腐り目騎士の英雄譚   作:月村手毬ちゃん親衛隊

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明けましておめでとうございます。今年も腐り目騎士の英雄譚をよろしくお願いします


家族愛と異性愛

 

 

 

「ごめんね綾辻さん。さっきはその・・・ベタベタ触っちゃって」

 

 

 

綾瀬の剣術の矯正が終わり寮までの道を歩いている最中、一輝は綾瀬の身体をベタベタ触ったことについて謝った。

 

 

「ううん。黒鉄くんには本当に感謝してる。それに黒鉄くんの手、ゴツゴツして大きくて、まるで父さんの手みたいでなんだか嬉しかったんだ」

 

しかし綾瀬からしてみれば邪な理由で触られたという訳でもなく、むしろ自身の強くしてほしいという願いに応えるために手を貸してくれたということで触られたことはあまり気にしていなかった。そのため綾瀬はつい余計なことを口にしてしまう。

 

 

「ボクはそういう手、すごくかっこいいと思う。真っ直ぐなにかに打ち込む人は好きだ」

 

 

「えっ!?」

 

 

「むぅぅぅっ」

 

 

綾瀬が発した言葉を聞いて一輝が驚きの声を上げ、ステラは頬を膨らませて不機嫌を露にする。その様子を見て綾瀬は自分が何を口走ったのか理解すると早口で一輝とステラに弁明した。

 

 

「・・・はっ今のはその、はしたない意味じゃないよ!?断じて!人間的に好感が持てるってだけでっ」

 

 

「わかってるから落ち着いてっ」

 

 

綾瀬の慌てようになぜか一輝まで慌ててしまう。そんな二人のやり取りをみていたステラは一気に頭が冷えた。そしてここまでずっと静かにしていた珠雫を見た。

 

 

「シズク悔しくないの?センパイだけイッキにペタペタされて」

 

 

「別に。あくまでも剣術の指導ですし。どこぞの雌豚と違ってお兄様に色目を使ってるわけじゃありませんから」

 

 

「誰が雌豚よ!?」

 

 

黒鉄妹のやつヴァーミリオンには凄い辛辣だな。でも俺ももし小町に言い寄るようなやつがいたら秘密裏に始末することも視野に入れるくらいには黒鉄妹の気持ちがわかる。まあそんなことしたら小町に嫌われるからしないけど。

 

 

「それに私はお兄様が幸せになるなら相手は私でなくても構いません」

 

 

「えっ」

 

 

「その人がお兄様に幸せを与えてくれるのであれば。お兄様を裏切らず、悲しませないのであれば・・・私は喜んで祝福します。最も私以外にそんなことができる人間がいるとは思えませんけどね」

 

 

なるほど黒鉄妹の気持ちはもう既に好意から愛に変わっているんだな。俺の小町に対する家族としての愛と黒鉄妹の黒鉄に対する異性としての愛はまた別物だが、愛を保持している者は総じて精神的に強い。だからこそヴァーミリオンよりも黒鉄妹の方が心に余裕があるのだろう。

 

 

「シズクあんた結構大人なのね。ちっこいクセに」

 

 

「貴方が色々大きいクセに子供過ぎるんじゃないですか?あと足太いですよ」

 

 

「太くない!」

 

 

ヴァーミリオンと黒鉄妹が言い合いをしている間も黒鉄と綾辻綾瀬の話しは続く。

 

 

「ボク黒鉄君に教わればもっともっと強くなれる気がするんだ。だから明日からも一緒に鍛練してくれないかな?」

 

 

「勿論」

 

 

こうして綾辻綾瀬の希望通り明日からも剣術の鍛練を行うことが決まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

そして俺は寮の前で黒鉄達と別れると寮から少し離れた場所でいつもの鍛練を行ってから自分の部屋に戻った。部屋に戻るとルームメイトの東堂先輩が既に学校から帰ってきていた。

 

 

「お帰りなさい比企谷君」

 

 

「ただいま帰りました。今日はいつもと違って帰ってくるの早かったですね」

 

 

「うん、今日は大きなトラブルはなにもなかったから書類に集中できたんだ。だから早く帰ってこれたの」

 

 

前に東堂先輩本人から聞いた話なのだが生徒会は普段学園の見守りやトラブルの仲裁、書類の作成などたくさんすることがあるため帰宅時間が遅くなることがあるらしい。

 

 

しかし七星剣武祭予選の期間中は個人で鍛練することがほとんどになりトラブルが少なくなるため普段よりも帰ってくるのが早くなるのだ。

 

 

「それで一時間くらい前に綾辻さんと黒鉄君が鍛練をしているのを見つけたんだけど、見てたら綾辻さんの動きが前に比べて洗練されていたのが気になってね。その時に比企谷君の姿も見えてたからなにか知らないかな?」

 

 

あれを見られてたのか。まあ鍛練しているところから見られていたみたいだから黒鉄が綾辻綾瀬の足を触りながら矯正をしていたことは知らないみたいだな。てかあれを見られてたら黒鉄の評価は大暴落していただろう。

 

 

「綾辻先輩の動きが洗練されていたのは黒鉄が矯正したからですよ。なんでも綾辻先輩の身体の使い方が男性に適したものになっていて本人に合っていなかったみたいです。それを女性の身体に合った身体の使い方に矯正した結果動きが洗練されたんですよ」

 

 

「それはすごいね、普通そんなこと気づかないよ。しかも矯正までしてしまうなんて」

 

 

「そこが黒鉄のすごいところなんですよ」

 

 

「本当にすごいよ。剣客として一流ってだけじゃなくて指導者としても非凡なんだから」

 

 

東堂先輩も剣客の1人、黒鉄のやったことがいかに非常識なことであるのかはわかっているのだろう。とても驚いていた。

 

 

「それにしても綾辻さん、今年が七星剣武祭に出られる最後のチャンスだけど大丈夫かなぁ」

 

 

「どうして東堂先輩は綾辻先輩が七星剣武祭に出られるのかを気にかけているんですか?彼女が3年生で今回が七星剣武祭に出られる最後のチャンスだからって理由だけではなさそうですけど」

 

 

俺はなぜ東堂先輩が仲良くもない同学年の生徒のことを心配しているのかわからず聞くと、東堂先輩は少し考えてから理由を教えてくれた。

 

 

「う~ん、私もほとんど知らないんだけど七星剣武祭でどうしても勝ちたい人がいるからって話でした。でもそう言ってた綾辻さんの顔はどこか強ばっていたからそんな明るい話ではなさそうなんですよね」

 

 

そうだったのか。本人がそう言っているのならそうなんだろうが顔が強ばっていたというのは少し怪しいところなんだよな。

 

 

 

「それなら綾辻先輩に深く話を聞かなくて正解だったと思いますよ。知られたくないことの一つや二つは誰にだってあるので」

 

 

「そうだね。仲が良くてもそういうのは聞けないしそんなに関わりがないなら尚更だよね」

 

 

「はい、そういうことなんで綾辻先輩の話はここまでにしておきましょう」

 

 

綾辻綾瀬が七星剣武祭に固執する理由はわからないが問い質す必要はないと考えた俺はこの話をここで切った。

 

 

しかしこの時の俺は知らなかった。今日東堂先輩とした話の答えがそう遠くない内に明かされるということを。

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