腐り目騎士の英雄譚   作:月村手毬ちゃん親衛隊

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今回は少し短いです


落第騎士VS紅蓮の皇女 ①

「さて、比企谷。お前から見てヴァーミリオンはどのように見える?」

 

 

一輝とヴァーミリオンが出ていった後、理事長室に残った八幡は理事長にこんな質問をされた。

 

 

「初めて見たときこれはAランクで間違いないって思いましたね。体から感じる魔力の質とか平均の30倍の魔力量とかがまさに天才騎士って感じでした。だけど少し宝の持ち腐れだと思います」

 

 

「ほう。それはどういったところがだ?比企谷」

 

 

理事長先生はおそらく宝の持ち腐れに近い状態であることはすぐに把握しているはずなのだがなぜか八幡に質問を返す。

 

 

「自分と同レベルか自分以上の実力者との実戦経験が足りないところですね。ヴァーミリオンはAランクの天才騎士と言われていてそれにふさわしい実力を持っています。そのため皇国の同年代では恐らく敵なしだったでしょう。そのため自分と互角以上の相手との実戦経験が圧倒的に足りないことが宝の持ち腐れって感じですね」

 

 

AランクやBランクは生まれながらにして強者の側の魔導騎士で、他のランクの魔導騎士を正面から打ち破ることのできる存在だった。そのため、八幡も当時はBランクで自分の中では一定以上の実力を持っていると思っていた。しかし、スイスで傭兵として活動していくうちに自分の見ていた世界がどれだけ狭いものだったのかに気づいたのだ。ステラも恐らくは当時の八幡と同じ状態になっているであろうことは経験から推測できていた。

 

 

「となると比企谷は今回の黒鉄とヴァーミリオンの決闘は黒鉄が勝つと考えているのだな?」

 

 

「そうですね。今回は間違いなく黒鉄が勝ちますよ、ヴァーミリオンは確かにランクが高いですけど自分より格上の相手との戦闘経験が少ない。それに対して黒鉄はランクが低いためほとんどが格上。なので実力が近く格上との戦闘経験が多い黒鉄が勝つのが当たり前ですね」

 

 

 

「そうか。それなら答え合わせにいくか。そろそろ二人の決闘が始まるからな」

 

 

そう言って八幡と理事長は部屋を出て闘技場へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

理事長室を出て一人で観客席に向かった八幡は闘技場の観客席に到着した。観客席にはどこから噂を聞きつけたのか学園の生徒がちらほらとやってきていた。

 

 

「皇女殿下と黒鉄くんの模擬戦の話題で持ちきりですね」

 

 

八幡が座る場所を探していると少し離れたところから生徒会長の東堂刀華がやってきて八幡に話しかけてきた。

 

 

「今話題のヴァーミリオンと落第騎士(ワーストワン)の模擬戦ですから。大方ここに来てるのはヴァーミリオンを見たい人たちばかりでしょう」

 

 

八幡の言葉通り二人の周囲からはヴァーミリオンのことがたくさん聞こえてくる。

 

 

やはりどの生徒もヴァーミリオンのことが気になっていたようだな。ヴァーミリオンは歴代最高成績で入学してきたAランク騎士だし気になるのは仕方ないか。

 

 

八幡と刀華が二人で話している間に一輝とステラ・ヴァーミリオンはステージに上がって向かい合っていた。

 

 

「噂は聞いたわ。アンタ、能力値が足りなくて実戦の授業を受けることすらできなかったそうね。魔導騎士を諦めた方が身のためなんじゃないの」

 

 

それは言えてるかもしれんな。黒鉄の顔とか性格からして魔導騎士以外でいくらでも大成できるだろうし。

 

 

「そうかもしれないね。けど、この試合をやめる気はないよ」

 

 

「努力すれば才能にも打ち勝てるって言いたがる口かしら。あなたも」

 

 

才能。それは誰しもが生まれたときから持っている人と人の優劣を決めるファクターだ。魔導騎士が持つ魔力は生まれ持った運命の重さによって決まり、不変に変わることのない才能のひとつとされている。一輝のランクは最低ランクのFで魔導騎士の才能はない。しかし一輝は才能を理由に魔導騎士を諦めようとはしなかった。逆に努力で才能の差を埋めようとしていた。

 

 

「そうありたいとは思っているよ」

 

 

この言葉に今までしてきた努力と、努力で才能を上回ろうという信念が透けて見えた。

 

 

 

「まるでこっちが努力してないみたいに」

 

 

目の前の一輝に聞こえないほどの小声で呟く。

 

 

「え?」

 

 

「なんでもないわ。さあ、始めましょう理事長先生」

 

 

一輝が呟きに反応するがヴァーミリオンは無視して理事長に試合開始の合図をお願いした。

 

 

「それではこれより模擬戦を始める。わかっているだろうが模擬戦は肉体的ダメージを与えず、体力のみを削り合う戦いだ。そのためデバイスは幻想形態で展開すること」

 

 

理事長が模擬戦の準備を始めるように言うと一輝とステラはそれぞれ自身の固有霊装を展開する。

 

 

「来てくれ、陰鉄」

 

 

(かしづ)きなさい、妃竜の罪剣(レーヴァテイン)!」

 

 

一輝は黒色の刀を、ステラは赤い長剣をそれぞれ具現化する。固有霊装は伐刀者の魂を具現化した装備で、様々な形をしている。そして固有霊装には実像形態と幻想形態があり、今回は幻想形態で具現化されていた。

 

『Let′s Go Ahead』

 

 

互いに武器を具現化したのを確認されてから電子音が試合開始を告げる。こうして一輝とステラ・ヴァーミリオンの模擬戦が始まったのだった。




3話目は試合開始前のお話でしたので短めとなりましたが、次の話ではしっかりバトルをやるので文字数がいつもより多くなると思います。バトルを楽しみにされている方は是非見てくださいね。
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