魔導物語 Seven Catastrophe 作:アヤ・ノア
魔導世界で、アルルはセイバー、チコと共に異変を解決するべく回る。
魔物を退治しつつ敵を追っていくと、闇に包まれた洞窟に入る。
そこで待ち受けていたのは、カタストロファーセブンの一人、バスター。
果たして、アルル達はバスターを倒す事ができるのだろうか。
「どうやら、来たようだな……」
洞窟の奥に立っていたのは、赤い髪を持つ上半身に何も纏っていない筋骨隆々の大男だった。
「俺様はバスター! カタストロファーセブンの一人だ!」
バスターと名乗った男はアルル達に拳を突き出す。
彼の拳からは、瘴気が湧き出ていて、触れただけで気分が悪くなりそうだった。
「俺様はこの世界をぶっ潰したいのさぁ! でもまずは、てめぇらからぶっ潰してやるぜ!」
バスターの言葉を聞いたセイバーは、鞘から剣を取り出して構える。
「悪いけど、私達も世界を守るために戦っているんでね。君みたいな奴に潰されてたまるか!」
「そうだよ!」
「ぐーぐー!」
「あなたのような侵略者に、負けるわけにはいきません!」
アルルは戦闘態勢を取り、チコも杖を構える。
二人の様子を見たバスターが鼻で笑う。
「てめぇらもその女と同じ目的か」
「ううん、違うよ。ボクがキミを倒すのは、世界を救うためじゃない。みんなのためなんだ!」
バスターの言葉にアルルは首を横に振る。
アルルが守りたいものは世界ではなく、この世界に住む全ての生命なのだ。
「私は……あなたのせいでみんなが悲しむのを見たくはないんです。だから私も……戦います!」
「へっ、そうかよ。なら、てめぇらと相容れる事はないな! 全力でかかってこいやぁ!」
狂戦士バスターとの戦いが、始まった。
「ウィンドカッター!」
セイバーは手から風の刃を放ってバスターを切り裂く。
「おらおらおらぁ!」
「危ないよ、チコ!」
チコにバスターの拳が当たろうとしたところで、チコが盾を使って彼女を庇う。
「ファイヤー!」
「魅惑の月!」
アルルは火炎弾を、チコは三日月弾を放つ。
その隙にアルルはショックでバスターの動きを止めようとするが、
バスターはその魔法を打ち消してチコに突っ込んでいく。
「そんなへなちょこ魔法なんて効くわけねぇだろ。食らえ、雷神拳からのストレート!」
「そんな攻撃、効くか!」
セイバーは盾でチコを庇い、バスターの攻撃を防ぐが、バスターはにやりと笑みを浮かべる。
彼の目論見通り、セイバーの身体に電撃が流れ、彼女を痺れさせた。
「ぐわあああああああ!!」
「俺様がただの脳筋だと思ったら大間違いだぜ!」
「くそ……魔導拳も使えるのか……!」
電撃攻撃を受けたセイバーは脂汗を掻いていた。
「セイバー、あまり無茶はしないで。いざとなったらボク達が守ってあげるから!」
「ぐーぐ、ぐーぐぐー!」
「ああ、ありがとう、アルル……」
アルルはセイバーを「友達」ではなく「仲間」だと思っており、
彼女を守りたいのもその理由であった。
「やっぱり君は、私の友達だよ。だからアルル、私も君の期待に応えるよ!」
「抱擁の風」
「ウィンドソード!」
チコがセイバーの剣に風を纏わせた後、セイバーはその剣でバスターを斬りつけた。
「……ふ、やるじゃねぇかよ、勇者とそれに付き従う小娘」
「は、勇者とは言うじゃない。……私は『彼』とは全然違うんだけどね」
セイバーは息を切らせながら剣を握り続けている。
対するバスターはまだ体力が残っており、余裕な様子だ。
「せっかくぶっ潰してぇのに、なんで抵抗し続けるんだよ。とっとと楽になれよ」
「……それは、私が君に言う言葉じゃないかな?」
「ダイアキュート、ダイアキュート、ダイアキュート、ダイアキュート……」
アルルは大ダメージを与える準備として、増幅呪文を唱え続けた。
バスターはアルルの詠唱を阻止しようとするが、
そこにセイバーとチコが入ってアルルを守るように攻撃する。
セイバーはバスターの拳を盾で受け止め、反撃でバスターを斬りつける。
「アルル!」
「うん、準備オッケー!」
チコとセイバーがその場を離れると、アルルは魔力を溜めた手をバスターに突き付けた。
「いっくよー! ファファファファファファファイアーストーム!!」
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
アルルが魔力を解放すると、炎の嵐がバスターを包み込み、光や熱と共に大爆発を起こした。
「よし、やった!」
「……フラグ立つよ」
アルルが喜ぶのも束の間、バスターはボロボロになりながらもゆっくりと立ち上がった。
その目には未だに、闘争心が宿っている。
「よくも、やりやがったなぁ……。こ、こうなったら……俺様の本気、見せてやるぜ……!」
「本気? ……まさか!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
バスターの身体を禍々しいオーラが包み込むと、彼の姿が見る見るうちに変化していく。
頭から黄金の角が何本も生え、腕は四本に増え、肌は赤くなり装甲が身体を包み込んだ。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
第二形態に変化したバスターがチコに襲い掛かる。
「グォォォォォォォォォォォ!!」
「抱擁の風!」
バスターは拳をチコに向かって振り下ろす。
チコは何とか風の魔法を唱えて攻撃を防いだが、大きく仰け反ってしまった。
なおもバスターの連続攻撃は続き、リバイアを使ったがパワーの前に結界が壊れてしまう。
「アイスストーム!」
「ウォォォォォォォォォォォ!!」
「魔法が効かない!?」
「くそ、剣も効かないよ!」
アルルの氷魔法を跳ね返すバスター。
セイバーの剣もバスターの強烈なパワーで弾き返した。
「なんというパワー……これが本気の彼でしょうか」
「ぐー、ぐぐーぐー!」
「……」
カーバンクルとチコがバスター第二形態のパワーに驚愕している時、
バスターは既に必殺技の構えを取っていた。
あれを食らえば、ひとたまりもない。
チコは何としてでも、バスターの必殺技を止めなければ……と考え続けた。
一体どうすればいいのか、と考えていた時、バスターが目の前に突っ込んでいった。
「!!」
「みんな、攻撃をかわして!」
「ウオォォォォォォォォォォ!!」
「うわぁ!」
攻撃をかわそうとするアルル達の周囲に、大量の岩が落ちてきた。
これで必殺技が必ず命中するようにするためだ。
「ウガアァァァァァァァァァァァァァァ!!」
そして、バスターの四本腕による一撃が、まさに命中しようとしたその時。
「グ……ッ!?」
突然、バスターの動きが止まった。
一体何をしたんだ、とバスターが狼狽える。
その時に彼が見たのは、光っている杖を持ったチコの姿だった。
「チコ!?」
「必殺技が来る瞬間にスネアを使って、動きを止めたんです。
魔法が効いている間に、決着をつけましょう!」
「うん……分かった。ダイアキュート! ダイアキュート!」
バスターが動かなくなった今がチャンスだ。
チコに助けてもらったアルルは、自分とセイバーにダイアキュートをかける。
「ジュ・ジュゲム!」
「グランドクロス!」
アルルが放った爆発魔法と、セイバーが放った十字の剣閃が、バスターを纏う装甲に命中した。
攻撃が命中した装甲は砕け散り、角にもパキパキと罅が入っていく。
「グオオオオオオオオオオオ!!」
そして、角が砕け散ると同時に、バスターは塵となって跡形もなく消滅した。
「やったぁ!」
今度こそ本当にバスターを倒し、この世界の脅威を1つ退けた。
「私達の勝利ですね!」
「ぐーぐぐーぐー!」
アルル達は互いに勝利を喜び合った。
すると、洞窟を覆っていた闇が徐々に引いてきた。
「バスターがいなくなったから……」
「この洞窟も、だんだん平和になっていきますね」
「これを見たら、本当にボク達、勝ったんだなぁ、って思うよ」
「ぐぐーぐー」
「それじゃあそろそろ、この洞窟を出ようか」
「うん!」
アルル達は喜びながら、洞窟を後にするのだった。
「これで、世界を奴らの手から少し解放できたね」
目標を達成したセイバーは、晴れ晴れとした様子で周囲を見渡していた。
一息ついたところで、セイバーはアルルとチコの方を振り返る。
「二人ともありがとうね。君達がいなかったら、私はあいつに勝てなかったよ」
「どうして?」
「ぐーぐぐ?」
「どうしてですか?」
セイバーは一人でも十分強いはずなのに、どうしてそんな事を言ったのだろう。
アルルとチコが疑問に思っていると、セイバーはこう答えた。
「私は、力は強くても心は強くないからだよ。
強い力には相応の強い心がなければ、すぐに人は力に飲み込まれてしまう。
末路は死か、生き残っても堕落だよ」
セイバーの言葉に、アルルとチコはごくり、と唾を呑んだ。
「私はトライブレードのリーダーだけど、エッジやソード、そして父さんと違って、
心なんてまだ全然強くないよ」
「父さん……?」
セイバーの「父さん」という言葉が気になったアルルはセイバーに聞こうとするが、
彼女は「気にしないで」と話を続ける。
「とにかく、君達がいたおかげで、私は精神的に支えられたって事」
「うん、だってキミはボクの仲間だから」
「だーかーらー、友達って言ってるだろうが!」
「だからボクはキミの事を友達だって知らないし、友達も仲間も一緒でしょ?」
「全然違うってば!」
ムキになるセイバーを見て、チコは何とも微笑ましくなっていた。
「二人とも楽しそうですね。こっちまで笑顔になってきました」
「あっ、チコ! そ、それはね……!」
「し、下心なんて私にはありませんよ?」
三人が楽しく会話をしていると、突然、空が揺れ出した。
「! 空が……!」
「もう、世界は終わりつつある、って事だね……どうする?」
「一度、宿屋に戻ろう。休息もいつかできなくなると思うと……」
「……そうだね」
「ぐーぐぐー」
アルル、カーバンクル、チコ、セイバーは、疲れを取るために宿屋に向かうのだった。
今この時間から、刻一刻と、世界は終焉に向かっているのだ。
~次回予告~
アミティはプリンプタウンに戻るため、エッジと共にパラレルワールドを冒険する。
そこは、プリンプタウンよりも危険な世界であった。
しかし、アミティは諦めず、脱出のための方法を考えるのだった。