腐り目騎士の英雄譚   作:月村手毬ちゃん親衛隊

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落第騎士VS紅蓮の皇女③

一輝の放った攻撃がステラの左肩を襲う。ステラは反応できず左肩に直撃する。そのはずだった。

 

 

「やはりこうなったか」

 

 

「どういうことですか比企谷くん」

 

 

八幡の声に東堂刀華が聞き返す。

 

 

「あれを見てみろ」

 

 

刀華は八幡が指差したところを見る。刀華が見たのはステラに直撃する寸前で止まっている刀だった。

 

 

「あれはまさか・・・」

 

 

「そうだ。ステラが常時身に纏っている魔力だ」

 

 

一輝の刀が直撃する寸前で止まっているのはステラが常時身に纏っている魔力が一輝の攻撃を受け止めたからだ。

 

 

伐刀者は誰もが無意識に魔力を纏っていて、魔力量が多ければ多いほど纏っている魔力の量は増える。そして纏っている魔力は障壁の役割も果たし、一定以下のダメージを受けなくするのだ。一輝の魔力量が平均の10分の1なのに対し、ステラの魔力量は平均の30倍で二人の間には300倍の魔力差があった。そのため黒鉄の攻撃はステラの魔力防御を破ることができなかったのだ。

 

 

「カッコ悪いわね、こんな勝ち方」

 

 

「陰鉄が君を傷つけられないとわかっていたんだね。その上で剣撃を挑んだ」

 

 

それも一つの戦い方だぞ黒鉄。これを卑怯だというなら魔導騎士は名乗れないからな。

 

 

「ええ。剣であなたに勝って私が才能だけの人間じゃないって思い知らせるためにね」

 

 

わかる人にはわかるだろ、才能だけじゃないことくらい。わからんやつは才能でしかものを見てないやつだけだ。

 

 

「でも認めてあげるわ。この一戦、アタシが勝てたのは確かに魔力の才能のおかげだって。だから最大の敬意を持って倒してあげる」

 

 

ステラは既に勝ったつもりでいるが、一輝の方はまだ戦闘態勢を解いていない。そのためステラは魔力を集中させ始める。

 

 

「蒼天を穿て、煉獄の炎!」

 

 

ステラが魔力を集中させると地面から炎が吹き出し天井を突き破る。

 

 

「確かに、僕には魔導騎士の才能がない。だけど退けないんだ。今この場を降りるのは、僕を僕たらしめる誓いが許さない。だから考えた、最弱が最強に打ち勝つにはどうすればいいかを。そして至った!」

 

 

その炎を竜の形にすると一輝に向けて解き放った。

 

 

「焼き尽くせ、天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリティオ・サラマンドラ)!!」

 

 

「一刀修羅!」

 

 

一輝が刀を構えると炎の竜が黒鉄を飲み込んだ。

 

 

ステラは炎の竜が一輝を飲み込むのを確認する。

 

 

(今の、なに?)

 

 

しかし攻撃を当てた感じが全くなかったため咄嗟に後ろを振り向く。そこには無傷の一輝がいた。一瞬で背後を取られたことに驚きつつもすぐに冷静さを取り戻す。

 

 

「速くなってる?それに魔力も上がって!?」

 

 

「上がったんじゃない、なりふり構わず全力で使っているんだっ!」

 

 

「だからって!」

 

 

ステラは一輝に向けて炎の竜を放つが避けられてしまう。

 

 

「バカなっ!」

 

 

ステラは一輝に向けて炎を放ち続けるがその攻撃は一切一輝に当たらない。

 

 

「比企谷くん、なぜ黒鉄くんの魔力量が上がっているのでしょう?」

 

 

「上がっている訳ではないですよあれは。黒鉄は人が持つリミッターを自分の意思で外すことで元々持っている身体能力と魔力量を引き出しているようですね」

 

 

 

 

「脳のリミッターは誰もが持っているので外すこと自体はできると思いますが、外せるからといって実際にやるかって言われたら普通の伐刀者ならしませんね。ただ黒鉄はFランクでありながら強くなることに余念がないので、格上と渡り合うためならどんなことでもやってしまうでしょうね」

 

 

魔力が上がったように見えた理由を説明している間に一輝とステラの戦いはほとんど終わっていた。

 

 

「僕の最強を以て君の最強を打ち破る!」

 

 

一輝の渾身の攻撃が今度こそステラの魔力防御を斬り裂く。そしてステラは幻想形態での攻撃を受けた際に発生する精神ダメージによって意識が消失した。

 

 

「凡人が天才に勝つには、修羅になるしかないんだ」

 

 

一輝は纏っていた魔力を解除すると床に大の字になって倒れ息を吐く。

 

 

「そこまで!勝者、黒鉄一輝!」

 

 

この場にいた全員が目撃することとなった。低ランクが高ランクを破ったという快挙を、そして全員が認識した。凡人でも努力をすれば天才に勝つことができるという事実を。

 

 

やはり勝ったのは黒鉄だったか。ヴァーミリオンが黒鉄のことを頭の奥で侮っていたのと格上との戦闘経験が少なすぎたことが敗因だな。

 

 

「さて、今回は勝利したが、次からはヴァーミリオンも油断、慢心がなくなるだろうし厳しい戦いになるぞ、黒鉄」

 

 

八幡は誰にも聞こえない声で呟くと闘技場から姿を消したのだった。

 

 

 

 

 

 

一輝とステラの模擬戦が終わってから時間は経ち、時刻は夕方。ステラは既に気絶から覚めていて夕焼けに染まっている空を眺めていた。そこへ医務室の扉を開けて理事長が入ってくる。

 

 

「ヴァーミリオン、具合はどうだ?」

 

 

「久しく忘れてました。負けるってこういう気分なんですね。あいつは?」

 

 

「1分で全てを使いきる1日1回限りの大技、そんな代物を使ったんだ。お前よりずっと消耗している。まあ、命に別状はないさ」

 

 

「理事長先生、一体なんなんですか?」

 

 

模擬戦中から思っていたことをここで質問をしてみた。

 

 

「なに・・・とは?」

 

 

「とぼけないでください!あれほどの男がFランクなんておかしいわ」

 

 

真剣な眼差しを向けるステラを見ると理事長は説明を始めた。

 

 

「ランクとは伐刀者としての能力を評価するものだ。実戦力・・・つまり剣術や体術は評価項目に存在しない。現状、黒鉄を評価できるシステム自体が存在しないんだよ」

 

 

「でも、落第なんて・・・」

 

 

「はあ・・・色々と複雑な事情があってね」

 

 

その事情とやらを思い返したのだろう。理事長は自分の髪を触りながらため息を吐く。

 

 

「いや、単純にして古典的な事情と言うべきか」

 

 

そして理事長は部屋の窓から外に視線を向ける。

 

 

「ただ言えるのは、何度もチャンスを不当に奪われながら、それでも自分を信じ、自分を高めることを止めなかった・・・あいつはそういう男だということだ」

 

 

そこで言葉を切るとステラの方を向く。

 

 

 

「ヴァーミリオン、今朝君に聞いたな。なぜ留学を望んだのかと」

 

 

理事長がステラに聞いたのは今朝、学校に向かう途中の車の中で質問したことだった。その時、ステラは理事長にこう答えていた。

 

 

『あの国にいると上を目指せなくなるからです。天才という枠の中に押し込められて』

 

 

そのことをしっかりと覚えている理事長は言葉を続ける。

 

 

「とりあえずこの一年、黒鉄の背中を全力で追いかけてみろ。それはきっと、お前の人生において無駄にはならないはずだ」

 

 

そういわれたステラは俯いて考えるのだった。




今回でアニメの第一話の内容は終了です。次の話からアニメの第2話に入っていきます。
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