魔導物語 Seven Catastrophe   作:アヤ・ノア

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魔導ARS組のターン。
終盤のダンジョンに潜っていきます。


32「サタンの塔へ」

 その頃、アルル、ルルー、シェゾ、チコ、セイバーの五人は、

 最後のカタストロファーセブン、スレイヤーを倒すためにサタンの塔へ向かっていた。

 サタンの塔といえば、アルルが以前にぷよぷよ地獄を体験した事がある場所だ。

 そこにアルル達が目指す最後の敵がいるため、五人は気合を引き締めていた。

「……ボクが、色んな奴とぷよぷよ地獄をした場所が、最後の舞台、なんだね……」

「ぐーぐー」

 本当は最後じゃないだろ、とカーバンクルが突っ込む。

「そこに、カタストロファーセブンの一人、スレイヤーがいるんだよ」

 セイバーは真剣な表情で剣を抜く姿勢を取る。

「やる気満々だね、セイバー」

「当たり前さ……こいつが最強の狂戦士だからね」

 スレイヤーを倒せば、カタストロファーセブンによる世界の異変は治まる。

 そのためにも、絶対に負けてはならない戦いだ。

「それじゃ、早速入るぞ」

「はい! ……きゃっ!」

 塔の中に入ろうとした瞬間、チコが強い力で飛ばされた。

「な、何故……!」

「それは、私が結界を張ったからだ」

「……!」

 チコが呆然としていると、塔の入り口からエコーがかかった男の声が聞こえてきた。

 声が聞こえてしばらくすると、

 女と見紛うような美しい銀髪をたなびかせた吟遊詩人風の男が現れた。

「う……なんか、ソードに似てる……」

 その姿を見たセイバーがソードを思い出す。

「……あんたが、セイバーの言ってた最後の狂戦士、スレイヤーね」

「その通りだ。そしてこの塔は、今は私が支配している」

「……支配?」

 支配、という言葉を聞いたルルーの額に筋が立つ。

 この塔は、元々サタンが使っていたものであったからだ。

 それを誰かが支配するのは、ルルーにとって許しがたい事なのだ。

「……サタン様に何をしましたの?」

「サタン? ああ、あの魔族なら、塔の頂上に封印しているよ」

「な、何ですって!?」

 サタンが封印された事に、驚きを隠せないルルー。

 同時に、目の前にいる男に対し、顔には出していないが怒りを表していた。

「よくも、サタン様を! 破岩掌!」

 ルルーは男に向けて掌底を繰り出した。

 しかし、ルルーの手は男をすり抜けた。

「残念だけど、今、君達の前にいる私は幻影さ。本物の私は、塔の六階で待っているよ。

 フフフフフ……私の試練、突破できるかな……?」

 スレイヤーは不気味な笑みを浮かべながら、アルル達の前から姿を消した。

 

「結界を張っておいてそれはないだろ!!」

 今、サタンの塔には結界が張られていて入れない。

 それなのに、試練を突破しろというスレイヤーの言葉に、シェゾは怒っていた。

「……スレイヤーは支離滅裂な事を言うね。この結界を破れるかどうか、確認しよう」

 そう言って、セイバーは塔の入り口に手を当てた。

「ん? 意外と結界は薄いじゃない。この剣で、壊してみようかな!」

 セイバーは剣を両手で持ち、結界に向かって振り下ろした。

 すると、結界はパリーンという音を立てて砕け散った。

「なんだ、簡単に割れたじゃない」

「見掛け倒しだったね~」

「ぐっぐぐ~」

「じゃあ、今度こそ入ろう!」

 そう言って、アルルは塔の入口に足を踏み入れた。

 カーバンクル、ルルー、シェゾ、そしてセイバーも、次々と塔の中に入っていく。

「私も今、行きますね!」

 そして、チコも塔に入ろうとした途端、再び塔を結界が包み込んでチコを弾き返した。

「うぅ~、やっぱり私はこの中に入れないみたいです~」

「どうやらこの塔には四人しか入れないみたいだね。チコ、君はお留守番みたいだ。ごめん」

「いいんです。今の私では、皆さんの力にはなれないって感じましたから」

 チコはアルル、ルルー、シェゾ、セイバーと違って戦闘や冒険の経験が少ない。

 彼女はそれを自覚しており、自らサタンの塔を登らず、アルル達を待つ事にしたのだ。

 

「じゃあ、ボク達はこれから塔を登るからね!」

「ぐーっぐぐぐー!」

「サタン様を封印したスレイヤーは、絶対にボコりますわよ!」

「言っておくが、俺は死なないからな」

「うん……みんなが支えてくれている。

 父さん、エッジ、ソード、そしてアルルやルルー、シェゾ。

 一人じゃできなくても、みんながいれば、できないものなんてない」

「いってらっしゃい! 私、皆さんをずっと待ちますからね!」

 チコは、塔を登っていくアルル、ルルー、シェゾ、セイバーを見送った。

 

 まずは一階、八部衆が待ち構えていたエリアだ。

 光の精霊ウィル・オ・ウィスプがぼ~っとしながら宙に浮かぶ様子を見ていると、

 イフリートとウォーターエレメントが現れて力試しを挑んできた。

「アイスストーム!」

 アルルはイフリートに吹雪を放って攻撃し、イフリートを一撃で倒した。

「サンダーストーム!」

 シェゾはウォーターエレメントの弱点となる雷を放ったが、

 ウォーターエレメントは攻撃をかわし反撃として水を放ったがシェゾはその攻撃をかわす。

「風神脚!」

「疾風剣!」

 ルルーとセイバーの、風を纏った一撃がウォーターエレメントに入ると、

 ウォーターエレメントは怯んだ。

 そこにアルルのファイヤーが命中し、ウォーターエレメントは跡形もなく消滅した。

 精霊達は鍛え抜いたアルル達の敵ではなかった。

「あ、階段が現れた! 次に行こう」

 どうやら、精霊達を倒すと階段が現れたようだ。

 アルル達はそれを登り、二階へと進むのだった。

 

 四人と一匹は二階、六歌仙が待ち構えていたエリアに入った。

 部屋の中央に石棺が置かれていたが、アルル達は無視して先に進んだ。

 四人と一匹が部屋の中ほどまで進んだところで、天井から瓦礫が降ってくる。

危なぁーーーーいっ!

 アルル達は全速力で走り出し、何とか瓦礫に潰されずに済んだ。

 魔導師のアルルは、かなりギリギリなところであったが。

「ふぅ……危なかった」

「アルル、よく潰されなかったね。大丈夫?」

「うん、ボクは平気……でも、カーくんが」

「あ……」

 アルルは潰されずに済んだものの、カーバンクルが瓦礫の下敷きになっていた。

「……ごめんね、カーくん」

「ぐ~~~~……」

 もう少しで死ぬところだった、という顔をしながら、

 カーバンクルはアルルに助けられるのだった。

 

「さて、階段は……ん、ここにはなさそうだね」

「待てアルル、階段は隠れているかもしれない。俺が魔法で探してやる」

 そう言って、シェゾはディテクト・マジックの呪文を唱えた。

 すると、東の通路がシェゾには光って見えた。

「向こうに階段があるぞ!」

「え? ホント?」

 アルル達が光った方に行くと、確かに階段が魔法で隠されていた。

 シェゾはディスペルで魔法を解除した後、階段を登り三階へ行くのだった。

 

 三階、五人囃子が待ち構えていたエリア。

 そこには、目を隠した像、耳を隠した像、口を隠した像が置いてあった。

「え~っと、何々……『障碍者と遊戯せよ』?」

「障碍者っていう言葉が嫌だけど……要は目や耳や口を使わずに遊べるものを選べって事だよね」

「そうなりますわね。

 で、遊びの内容は……川下り、ぷよ数え、かくれんぼ、弾避け、クイズの5つね」

 アルル、ルルー、シェゾ、セイバーは、どの像にどの遊びをするかを考えていた。

「前が見えないのに川下りなんてできないし、ぷよも数えられない」

「ぷよを数えたか聞いても聞こえない人にぷよ数えをやっても意味はありませんわね。

 とにかく、言葉を使わない遊びをこの像と遊ぶ必要がありますわ」

「喋る必要がない遊びは、これだね!」

 川下りは目を使い、ぷよ数えとかくれんぼは目・耳・口を使い、弾避けは目と耳を使い、

 クイズは耳と口を使う、という事は……。

 

 しばらくして、アルル達は像との遊びを決めた。

 目を隠した像はクイズ、耳を隠した像は川下り、口を隠した像は弾避け。

 結果、問題なく遊ぶ事ができたため、目の前に階段が現れた。

「よし、次は四階だな!」

「何階まであるんだろう」

「ボクの記憶だと……あと二階、かな?」

 

 四階、四天王が待ち構えていたエリア。

 奇妙な機械を無視して先に進んでいくと、再び二体の中位精霊が現れた。

 今度は風のアイオロスと地のタイタンだ。

「かかってこい!」

 シェゾがタイタンを挑発すると、タイタンが彼に突っ込んで襲い掛かった。

 その攻撃をシェゾはかわし、闇魔法で攻撃する。

「ウィンドスラッシュ!」

 セイバーは剣から衝撃波を放ち、タイタンを切り裂いた。

 タイタンには風に弱く、大きなダメージを受ける。

「鉄拳制裁!」

 ルルーが拳をタイタンにぶつけるも、大したダメージは与えられなかった。

「くぅ……! 固いですわね。でも、もう一度! 精神一統、鉄・鉄拳制裁!」

 ルルーは精神を集中し、強烈な拳の一撃を放った。

 今度はクリーンヒットしたようでタイタンの身体が少し歪む。

「地属性にはこれだよ、トルネード!」

 セイバーは竜巻を起こし、タイタンに大ダメージを会えた。

「うわっ! でも、反撃だよ! ストーン!」

 アルルはアイオロスから風の刃を食らうも、石を落とす魔法で反撃し、倒した。

「よし、あと少しだ! サンダーストーム!」

 シェゾはタイタンに向かって雷を放った。

 しかし、地属性のタイタンには通用しなかった。

「ふん、ならばこれでどうです!? 天舞脚!」

 ルルーは光の衝撃波を足から飛ばしてタイタンにダメージを与えた。

「よし、いい調子だなルルー!」

「ええ! サタン様を助けるためですもの、このくらいで弱音を吐くわけにはいきませんわ」

 サタンはスレイヤーが封印したと言っていた。

 片思いの魔王のためにも、

 この塔を最上階まで登らなければならないとルルーは決めているのだ。

「ルルーがそう言うなら、俺もやる気になったぜ。

 ダイアキュート、ダイアキュート、ア・ア・アレイアード!」

 シェゾは増幅したアレイアードをタイタンに放ち、タイタンを闇で束縛する。

 その隙にセイバーは風を纏った剣で斬りかかり、タイタンの弱点を突く。

「これで、とどめですわよ! 女王乱舞!!」

 そして、ルルーがタイタンに凄まじい連続打撃を与えると、タイタンは跡形もなく消え去った。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 強力な技を何度も放ったのか、ルルーの表情には疲労が現れていた。

「ぐ……っ!」

 身体に負担がかかり、ルルーは膝をついた。

 それでも、彼女はサタンのために立ち上がろうとしたが……。

「無茶しないでよ、ルルー!」

「なん、ですの……?」

いくらサタンを助けたいからって、キミ自身が死んだら意味がないんだよ!

 キミの死んだ姿をサタンが見たら、どう思う!?

 その一言で、ルルーは目が覚めた。

 目の前の事だけを考えていたら、自分がボロボロになりかけていた。

 もし、アルルが気付かなければ……ルルーは最悪の結末を迎えていたかもしれない。

「そうでしたわ……。私、大事な事に気が付いていませんでしたわ……。

 ……アルル……。あなたの言う通り、私は少し、休みますわ」

「……ありがとう、ルルー……」

「……どういたしまして、アルル……」

 こうして、アルルとルルーの絆が、さらに強まるのであった。

 

 五階、噂の二人が待ち構えていたエリア。

 そこで、アルル達の行く手を阻むかのように多数の魔物が現れた。

「もう! どうしてこんなにいるんだよ!」

「ぐーぐぐー!」

 ルルーが休んでいるにも関わらず、魔物は大群で容赦なく襲い掛かってきた。

 三人はルルーを守りながら、魔物を倒していき、階段を目指して進んでいく。

「秋沙雨!」

「ファイヤー!」

 セイバーは無数の突きをヒュドラに放ち、アルルが炎魔法で焼き払う。

「サンダーストーム!」

 シェゾは二体のケルベロスを雷の嵐でまとめて攻撃した。

 ヒュドラがルルーにたくさんの首を伸ばして襲い掛かってきたが、

 シェゾとセイバーが剣を使って攻撃を弾いた。

「ダイアキュート、ヘ・ヘヴンレイ!」

 アルルは増幅呪文を唱えた後、光の柱を呼び出してケルベロスを浄化した。

 ケルベロスは闇の存在であるため、光属性に弱く、

 アルルはこれを使って効率よくダメージを与えていった。

 しばらくするとケルベロスは弱っているルルーに狙いを定める。

 ケルベロスの攻撃をルルーに向けるわけにはいかない。

 アルルは何もない場所に雷を落とし、ケルベロスの注意をそちらに向けた後、

 ヘヴンレイでケルベロスを浄化した。

「後は、ヒュドラが再生しないように……クリメイション!」

 セイバーがヒュドラを火葬し、この戦闘はすぐに終わったのであった。

 

「……ふぅ」

「ルルー、もう歩ける?」

「ええ……休んだら体力が戻ってきましたわ」

「よかった……」

 どうやら、ルルーの疲れは取れてきたようだ。

 これで、安心してサタンを救出する事ができる。

 四人と一匹は、最上階へと続く階段を登るのであった。

 

 そして、塔の最上階、例の三人が待ち構えていたエリアにて――

「よくぞここまで」

 階段を上がった先に待っていたのは、スレイヤーと、レリーフに封印されたサタンだった。

「しっかりして、サタン! ボクだよ、ボク! 分からないの!?」

「ぐー! ぐー!」

 アルルとカーバンクルがサタンに呼びかけるが、当然サタンは反応しない。

「無駄だよ。今、こいつはどんな声も聞こえない」

「アレイア……」

「おっと、このレリーフを壊したら中の人の命はないぞ」

「ちっ……」

 シェゾは、レリーフを破壊しようとするが、スレイヤーにそう言われて詠唱を止めた。

 どうにもならないもどかしさにシェゾは舌打ちする。

「ははははは。皆、驚いたかね? 魔王が封印された姿を。

 さぁ、最後の試練だ。君達に私を倒せるかな?」

 サタンを封印したスレイヤーは、勝ち誇ったように笑っている。

 どこまでも四人と一匹を馬鹿にした様子に対し、ルルーの怒りはついに爆発した。

 

よくもサタン様をこんな姿にしましたわね!!

 ルルーの表情は悪鬼羅刹のそれであり、スレイヤー以外の全てのものは恐れおののいた。

「スレイヤー!

 私は、あんたをこの手でボッコボコのギッタギタのメッタメタにして

 死体は海に投げ捨てて鮫に食わせましてよ!!」

 ルルーはここぞとばかりにスレイヤーに罵倒を浴びせた。

 最早、ルルーに見えるのは、スレイヤーの姿のみとなっていた。

「……ルルーがこうなった以上、ボク達じゃあどうにもならないよ。

 キミを倒さない限り、ルルーのキミに対する怒りは治まらない!」

「ルルーの性格はよ~く分かってるんだからな。お前もしっかりと刻んでおけよ?」

「カタストロファーセブン最後の一人、スレイヤー。君を倒して、この世界を元に戻す!」

 アルル、シェゾ、セイバーも、ルルーに震えながら戦闘態勢を取った。

 すると、それまで微笑んでいたスレイヤーの表情は一変した。

「虫ケラどもに何ができるというのだ。私を倒す? それは不可能だ。

 何故ならば……私には、これがあるからだっ!!

 スレイヤーが両手を広げると、凄まじい突風がアルル達を襲った。

「うわっ……!」

「みんな、気をつけて……! これは、魔力だよ……!」

「ああ……すげぇ力だ……!」

 セイバー、アルル、シェゾは、戦意を奪われないように気を保った。

 四人の中で唯一魔力を持たず、魔力も感知できないルルーに影響はなかった。

 その後、スレイヤーを魔力の壁が覆った。

 

「さぁ、宴の始まりだ!」

「いくよ、みんな!」

「ぐぐー!」




ちなみに舞台となった塔は、「ぷよぷよ通」と同じです。
次が最後のカタストロファーセブンとの戦いです。
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