「・・・はぁ。アホだろお前」
一輝の口から聞いた説明に理事長は呟いた。なんでもステラが部屋の中で着替えていることを知らずに入ってきた一輝がステラの下着姿を見てしまい、汚名を返上しようとして服を脱いだということらしい。
本当アホだろ。テンパったからってキャストオフするかよ普通。
「あの時は紳士的なアイデアだと思ったんですけどね」
「それ、紳士は紳士でも変態紳士だろ」
本当にどうするんだよこれ。下手したら外交問題になるぞ。
「とにかく黒鉄にはヴァーミリオンを怖がらせた責任を取ってもらうことになるのは確定だ。今回の件は下手したら外交問題になるレベルだからな」
ヴァーミリオンの親父は親バカだからな。向こうにこのことがバレたら絶対外交問題になるな。
「理事長先生と黒鉄、来たみたいだぞ」
八幡の言葉通り扉にノックがされる。理事長が入室を促すとステラが入ってきた。
ステラが理事長室の中に足を踏み入れた後、扉が閉まったのを確認してから一輝は謝罪の言葉を口にして頭を下げた。
「あれは不幸な事故で下着姿を見るつもりはなかったんだ。だけど怖がらせてしまったのは事実だから謝らせて欲しい。ごめん」
一輝からしてみれば、ただ自分の部屋に戻ってきただけなのに、なぜか自分の部屋に下着姿のヴァーミリオンがいるのだ。一輝に非がないのはステラ以外の者は既にわかっているのだ。そして泣いたであろう腫らした目を向けて雰囲気を少し和らげる。
「・・・そう、潔いのね。なら、その潔さに免じてハラキリで許してあげる」
許してはいなかった。なぜハラキリという言葉を知っているのかはさておき、一輝の刑は切腹だった。
「ちょっと待ってよ。譲歩した結果そうなったんだろうけどいくらなんでも命まではかけられないよ」
「そんなこと言われても切腹っていったら切腹よ。それともなに?国際問題にされた上で市中引き回しの末の国民全員によって石打ちにされる方がいいの?それならそっちにするわよ」
国際問題になっても黒鉄はおしまいだな。黒鉄家は黒鉄のことをFランクの恥さらしって思ってるだろうしこれ幸いと黒鉄のことを切り捨てるだろうな。
「どっちも嫌だよ!確かに僕が下着姿を見たのが悪いけどたかがそんなことでハラキリとか・・・あ」
やらかしたな黒鉄のやつ。
「たかがですって!?アタシの下着姿をたかがで済ませるなんて無礼にもほどがあるわよ!もう怒ったわ、あんたみたいな変態、痴漢、無礼のスリーアウト平民はアタシ自ら焼いてあげるわよっ!」
ステラの周囲に炎が出てくる。
「アタシの裸、いやらしい目で見たくせに・・・なめるように見たくせにっ!」
「確かに見たけどあれは」
魔力だけで異能を発現させたか。さすが今年の首席にして平均の約30倍の魔力量の持ち主だな。ってそんなこと言ってる場合じゃねぇな、ヴァーミリオンが能力使ったらここら一体が吹き飛ぶだろうしここは止めるか。
八幡がステラを止めようとしたそのときだった。
「あまりにもステラさんがきれいだから見とれちゃったんだっ!」
「ふぇ!?」
突然一輝が暴露しだすとステラが声をあげた。そしていつの間にかステラの感情を示すように炎は消えていた。
「未婚の女性にきれいとかこれだから平民は・・・」
呟きながらステラがあたふたとしている。
なんでこんなタイミングでラブコメができるんだよ。まあ、とにかくヴァーミリオンも落ち着いてきたしこれなら俺が動く必要はなさそうだな。よし、これでさっきからずっと疑問に思っていたことを言えるな。
「なあ、ヴァーミリオン。アンタが着替えていた部屋な、あそこ黒鉄の部屋なんだが」
「はあ?そんなわけないでしょ!?理事長先生からここがお前の部屋だって鍵渡されたんですけど!?」
あ、これなんか理事長企んでいたな。まさかとは思うが・・・
「そういえば言い忘れていたが黒鉄とヴァーミリオンは同じ部屋だ。所謂ルームメイトだ」
「はあ!?」
やっぱりか。俺と東堂先輩がルームメイトで黒鉄の部屋にヴァーミリオンがいた時点でなんとなくそんな気がしてたんだよな。
「だからルームメイトだ。私が理事長に就任してから実力主義に変わったのは知っているな?だから実力の近い者同士でルームメイトを再編した。互いに切磋琢磨するようにな」
「ちょっと待ってくださいよ理事長。なぜ落第生の僕と主席のステラさんがルームメイトなんですか!?」
黒鉄のその疑問はもっともだ。ただし実力で決めているならこの判断も妥当なものだと思う。
黒鉄は半分ランク詐欺みたいなもんだしな。
「えっ、アンタ落第生なの!?」
「うん。最低ランクのFランクだし、使える異能も身体能力強化だけだし。しかも魔力量なんて平均の10分の1だし」
身体能力強化の上がり幅10倍以上あるけどな。
「そして他の能力値も最低レベルでついたあだ名は
小さく一言付け加えるがステラには聞こえていなかった。
「そしてそれこそが質問の答えだ。黒鉄ほど劣った者はいない、ヴァーミリオンほど優れた者もまたしかりだ」
「それって余りものってことだろ」
数少ないAランクのヴァーミリオンとまた数少ないFランクの黒鉄。二人がルームメイトになるのは当然の帰結というわけだ。
「確かに比企谷の言う通りだな」
「間違いが起こったらどうするんですか!?」
「君達の他にも男女でルームメイトになったやつはいるんだ、嫌なら退学してくれて結構。それともどんな間違いが起こるのかなぁ」
性格悪いなこの人。
「・・・わかりました。ただし話しかけないこと、目を開けないこと、息をしないこと、この3つを守れるなら部屋の前で生活してもいいわ」
「その一輝君死んでるよね!?」
「しかも追い出されてるしな」
「なによ、できないの?」
「できないよ、せめて息はさせて!?」
部屋の前で生活するのはいいのかよ。
「嫌よ!アタシの匂いを嗅ぐつもりでしょこの変態っ!」
「じゃあ、口呼吸するから!」
「駄目よ、アタシの吐いた息を舌で味わうつもりでしょこの変態っ!」
「その発想はなかったっ」
その発想が出てくるヴァーミリオンの方が変態じゃね?
「嫌なら退学しなさいよ!」
「そんな滅茶苦茶なっ」
「落ち着け二人とも。己の運命は剣で切り開くのが騎士道、だろ?」
なにげにかっこいいこと言うな理事長。
「実力で話をつけろってことですか?」
言い合いをやめて一輝が尋ねる。
「ああ。模擬戦をやって勝った方が部屋のルールを決めることができるって寸法だ」
「それは公平でいいですね。そうしようよステラさん」
「アンタはFランクで私はAランク。FランクがAランクに勝てるわけが」
「ちょっと待てヴァーミリオン。受けてやったらどうだ?お前は強くなるために日本に来たんだろ。誰が相手だったとしてもどこかに必ず得られるものはある。必要のない戦いなんてものは存在しないと思うんだが」
「それに勝負はやってみないとわからないし、僕もそれなりに努力してるから」
「・・・私が努力してないみたいじゃない」
ヴァーミリオンのやつ、私が努力してないみたいとか考えていそうだな。
「・・・いいわ。やってやるわよその試合。それなら賭けるのはルールなんてものじゃないわよ。負けた方は勝った方に一生服従、どんな屈辱的な命令にも犬のように従う下僕になるのよっ!いいわね!?」
これは大きく出たな。しかも最初から勝った気でいるとはな。
「は、はい・・・」
「決まったな。これより1時間後、模擬戦を行う」
こうして黒鉄一輝対ステラ・ヴァーミリオンの模擬戦が決まったのだった。
次回はとうとう模擬戦です。果たしてどちらが勝つのか!?