗賊ですね!……とう…ぞく…クゥッ!?!?」

 

 

  受付嬢にカードを返し、手続きをしようとした時、カードを見た彼女が突然に素っ頓狂な声を上げ、目を丸くしている。そんなリアクションをされると不安も煽られるため、明智が恐る恐る声をかける。

 

 

「あ、あの…どうしました?」

 

「な、なんですかこのスキルの数々…見たことも聞いたこともない…固有スキル…?『コウガオン』に『エイガオン』…ン"ン"ッ!マナー違反ですねいけないいけない…と、盗賊でしたね、では登録を終了します!それではあなたの旅路に祝福がありますようにーーー」

 

「……?」

 

「(ペルソナスキルはこの世界じゃ未知のものなのか…変にひけらかさないようにしないとな……)」

 

 

  クリスがそんな受付嬢の反応に首を傾げ、明智は改めて自分の特異さを噛み締めている。そんな三者三様の反応を示しながらも波乱の冒険者登録は幕を閉じた。

 

〜*〜

 

  クリスの引き受けたクエストはジャイアントトード10匹の討伐。名前からも分かる通り、デカいカエルなのだが盗賊の攻撃力では数的に厳しいものがあるらしく、明智に声をかけたのだそうーーーまさか彼も盗賊を選ぶとは思わなかったが。

 

 

「まさか君も盗賊を選ぶなんてねーーー先輩風が吹かせられそうで楽しみだよ」

 

「ちょっとだけ盗賊には縁があってね…それに、僕としても先輩がいて心強いよ」

 

「どっちかって言うとあのステータスはソードマスターとかルーンナイトみたいだったけどね…しゃがんで」

 

「ーーーっとっと」

 

 

  2人は彼が最初に降り立った平原の近くへ再び繰り出していた。少し切り立った部分にいるおかげで気付かれることはなかったが、彼らのすぐ下にはヌメヌメとした体表を持つ巨大なカエルがいた。

 

 

「すごいサイズだな…人くらい簡単に食べちゃいそうじゃないか」

 

「フフッ、そうだね。ーーーまぁ見ててよ、盗賊の闘い方を見せてあげる」

 

 

  そう言うと隣にいるはずの彼女の気配が急に希薄になる。ここに来るまでに聞いていた盗賊のスキルの『潜伏』というものだろうが、まさか隣にいるのに見失いそうになる程とは。

  そして彼女は希薄なまま丘を滑り降りて行き、ジャイアントトードの背後を取る。すると彼女は腰にかけた短剣を取り出すとジャイアントトードの脚の腱に当たる部分を切り裂いた。

赤い鮮血が吹き出し、斬られた右足に身体が傾くがなんとか背後に向き直る。が、そこに既にクリスの姿はなく、今度は斬りつけた右側面に陣取っていた。

 

 

「フッ!」

 

 

  短く息を吐きながら跳躍すると頸椎に当たる部分に深く刃を両手で突き立てた。先ほどよりも多くの血液が噴き出しジャイアントトードが悶える。が、彼女は振り落とされる事なく短剣の柄を掴み、思い切り下に向けて肉を切り裂いた。少女らしからぬ残忍な方法だが、その手口は鮮やかで淀みがなかった。

 

 

「フゥーッ…こんなとこかな。どう?アケチ君」

 

「すごいな…とてもスムーズな手口だ。君…僕なんか頼まなくても普通に達成できたんじゃないのかい?」

 

「うん?ま、まぁそれはいいのよ。それよりほら、君もこれで潜伏が習得できるようになってるはずだよ」

 

「どれどれ…ホントだ。これを習得…」

 

 

  再び高台に戻ってきたクリスに言われ、冒険者カードを取り出す。するとスキルの欄には確かに『潜伏』が習得できるようになっていた。それを習得するとペルソナを顕現させる時のように、本能に使い方を刻まれた感覚が訪れ、なんとなくだが潜伏の発動のさせ方も理解できた。

 

 

「…うん、完了したよ」

 

「それじゃ、君のやり方で1匹倒してきてくれるかな?固有スキルみたいなのもたくさん持ってたし、好きなやり方でやってきてよ」

 

「い、今のを実践しろって訳じゃないんだ…」

 

「まぁ今のはあくまで一例だし、君には君にあってるやり方があるはずだしさ。だからまずは君のやり方を知るところからじゃないと」

 

「それもそうか…それじゃあ、僕の実力を見せてあげるよ」

 

  

  クリスと同じように床を滑り降りながら、彼は怪盗服に変身する。いきなり青白い光を発しながら先ほどとは全く違う装いになった彼をクリスは目を丸くして驚く。

 

 

「射殺せーーーロビンフッド!!」

 

 

  ロビンフッドが顕現し、手に持つ黄金の弓を放つような動作を見せる。すると放たれた矢は光のベールのような物に包まれ、ジャイアントトードに突き刺さる。

  光の矢ーーー祝福属性の中でも最高クラスの威力を誇る『コウガオン』が炸裂し、彼の持ち前の狙撃技術もあってか的確に頭を打ち抜き、ジャイアントトードは一撃で絶命した。ーーー衣装もさることながら、盗賊とは。と思わせる派手な戦い方だ。

  しかし、異世界で培ってきた怪盗のノウハウもあり、潜伏スキルで他のジャイアントトードには気取られる事なくクリスのところへ戻ってきた。

 

 

「えぇっと…何あれ?」

 

「アレかい?ペルソナって言ってね。アレが僕の能力さ」

 

「ペルソナ…かぁ。それにしてもすごい威力だったなあ。よし!それじゃあと8匹、頑張ってやっちゃおうか!」

 

〜*〜

 

「『バインド』!はあああぁぁぁッ!!」

 

「ペルソナーーー『メギドラオン』!!」

 

 

  片やジャイアントトードを縛りつけ、流れるように切り裂く。

  片や大爆発を起こし、彼らを吹き飛ばす。

  盗賊同士のはずなのにどうしてこんなにも差が出るのだろうーーーそんな疑問が浮かぶがそんなものは深く考えたら負けだ。

 

 

「ーーーはあああぁぁぁッ!!」

 

 

  そして明智が雄叫びをあげながら、最後の標的に向かって突進。ヒノカグツチで右へ左へ上下へと斬り付け、トドメにバックステップで距離を取り、傷口に銃を叩き込む。彼のお得意の連携だ。

  辺り一帯にジャイアントトードの死体が散乱し、その様子を見て彼は変身を解いた。クリスも一息ついて、短剣を腰に収める。

 

 

「ふうっーーーお疲れ様。凄かったよアケチ君!ホントにレベル1なのって疑いたくなるくらいだったよ!」

 

「フフッ、これが僕の実力だよ。それにしても、君だってその短剣1本ですごかったよ」

 

「アタシは戦い慣れてるからねぇ。それに、先輩としての威厳は保たなきゃだし」

 

「そうだねーーーそれじゃあ、帰ろうか」

 

〜*〜

 

  時刻は夜。銀髪をたなびかせながら、1人の少女ーーークリスが歩いていた。のんびり歩を進めながら考えるのは今日出会った何やら特別な彼のこと。そして、『先輩』から急に告げられた事。つまりは女神としての職務のことだ。

 

〜*〜

  いつものように死者はなかなか来ず、暇をしていたーーーといっても他にもやる事はあるのだがーーー()()()だったが、突然に女神同士の通信機器である手鏡から声が上がる。

  

 

(この声は…ディーテル先輩だ…)

 

  

  正直、出るのも億劫だった。というのも、通信をよこしてきたディーテルは見た目や『表向き』の態度は女神のお手本といえる人物だ。だが、彼女の根底には人間に対しての好奇心が溢れていてやまないーーーつまるところ、それっぽい事を言って死者をその気にさせては毎度毎度ロクでもない事を引き起こすのだ。そんな先輩からのコールに既に頭を悩まされながらも無視するわけにいかず彼女は鏡を取った。

  映し出された綺麗な藍色の髪をした、顔だけはいい女神ーーーディーテルに向かってもう嫌な気を隠すつもりもなく前面に出しながら話しかける。

 

 

「……なんなんですか先輩。ロクでもない事ですか、それとも厄介事ですか」

 

「あらまぁひどいわエリス…そんな事言われて先輩悲しいわ…ヨヨヨ…でもまぁ、当たりよ。察しがいいわね〜よしよし」

 

「茶化してないで早く要件を伝えてもらえますか…」

 

「ツレないわねえ…そんな場末の世界だし、パッドの探究だってもう行くとこまで行って暇でしょうに…」

 

「パッ、パッドの話は関係ないじゃないですか!!それに私、まだ諦めてませんから!!」

 

 

  唐突に自分の小さな胸に関して突っ込まれてひどく動揺し、赤面する。まったくもってデリカシーのない女神だ…そんな風に思われているのを知ってか知らないでか、何事もなかったようにディーテルは話を続ける。

 

 

「まぁいつもみたいにそっちの世界に1人、私の世界から送り込んだんだけど…これがまたクセのある子でね。彼に関しての資料にちょっと目を通して欲しいんだ」

 

「えっそれだけ…?というか、なんでわざわざそんな事…?」

 

「…あーそうね…端的に言うと…彼、犯罪者だから。ホントはめちゃめちゃ地獄行きだったから」

 

「………はい?」

 

「だーかーらー、私の独断の情状酌量お涙頂戴な判断で彼をあなたの世界に送り込んだの。ただまぁそんな事したから上の人たち随分お冠らしくてさ…だから伝えるだけ伝えておこうって」

 

「えっちょっまっせんぱーーーー切られた…」

 

 

  既に怒涛の情報量で頭がパンクしそうになっていたが、チャランポランとはいえ、いきなり先輩の女神生の危機を知らされて更に混乱する。いや、彼女の上っ面の良さならなんとか乗り切るだろうが…そんな事を考えながらも送られてきた資料に目を通す。

 

  明智吾郎。わずか18歳なのに恐ろしく凄絶な彼の生涯に目を通す。精神暴走事件、廃人化の実行犯。怪盗団として人知れず世界を取り戻した男。

 

  エリスにとって悪人、罪人は忌避する存在だ。どんな理由があれ、地獄で罪を清算させるべきだと。だが、一応ボンクラとは言え、能力だけは確かなあの女神が目をつけた人間だ…なら、私は彼を見定めよう。そうエリスは心に決めたのだ。

 

〜*〜

 

「あなたがこの世界で何を為すか、どうなるかーーーしっかりと見定めますからね、明智さん」

 

 

  彼女は月光に照らされながらそう呟いた。

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