魔導物語 Seven Catastrophe 作:アヤ・ノア
ブレイカーの襲撃で、アルル達は異なる世界に飛ばされてしまった。
アルルは元の世界でトライブレードの一人、セイバーと出会った。
そして、アミティが出会ったのは……。
「うぅ……ここは、どこ……?」
アミティは、気が付くとナーエの森に飛ばされてしまっていた。
「あ、そうだ! みんなはどこにいるの?」
きょろきょろと辺りを見渡すアミティ。
しかし、周りに知っている人は誰もいなかった。
「どうしよう……誰もいないよ……。早くみんなを探さないといけないのに……」
ふらふらとアミティはナーエの森を歩く。
草木はいつも通り生い茂っていて、生き物もいつも通りに動いている。
だが、自分以外に他の人間はいない……その事がアミティを不安にしていた。
「すみませーん! 誰かいませんかー!」
アミティは大声で人を呼び、助けが来るのを待つ。
だが、人が来る事はなく、ただアミティの声が森に木霊するだけだった。
「……やっぱり誰もいない……。あたしは永久に一人ぼっちなの……?」
寂しさから、アミティはぺたんとナーエの森に座り込んでしまった。
「……よし、魔物はもういないな」
茶色い短髪の剣士が魔物を全滅させた後、剣をしまい、青緑色の瞳で森を見渡す。
「他に、この森にいる奴は残っているのか? それを見つけたら、戻ろうか」
剣士は他に人がいるかどうかを探すため、森の奥に向かって歩いた。
「……おや?」
すると、剣士は何かを見つけたようだ。
剣士がその方向に向かって歩いていくと、赤いぷよを模した帽子を被った少女を見つけた。
「あれ? キミはもしかして、ここに迷い込んできたのか?」
「迷い込んできた……って、どういう事なの?」
「ここは、ナーエの森であって、ナーエの森ではない。詳しい事は、この森を出てから話す」
「え、ちょっと!」
そう言って、剣士はアミティを立たせると、彼女の手を引いて、ナーエの森を出た。
「つまり、今あたしがいる世界は、パラレルワールドって事?」
「そういう事になるな」
剣士は、アミティがプリンプタウンのパラレルワールドにいる事を話した。
プリンプタウンであってプリンプタウンではない……
そんな世界にいるという事実にアミティは困惑した。
「……はぁ、みんなに会えないだなんて悲しい……」
「オレはキミとは初対面だが、どうしてそんなに悲しいんだ?」
「あ、実はね……」
アミティは、剣士に今までの事情を話した。
「なるほど。それでキミは、試練の最中にいなくなった友達を探しているのか」
「うん」
「だが、ここにはもういないと思う」
「そっかぁ……」
剣士の言葉にアミティは落胆する。
そんな彼女の肩に、剣士は手を置いた。
「安心しろ。絶対にオレ、エッジがキミの友達を見つけてやる。だから、落ち込むな」
「ありがとう……エッジさん……」
「さんはいらない、エッジと呼んでくれ」
「うん! それじゃあ一緒に行こう!」
アミティはすぐに元気を取り戻し、エッジと行動を共にする事にした。
「あ、あたしはアミティだよ。よろしくね!」
「ああ、よろしく」
「……そういえば、娘は元気なんだろうか」
「娘? 誰か子供がいるの?」
「ああ、オレの娘のルルーは妻に似て綺麗だけど、お転婆で手を焼くな」
「え、えええええええええ!!」
アミティは、エッジがルルーの父親であるという事に驚いた。
確かにこの男性は40代半ばといった感じで、子供がいてもおかしくないような年齢だ。
しかし、アミティはまさか彼の娘があの格闘女王だったなんて……という顔をしていた。
「まぁ、驚くだろうなぁ。オレとルルーは腕力以外似てないし」
「まぁ、ルルーはちょっと苦手だけどね……;」
談笑しながら二人が歩いていると、目の前に二体の巨大な犬が現れた。
「うわぁ、おっきな犬だ!」
「気を付けろ、こいつはヘルハウンドだ。火を噴くし力も強いぞ!
……さぁ、魔物よ、この剣の錆となれ!」
エッジは剣を構えてヘルハウンドを迎え撃つ。
アミティも彼に続いて戦闘態勢を取った。
「悪いけど、あたしは負けないよ! ブラストビート!」
アミティはヘルハウンドに風の塊を飛ばす。
だがヘルハウンドはそれを吸い込んで飲み込み、口から火を噴いてアミティを攻撃した。
「危ない! スピードファング!」
すぐにエッジは剣で火を防ぎ、ヘルハウンドを斬りつける。
「きゃああ!」
「うぐぅ!」
アミティとエッジはヘルハウンドに噛みつかれて浅くない傷を負う。
異変の影響か、顎の力が強くなっているようだ。
「くそ、なんという強さだ! 体力を大きく削られてしまった……」
「回復するよ、ヒーリング!」
アミティは回復魔法を唱え、エッジの体力を回復させる。
「助かる」
「炎の魔物にはこれが効くよ! ブリザード!」
「よしっ! ソニックバスター!」
アミティは吹雪を起こしてヘルハウンドを凍らかせる。
その隙にエッジが剣を抜刀し、凍っているヘルハウンドを衝撃波で切り裂いた。
「よし! 倒したね!」
「待て」
アミティが喜んで先に進もうとすると、エッジが制止した。
「なんで?」
「あいつらはまだ……生きている」
「えっ? わ、わわっ!」
エッジの言う通り、ヘルハウンドは大ダメージを受けながらも立ち上がった。
「攻撃力だけじゃなくて、体力も上がってるの!?」
「全体的に能力が上がってるんだ、当然だろう。気は抜くなよ」
「もちろんだよ、ライトニングボルト!」
「スピードファング!」
アミティは雷を落としてヘルハウンドを痺れさせ、
エッジは素早く剣を抜いてヘルハウンドを斬りつける。
ヘルハウンドも執念深くアミティ達を襲ったが、連続攻撃を受けて体力が減っていった。
「これで、とどめだよ! アクセル、アクセル、ブ・ブ・ブリザード!!」
そして、アミティが増幅呪文を唱えた後に両手から吹雪を放つと、
ヘルハウンドは氷の像となり、砕け散った。
「プリンプに、こんな強い魔物っていたっけ……?」
戦闘を終えた後、アミティが汗を拭う。
平和なプリンプタウンのはずなのに、強い魔物がいるなんて、アミティは信じられなかった。
「どうやら、奴らはこの並行世界にも手を伸ばしているようだ……。
奴らを倒さない限り、この世界も平和にならない」
「奴ら?」
「世界を破滅に導こうとする七人の狂戦士、カタストロファーセブンだ。
そいつらが手始めに魔物をばら撒いたのだろう」
つまり、アミティ達が倒した魔物は、カタストロファーセブンの尖兵だったらしい。
「奴らを止めなければ世界は滅んでしまう。アミティ、オレに協力してくれるか?」
「な、なんだか壮大になったけど……断る理由はないし、もちろんOKだよ!」
そう言って、アミティはエッジの手を握った。
それと同時に、彼女の腹の虫が小気味よく鳴った。
「……あ、その前にご飯食べてからね」
「あ、ああ……;」
こうして、赤ぷよ帽の少女は、格闘女王の父親と行動を共にする事になった。
人間の中では自分よりもかなり年上だが、持ち前の明るさで仲良くなれるだろう。
~次回予告~
あんどうりんごは、アルル同様元の世界に戻ってしまった。
プリンプタウンに簡単には戻る事ができず、りんごは困惑した。
チキュウで出会ったのは、美しい剣士だった。