そして次の日の朝、八幡は私服に着替えて学園の正門前にやって来た。今日は土曜日で、本来であれば寮でダラダラしているところだったのだが、一輝やステラ達がショッピングモールに遊びに行くことになったせいでステラの護衛として付いて行かなくてはいけなくなったのだ。
正門前には既に一輝とステラが来ていた。先に気づいた一輝が八幡に声をかける。
「おーい、八幡~」
「早いな黒鉄とヴァーミリオン」
八幡は集合の五分前に校門前に到着した。そして一輝とステラを見る。一輝とステラはいつもの制服とは違い私服を着てきているのだが、八幡は傭兵時代に着ていた全身黒の服だった。
「なんていうか僕の予想通りの服を着てきたね」
「仕方ないだろ、俺に服のセンスはないし機能性を重視したらこうなったんだよ」
実際千葉にいたときは千葉Tシャツ来てたし、傭兵時代には黒服だったしな。それにしてもヴァーミリオンは気合い入ってるな、大方黒鉄に見せるためだろうけど。
「意外ね、ハチマンがこういうのに早く来るなんて。ハチマンのことだから遅刻してくると思ってたのに」
確かに昔ならあることないこと言って行かないようにしようとして結局無理矢理来させられて遅刻するのが一連の流れだったんだがな。小町の英才教育によって遅刻しなくなっちゃったよ、まあそもそもの話誘われることすら数えるくらいしかないんだがな。
「待ち合わせは集合時間より早く来ることって小町に散々言われたからな。小町に言われたらやらないわけにはいかないだろ」
「小町って誰よ、もしかしてハチマンの彼女?」
なんで女子って男子の口から女子の名前を聞くと恋愛方面の話だって思うんだろうな。女子と話したことなんてほとんどしたことないし、なんなら人と話したことすらほとんどないんだが。
「違うわ妹だよ妹。大体俺に彼女なんてできるわけねぇだろ、それどころかクラスに認識されてないまである」
「なんでそんなにネガティブなのよハチマンは」
「あはは」
八幡のネガティブな回答にステラがつっこみ一輝は乾いた笑い声をあげる。
「それで妹さんはどんな子なんだい?」
「なんだ黒鉄、俺の妹狙ってんのか?もしそうなら覚悟を決めろよ、生半可な覚悟じゃやらんからな?」
「ちょっと一輝!?」
「八幡とステラ別に違うからね!?」
校門前で朝から騒いでいるところに今回の買い物を計画した本人が登場する・・・なぜか男を連れて。
「あ、珠雫だ。おーい珠雫ー」
黒鉄のやつ追及から逃げたな。まあいいかこれは俺が追及するべきことじゃないしな。そして珠雫は一輝に挨拶を返す。
「あ、お兄様。おはようございます」
「おはよう珠雫。今日は誘ってくれてありがとう」
「いいのですお兄様。私がお兄様とお出かけしたくて誘ったのですから」
一輝と楽しく話をして機嫌がよくなる珠雫に対してヴァーミリオンの機嫌は反比例するように悪くなっていく。そしてそんなヴァーミリオンを珠雫が煽る。
「それにしても本当に驚きました。まさかステラ殿下のように高貴な方が興味を持たれるなんて。私たち兄妹が好む庶民の娯楽に」
「日本のことをもっと学びたいって言ったら誘ってくれたのよ、アタシのご主人様の一輝が」
しかしステラはうまいことその煽りを避ける。このやり取りを聞いていた一輝は「アハハ」と力なく笑う。
「殿下が学ぶべきなのは遠慮とか空気読むとかじゃないですか?」
「空気読んだからこそよ、実の兄にキスするハレンチな妹とお出かけなんて危険すぎるもの」
二人は言い合いを終えるとそれぞれそっぽを向く。
二人揃って子供かよ。仲良くしろとは言わんがうまくやれよ。
「えーっとそれで君は?」
一輝は珠雫と一緒に来た青年に声をかける。
「珠雫が誘ってくれたの。珠雫のルームメイトの有栖院凪よ、 アリスって呼んで」
「アリス?」
アリスと名乗った青年は珠雫のルームメイトだった。アリスの話し方や呼び方を聞いた一輝は一度アリスの体全体を眺める。
「もう、いきなりそんなジロジロ見ないの。お兄さんのエッチ」
俺のいたところにもオカマはいたけどやっぱいつみても怖いよな、別の意味で狙われそうで。まあ、今回は黒鉄もいるし俺の方には来ないと嬉しいんだがな。
「あ、ごめん。でもその、男だよね?」
確かに男だな、外見上は。ただ、中身は乙女なんだよな。前会ったやつはそう言ってた。
「生物学的にはね。だけど安心して、心は乙女よ」
ほらやっぱり言った。オカマってなぜかみんなそう言うよな。この有栖院も含めて2人しか会ったことないけどな。
「それを巷ではオカマっていうんだっての」
アリスに気づかれないように黙っていた八幡だったが、アリスのボケ?についツッコミを入れてしまう。 そしてアリスは声のした方を見て心の中で絶句する。
(な、なんでこんなところに腐眼がいるのよ!?でも大丈夫よ、今は特になにも行動起こしてないもの。それに直接の面識はないし私が解放軍にいることは知られていないはず)
アリスは解放軍に出回っている要注意伐刀者のリストにあった八幡の姿を思い出してバレないようにヒヤヒヤしながら口を開く。
「比企谷くんは真面目なのね。でもそういうのも素敵よ」
「は、はぁ」
八幡とアリスの会話に入り込むように提案する珠雫。
「とにかくお兄様、全員揃ったようですしそろそろ出発しませんか?」
「あ、そうだね。それじゃあ行こうか」
珠雫の提案を受けた4人はそれぞれ頷くとショッピングモールへと向かうのだった。