昨日の夜に選抜戦の対戦相手が決まり、次の日はいつもの鍛練を行ってから朝食を食べた。朝食は鍛練を行ったことによって消費したエネルギーを補給するためにバランスよく多めに摂っている。朝食を食べ終えると俺はパジャマから私服に着替えてオルフェさんが宿泊しているホテルへと向かう。
ここで1つ追記すると普段の学校がある日は制服に着替えて、必ず黒鉄とヴァーミリオンの住んでいる寮に行きヴァーミリオンに顔を見せている。俺がヴァーミリオンや黒鉄に顔を見せに行っているのは仕事の1つであるヴァーミリオンの護衛をしていることや黒鉄を気にかけているからという理由があるのだ。
なにせ黒鉄はFランクだという理由で、最近まで本家や学園の教員から嫌がらせを受けていたからな。今では理事長を含め嫌がらせをしていた教員がほとんど解雇されいなくなったが決して黒鉄に対する偏見がなくなったわけではないため昔に比べれば心配してはいないが今も気にかけているというわけだ。
そうこうしているうちにオルフェさんが宿泊するホテルに到着すると俺は受付でオルフェさんの面会を求める。ところでなぜオルフェさんがここに泊まっているのかというと俺の選抜戦を観たいかららしい・・・仕事しろよ。
それはさておき受付で待つこと10分、オルフェさんから面会の確認がとれた。俺はホテルマンの人に連れられてオルフェさんの部屋のある階のロビーへと向かう。
連れられていくのを他の人が見たら面会室に連れていかれる囚人のようにみえるだろうな。俺の淀んだ目はそれだけ犯罪者に見えるということだ、全く笑えないわ。
ロビーに到着するとホテルマンに待つように言われたため俺は椅子に座ってオルフェさんが来るのを待つ。そしてロビーで待つこと5分。普段と同じような服装をしたオルフェさんが出てきた。
「ハチマンくんおはよう~、今日も変わらず目が淀んでるね~。夜しっかり眠れた~?」
「会って第一声が目が淀んでるはないでしょオルフェさん」
「ごめんね~、濁ってるだったね~」
変わってねぇよ、全然変わってねぇ。それどころか悪化してるだろそれ。
会ってそうそうオルフェさんにいじられたため俺はいじりに対してオルフェさんは話をすり替え選抜戦の経過について尋ねてきた。
「とまあハチマンくんをいじるのはこのくらいにして~。選抜戦の初戦だけ観たけどあの後の試合はどう~?ハチマンくんなら全勝してるよね~」
「まあそりゃあな。実戦にも出ていないやつに部隊長が負けるなんてことはありえねぇよ」
今のところは誰一人実戦に出たことがある者はいなかったから勝てて当たり前だ。実戦に出たことがあるやつと戦うときが正念場になってくるだろうな。
この後、学生生活の話や強い伐刀者の話など1時間ほど話すとオルフェさんの方に用事があるため昼で別れた。
次に約2時間かけてやって来たのは親父とお袋の墓だ。前に二人の墓に来たのは再び日本から離れることにした1年前の5月で、毎年必ず墓に来て1年の報告をしている。
「今年になってやっと俺の友達の黒鉄が授業を受けられるようになったんだ。あいつは学校のルールのせいで卒業ができなかったんだが、ルールが改正されて七星剣武祭で優勝さえすれば卒業できるんだってさ。他にもさ、年下ではあるが黒鉄以外にも友達ができたし俺は結構楽しく過ごせているから心配するな」
俺はここに来る度に当時のことを鮮明に思い出し両親を殺した伐刀者を自分の手で殺すと自身に誓っていた。その伐刀者を見つけるために傭兵になり、組織にも所属するようになったのだが今のところ進展はない。
「・・・今も傭兵組織に入って活動しているけど親父とお袋を殺した伐刀者は見つけられていない。2人は反対するだろうけど絶対見つけ出して俺の手でそいつを殺すから見守っていてくれ」
俺は5分ほど墓の前で片膝をつき目を閉じていると再び目を開けて立ち上がり墓場を後にした。
俺は両親の墓がある墓場から2時間かけて覇軍学園に戻ると明後日にある選抜戦の第6戦に向けて鍛練を開始した。まず行うのは目を閉じた状態での素振りで、斬撃の基本である9つの振り方を各100回ずつ行った。この鍛練方法は視覚を遮断することで視覚以外の感覚を鍛えるのが目的だ。
視覚以外の感覚は視界に入っていないものを捕捉するために必要なものだ。そして視覚以外の感覚を鍛えることは不意打ちへの対応力を高めるのにも有用であるためしっかりと鍛練をしたのだった。
この鍛練を約1時間行うと俺は鍛練を止めて自分の寮へと戻った。そして自分の部屋で目を閉じて20分ほど瞑想をしてから、新聞部の漆原と電話で取材の日にち決めを行う。漆原の方でも俺の対戦相手を把握していたようで、日にち決めはすぐに終わり第8試合のある日に取材を行うことに決まった。
その後は夕食を生徒会長の東堂先輩と食べた。夕食は俺が鍛練をしているうちに作ってくれていたようで家庭的な味で美味しかったな。作ってもらってばかりだと悪いし今度は俺が作るか。
とまあ、読者もびっくりだとは思うが俺も料理はできる。なにせ家族なんて小町しかいないし知り合いが経営している孤児院にもたまに顔を出して子供達にご飯をつくることもあったしなって読者って誰だよ。
メタいことを頭で考えながらご飯を食べていると俺の携帯デバイスにメールが来た。メールの相手は黒鉄で内容はこんな感じだった。
『明日プール行くから八幡もどう?』
メールが来たタイミングがご飯を食べている途中だったため内容だけ見ると再びご飯を食べ始める。そして20分程度で夕食を食べ終えるとリビングでゆったりしながら先程のメールを返信する。
『なにしにプールに行くんだよ』
確か今日は日下部や他の女子生徒達に剣術を教えているんだったっけ。ということは明日行くらしいプールも剣術関連のことっぽいな。
『剣術指南の一環でプールに行こうって思ってね。八幡も一緒にどうかな?』
やはり剣術関連のことだったか。まあ、明後日が試合で明日を休息日にする予定であることを考えればプールに行くのはいいかもしれんな。
『別に行くのは構わないがヴァーミリオンは誘ったのか?仲いいんだし誘ったら来てくれると思うんだが』
黒鉄が気付いているのかはわからんがヴァーミリオンは黒鉄のことが好きみたいだし誘ったら喜んで来るだろ。
『それについてはもう大丈夫だよ、ステラはもう誘ったからね』
『そうか。なら俺もプール行くからどこであつまるのか教えてくれ』
『集合場所は学校の校門前になってるよ。9時には出発するからそれまでに来てね』
『そうか、わかった。じゃあお休み』
『うん、八幡もお休み』
俺は黒鉄からお休みのメールが来たのを確認してからデバイスを閉じる。
こうして俺のとある休日が過ぎていったのだった。