腐り目騎士の英雄譚   作:月村手毬ちゃん親衛隊

19 / 49
今回は一輝の初陣でとても緊張しているよって話です。 緊張しすぎていつも通りのことができなくなることってありますよね。スポーツとか受験とか。


一輝の初陣と緊張

黒鉄と話した翌日の昼、俺達は黒鉄の試合がある闘技場の前に集まっていた。黒鉄の試合は1時からで待機時間までは20分ほどある。そこでヴァーミリオンは黒鉄に待機時間までの過ごし方を尋ねた。

 

 

「まだイッキの待機時間までしばらくあるわね、どうする?今やってる試合見に行く?」

 

 

「いや、僕はもう控え室に行くよ。自分の試合に集中したいからね」

 

 

一輝はステラの誘いを断って試合に集中することを伝える。そんな一輝を見ていた八幡は一輝の靴ひもが取れていることに気付き指摘する。

 

「それはいいけどな黒鉄、お前靴ひも解けてるぞ」

 

 

「え・・・あっありがとう八幡」

 

 

一輝は八幡の声で自分の靴ひもが解けていることに気付きしゃがみこんで靴ひもを結ぶ。

 

 

俺に声かけられるまで靴ひもが解けてることに気づいてなかったな。緊張で些細なことにも気づかないとなると本番は厳しい戦いになりそうだ。

 

 

「まあ、とにかく頑張ってこいよ」

 

 

黒鉄が緊張していることには気づいているがそれを声に出すともっと緊張するかもしれないからな。このへんで別れた方がいいだろう。俺は黒鉄に一言エールを送ると黒鉄が控え室に向かうのを見送った。そして残った俺とヴァーミリオン、有栖院、黒鉄妹の4人は黒鉄の試合がある闘技場の観客室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

5分後観客席に到着すると、観客席は選抜戦に参加しない生徒と参加する生徒、桐原を応援しに来た女子生徒達で賑わっていた。その中の空いている席を俺、有栖院、黒鉄妹、ヴァーミリオンの順で座り黒鉄と桐原の試合が始まるのを待つ。この時の時間は午後12時55分になっていて試合開始まで後5分となっている。

 

 

黒鉄と桐原の相性は最悪といってもいいレベルだが黒鉄はどのように戦うのかね。現時点で緊張しているかどうかはわからんが昨日言った通りの作戦だと少し予想が外れただけで大惨事になるな。

 

 

黒鉄と桐原が闘技場に来るまでの間、二人の戦いの流れを考えながら試合時間まで待っていると隣の有栖院が話しかけてきた。

 

 

「八幡。さっきの一輝を見てどう思った?」

 

 

「靴ひもが解けてることに気づいていなかったって話か。あれは緊張しているってことの表れだろ。普段の黒鉄なら気づかないなんてことはありえないな、特に自分のことなら」

 

 

靴ひもが解けてることをいっているのだろうと俺は見当を付けて有栖院の質問に答えた。そして有栖院は望んでいた答えを得られたのか話を進める。

 

 

「そうね。私から見ても一輝が緊張していることはわかったわ。彼の実力の高さを知っているとはいえ、相手の実力も高いから緊張を感じるのはおかしくないわね」

 

 

有栖院の言う通りだがそれだけじゃない。一番は勝たなければこれまでの2年間が無駄になるというプレッシャーからだろう。緊張するなとは言わんが緊張をある程度は制御できるようになるといいというのは確かだ。

 

「別に緊張することが悪いという訳ではないが過度な緊張は視野を狭めることにもなる。その事に気づかなければ、なにか予想外の事態になった時相手の有利になるのは避けられないだろうな」

 

 

過度な緊張が大事に発展することは既に経験済みだ。黒鉄も俺と同じように頭で考えてから動くタイプだから俺の言ったようなことはおそらく起こるだろうと確信に近いものを感じている。

 

 

「さて、黒鉄の初戦。どうなることやら」

 

 

こうして脳内で思考を止めないでいると八幡の隣に知っている気配が現れ八幡に声をかけてきた。

 

 

 

「へ~ハチマンくんが気にする相手がこの試合に出るのか~黒鉄くんってのはどっち?剣士くん?それとも弓使いくん?」

 

 

「・・・なんでいるんですか、デネットさん」

 

 

俺に声をかけてきたのは長い銀髪を持つ女性の伐刀者、アイラ・デネットだ。俺が所属する傭兵団の傭兵で、入った当初の上司にあたる人物だ。語尾を伸ばすような口調で子供っぽい印象を与えるがこの人との年齢は2つしか離れていない。

 

 

「なんでってそれは~、ハチマンが選抜戦に出るって聞いたからだよ~」

 

 

誰に聞いたんだよ。俺知り合いにしか言ってないのに。まさかあいつか。

 

 

「そうだよ~、ミラちゃんに教えてもらったんだ~」

 

 

「なにも言ってないだろ。心を読むな」

 

 

やっぱりか。どうせミラに能力を使わせて教えてもらったんだろ。

 

 

「それはそうとして~ハチマンくんの試合は観るけどそのハチマンくんが気にかけてる子の試合も観ようかな~」

 

 

「俺の試合を観ても面白いことはないですけど、黒鉄の試合は多分面白いことになりそうですし観てもいいんじゃないですかね」

 

 

黒鉄が緊張しているとはいってもその緊張が解れたりしたら面白いことになりそうなんだよな、本当に。

 

 

「それじゃあ観てみることにするね~」

 

 

デネットさんと話していると時間は過ぎていき黒鉄と桐原が闘技場に姿を現す時間になった。まず選手紹介とともに右から選手が入場する。

 

 

「右から入場するのは、昨年一年生にして七星剣武祭への出場を果たしたCランク騎士桐原静矢選手!」

 

 

桐原の名前が呼ばれると会場の女子生徒が大きな歓声を挙げ、それに応えながら歩いてくる。

そして歓声が弱まったところで黒鉄の紹介が始まる。

 

 

「そして反対側から現れたのはFランクながら模擬戦であのヴァーミリオン選手に勝った黒鉄一輝選手!」

 

 

黒鉄と桐原は互いに少し離れた位置で立ち止まると何事か話しているが、小声であるためこちらには聞こえてこない。そして話が終わったのか二人はそれぞれ固有霊装(デバイス)を展開する。

 

 

「さあ狩りの時間だ朧月」

 

 

「来てくれ陰鉄」

 

 

黒鉄と桐原の準備ができると同時に試合の開始を告げる機械音声が響いたのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。