魔導物語 Seven Catastrophe   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

アルルは魔導世界でルルーとシェゾと再会した。
腐れ縁トリオの復活に喜ぶのも束の間、魔物になった人間が襲い掛かる。
魔物になった人間を倒し、アルル達はやるせない気持ちになり、
同時に、カタストロファーセブンを許せないという気持ちになった。


21「破壊するもの」

 アミティとエッジはプリンプ魔導学校を後にし、次に何をするべきかを考えていた。

「次の敵は倒したし、どうしようかな」

「戦ってばかりで疲れるから、休もうか」

「そうだね~。あたしももう、くたくたになっちゃったし~」

 戦うだけでなく、時には休息も必要だ。

 肉体や精神に負担がかかれば、この先、世界を救う事が極めて困難になる。

「まだ安全な場所は残っている。ここに向かおう」

「知ってるの? エッジ」

「オレについてこい」

 

 エッジに連れられてアミティが辿り着いた場所は、プリンプタウンホールだった。

「ここなら、安心して休める」

「魔物が襲ったりしてこないの?」

「一応、確認だけはしておこう」

 エッジは魔力を集中し、プリンプタウンホールにかかっている魔法を確認した。

「……ああ、大丈夫だ。ここには魔物が来ない結界が張られている」

「よかったぁ」

「……うらめしや」

―びくぅっ!

 いきなり耳元で少年に囁かれたエッジが驚く。

 エッジの近くにいた少年は幽霊のレイくんだった。

「ちょっとレイくん、ユウちゃんがいないからって初めての人を驚かす事はないでしょ?」

 アミティがレイくんを注意し、レイくんは小声で「ごめん」と謝った。

 エッジは彼を初めて見るようでアミティに誰なのかを聞こうとする。

「待ってくれ、アミティ。ユウちゃんとか、レイくんとかって誰なんだ?

 あの幽霊がレイくんなのか?」

「そうだよ。ユウちゃんとレイくんは双子の姉弟なんだ。

 今は、ユウちゃんはいないし、このレイくんもあたしが知ってる彼じゃないけど」

【よろしくお願いします】

 レイくんはプレートに文字を書き意思表示をした。

「キミとは初めまして、といったところだな。オレはエッジ、剣士をしている。よろし……あ」

 エッジはレイくんと握手しようとしたが、その手がレイくんをすり抜けたため叶わなかった。

「すまんな、キミの手を握れなくて」

【いいんだよ。きみとこうしてお話できるだけで、ぼくは嬉しいから】

 レイくんは幽霊だったので、最初、エッジは危害を受けるかと思っていた。

 しかし、その様子を見て無害であると分かったためエッジは気さくに彼と話す事ができた。

【それで、何か用?】

「あたし達はカタストロファーセブンって敵と戦ってるけど、ちょっと疲れちゃって。

 ここで休ませていい?」

【いいよ】

「ありがとう!」

「よし、休息といこう」

 レイくんの言葉に甘えて、アミティとエッジはしばらくの間、

 プリンプタウンホールで休む事にした。

 しかし、その裏で暗躍する者がいる事に、三人は気が付いていなかった……。

 

「よぉし……お前を葬ってやるよ」

 プリンプタウンの路地裏で、金の瞳が光っていた。

 その周囲には、不気味な赤い光がちらついていた。

 

「エッジの作った焼きそば、すっごく美味しいね!」

「一応、材料とかは店で買ったけどな」

 アミティとエッジは、焼きそばを食べていた。

 この焼きそばはエッジが作ったものであり、その味をアミティが絶賛する。

 レイくんは物を食べる事ができないため、二人を羨ましそうに見つめている。

(ぼくも、身体があったら、きみ達みたいに食べ物を食べられたのに)

 しかし流石に乗り移ろうなどという勇気は、レイくんにはなかった。

 ユウちゃんがいたら、平気でアミティ達に乗り移りそうだが……。

「エッジって、男なのに料理が上手いんだね」

「娘は料理が大雑把すぎるし、そもそも妻は料理をした事がない。

 だから食事はほぼ全部、オレが担当した」

「下手なの?」

「下手じゃないし、味は悪くないけど……う~ん、ただ材料を入れただけとか、

 一言で言うと『ワイルド』な料理だ」

 ルルーは、今はミノタウロスと離れているため、一人でサバイバル生活をしている。

 なので、料理は味自体は悪くないが、調理方法がまともではない。

「色々大変だねぇ……」

「……だな」

 暢気に平和に焼きそばを食べるアミティとエッジ。

 しかし、そんな平和なひと時は、次の瞬間に断たれた。

 

きゃーーーーーーーーーーっ!!

 遠くから、少女の甲高い悲鳴が聞こえてきた。

 彼女の声は、レイくんにとって聞き覚えのあるものだった。

「その声……ユウちゃん!?」

 姉のユウちゃんの悲鳴を聞き、

 レイくんは飛び出そうとするがアミティが「待って」と制止する。

「ユウちゃんが危ないのに……」

「キミがいなくなったら、ここを守れる人がいなくなっちゃうよ。あたしとエッジに任せて」

「でも……」

「大丈夫だ! オレは強い」

「あたしも魔法使えるから!」

 アミティとエッジは自信満々に胸を張る。

 二人の堂々とした態度にレイくんは勇気づけられ、「分かった」と小声で言って頷いた。

「声はどっちの方から聞こえたの?」

「あっち」

「つまり、オソロ墓地の方だね! 行こう! エッジさん!」

「ああ! ……アミティ、さんはいらないぞ」

 

 ユウちゃんを助けるため、オソロ墓地の方に向かったアミティとエッジ。

「一体どこにいるんだろう……」

 アミティがきょろきょろと辺りを見渡していると、エッジが彼女の前に出て剣を構える。

「ど、どうしたのエッジ?」

「待て……敵がいるぞ」

「え、敵って……うわぁぁ!」

 アミティとエッジは既にゾンビに包囲されていた。

 ゾンビは生ある者への憎悪のみで、アミティ達に襲い掛かろうとしていた。

「バーストブレイカー!」

 エッジは剣を振って気を敵に叩き込み、気を破裂させて周囲の敵を巻き込む。

 ゾンビはまとめてダメージを受けるが、感覚を持たないゾンビは怯まずに突っ込んでいく。

ウガアァァァァァァァァ!

「うわあぁ!」

 油断したアミティがゾンビの拳を受けてダメージを受ける。

「アミティ!」

「力が強いし、臭いよ……」

「ゾンビはもう死んでるからリミッターが外れてる。だから、恐れずに突っ込んでいく。

 動きは鈍いがタフだから、一気に強い攻撃を当てて倒せ!」

「うん! アクセル、アクセル、フ・フ・フレイムビロウ!」

 アミティは強力な炎の波をゾンビ目掛けて放った。

 炎はゾンビを飲み込み、まとめて火だるまにし、ゾンビは身悶えして動きを止める。

 アンデッドは炎属性に弱い事を利用した攻撃だ。

ウガアァァァァァァァァ!

 ゾンビは暴れ回ってアミティとエッジを破れかぶれに攻撃する。

 相手の行動は変わっていないためアミティとエッジは落ち着いて攻撃を見切り、反撃する。

「アクティーナ!」

 アミティは手から光線を放ちゾンビを打ち据える。

 不浄な者には炎だけでなく聖なる力も有効なのだ。

「ウアアァァァァァァァァァァ……」

 ゾンビの群れは不気味な唸り声と共に、塵となって消滅した。

 

「はぁ、はぁ……」

 アミティ達は集まってきたゾンビを倒した。

 このゾンビを操っているのがどこにいるのか、探さなければならない。

「敵はどこにいるんだろう……」

「奥に進んで、手掛かりを掴むしかないな」

 エッジを先頭に、敵の手掛かりを探す事にした。

 しかし、二人が探すのは幽霊であり、幽霊は足跡を残さないため捜索は難しい。

 そこでアミティは、魔力を探知する魔法でユウちゃんの魔力を探す事にした。

「ここから右に38歩、上に25歩行けば、ユウちゃんを見つける事ができるよ」

「具体的だな」

「あたしだっていつまでも頭が弱くないからね」

 

 アミティの導きにより、エッジは何とかユウちゃんの居場所を探る事ができた。

「……アミティの導きが合っていれば、この近くにいるはずなんだが……」

 アミティとエッジの目の前には、黒いローブが宙に浮いていた。

「これは……?」

「……!」

 アミティとエッジは黒いローブの魔物に奇襲を仕掛けたが、見つかってかわされる。

 しかも、二人は近くで蛆の群れを見てしまう。

「気持ち悪い!」

「狼狽えるな、攻撃しろ!」

「う、うん! フレイ……うわ!」

 黒いローブの魔物、ラルヴァーは手から氷の礫をアミティに放つ。

 アミティは詠唱中だったのかダメージを受け、詠唱を中断される。

「いくぞ、アクセルスマッシュ!」

 エッジはラルヴァーに近付いて連続で攻撃を浴びせる。

 黒いローブは意外と頑丈で斬撃を通しにくかったため、連続攻撃を重視した。

「こいつ、硬いな……」

「硬いなら魔法で行けばいいよ、サイクロワール!」

 アミティは風の刃をラルヴァーに放ち、攻撃はラルヴァーに効いたのか苦しみ出した。

 しかし、ラルヴァーは反撃として闇の刃を二人に向けて放った。

「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「エッジ!」

 アミティは何とか攻撃をかわしたが、エッジはかわし切れずに食らい、そこから血が流れ出す。

「大丈夫……!?」

「これくらい……ぐぅっ!」

 エッジは痛みに耐えながら立ち上がる。

 その様子は苦しそうだった。

「ヒーリング!」

 アミティは回復魔法を使いエッジの傷を塞いだ後、

 もう一度サイクロワールでラルヴァーを切り裂く。

「とどめだ、メテオドライヴ!」

 エッジは飛び上がり、ラルヴァーの胸元に剣を突き刺した。

 ラルヴァーはその一撃で倒れ、中から大量に蛆の死体が飛び出した。

 

「これがラルヴァーの本体か」

「うぇ……吐きそう。こんな魔物までオソロ墓地にいるの?」

「十中八九カタストロファーセブンの仕業だな」

「早く、ユウちゃんを助けなきゃ……!」

 

 アミティとエッジはオソロ墓地の奥に向かった。

 オソロ墓地の奥には、アミティが見覚えのある男がいた。

 黒い道着を身に纏い、金の短髪と金の鋭い瞳を持つ男……ブレイカーだ。

 彼の近くには、白い布切れが落ちていた。

「来たか」

「ユウちゃん……!」

「ほぅ、この布切れはユウちゃんと言ったか。ほれ、俺が消し去ってやったぞ」

 ブレイカーは落ちていた白い布切れをアミティとエッジの前に突き出す。

「そ、そんな……!」

 エッジは歯ぎしりを立て、剣を抜いて構える。

「アルルを、りんごを、アリアを、あたしを、バラバラにしたキミは、許さない……!」

 ブレイカーは、アルル達をバラバラの世界に飛ばした張本人だ。

 この三人と仲が良いアミティは、絆を断たれた事に怒っていた。

「ふん、それがどうした?」

 しかし、ブレイカーは開き直っていた。

「絶対に……キミを倒す!」

「お前のような清々しい悪がいれば、オレは全力で戦う事ができるよ」

 当然、二人はブレイカーに同情などできなかった。

「さぁ、次に俺の犠牲者になるのは誰だ?」

 ブレイカーはそう言うと、二人の前に出た。

 カタストロファーセブンとの戦いが、始まった。




~次回予告~

ついにアミティ達は、最初に出会ったカタストロファーセブンの一人、ブレイカーと戦う。
世界を救うためには、彼らを倒す以外にないのだろうか。
そして、この戦いでついに、アミティは……。
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