「さあ、やって参りました!七星剣武祭代表選抜戦2日目、第8試合の実況は私、枯野千鶴、解説は折木有里先生でお送りします!」
「よろしくね~☆」
闘技場の扉の内側から実況を聞いていると遂に選手紹介に移った。俺は選手紹介に入ったタイミングで扉を開けて闘技場内に入る。
「さて、早速ですが選手紹介に参りましょう!左から現れるは昨年の首席にして日本の学生に2人しかいないAランク騎士の一人、比企谷八幡選手です!!昨年は入学1ヶ月で休学したため戦闘データは皆無ですがどんな戦いを見せてくれるのか注目です!」
俺が入ってきたときにはそれほど拍手や歓声は多くなかったが、Aランクだとわかった途端歓声に包まれる。
「対するは2年のCランク騎士、大杉剛選手!!昨年は選抜戦に出ておらず実戦データは授業のみ。実像形態で行われる実戦でどう戦っていくのか!」
観客席は俺より少ないが歓声があり、その歓声の中にはFランクで勝てるならお前でも勝てるといったもある。はっきりいってこいつらAランクのこと舐めすぎだろ。
「退学したかと思ってたわヒキタニ」
名前をわざと間違えたまま話しかけてくる大杉に対して、俺は一々直すのも面倒だと感じそのままスルーした。
「噂だとFランクと仲良くしていたからって理由で前理事長に退学させられたって話だったが嘘だったか」
この噂流したやつ魔導騎士連盟のことなにもわかってないだろ。将来的に国の顔になるAランクを退学にするとか風聞が悪い上に戦力を落とすことにもなるんだしそんな判断をするなんてことはありえねぇよ。
「噂の真偽はとにかく仲良くする相手は選んだ方がいい。FランクにはFランクの、AランクにはAランクに見合った身の程ってものがあるんだからな」
言葉的にはアドバイス的な感じになっているものの、言い方は完全に強制させるような物言いになっているため俺は無視すると、大杉は顔を歪め苛立った様子をみせた。
「なにか言ったらどうなんだ?」
俺が無視したからってもう怒ったのかよ。仕方ない、そんなに言ってほしいのなら言ってやるとするか。
「言いたいことはそれだけか?それだけなら霊装出して準備しろよ。力無き者の戯れ言に付き合う気はないしな」
おもいっきり煽ってやると大杉はさらに顔を歪ませ舌打ちをしてから霊装を展開した。
「ちっ・・積み上げろ鬼灯」
「具象せよ、村正」
互いに霊装を展開し戦う準備を整え試合開始の合図を待つ。そして5秒後に機械音声による試合開始の合図が流れた瞬間大杉は伐刀絶技を発動した。
「
伐刀絶技を発動させたまま地面を蹴り高速で接近してくる。そして目の前で剣を振り上げるとまっすぐ振り下ろしてきたが、俺はその振り下ろしを平然と受け止める。そこへさらに踏み込んで横薙ぎを放ってくるがその攻撃も受け流した。
伐刀絶技の名前の通りなら身体能力が倍加されているというわけか。確かに攻撃速度や移動速度、威力は上がっているが一切の技術もない力任せな攻撃だから受け止めるのは簡単だな。
俺が2度の攻撃を全て防いだことで普通にやったらダメージを与えられないと考えたのか大杉は攻撃の手数を増やして押しきろうと連撃を放ってくる。
「速くて威力が高いだけじゃ攻撃なんて通らねぇよ」
俺は呆れながらも大杉が放つ連撃を一つ一つ対応していく。大杉の連撃もこれまでと同様に技術もない力任せなもので簡単に対処できてしまうのだが、大杉は攻めてこないことに調子に乗って煽ってくる。
「どうしたヒキタニ防戦一方じゃないか。やっぱり雑魚のFランクなんかとつるんでるからAランクのお前まで軟弱になったんじゃねぇか?ほらほら連撃の速度上げてくぞ」
大杉はさらに攻撃の速度や威力を上げていくが技術は一切変わっていないため俺は今までと変わらず攻撃を受け流し捌いている。
「大杉選手の猛攻に防戦一方だ!!比企谷選手このまま押し切られてしまうのか!」
「いえ、それはどうでしょうか。比企谷君の足元を見てみて」
「足元ですか・・・これは!一歩も動いていません!!どういうことなんでしょうか折木先生!」
「単純に足を動かさなければならないほどの攻撃ではないということだと思うわ。それだけ戦闘能力に差があるというわけね」
大体の能力は把握できたな。元々の身体能力は恐らくCランクで能力は一定時間毎に倍率が上がっていく倍加か。となると早いところ反撃に出て勝負を決めた方がいいな。今のところは俺が防戦一方だと思わせてるがそれもそろそろ気づかれるだろうし。
「さて、そろそろ決めようかね」
「あ?決めるだと?笑わせるな、防戦一方の状態で何ができる!逆に俺が終わらせてやるよ!」
そう言って大杉は時間が経ったことでさらに上昇した身体能力で勝負を決めにきた。大杉は一番威力が出やすいであろう上段からの振り下ろしで俺を斬ろうとする。そこで俺は、振り下ろしに対して斜めに刀を入れることで攻撃の威力を弱めると無音で受け流した。
「なっ」
無音で受け流されたことに驚いた大杉は一瞬硬直し、俺はその隙を見逃さず腕に魔力を全て注ぎ込み大杉の左腕を斬った。大杉は腕を斬り落とされた痛みで絶叫しその場に座り込む。
「ガアァァァァッ痛てぇ!痛てぇよ!親父にも斬られたことないのに!!」
そりゃあ自分の息子を斬るようなやつはそうそういないだろ。ていうかガンダムのアムロ・レイのセリフをアレンジするなよ、思わず笑っちゃいそうになっただろ。
「比企谷選手のカウンターが大杉選手にヒット!大杉選手の腕を斬り落としたぁぁぁ!!」
大杉の左腕を躊躇なく斬ったことで観客席が僅かに騒めくが俺にとってはこの程度のことは日常茶飯事であるため既に慣れている。
「今度は無音で攻撃を受け流していましたがこれも実力差なのでしょうか。どう思いますか?」
「えぇ、これも実力差ね。とは言っても余程実力差がないとあんな風に無音で受け流されるなんてことはないのだけど」
ていうか武器を使った攻撃が受け流されたのこれまで一度もしたこともされたこともなかったんだが。本当にこんなことできるんだな。
「クソッ、なんでFランクでも勝てるのに俺は勝てないんだよ!」
「逆に聞くが大した努力もしてないのになんで俺に勝てるって思ったんだよ」
「は?」
率直な疑問を投げかけると大杉は唖然としたような声を出した。
「だからなんで大した努力もしてないのに勝てるって思ったのか聞いているんだが」
まさか努力するだけ無駄なFランクが勝てるならCランクの俺でも勝てると思ったとかじゃねぇよな。
「はぁ!?Fランクが勝てるなら俺が勝てない方がおかしいだろうが!なにを当たり前なことを言ってんだ!!」
マジか本当にそう思ってたのかよ。だとしたら黒鉄以上に伐刀者向いてないだろこいつ。実力差を把握できず圧倒的格上に戦いを挑んで殺されそうなんだが。
「Fランクが勝てるなら他のランクでも勝てるとか言ってるがお前が言ってる勝てるってのは努力してないことが前提の話なんだろう。だとしたらAランクを舐めすぎだろ」
「じゃあなんだ!AランクやあのFランクは努力しているっていうのか!?」
「しているさ。他の奴等が思っている以上にな」
教えてやるよ。本当の努力というやつをな。
次は1週間で出せるといいなぁ