天地のつがいとハンターふたり   作:生姜

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人に想いを

 

 

 秘境、と。

 フォンロンの遺物群 ―― 通称「塔」を、ギルドマスターはそう呼んだ。

 

「いいのですか? 世間にあれを公開しても」

 

「時は来た、と言っておったよ。ハンターという職は黎明を駆け抜けた。これからは革新の時代じゃて。明らかな害が無い項目については、隠すこともあるまいよ」

 

 大衆酒場の受付嬢とやりとりをしながら、小柄な竜人は書類仕事を着々と片づけてゆく。彼は大老殿に通うに至らぬ、下位ハンターなどを担当する管理職である。ハンターが職として場を広げているからこそ、新規や顧客の拡大は大事にしなければならない。故に、ギルドに集まる書類は秒単位で山を成すものではあるのだが。

 

「ああ、そうそう。聞きましたか? 秘境に現れた希少種の火竜。この間の討伐を経て、学術院が解体を請け負ったそうです。正式に金のリオレイア、銀のリオレウスと認定されたそうですよ」

 

「ほう? 見た目だけではなかったか。にしても『亜種』ではなくわざわざ『希少種』と呼ぶ辺りに、ロン坊どもの意地の悪さは見えるがの」

 

「ふふ。まぁフラムさんもイリーカさんも、報告でてんやわんやでしたからね。あの発見の後は。詩人さん達が早速詩を作っているみたいです。金の月、銀の太陽って。詩に映えるお話ですものねぇ」

 

 遍くモンスター。遍く秘境。今。ハンターが世界に広がってゆく感覚を、ギルドマスターは確かに感じている。かつてのココットの英雄の活躍により良くも悪くも大衆に認知され、ハンターズギルドという公的な機関が設立され、ドンドルマという街を造るに至って。やっと、やっとのことだ。

 それら流れの中には、かつてこのドンドルマにおいてギルドマスターと共に志を掲げた同志も数多く居る。伝手やお願い事には事欠かない。ハンターの需要があるのは良い事だと、彼は割り切ることにしているが。

 出来合いの仕事を端から片づけていると、雨が酒場を叩き始めた。雨粒は大きいようだ。板張りの壁をばちばちと打ち付ける音がする。

 その音に紛れて、数人のハンターが入り口を潜ってくる。

 

「―― やあ、ギルドマスター。久しいな」

 

「オヌシは……ふむ。良いのかい、この時期にここへきて?」

 

 先頭に立ち、ギルドマスターへと近寄ったのは……艶やかな甲殻を持つ甲虫を腕に留まらせ、雨粒を滴らせながらも甘い香りを漂わせた、帽子を目深に被った男。その後ろに。

 

「ん」

 

「主殿、拭きものをどうぞ」

 

「……ふふ。アァ、嵐に濡れて塗れたドンドルマも、綺麗だと思うの……」

 

 警戒色に塗れた仮面を被る、子ども。甲斐甲斐しく外套の雨粒を払うアイルー。そして、真白いバサルモスの甲殻によって覆われた鎧を、なまめかしく雨に晒した少女。

 これら3人の先頭に立り、男は、彼または彼女らを少し見やって。

 

「少し、相談があってね。彼と彼女に師匠をつけてやりたいと思うのだが」

 

「それは今追われる立場のオヌシが、元凶のひとつであるこの街へ寄ってまで成さねばならぬ事なのかね」

 

「はは。それを言われると弱い。ギルドマスターには適わぬよ」

 

 男は周囲を見渡す。人影はない。今現在、彼らは酒場にとって唯一の客である。

 

「皆出払っておるし、オヌシが入ってきたからには見張りも立たせたよ」

 

「助かるな」

 

 ギルドマスターが黒煙草を差し出す。長年来の付き合いである男は頬を緩ませつつも、両掌でそれを遮った。

 

「煙草はやめたんだ。虫に悪い。それにそもそも、黒煙草は肺の動きを悪くするのでね。気は晴れるが、俺も年だもんで……」

 

 言いながら、男は後方でやんやと騒ぐ子らを振り返る。彼らへ与える影響を憂慮しているのは明白だ。

 男は唇のふちを指でなぞり、見抜かれているであろう思惑から逸らすように。

 

「それよりも、師匠だ。あの子らには才がある」

 

「才とな?」

 

「ああ。狩人としても、鍛冶としても、術士としても。子どもというのは凄いな。俺などにも、沢山の夢を見せてくれる」

 

 数多くの「人」を見てきた男だ。ギルドマスターとしてもその目と感覚は十分に信用している。

 ただ。ここまで直接この子らを引っ張ってきた男が、敢えてここで師匠をつけるという事は。

 

「―― 正直に言おう。ロンから忠告がきた。どうやら俺は、あれの『試し』にされているようだ」

 

「ふむぅん? その結果がこの嵐か」

 

「そうらしい。半信半疑ではあるが、ここまで追い回されては否定する理由もない。筋が通っているのはロンの方だ、畜生め」

 

 近しいからこその悪態を、男は吐き流す。

 ギルドマスターは男のその笑顔を苦笑しながら、副流煙を流さぬよう、換気扇の側に向かって煙を吐き出す。木枠の窓を揺らす雨粒は、更にその勢いを増しているようにさえ思えた。

 男は苦々しげに、ギルドマスターから出された酒で唇を湿らせる。

 

「多分俺は、落ち着くまではもうドンドルマには来られない。けれど彼らを腐らせたくもない。だから飛びっきりの師匠達を、彼らにつけてもらいたいんだよ」

 

「……はぁ。判ったぞぃ。ワシが請け負おう」

 

「ありがとう、ギルドマスター」

 

 言って、今度こそ酒を喉に通した。

 雨と風が強い。が、真昼間であることも相まって、遠征などを終えて狩猟から帰還するハンターらも増えてくる。厄介な話は既に終えているため、貸し切りにしていた酒場もすぐに開放。続々と人が集まり始めた。

 いつもの喧噪を取り戻した大衆酒場。男が料理の注文を通していると、入り口を潜る人波その中に。

 ひと際目立つ、ひと組の、ハンターの姿が目に留まった。

 

「おや。あれが噂の?」

 

「そうじゃの。イリーカとフラム。上位から飛び出して、ランク7。押しも押されぬ現在の、弓の筆頭ハンターじゃ。……彼らは今までの弓とは違い、複数素材を組み合わせて作られる『強弓』というものを扱うでの。工房の者どもにも、ハンターにも、新風を吹き込んでくれたのよぃ」

 

「それは素晴らしい。あのハイランドが無気力から脱して、ようやく躍起になったのはこういう訳か。納得したよ」

 

 男は知り合いの名を挙げながら嘆息する。話題に出された筆頭ハンターのコンビは男が銀の、女が金の竜鱗の強弓をそれぞれ背にしていた。あれは目立つに違いない。とはいえ、歩く姿は堂々としている。ふたりとも、衆目に晒されるのには慣れているようだ。

 注文していた料理が届く。主菜はリュウのテールを煮込んだビーフシチュー。それに少し硬めに焼いたあらびき粉の白パンだ。男の大好物であるそれらを口に放り込んでいると、しかし、席に着いた子どもらがじっとしている事に気が付いた。

 料理を口に運ぶことを忘れたかの様に見つめる視線の先。―― フラムとイリーカが、男らの隣の机に着く。酒場の隅の、薄暗い一角なのにも関わらず。

 

「隣を宜しいでしょうか」

 

「だいじょぶです?」

 

 2人は男の顔色をうかがいながら腰を下ろす。断る理由はない。強いて言えば有名人が来たことで此方にも視線が向けられるが、この2人が本拠としているドンドルマの酒場に来るのはいつもの事だ。最初は向けられていた好機の視線も、既にかなり薄まっている。問題はないだろう。

 男がどうぞと掌を差し出すと、2人は安堵の表情で礼を言い、給仕アイルーに注文を飛ばした。

 手持ち無沙汰。そこで子どもらと、ふたりの視線が交錯する。

 

「―― 君たちは」

 

「へぇ。その年でハンターなんだ。凄いね!」

 

 ばちりと交わされた視線の後、驚きの表情でふたりは瞬いた。少年と少女の側も、ぺこりと頭を下げた後、思い出したかのようにおずおずとシチューに手を伸ばす。

 折角の機会である。男はふたりへ話しかけることにする。自身の名を告げておいて。

 

「初めまして、おふたり共。お疲れ様です。お二方のドンドルマへの貢献度合については、よく耳にしています」

 

「……貢献出来ていれば嬉しいですけれどね。ですが、いや。貴方程ではないでしょう」

 

「うん? フラム、この人の事を知っているの?」

 

「ああ。知っているとも」

 

 有名な人だ、とフラムは答える。イリーカは早速出されたお通しにフォークをつけつつ、乾杯。酒にも口をつけている。

 どうやら知られているらしい。若干のばつの悪さを感じつつギルドマスターを見れば。

 

「このふたりについては心配はいらんじゃろ。立場はむしろおヌシの側じゃぞぃ」

 

「そうですね。そこについては安心してください。僕とイリーカは、あちら側のギルドに与するつもりはありませんから」

 

「あぁ、そういう人なんだ。……なら、そうですね。私も同じです、フラムと。出身はどうあれ、私達はドンドルマのハンターとして立場も持っていますから」

 

 その立場を得るために駆け回ったのだという事も、男は十分に知っていた。それら尽力の末に、遂には金銀火竜の討伐までをも成しえたのだから。

 幾つか雑談を挟む。男が獣竜種という括りの話や、自らが扱う棍の話などをしていると。

 どうやら子どもらは、ふたりの持つ強弓に興味があるようだった。視線がそこから離れない。

 

「キミ、これを近くで見たいのかい」

 

「ん。いいの?」

 

「いいとも。ほら」

 

 フラムが下した仮面の少年の前に立て掛ける。銀火竜の強弓、「天開きヒュペリオン」だ。同時にイリーカが金火竜の強弓、「月穿ちセレーネ」を立て掛ける。少年と少女とアイルーは近くによって、夢中で眺め始めた。構造だの玉の使いどころだの。年相応ではない会話ばかりだが、それもまた彼らにとってはいつもの事だった。

 男は嘆息しつつ、改めてふたりに向き直る。

 

「ありがとうございます。子どもらの願いを聞いてくれて」

 

「いえ。後進のために出来ることはしておきたいですからね。この子らもハンターとして十分な力量と素養を持っている様子。であれば、これくらいは」

 

「ただの子ども達じゃないのは、私にだってわかりますよ。装備と身のこなしを見るだけでもね。……気配的には奇面族と、古部族の子かな? それに、王国のアイルーらしいかも」

 

「詮索はあまり良くないよ、イリーカ」

 

「やー、判ってるよ。フラム!」

 

 小気味よいやり取りが続く。はた目にも仲が良いのだろうと思えるふたりだ、と当たり前の印象を男は受けた。

 しかし、ふたりが兜を脱いだ所で多少の疑問が首をもたげる。それぞれの兜に覆われていた頭髪、その色が ―― 両者共に。くすみなく底深い、真銀であったからだ。

 男は生来の学者気質から、無意識に目の色を確認する。同じ青。肌の色は。日に焼けているが、地は共にリーヴェル人らしい白。

 

「そちらもあまり触れてやるでないぞぃ、ジョン。故にこそ(・・・・)フラムもイリーカも姓を捨て、彼の地を離れここにおるのじゃから」

 

 ギルドマスターが、少年少女が立った後の席に腰かける。

 不躾だったかと男が頭を下げるが、ふたりは気にしないと首を振る。

 

「大丈夫。貴方は僕たちの事を案じてくれたのでしょう。嬉しく思う事はあれど厄介だとは思いませんよ、僕もイリーカも。そもそも髪の色と目、肌の色だけでそこ(・・)へたどり着くことが出来るのは、あなたくらいのものでしょう。いや、グントラムも最近は民俗学に傾倒しているんだったか……?」

 

 フラムが話題を逸れてぶつぶつとつぶやき始める。イリーカは彼の様子に嘆息しつつ、男に向けて続ける。

 

「……そうあれと、育てられてしまいましたからね。私とフラムは。でも、だからといって、生きていけない訳じゃない。こんな私達のままでも、道を切り拓くが出来るんだって。そう教えてくれたのは、ハンターの皆やギルドマスターさん達なんですよ」

 

 苦笑しながらふたりは、そう話してくれた。

 フラムは右手の第5指が無く、鼻の筋が歪つに。イリーカは左の肩の焼け爛れと剥がれた爪が、それぞれ痛ましく傷として残されている。男の様な観察を主とする職でもない限り、似通った容姿よりもこれら傷跡などの方が目につくのが世間というものであり、いたずらに注目される様なことはないらしい。

 せめて口直しをと、酒と食事に口を付けつつ、男から話題をふる。今は子どもらに師匠をつけるためにドンドルマへ立ち寄った事。……それはフラムとイリーカの二人でも申し分ないのだという事を当たり障りなく話すと、ふたりはしばし悩み。

 

「実績はありますが、僕たちが師匠になるのは避けた方が良いでしょう。理由は2つ。ひとつめは、僕たちがやっかいな背景を持っていること。これは彼も彼女も、避けたい事態であるはずです」

 

「そうですねぇ。ミナガルデの人達に目を付けられている同士、それを子どもたちにまで背負わせたくはないですよね」

 

 男が同意する。口一杯に食事を頬張ったイリーカをよそに、フラムは唇を親指でなぞり。

 

「ふたつ。僕たちは殆ど強弓にしか触れていないという事。僕たちがこれを選んだ理由は、ハンターという職からほど遠いリーヴェルにあっても習得が可能な、昔ながらの遠距離武器だったという点が大きいですが……この子たちに教えるなら、もっと手広いのが良いと感じます。ちょうど手を持て余し始めて、かつ組織に属する立場として教導の経験も必要になった……ランク7の皆に僕らから声をかけさせてもらいますよ。弓に関しては、ハイランドさんにお願いすれば良い」

 

 現在はハンターランク最上位に位置づけるリンドヴルムやグントラムなる人物が勇名を馳せている。ギルドマスターからの援助もあるが、フラム達が直接話してくれるならばこれ以上なく心強い。

 ただ、他のハンター達はともかく、ハイランド。彼女は引き受けてくれるだろうか、と一抹の不安がよぎる。

 

「彼女に張り合われている僕たちから頼まなければ、あるいは。でも ――」

 

 フラムが子どもらを見る。仮面の被り者も、白く高貴な少女も、お供のアイルーも。未だ火竜の番を模した強弓に夢中なようだった。

 イリーカがフラムの後を引き継ぐ。子どもらが強弓を弄る、その様子を見ながら。

 

「この子たち、とっても面白いですよね。若過ぎる(・・・・)し、その割に知識もあるし、そもそも感受性が豊か過ぎる(・・・・・)。私とフラムの弓に怯えず、恐れず、喧嘩もせずにいられるなんて。最初はギルドの秘蔵っ子かなぁと思ったけれど、ギルドマスターの反応を見ているとそうでもないみたい。同じことを思ってる、でしょ?」

 

「そんなに顔に出るかのぅ」

 

「ふふっ! 長い付き合いですからね、ギルドマスターとは」

 

 2人して笑い合う。言葉の内容それ自体には、フラムも同意した。どうやら彼女の感性を信頼しているらしい。

 男も、師匠探しを手伝ってくれるならばと。子どもらの境遇についても掻い摘んで説明する。幸いにも酒場の隅、ギルドマスターの真ん前である。漏洩の心配は、注意さえしていればないだろうと。

 

「成程。血統という訳か。ですが、なおさら僕たちが師匠を務める訳にはいかなくなりましたよ」

 

「凄い環境に居たんですね、2人とも。けれど……そういう子たちだからこそ、むしろハイランドさんは興味を持ってくれると思いますよ?」

 

 確かに。イリーカの言う通りかもしれない、と男は思い直す。あのハイランドならば。奇面族の少年が持つ多種多様な調合および道具の知識や、少女の持つ武器防具に関する深い知見には興味を示すであろう。

 特に悩まず真っ直ぐ合わせてみよう。それで不足はないように思えた。男が礼を言って頭を下げると、フラムもイリーカも手を軽く挙げて食事に戻った。

 しばらくすると食べ終わる。イリーカとフラムが机に置いていた弓を背負い直し、子どもらが礼を言って。酒場の給仕に多少かさを増したゼニーを支払い。

 

「それでは失礼します ―― 筆頭書士官殿」

 

「キミ達もドンドルマに居るなら、会う機会もあるよ。また今度ね」

 

 ふたりは去って行った。少年と少女とアイルーが手を振り送るその隣。男とギルドマスターも、煌めく竜の強弓が番のように背負われた……頼もしさを感じるその後ろ姿を、見送った。

 

 どうやら話は滞りなく通ったようで、少年と少女の師匠はあっさりと決まった。唯一心配が残っていたハイランドも、快諾をしてくれていた。いずれも現役最高峰のハンターと鍛冶師であり、男としてはあのふたりには感謝するばかりだ。

 

 フラムとイリーカもそれから、希少種の発見討伐に勝るとも劣らぬ功績を幾つもうちたてたようだ。男の住まう辺境にまでそれら風聞が届く度、耳にする度に笑みが浮かんだ。近縁の者らでひっそりと催されるふたりの祝宴には、()報と祝いの品を送らせてもらう事にした。

 

 そうして更に時は流れ。

 男が離別を終え、逃げ込んだ火の国の蔵書を漁っていた時の事である。

 現在の研究内容とは乖離しているのだが、ひとつの本が目に留まった。元来の移り気な興味から……あのハンターふたりの生い立ちやらを思い出しつつ、男はそれを読み始める。

 

「―― ジョン? 何を読んでいるの?」

 

 部屋の扉が開き、ひとりの女性が近づいてくる。

 古書が埃をかぶったまま置かれている区画にも関わらず、しずしずと。衣類は質素ではあるが宝飾品によって飾られ、髪は蚕糸の様にするりと空気に流れ。

 男は開いた本の表紙を見せながら、息を一つ吐き出す。

 

「姫君か。……なに、昔話の本なのだよ」

 

「あら。面白そうですね」

 

「そうかい。これを面白そうと言えるあたり、君達火の国の王族はだいぶん特殊な感性をお持ちだ」

 

「ふふっ。でも、面白そうと思っていなければ残さないですよ。こういう本なんて」

 

 女性は男の隣に腰かけて、古びた本に書かれた文字列を覗き込んだ。

 かつての旧王国の特権階級について描かれた、創作のような、童話のような、告解のような、禁書のような。何とも言え難い雑書きであった。貴族間の間柄や決め事、慣習、信仰 ―― 血筋の純潔、または濃淡。この内容が事実だとすれば、その中で育ったふたりの苦労が(しの)ばれる。

 実際にそうであるのかは、どちらでも。物事の正誤に興味はない。想えることはただひとつ。

 

「それよりも。鍛冶の竜じいから、この間に受け取った遺物(・・)についての報告が来ているのですよ」

 

「……そうか! いや、すぐに受け取りに行こう」

 

「父様たちも一緒に聞きたいらしいので、謁見室ではなく奥の部屋だそうです。ご一緒に行きませんか?」

 

「ああ。感謝するよ、聡明な君 ――」

 

 男はドンドルマのある方角を……願いを込めて見つめて後、女性を追って席を立つ。

 火の熱が天を焦がせど、空は未だ青く、変わることはない。

 

 空の向こう。ドンドルマに花弁が舞う。緑と赤の旗が寄り合いなびく。

 日は昇り明るく輝き、端から端まで雲は無く、どこまでも蒼穹は広がって行く。

 本日はハレの日。祝いに相応しい吉日である。色とりどりの散り紙と、自らが託した子どもらを含む……大勢の人が浮かべた満開の祝福に囲まれて、ふたり。

 笑顔を浮かべた彼と彼女の姿を思い浮かべ。どうか幸せのあらん事を、と男は祈った。

 

 

 






 これにてお話を、本当の〆とさせていただきます。ご拝読をありがとうございました。
 ネタ晴らしと、他の書き物との繋がりをここに書いておこうかなと思います。昔のあとがきっぽい感じで。短編だしいいですよね(忍び足。

 作中通してのコンセプトは「同じ」と「相似」。
 まー、あれですね。面倒な……。

 構想したのはさかのぼって、弓について調べた時に、その部位の名前がやたら恒星だの衛星だのと結びついているのに不思議な縁を感じまして。そこから金銀夫妻やらなんやら、ネタを混ぜ込んで形にしたのが此方になります。
 一言でも面白かった、疑問等々。あれば気軽に感想などにお書きくださると、励みになると共にとても嬉しく思いますので、宜しくお願いしますね。

 率直に。
 3話目で登場させたのは、私の他書き物「閃耀の頂」において登場するヒシュ、姫君、ネコの過去編であります。「男」は筆頭書士官、ジョン・アーサー。一応原作に準拠する人物。ハンター大全なるキワモノにその存在だけが示唆されるという形で登場する、ロマンの塊なお人なのです。
 私の書き物で、こちらの短編とリンクさせたのは1章最終話。とある筆頭書士官の手記の部分です。私のはとっても冗長な読み物ではありますが、気になったなら手に取ってくださると狂喜乱舞。コーヒーでもお供に、暇な時間にお使いください。ダイレクトマーケティング!

 金銀夫妻について。
 タイトルにおいてもじらせて頂いた「天と地の怒り」は、モンスターハンター初代における最後の壁。闘技場において希少種夫妻の同時狩猟を試みる、難関クエストの名前であります。初代からプレイだけはしている私としては印象深いもの。同時に、「希少種」という在り方は以降もモンスターハンターにおける隠しボスのような扱いとなり、連綿と受け継がれてゆくこととなります。
 希少種、って亜種の別名らしいんですけれどね。流石に亜種と括るには異質だったのでしょう。他に印象深いのはティガレックスとか、ナルガクルガとか。看板モンスターが変質しているイメージは、ありますね。最近ではおそらく二つ名個体というのも、固有な感じで使われていたりします。ブラキディオスさんもそっち系統ですね。
 これらイメージを背景にお借りしつつ、実際に相手取ったのは火竜の通常種のつがい。モンスターハンターを題材とするなれば一度は描いておきたかったのですよね! 凄いうっきうきでした。ランポスに無情アタックくらってますけど。

 ハンターふたりについて。
 一応どうとでもとれる内容にはしましたが、あちらの方々の歪さに触れようかなと思い、こういう形にしました。これ以上の深さで、設定だけでも、と詳しく語って欲しい奇特な方がいるのであれば何かDMでもくださればと……(苦笑。
 話の流れとして火竜たちを討伐して終わり、とするにはあっさりとし過ぎていて。ひとひねり欲しいなと思った結果が、このザマであります。ごめんなさい(土下座。
 武器を弓で被らせたのは、理由はあるようなないような。フラムとイリーカは常に共にあり、だからこそ「準備も一緒にしちゃった方が早い」と考えた流れ。まぁ「同じ」というコンセプトを持たせたかったのはあります。作中で語らせたように、首都で学べた武器は少なかったというのもありますけれどね。この時期にあちらにあった武器は弓と片手剣、大剣(ハンマー込み)くらいのものと妄想しています。勝手に。

 その他の雑書きはついったの方にでも。
 こちらにばーって書いたので少ないとは思いますけど。

 では、では。
 モンハン二次創作を愛するすべての方に、私から出来る限りの感謝と愛をば、込めさせていただきまして。
 またいずれ、お会いしましょー! のしのし!!


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