同時に動き出した二人の伐刀者は一回目の攻防に入る。八幡は下からの斬り上げを放つが、男は斬撃を半身でかわすと大きく踏み込んできて右ストレートを打ち込んでくる。
八幡は男の拳を鎬で受け流すとそのままの勢いで突きを相手の眉間に放つ。男は腕を引っ込めると魔力を込めた腕をクロスさせることで突きを防ぎ、八幡の動きを止めると腕をほどくことでバランスを崩させ空いた脇腹へボディフックを放ってきた。
八幡は刀の刃を下に向けて拳を受けると後ろに飛んだ。自分から後ろに飛んだため勢いを完全に殺すことができていてダメージは一切ない。
「中々やるな。異能に頼った戦い方かと思っていたが剣術もしっかりできているようだ」
先程の一連の攻防からある程度実力を把握した男は再び拳を握った。どうやら八幡に勝てると判断したようだ。
今のところ向こうは能力を使わずに格闘術だけで戦っているか。まずは能力を明らかにしないと始まらないし、こちらから攻勢にでるのもありだな。
「さて、ほかにも伐刀者はいるかもしれないし早いところ決めるかね」
次に動いたのは男からだ。男は低い姿勢で飛び出して八幡の視界から外れようとするが八幡は男のスピードに負けることなく目を動かし男を視界に入れている。そこへ男は一つ急停止を入れた後に再加速することで緩急を生み出し距離感覚を狂わることを試みるが、八幡は惑わされることなく刃の届くところまで男を引き付けると刀を横に振り抜いた。再加速を入れたタイミングで攻撃を繰り出された男は腕を左から右に振るう。
「
八幡の目の前に現れた金属の壁が攻撃を防ぐとそこから柱が突き出てきた。
「うおっ!最初の攻撃のやつじゃねーか」
驚きの声を上げる八幡だったが頭は冷静なようで突き出てきた鉄の柱に飛び乗ると突きだしてきた柱に乗って男から距離を取る。男は壁に視界を遮られていたためか特に追撃をすることなく壁を分解する。そしてすぐに八幡が離れていることに気づく。
「あれを凌ぐか、ならばこれならどうだ。
いくつかの銃器を自身の周囲に展開しそこから銃弾を雨のように飛ばす。
「第5秘剣技・崩剣」
八幡は全力で前に疾走しながら刀の切っ先を揺らし、飛んでくる銃弾の軌道をずらす。その瞬間
「撃ち抜け」
「っ!
八幡は男の言葉が耳に入ると同時に悪意を体で感じたため周囲に影の穴を創る。そして横から放たれた弾丸を吸い込むとそのまま居合を放つが男は居合を左腕で受け流し、さらにそこから受け流した際の勢いを上乗せし右フックを繰り出してくる。
男が行ったのは体内での捻転運動だ。左腕で受けた攻撃の威力を体内の筋肉で循環させ右腕に乗せたのである。
そうとは知らない八幡は受け流しから右フックに入るまでの間に体勢を整えると、今までと同じように攻撃を捌こうとする。しかし刀に加わる重みから威力が上がっていることを察し刀から手を離して自分から後ろに跳んだ。攻撃の威力を完全に殺すことはできなかったようで床に靴跡を付けながら止まった。
さっきよりも攻撃の威力が上がってるな。手を抜いていたのか?手を抜いたのかはわからないが膂力は向こうの方が上のようだし攻め方を変えた方がいいか。
八幡は地面に落ちている自身の霊装の具現化を解き、再び具現化させることで遠くにあった霊装を呼び戻す。そして足元の影を広げた。
「
足元の影は遅い速度でありながら段々と影の範囲を広くしていき、影の上にあるものを飲み込んでいく。男はその光景を目の当たりにし顔を引きつらさせる。
「マジかよ、これはどう考えても危ないやつだろ。とにかく範囲内から外れないと俺も飲み込まれるな」
男は八幡から視線を逸らさず時折半身になりながら影から逃げていく。それに対して八幡は影へと魔力を送り込み影の広くなる速さを早め男を捕らえようとするが男の逃げる速さを上回ることはできていない。男は影から逃げるため階段を上るが影は男を追って階段をも上っていく。
(このままじゃ追い付かれるのは時間の問題だな。どこかで伐刀絶技を突破できるタイミングを見つけないといけないな)
男は八幡の伐刀絶技を突破するための一手を打つ。足に魔力を集中させると影へ向かって走り出す。そして影へと足を踏み入れると足が沈む前に次の足を出すことで沈む時間を与えずに移動していた。
もう対応してきたか・・・これはもう通じないな。
広げていた影を元の大きさに戻すと刀で地面を叩く。すると足元から立体化した影が出現し触手状に変わると男に向かって一斉に伸びた。
男の背後からと両側、さらには上からも襲ってきたため逃げ場は前にしかなく、男は仕方なく前方に飛び出した。そこへ八幡が密かに展開していた数十本の影の腕が迫る。
(これは少しまずいな。前方に影の腕、横と上と後ろに触手となると避ける場所がない。防げるかはわからんがあれをするしかないか)
「
直後影の腕と男の体が衝突した。薄い鋼を纏ったおかげで大ダメージは免れた男だったが衝撃をそのまま受け3階の吹抜けから落下していく。そして八幡は男を追って同じように吹抜けから飛び降りたのだった。