魔導物語 Seven Catastrophe 作:アヤ・ノア
ここで一気に伏線を回収していきます。
「はぁ~。やっとこれでカタストロファーセブンはみんなやっつけたね」
「ああ……。長い戦いだったな……」
カタストロファーセブンとの戦いに、とりあえず終止符はついた。
「お帰りなさい、皆さん」
「ただいま! チコ! ボク達、勝ったんだよ!」
「本当ですか? よかった……!」
サタンの塔を降りたアルル達は、塔の外で待っていたチコにそれを報告する。
報告を聞いたチコは満面の笑みを浮かべた。
「ああ、本当に、あなた達を待っていてよかった! アルルさんを信じて、本当によかった!」
「チコ……ボクからも、お礼の言葉を言うよ。『ありがとう』」
「はい、アルルさん、ありがとうございました!」
「そして、私達が倒す敵は、あと一人」
「『古のもの』だよ」
残る敵は彼らのリーダーである「古のもの」のみ。
セイバーは、古のものを倒そう、と意気込んで、剣を強く握り締めた。
サタンも、彼にしては珍しく真剣な様子だった。
「……父さん……。どこに、いるんだろう……」
「お父さん?」
「私の父さんは、カインっていう人類史上最強の剣士だよ」
「え、そうだったの!?」
アルルは、セイバーが人類最強の剣士カインの娘であるという事を初めて知った。
確かに、セイバーは剣の切れが鋭かったが、最強剣士の血を引くとは思わなかったからだ。
一方のセイバーは、そんなアルルを不思議そうな顔で見ていた。
「う~ん、アルルは私の友達だから知ってると思ったんだけどなぁ」
「だからボクはキミの事をあんまり良く知らないってば!」
「ごめんごめん……」
セイバーは、目の前のアルルが
今のアルルではない事をまた忘れてしまったようで彼女に突っ込まれる。
「で、サタン、肝心の古のものって奴はどこにいるんだ?」
「それは一度プリンプに戻ってから話をしよう。みんな、しっかり捉まっていろ」
「……うん!」
「テレポート!」
サタンは転移魔法を唱え、プリンプタウンに転移した。
「うわっとと!」
「ぐー!」
「おっと!」
「「よっと!」」
「……よし、来たな」
アルルは、テレポートによってプリンプタウンホールに降り立った。
その後、カーバンクル、ルルー、シェゾ、セイバーが次々と降り立ち、
最後にサタンが降り立った。
「ボク達……ようやくプリンプタウンに“帰って”きたんだね!」
「ぐっぐぐー!」
アルルはようやく、故郷の魔導世界から現在の居場所であるプリンプタウンに帰ってきた。
「みんなは……みんなはどこにいるんだろう」
「ぐっぐぐー?」
「まずはこの三人から探すからね」
アルルはまず、アミティ、りんご、アリアを探して辺りを見渡した。
すると、三時の方向に複数の人影が見えた。
アルルは、あそこにアミティ、りんご、アリアがいるのかな、と走っていった。
「あー! 向こうから誰か来た!」
アミティが遠くから近付いてくる人影を指差した。
「え、どこですか?」
「アミティさん?」
りんごとアリアは釣られてアミティが指差した方を見る。
すると、人影――アルルとカーバンクルが、自分達に向かって走り出しているのを見た。
「みんなーーー! ボクだよーーー! アルルだよーーー!!」
「ぐーーー!!」
「本当だ! 本当にアルルだ!」
「幻じゃ……ありませんよね?」
アリアは、アルルの手を握った。
その手は暖かく、アルルが本物である事が証明された。
「暖かいですね。アルルさんは本当に、プリンプタウンに戻ってきたんですね」
「当たり前でしょ! ボクが倒れるわけないじゃない!」
経験を舐めないでよね、と自信たっぷりに言うアルル。
アリアも、アルルの経験は知っているため頷く。
「カタストロファーセブンはみんなやっつけたよ」
「だから、あたし達を邪魔する人は、もういない」
「二度と、私達がバラバラになる事はありません」
「四人の絆が永遠だという事が、証明されました」
ようやく、アルル、アミティ、りんご、アリアが、プリンプタウンに揃った。
四人は二度とバラバラにならないように、それぞれの手を重ね合ってこう言った。
「世界が違っても、居場所が違っても」
「あたし達の絆は」
「永遠に」
「不滅です!!」
一方、トライブレードの一人セイバーは、
感知能力で仲間のエッジとソード、そして実父のカインを見つけ、そして再会した。
ルルーとシェゾもセイバーを追って、それぞれの家族と再会する――
アルル同様、本当は別の存在だが。
「ただいま、父さん!」
「おお、お帰りなさいセイバー。よく一人で頑張ってこれたな。それだけで父さんは嬉しいよ」
「ううん、私は一人じゃないよ。アルルやルルー、シェゾがいたから頑張れたんだ」
「君は戦士である以前に、一人の人間だからな。
人間は一人じゃ何もできないけど、集まればどんな困難も乗り越えられると言うからな。
よしよし、いい子だ、セイバー。これからも私の傍にずっといてくれ」
「うん、分かったよ」
「お帰り、ルルー。別の世界にいた父を許してくれ」
「……? まぁ、許して差し上げてもよくってよ」
「シェゾ、会いたかったわぁ~~~!
アタシのたった一人の兄弟だもの~~~~!!」
「お、おいおい、何抱き着くんだよ、俺はお前の事は知らないっつーの」
カインとセイバーの親子は、カインの方がちょっと親馬鹿な雰囲気だった。
ルルーとエッジの親子は、どこか噛み合わない雰囲気だった。
シェゾとソードの異父兄弟は、傍から見るとホモっぽい雰囲気だった。
一方、こちらはサタン、エコロ、レムレス、アコール先生、ルゥ先生の情報収集組。
彼らは記憶のプロテクトが解けたようで、それを少しずつ思い出している。
ちなみに、アコール先生とルゥ先生は、四人が集めた情報をまとめる役割をしている。
「ふぅ……ようやく記憶が全部戻って来たぞ」
「お疲れ様です、サタン様」
長くレリーフ化していたのか、サタンは思い出すのに時間がかかったが、
6分後に全ての記憶を取り戻した。
10分もかからなかったのは流石は魔王といったところだろう。
「それで皆様、古のものについて、話せる事はありますか?」
「ああ、それはだな……」
サタン、エコロ、レムレスは、古のものの情報をアコール先生とルゥ先生に全て話した。
二人の教師は、三人の話のメモを取っていた。
「メモは全て取りました。ありがとうございます」
「うむ。では、私達は他の人にやるべき事を言ってくる。お前達は準備をしてこい」
「分かったよ~」
サタンが皆に連絡をした後、何人かのメンバーがプリンプ魔導学校の体育館に向かっていた。
メンバーは、アルル、アミティ、りんご、アリア、セイバー、エッジ、ソード、カインだ。
「そういえば、ラフィーナとシグはどうしてるの?」
「サタンが連絡してたみたい、ルルー、シェゾ、ラフィーナ、シグ、まぐろ、りすくませんぱい、
レイリー、ジルヴァはプリンプタウンを守れって」
「私達にしかできない事なんでしょうか?」
呼び出しを受けたのがこの八人なので、りんごはどんなことが起こるのかをある程度推測した。
「だろうね、何しろトライブレードと私の父さんも呼ばれているんだから」
そんな会話をしながら教室に入ると、そこではサタン、エコロ、レムレス、アコール先生、
ルゥ先生、あくまが待っていた。
アコール先生は他に誰も人がいないかを確認すると、コホン、と少し咳き込んだ。
「それでは、説明をいたします。この異変の黒幕と、私達がするべき事を。
ルゥ先生、あくまさん、この話が外部に漏れないように警備をお願いします」
「分かったよ~」
「承知したま」
あくまは結界を張り、ルゥ先生は弩を構えた。
レムレスは二人の行動を確認した後、口を開いた。
「これは、僕がコメートを離れて集めた情報だよ。
かつて、この世界をより良くするため、古のもの――神がこの世界に降り立った。
でも、知識はあってもまだ何も知らない古のものには、
どのような人が暮らすどのような世界が良い世界か分からなかった。
だから、それはそこにいる生命達に任せ、さらには自分の存在を隠した。
だけど自然に任された世界は人の欲を肥大させた。
利益のため、競争に勝つため、そして己の保身のため……。
醜悪な我欲が蔓延する世界を見た古のものは絶望し、裁きとしてこの世界を滅ぼそうとした」
「……!」
アルルはその真実に目を見開いた。
自分達の世界は、愚かな人間のせいで一度、滅亡しかけたという事を。
「でも、この世界にいた正しい心を持った七人の人間が、古のものと戦い、勝利し封印した」
「正しい心を持った、七人の人間……?」
アルルは七人という人数に引っかかったが、そのまま黙って話を聞く。
「世界は救われてめでたしめでたし……というわけにはいかないのが真実だ。
古のものに滅ぼされる心配がなくなったため、
人々の腐敗はどんどん進んでいき、七人の英雄達の誇りも失われた。
英雄は狂戦士となり、自らをブレイカー、バスター、キラー、デストロイヤー、イレイザー、
クラッシャー、スレイヤー……カタストロファーセブンと名乗った」
「嘘でしょ……!!」
なんと、アルル達が戦ったカタストロファーセブンの正体は、
我欲に飲まれた英雄の成れの果てだったのだ。
「古のものは再び目覚めようとしたけど、封印されていたためそれは叶わず、
せいぜいカタストロファーセブンの意志を操るくらいの力しか出せなかった。
でも、君達がカタストロファーセブンを倒したから古のものの封印は完全に解けてしまい、
この世界と一体化してしまった。
そして、この世界で最も異世界に近い場所……『時空の狭間』で自らのテリトリーを築いている」
「そんなぁ!」
「でも、また封印すればいいんじゃないんですか? 目覚めたものは仕方ありませんけど……」
りんごの提案に、レムレスは首を横に振った。
「残念だけど、古のものがこの世界と一体化している以上、
古のものを封印すればこの世界も封印されるよ」
「やっぱりダメでしたか……」
りんごはがっくりと肩を落とした。
「だから、君達にできる事は二つだけ。
次元の裂け目に行って古のものを倒すか、古のものの支配を受け入れるかだよ」
「どういう事?」
「古のものを倒せば世界は解放される。
だけど、何か悪い事が起こっても二度と大いなる者は助けてくれなくなる。
古のものが支配すれば世界は平和になる。でも、それは偽りの神に全てを委ねる事になる」
つまり、神を討ってヒトだけの自由な世界にするか、
神を受け入れ平和だが束縛された世界にするか。
アルル達には、その二人しか道はないのだ。
「でも、サタンとエコロはどうしてそれを知ってるの?」
「古のものが復活した事によって、
流石のサタンも危機感も覚えたのか魔界に戻って情報を調べたらしいよ。
エコロは……彼の話を魔法で盗聴したんだろうね」
「あったり~♪」
「サタン様が黒幕じゃなくて当然ですわよね!」
「あいつらは、トラブルは起こすけど世界を危機に落とす事はしないからな」
ルルーは自信満々にそう言い、
シェゾもサタンとエコロの潔白が証明できたようで清々しい表情だった。
その後、アコール先生は全ての話をまとめてアルル達にそれを話した。
「古のものが復活した事により、最早この世界は古のものそのものとなっています」
「つまり、コンピューターウイルスを駆除するか、
コンピューターウイルスを野放しにするかですね」
「そういう事です」
りんごの例えにアコール先生は頷いた。
「……さて、皆さん、これからどうしますか?」
「えっ?」
「時空の狭間に行って、古のものと戦いますか? それとも、このまま休みますか?」
「どっちを選んでも構わないよ~」
アコール先生の選択肢に対し、アミティは珍しく迷いのある表情をしていた。
「……あたしは古のものと戦うよ。でも、どうすればいいのかは……分からない」
アミティは古のものの処遇を迷っていた。
もし、大いなる者がいない世界になれば、レムレスの言った通りの世界になるかもしれない。
だが、古のものが統制する世界になるのも、アミティには納得がいかなかった。
一方、アルルの表情はアミティとは正反対だった。
「古のものの時間は、封印された時から止まったままだと思う。
カタストロファーセブンを操ったのも結果的に無駄な行動だったし、ね。
世界を救うためにやってる事が、より多くの世界の危機を生んでる矛盾に気づいてないよ。
だから……ボクは、古のものを止める」
「私も同じだよ。トライブレードは世界を救うために戦うんだから」
「古のものに挑まないで、何がトライブレードだ」
「今の世界もちゃ~んと守らなくっちゃね!」
「セイバーだけじゃない。みんなを守るのが、私達の使命だ」
トライブレードとカインもアルルの言葉に続けた。
「何か悪い事が起こっても大いなる者は助けてくれない。ほんの少し、心配になってきました」
「神様に支配されるのは嫌ですが……それが本当かどうかを確かめましょう」
りんごとアリアは、アミティと同じく古のものの処遇に迷っていた。
頭の良い二人は、古のものが統制する世界も良いのではないかと考えていた。
「決まったか?」
「うん。あたし達は、古のものと戦う」
「だけど、ボク達は古のものを倒さない。止める」
「私達の言いたい事をあいつにぶつけて、それであいつが世界を壊すのをやめればいい」
「今ある世界を、古のものに変えられるわけにはいきませんからね」
アルル、アミティ、りんご、アリアの四人は、古のものと戦う事を決意した。
セイバー、エッジ、ソード、カインの四人も、彼女に続くように剣を構えた。
「……分かったよ。それじゃ、古のものがいるところに向かう、という事でいいんだね?」
「「「「「「「「うん(はい)!」」」」」」」」
八人は声を揃えて頷いた。
彼女達の表情からは、真っ直ぐな意志の強さが感じられた。
「……ありがとう」
レムレスは、八人の決意を受け取り、彼らを時空の狭間に送る事を決めた。
「一緒に頑張ろうね、アミティ、りんご、アリア」
「はい!」
「うん!」
「分かりました!」
「これが最後の戦いだよ、エッジ、ソード、父さん」
「おう!」
「ええ!」
「ああ……」
最終決戦は、もう目と鼻の先だ。
次週はいよいよラストダンジョン突入前の準備です。
世界を守るために、彼らは戦います。