魔導物語 Seven Catastrophe 作:アヤ・ノア
書く余裕がないのが、理由ですが。
なお、この話はボス戦です。
カタストロファーセブンの一人、クラッシャーとの戦いが始まった。
「いくぞ、アローショット!」
「リフレクション」
ジルヴァは弓を構え、クラッシャーに矢を射る。
しかし、クラッシャーの鎧はジルヴァの矢を易々と弾き返した。
「くそっ、弾かれたか!」
「俺に物理攻撃は通用しない」
「ミスティレイン!」
「雷鳴剣!」
「ぐああああああ!」
アリアは雨を降らせてクラッシャーをずぶ濡れにした後、
カインの雷を纏った双剣が一閃する。
水に濡れた身体は、電気を通しやすくなっているのだ。
「ちぃ、やるじゃないか。なら、これは防げるかな? ファイアボール! アイスニードル!」
クラッシャーは魔導守護隊目掛けて火炎弾と氷の矢を撃ち出した。
「しまった!」
クラッシャーとの戦いに夢中になっていたため、魔導守護隊に目を向ける事はできなかった。
このまま魔法が命中しそうになったその時だった。
「リオン・デファンス!」
アージスが少ない魔力を振り絞り、テラ達を光の壁で覆い魔法を受け止めた。
「隊長!」
「アージス!」
「心配するな。魔導守護隊の隊員を守るのは俺の任務だからな……くっ」
だが、アージスは魔法を使った反動か、苦しそうな表情でよろめいた。
「ふっ、弱いな」
「何だと!?」
クラッシャーに舐められたアージスが乗るが、セリティが「やめて」と制止する。
今突っ込んでも、魔力がない以上、殺される可能性が極めて高いからだ。
セリティの助言を聞いたアージスは、敵の攻撃が届かない場所に隊員と共に隠れた。
「クロススラッシュ!」
「アイソレーション!」
「効かん」
カインとレイリーの剣を鎧で弾くクラッシャー。
やはり、彼に物理攻撃は効果的ではない。
「おまえにとっておきの物理攻撃を浴びせてやる! ギルティブレイク!」
クラッシャーは一気に距離を詰め、剣をレイリーに振りかざす。
「危ない!」
だが、直前でカインが彼女を庇ったため、レイリーはダメージを受けずに済んだ。
クラッシャーは舌打ちし、剣を引いて飛び退く。
「ち、おまえ物理攻撃が俺に通用しない癖に立ち向かうつもりなのか?」
「ああ! それが私の使命であり、運命だからだ! だからお前にも、負けるつもりはない!
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そう言って、カインは双剣に魔力を溜めた。
カインは攻撃魔法は得意ではないが、
魔導剣はそこそこ使えるのだ。
「七星風神剣!」
カインが双剣を振ると突風が起こった。
クラッシャーが吹っ飛んだ隙にカインは彼に突っ込んでいき、
双剣で斬りつけると、カインの鎧に僅かに罅が入った。
「ぐはぁ! な、何故、俺の鎧に傷を……」
「これはただの双剣術じゃなくて、魔導剣なんでね」
そう、先ほどカインが放った剣術は魔導剣で、魔法的なダメージを与える物理攻撃なのだ。
これならクラッシャーにダメージを与えられるだろうとカインは考えたのだ。
そしてカインの狙い通り、クラッシャーにダメージを与える事に成功したのだ。
「凄いのだ……わたしの剣技より凄いのだ……!」
剣術もそれなりに使えるレイリーも、カインの剣技に惹かれた。
人類史上最強の剣士の名は、伊達ではないのだ。
「わたしの踊りを見ていくのだ♪ クリケット!」
レイリーはクラッシャーの動きを止めるため、身体をくねらせて踊った。
「う……くっ」
その踊りを見たクラッシャーは催眠術にかかり、動く事も考える事もできなくななった。
「みんな、その間にクラッシャーを攻撃するのだ!」
「はい! フェーゴボム!」
「フォトン!」
「フエルサ!」
「雷鳴剣!」
レイリーが踊っている間に、
アリア、ジルヴァ、リレシル、カインは無防備なクラッシャーを攻撃した。
クラッシャーは何もできず、一方的にダメージを食らい、体力がどんどん減っていった。
このままいけばクラッシャーは倒れる……そう思った時、レイリーが疲れたため動きを止めた。
「ふぅ、疲れたのだ」
「あっ、レイリーさん……」
「チャンスだ、ルナティックソード!」
レイリーが動きを止めた事で催眠術が解除されたクラッシャーは、
勢いよくジルヴァの脳天に剣を振り下ろした。
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!」
「ジルヴァさん!」
「くっ……」
ジルヴァはふらふらしながら頭を押さえる。
その勢いでジルヴァの脳が少し傷ついたのか、自分が何をすればいいか考えられなくなった。
「俺は……何をすればいいんだ……」
「攻撃をしていればいいんですよ」
「そうか……攻撃か! アローショット!」
そう言ってジルヴァは魔力を付与せず矢を放った。
発狂しているジルヴァは、細かい指示を理解できないのだ。
当然攻撃は弾き返され、ファイアボールの反撃を受ける。
「まずいわね……あの茶髪の子、発狂しているわ」
「どうすれば……」
「私が彼を落ち着かせるわ。あなた達はクラッシャーを倒しなさい」
「分かりました」
リレシルにジルヴァを落ち着かせる役割を与え、アリア達はクラッシャーを倒す事を優先した。
「ほら、落ち着いて。ね?」
「う……あぁ……ぁ……」
「エアトルネード!」
「ムーンウォーク!」
「七星雷鳴剣!」
「フレイムソード! ライトニング!」
リレシルがジルヴァを正気に戻している間に、
アリア、レイリー、カインはそれぞれの技でクラッシャーを攻撃する。
クラッシャーも負けじと、魔法や剣で反撃をしていった。
攻撃が中断される事はあれど、アリア達は攻撃をやめずにどんどん技や魔法を使っていく。
「体力が減って来たな……。ここは、この技を使うか。太陽剣!」
カインは双剣を太陽の如く輝かせ、クラッシャーに向けて振り下ろした。
双剣が命中すると同時にカインの体力が回復した。
太陽剣は、与えたダメージ分、自身の傷を癒す特殊剣技なのだ。
「……ふう」
「もう大丈夫?」
「ああ……ありがとう、リレシル」
ようやく落ち着きを取り戻したジルヴァは、リレシルと共に戦線に復帰する。
「……よくも、この俺を狂わせたな」
「はっ、それがどうした」
「ちっ、こうするしかないか。フォトン!」
ジルヴァは自らを発狂状態にしたクラッシャーに怒りの矛先を向けるも、
クラッシャーはそれがどうした、と開き直っていた。
救いようのない悪だな……と感じたジルヴァは、光の魔法をクラッシャーに叩きつける。
「フエルサ・パラグアス!」
「ぐああぁぁ!」
リレシルは傘に大気の力を乗せて投げつける。
傘がクラッシャーに刺さった後、すぐに傘はリレシルの手元に戻ってきた。
「あの、リレシルさん。傘はそうやって使うものじゃありませんよ」
「それもまた、魔導守護隊の戦法なのよ」
アリアの突っ込みをリレシルは笑顔で受け流す。
「グランクエイク! フェーゴボム!」
「バタフライ!」
アリアはグランを召喚して地震を起こした後、続けてフェーゴを召喚して爆発を起こす。
爆発のショックで怯んだ隙にレイリーは回転しながらクラッシャーを斬りつけた。
「畜生! なんでこの俺が追い詰められるんだ! 俺はカタストロファーセブンなんだぞ!」
「きみのような悪い奴に、わたし達が負けるわけがないのだ!」
「ちぃ、どこまでも俺を虚仮にしやがって! こうなったら、一か八かだ!
これで、おまえらを殺してやる!」
クラッシャーは一か八か、自身の魔力を全て使い切って剣を巨大化させた。
「ウルトラ……ソード!!」
そして、クラッシャーは巨大な剣を振り下ろした。
あれが命中すれば、パーティは壊滅してしまう。
剣が巨大なために、避ける事すらできない。
最後の最後で逆転負けしてしまうのか……とアリアが防御の体勢を取った、その時だった。
「魔法の使用を許可する。皆、やれ!」
「フェザー・ケージ!」
「レプス・アルマ!」
「パーヴォ・エスクド!」
「ミーツェ・ヴァント!」
なんと、リレシルを含む魔導守護隊の隊員達が、
隊長のアージスの指示によって自身の魔力を振り絞って巨大剣を防いだのだ。
「みんな……! どうして……!」
「隊長がいてもたってもいられなかったから……わたし達に魔法を使わせた」
「みんなを守りたいから、魔法を使ったんです」
「だって、魔導守護隊が何も守れなかったら、
魔導守護隊の名が廃るでしょ?」
「キミ達が倒れたら申し訳ないと思ったからよん」
テラ、フェーン、リレシル、セリティが各々事情を話す。
アージスは「ただ、守りたかっただけだ」とだけアリアに言い、彼女も彼らに感謝した。
これにより、ウルトラソードは完全に防がれ、パーティが壊滅する事はなくなった。
「ちく……しょ……う……」
そして、魔力を使い切ったクラッシャーは倒れ、戦闘不能になった――アリア達の勝利だ。
「これで、戦いは終わりましたね」
「そうだな……」
クラッシャーが敗れたため、残るカタストロファーセブンはスレイヤー一人。
冒険も終盤に差し掛かった、とアリアは感じた。
すると、カインが持っている次元石が光り出し、クラッシャーの遺体が次元石に吸い込まれた。
そして、次元石が強く光ると、アリア達の姿は消えた。
「……ここは?」
気が付くと、アリア達はコメート魔導学校の保健室に立っていた。
「どうやら、わたし達は戻ってきたみたいなのだ」
「……」
レイリーによれば、次元石の力によってアリア達はダンジョンを脱出したらしい。
カインは、しげしげと次元石を見つめていた。
「そうだ! アミティは一体どうなったんだ?」
ジルヴァは、アミティの様子を見に、彼女が寝ているベッドに行った。
クラッシャーが倒れて呪いが解けたなら、アミティも正気に戻っているはずだ、と。
「大丈夫よ。アミティは元通りになっているわ」
フェーリの言う通り、アミティの顔色はすっかり良くなっていた。
やはり、クラッシャーが呪いをかけていたのだ。
「ありがとありがと、すっかり元気になったよ!」
呪いが解けたアミティがリレシルに抱き着く。
「ま、まあまあ……どうして私に? 呪いを解いたのは私じゃなくて、この子達よ?」
リレシルがアリア達を指差して言う。
「あたしはアリア達を手伝ってくれたリレシルにありがとうって言いたいんだよ!
だって、あたしの友達を助けたんだもん!」
「……本当にあなたは良い子なのね。私にも優しくしてくれて、ありがとう」
アミティは友達思いだが、それ以外の人を蔑ろにする事は決してない。
その気持ちが伝わったのか、リレシルはアミティに大きな感謝をした。
「アミティさん……また、会えましたね」
「アリア……」
ようやくアミティと再会したアリアは、彼女の手をぎゅっと握り締めた。
カタストロファーセブンのせいでバラバラになった四人のうち、二人が再会できたのだ。
まだ全員揃っていないが、これだけでも大きな成果だ。
「私達の絆は、カタストロファーセブンには断ち切れない、と証明されたでしょう?」
「離れていても、あたし達はずっと一緒! アルルも、りんごも、絶対にまた会えるから!」
「……友達だから、ですか?」
「そうだ……よ?」
「何でも友達に結びつけるなんて、ちょっとおかしな考えですね」
アミティの言葉にアリアは突っ込みを入れる。
それでも、アリアがアミティから目を離していないという事は、
彼女を信頼している証なのだ。
「……もうすぐ戦いは終わります。行きますよ、アミティさん」
「うん!」
アリアはアミティの手を引き、彼女をベッドから降ろすと、レイリー達に合流するのだった。
戦いはまだ続きます。
世界は、平和になるのでしょうか。