魔導物語 Seven Catastrophe 作:アヤ・ノア
この世界に異変を起こした黒幕と対峙しようとしています。
黒幕は、何を望んでいるのでしょうか。
「……う……」
「大丈夫だった? 今、起こしてあげるね」
そう言って、セイバーは倒れているアルルにゆっくりと近付き、
ビンタでアルルの目を覚ました。
「いったぁい! 何するのさ、セイバー!」
「……もう、中ボスはみんな倒したんだよ」
「え? ど、どういう事?」
困惑するアルルを後目に、セイバーはエッジ達にアイコンタクトを送る。
すると、エッジ、ソード、カインは倒れている他の七人を次々と起こした。
「う~ん……何が起こったのだ?」
「キミ達はあのドラゴンの叫び声でみんな倒れてしまった。
だから、オレ達が代わりに戦って倒したんだ」
エッジがレイリーに事情を説明すると、レイリーは納得したように頷いた。
「……つまり、あたし達の代わりにボスをやっつけたって事なの?」
「そういう事よ」
「ありがとう、みんな!」
そう言って、アミティはセイバー、エッジ、ソード、カインに次々と抱き着いた。
アルル、りんご、アリアの三人は屈辱的だったので何もしなかったが、
アミティは純粋に、助けてくれたために彼らに感謝したのだ。
「アミティさんはとても純粋ですね」
「ええ……私と同い年なのに、大違いです」
「ボクは何度もダンジョンを探索したのに……伝説の三剣士とはいえ、ちょっと悔しかったな」
「ぐっぐぐー」
こうして混沌の化身とグランドドラゴンを倒した12人は、
古のものがいる場所へと進んでいった。
それを阻むように、魔物が次々と目の前に現れる。
「アルル! ここは私に任せなさい!」
「えっ!?」
すると突然、ルルーがアルルの前に立った。
「あんたはそこにいる人達と一緒に、古のものって奴にガツンと一発食らわせるのよ!」
どうやら、この場にいる魔物は、全て仲間達が相手してくれるらしい。
ルルーの掛け声に乗ったのか、シグ、まぐろ、レイリーも彼女に付き添うように立つ。
「アミティのじゃまはさせないー、相手してやるー」
「悪いけど、りんごちゃんの願いを叶えるためにも、時間稼ぎに付き合ってもらうよ★」
「わたしは……おまえなんかに絶対負けないのだ! アリアはわたしを信じているのだ。
だからわたしも、アリアを信じて勝つのだ!」
シグ、まぐろ、レイリーが右手を掲げて魔物と戦う準備に入る。
もちろん、まぐろとレイリーは、あらかじめ武器を抜いていた。
「トライブレードは勇者だけど」
「やっぱり、最後はアナタ達に任せないと、ね」
「オレはルルーも世界も大切にしたいけど、それと同じように、キミ達を大切にしたい」
「君達が希望の光とならんことを。必ず……勝って帰ってくるんだぞ」
続いて、トライブレードとカインも、
アルル達を庇うように武器を抜き、魔物の前に立ち塞がった。
「みんな……」
「ありがとうございます……」
「こんなに頼れる仲間がいるなんて……」
「信じられ、ますね……」
頼もしい仲間の存在に、アルル、アミティ、りんご、アリアの目から少し涙が零れる。
四人はうん、と頷いた後、奥へ奥へと走り出す。
「さあ、勝負だ! かかってこい!」
「トライブレード最後の活躍、いっくよー!」
「アタシ達を怒らせるとどうなるか、アンタ達に教えてあ・げ・る・わ・よ」
「伊達に人類史上最強の剣士と呼ばれていない事を思い知らせてやろう」
アルル、アミティ、りんご、アリアの四人は、ようやく次元の狭間の最奥に辿り着いた。
しかし、そこには何もなかった。
「何もありませんね……」
りんごはうーんと顎に手を当てており、アリアも何か考え事をしていた。
すると、アミティが何かに気づいたらしく、それがある方向を指差した。
「ねえねえ、これ見て。何か小さい穴があるよ」
「あ……ホントだ!」
りんごの目には、僅かに開いた次元の歪みが映っていた。
「よく見つけましたね、アミティ!」
「えへへ、ありがとう」
「でも、そこが敵の住む場所なら、どうやって通れるんでしょう……」
次元の歪みは、四人が入れるような大きさではなかった。
どうすればいいかを考えていると、突然、カーバンクルがとてとてと歩き出す。
「カーくん?」
「ぐ……ぐーーーーーーーーーーーーっ!!」
カーバンクルの額の宝石、ルベルクラクが光ったかと思うと、
そこから真っ赤なビームが発射された。
ビームが次元の歪みに命中すると、次元の歪みは大きく開き、人一人が入れる大きさになった。
「次元の歪みが開いた! 凄いよ、カーくん!」
「ぐっぐぐーぐ!」
次元の歪みを開けてくれたカーバンクルに、アルルは大いに感謝した。
カーバンクルのビームはいつ発射するのかは気まぐれだが、
それが彼女達が歩む道を開いてくれる事は、他の三人にも分かった。
「……いよいよ、だね……」
この中に入れば、もう二度と戻れなくなるかもしれない。
もしかしたら、空間の中で息絶えてしまうかもしれない。
りんごは、そう思ったのか身体を震わせた。
「どうしましたか、りんごさん?」
「怖いです……。もし、二度と戻れなくなったなら……」
「大丈夫です。私達を信じてください。古のものは必ず倒せますから。
だから、怯えないでください」
怖気づくりんごをアリアは優しく励ました。
「はい……分かりました!」
りんごは頷くと、真っ直ぐ次元の歪みを向いた。
アルル、アミティ、アリア、カーバンクルも、
彼女に合わせて次元の歪みの方に目線を合わせ、そして互いに目配せして頷く。
「よし……みんな、行くよ!」
「「「せーの!!」」」
アルルの号令で、アルル、アミティ、りんご、アリアは次元の歪みに飛び込んだ。
カーバンクルも遅れて次元の歪みに入った。
四人が飛び込んだ空間は、まるで宇宙空間のように重力がなかった。
全員が空中に浮かんでいて、地面すら把握できないが、
四人は落ち着いて辺りを見渡し、真っ直ぐ進んでいった。
すると、四人は人の形をした、しかし人とは程遠い何かを発見した。
「貴方が……ラスボス、古のものですね!」
「左様」
「ボク、本気を出すからね」
「ぐぐー」
そこにいたのは、この世界で起きた異変の黒幕、古のものだった。
アルルは全力を出すために、杖を抜く。
古のものはアルルとりんごの声を聞くと高く浮かび上がり、四人の頭の中に声をかけてきた。
「う……これは、テレパシー!?」
「小娘よ……ここまで来たからには、我の望み――この世の浄化を止めるという事だな?」
「あ……当たり前だよ! この世界が滅びるわけにはいかないからね!」
古のものが望むのはこの世の浄化……すなわち、世界を滅ぼす事である。
そんな事はさせないと、アミティは古のものを止めようとしたが、
古のものは悲しそうな声で語りかける。
「我は悲しんでいるのだ」
「何……?」
「古きものを好み、新しきものを貶す者。新しきものを好み、古きものを貶す者。
国を背負うはずの国民の堕落。他者を労わず、ただ働かせるだけの姿勢。
このような闇に光を照らそうと、人は誰かのために動くだろう。
しかし、人の為と書いて偽と読む。
誰かのために動こうとも、欲が勝り、結果的には誰かを、ひいては自身をも破滅させる。
これだけで、人が世を汚くしている事は確実だ。
……美しき世は、失われた。もう、こんな穢れた世に価値などない。
故に、この世を浄化する事を決めたのだ」
「だけど、それを良くしていくのも人なんだよ!
みんなを殺しちゃったら、もう二度とこの世界は良くならないんだよ!」
アミティが反論するが、古のものは首を横に振る。
「最早国民は今の世に、将来に、希望を持たぬ。期待していた我は、完全に失望した。
己自身の手で滅びを迎える前に、我自らが滅ぼそうではないか」
放置して人類が自滅する前に、古のもの自身が人類を、世界を滅ぼす。
それが、古のものの望みなのだ。
「破滅で世界を救おうだなんて、そんなの本末転倒だよ!」
「ぐーぐぐー!」
しかし、アルルは古のものの望みを、カーバンクルと共に真っ向から否定した。
そして、古のものに強くこう言った。
「キミは、世界を滅ぼした後は、どうするの?」
「世界をもう一度作り直すのだ。もう二度と、絶望が生まれないように。
愚かな人が、生まれないように」
「作り直すって……じゃあ、みんなをキミの思い通りに動く人形にするって事なの?
そんなのって……嫌だよ!」
「みんなが貴方の定めた通りに生きる。つまり、可能性がなくなるなんて、面白くないです!」
全てが分かり切った事しか起こらない世界は、アミティとりんごにとっては空しいものだ。
二人はどんなものが出てくるのか分からず、
また、可能性にも満ちている、今の世界を望んでいるのだ。
「可能性とは即ち危険性でもある。だから世界は腐っているのだ!」
それでも古のものは頑として譲らない。
アリアは杖を構え、古のものに向けてこう言った。
「確かにあなたの言う通り、世界は腐っています。ですが、それらは皆、どこかで繋がっている。
だからこそ、世界は保たれているのです」
「私達は私達の世界を続けていきたい。
貴方の独りよがりで、世界を変えていいわけがありません!」
古のものがやろうとしている事は、結局は古のものの自己満足に過ぎない。
そう思ったりんごも、古のものを倒すために本を取り出した。
古のものは呆れて、ゆっくりと降りた後、哀れみの目を四人に向ける。
「そこまで汝らが言うのであれば……その思いが本物か、我自らが試すとしよう!!」
古のものが叫ぶと、その姿は見る見るうちに変わっていき、
三対の大きな黒い翼と赤い瞳が現れ、空間全体を覆うように巨大化していく。
その姿は、まるで異世界に存在する「邪竜」のようだった。
アルル、アミティ、りんご、アリアは、古のものの姿を見てごくりと唾を呑んだ。
だが、これで怯むわけにはいかなかった。
「これが……最後の戦いだよ!」
Aのイニシャルを持つ四人と、古のものの最終決戦が、始まった。
次回が最終決戦となります。