ファンキルコメディ集   作:荒ぶる異族

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※キャラ崩壊ありです。ご注意!




ヒョウハの日常

 

 

 

あたしにとってスイハは憧れだ。

 

狙いを外さない正確さも。

 

見る者を震わせるほど流麗なその佇まいも。

 

そして、仲間を守る為に得た新たな力も。

 

全部あたしには無いものだ。

 

あたしはあたしだ。アイツと自分を比べなくてもいいっていうのは分かってる。

 

あたしがヒョウハでアイツがスイハだからとか、そういうのは関係ないんだ。

 

上手く言えないけどさ、アイツはアイツだからすごいんだよ。

 

仮にあたしが同じ力を得たとしても、スイハの足元にも及ばない。

 

誰かの為に勇気を振り絞って一歩を踏み出して、誰かの為にと不屈の精神で立ち上がるスイハの姿は、私の思い描くヒーローそのものだ。

 

持ち上げすぎ?

 

そう言うなよ、ヒーローに憧れるのは仕方ないだろ?

 

「見てろよ、絶対にアンタを超えてやる!」

 

アイツがスイハだからじゃない、アイツがアイツだからこそ、あたしはアイツを目指して突っ走るんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・追いつく為に

 

スイハに追いつく為には、今までと同じ鍛え方じゃダメだ。

 

勿論今までしてきた事がムダだったと思ってる訳じゃない。

 

でも、アイツはあたしと同じかそれ以上の決意と覚悟で鍛錬に臨んでいる。

 

この差を一気にひっくり返すには何が必要なんだ?

 

スイハと私の力量を隔てているもの。

 

そっか、手っ取り早いのは…、

 

「なぁ、ラグナロク。あたしも擬装出来ないのかな?」

 

「ムリ」

 

ラグナロクはスタスタと去って行った。

 

「そうか。そうだよな。強くなるのに近道なんてない…。ラグナロク、ありがとな」

 

だから、ラグナロクが凄くイヤそうな顔をしたのは気のせいだ。

 

本編でスイハと敵対してたけど、今ここでそれを持ち出すなんて反則だろ?

 

二次創作でくらい許してくれよ。

 

ラグナロクに「ヤダ」と一蹴された気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・賢さは強さ

 

別のアプローチで鍛える必要がある。

 

がむしゃらに走って、筋トレして、矢を射るだけじゃダメなんだ。

 

「なぁミュルグレス、あたしが強くなる為に必要なものを教えてくれないか」

 

「なんでミュルがヒョウハにそこまでしなくちゃいけないの?どうしても知りたいなら、そうだなぁ…。街を10周走ったら教えてあげる」

 

「10周?100周じゃなくてか?」

 

「…………」

 

ミュルグレスが「この脳筋……」とでも言いたげな目で私を見てくる。

 

「ヒョウハはまず頭を鍛えるべきだよ」

 

「強さと賢さは別だろ」

 

「ミュルはそう思わないけどなぁ…。戦況も分からないおバカさんが強いってヒョウハは言い切れるの?」

 

「む…、確かに…」

 

「まずはカステラを百個買い占めてきて。千円で」

 

「いやいや、普通に考えてムリだろ。どう考えても千円じゃ…」

 

「やっぱりヒョウハは頭が固いなぁ…。そんなんじゃスイハに追いつけないよ?」

 

「……分かった。あたしはやり遂げてみせる!」

 

結局どんなに頑張っても千円じゃカステラは百個も買えなかった。

 

帰ってくるとミュルグレスが正座をさせられていた。

 

あたしを玩具にしてからかったことをニョイ子さんにこっぴどく怒られたみたいだ。

 

「そうか。そうだよな。本当に大切なことは自分で考えるべきなんだ…。ミュルグレス、ありがとな」

 

だから、ミュルグレスが恨めしげな視線を向けてるのは気のせいだ。

 

あたしの方が被害者な筈なのに、罪悪感が湧いてくるよ。

 

おじさんにまけて貰って千円で手に入れた97個のカステラを、ソッとミュルグレスの前に置いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・憧れ

 

アイツの強さに近づくために何が必要なのか。

 

今でもそれは分からないけど、答えを知る方法は考えてみれば簡単だった。

 

スイハに特訓を付き合って貰って直接学べばいい。

 

「スイハ、少しいいか?」

 

「……どうしましたか」(わっ、わわっ、ヒョウハから話しかけてくれるの初めてだ…、嬉しい…)

 

「あたしは、アンタの傍に居てもいいか?」

 

「……」(ふぇ!?)

 

「あたしにとってアンタは憧れでさ。勘違いするなよ!私がヒョウハでアンタがスイハだからじゃない。アンタがアンタだから、もっと近付きたいと思ったんだ」

 

「…私でなくとも良いのではないですか?」(ど、どうしよう!?こ、告白?告白なのかな?)

 

「隊の中にも尊敬すべきすごい奴がいるのは分かってる。でも、あたしにはアンタ以外考えられないよ」

 

「そう、ですか…」(ふぁーー!!!)

 

「あたしに、付き合ってくれるか?」

 

「いいですよ、ヒョウハになら」(きゃーーっ!!)

 

そうして私とスイハは同じ時間を共にした。

 

同じ鍛錬をして、同じ飯を食べる。

 

アイツのことが少し分かった気がする。

 

お風呂で「結婚…、指輪…、いや、まだ…」とブツブツ呟くスイハは少しだけ怖かった。

 

擬装したスイハの特訓は、弓しか使えない私にはぶっちゃけ役に立たない。

 

翌日、「今まで付き合ってくれてありがとな。(アンタの特訓は)私の役に立ちそうにないから、もういいよ」とスイハに告げておいた。

 

「そうだよな。結局あたしはスイハに甘えていたんだ。あたしはあたしだ。あたしだけの力を手に入れて見せる!ありがとな、スイハ」

 

だから、スイハが悲しげな視線を向けてるのは気のせいだ。

 

ラグナロクが親の仇と言わんばかりに睨んできてるのも気のせいだ。

 

気のせいだって言ってくれ。

 

頼むから本編での確執は二次創作(ここ)では無しにしてくれよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・擬装《イミテイト》

 

スイハが「ヒョウハも擬装させてみては?」とラグナロクに頼み込み、渋々といった様子で了承してくれた。

 

ラグナロクの剣幕がすごくて、擬装できたのかよとは言えなかった。

 

剣、剣以外ありえない…、とブツブツ呟くスイハを尻目に、自分の中の強さを思い描いて叫んだ。

 

「擬装《イミテイト》!!」

 

擬装は武具の本質を知り、武具種という枠を超えて想いを形にする力だ。

 

結論から言うと、結局あたしは弓のままだ。

 

「やっぱり、こうなるよな…」

 

あたしの弓は、スイハの弓に変化していた。

 

擬装したからといって、武具種の枠を超えれるというだけで、必ずしも武具種が変わる訳じゃない。

 

これがあたしの願った力。

 

「ごめんな、スイハ。あたしはまだアンタに未練があるみたいだ」

 

「わ、私の弓のことは私が一番知っています。私との関係を考え直してみませんか?」

 

「スイハ……」

 

自分だけの力を手に入れると言った傍からカッコつかないけど…、それでもスイハの気持ちが嬉しかった。

 

私は再びスイハと特訓することにした。

 

スイハは擬装を解き、弓の特訓に付き合ってくれた。

 

距離が近過ぎるような気がしたけど気のせいだ。

 

「なぁ、スイハ…。これは私のワガママだけど、アンタは私の目標だ。アンタさえ良ければ、ずっと今の関係(ライバル)でいてくれるか?」

 

「勿論です」(やったー!恋人同士だーっ!)

 

決定的な認識の齟齬があった様な気がしなくもない。

 

ま、細かいことは気にしてもしょうがないよな!

 

「これからも宜しくな!」

 

「ええ」

 

ラグナロクが歯軋りしながらあたしを見ているのは気のせいだ。

 

気のせいに違いない。

 

雑念を振り払うべくスイハとの特訓を楽しんだ。

 

 

 

おしまい。

 

 

 

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