魔導物語 Seven Catastrophe   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

魔導世界で、アルルはセイバー、チコと共に異変を解決するべく回る。
魔物を退治しつつ敵を追っていくと、闇に包まれた洞窟に入る。
そこで待ち受けていたのは、カタストロファーセブンの一人、バスター。
果たして、アルル達はバスターを倒す事ができるのだろうか。


08「狂戦士バスター」

「どうやら、来たようだな……」

 洞窟の奥に立っていたのは、赤い髪を持つ上半身に何も纏っていない筋骨隆々の大男だった。

「俺様はバスター! カタストロファーセブンの一人だ!」

 バスターと名乗った男はアルル達に拳を突き出す。

 彼の拳からは、瘴気が湧き出ていて、触れただけで気分が悪くなりそうだった。

「俺様はこの世界をぶっ潰したいのさぁ! でもまずは、てめぇらからぶっ潰してやるぜ!」

 バスターの言葉を聞いたセイバーは、鞘から剣を取り出して構える。

「悪いけど、私達も世界を守るために戦っているんでね。君みたいな奴に潰されてたまるか!」

「そうだよ!」

「ぐーぐー!」

「あなたのような侵略者に、負けるわけにはいきません!」

 アルルは戦闘態勢を取り、チコも杖を構える。

 二人の様子を見たバスターが鼻で笑う。

「てめぇらもその女と同じ目的か」

「ううん、違うよ。ボクがキミを倒すのは、世界を救うためじゃない。みんなのためなんだ!」

 バスターの言葉にアルルは首を横に振る。

 アルルが守りたいものは世界ではなく、この世界に住む全ての生命なのだ。

「私は……あなたのせいでみんなが悲しむのを見たくはないんです。だから私も……戦います!」

「へっ、そうかよ。なら、てめぇらと相容れる事はないな! 全力でかかってこいやぁ!」

 狂戦士バスターとの戦いが、始まった。

 

「ウィンドカッター!」

 セイバーは手から風の刃を放ってバスターを切り裂く。

「おらおらおらぁ!」

「危ないよ、チコ!」

 チコにバスターの拳が当たろうとしたところで、チコが盾を使って彼女を庇う。

「ファイヤー!」

「魅惑の月!」

 アルルは火炎弾を、チコは三日月弾を放つ。

 その隙にアルルはショックでバスターの動きを止めようとするが、

 バスターはその魔法を打ち消してチコに突っ込んでいく。

「そんなへなちょこ魔法なんて効くわけねぇだろ。食らえ、雷神拳からのストレート!」

「そんな攻撃、効くか!」

 セイバーは盾でチコを庇い、バスターの攻撃を防ぐが、バスターはにやりと笑みを浮かべる。

 彼の目論見通り、セイバーの身体に電撃が流れ、彼女を痺れさせた。

「ぐわあああああああ!!」

「俺様がただの脳筋だと思ったら大間違いだぜ!」

「くそ……魔導拳も使えるのか……!」

 電撃攻撃を受けたセイバーは脂汗を掻いていた。

「セイバー、あまり無茶はしないで。いざとなったらボク達が守ってあげるから!」

「ぐーぐ、ぐーぐぐー!」

「ああ、ありがとう、アルル……」

 アルルはセイバーを「友達」ではなく「仲間」だと思っており、

 彼女を守りたいのもその理由であった。

「やっぱり君は、私の友達だよ。だからアルル、私も君の期待に応えるよ!」

「抱擁の風」

「ウィンドソード!」

 チコがセイバーの剣に風を纏わせた後、セイバーはその剣でバスターを斬りつけた。

 

「……ふ、やるじゃねぇかよ、勇者とそれに付き従う小娘」

「は、勇者とは言うじゃない。……私は『彼』とは全然違うんだけどね」

 セイバーは息を切らせながら剣を握り続けている。

 対するバスターはまだ体力が残っており、余裕な様子だ。

「せっかくぶっ潰してぇのに、なんで抵抗し続けるんだよ。とっとと楽になれよ」

「……それは、私が君に言う言葉じゃないかな?」

「ダイアキュート、ダイアキュート、ダイアキュート、ダイアキュート……」

 アルルは大ダメージを与える準備として、増幅呪文を唱え続けた。

 バスターはアルルの詠唱を阻止しようとするが、

 そこにセイバーとチコが入ってアルルを守るように攻撃する。

 セイバーはバスターの拳を盾で受け止め、反撃でバスターを斬りつける。

「アルル!」

「うん、準備オッケー!」

 チコとセイバーがその場を離れると、アルルは魔力を溜めた手をバスターに突き付けた。

「いっくよー! ファファファファファファファイアーストーム!!」

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 アルルが魔力を解放すると、炎の嵐がバスターを包み込み、光や熱と共に大爆発を起こした。

 

「よし、やった!」

「……フラグ立つよ」

 アルルが喜ぶのも束の間、バスターはボロボロになりながらもゆっくりと立ち上がった。

 その目には未だに、闘争心が宿っている。

「よくも、やりやがったなぁ……。こ、こうなったら……俺様の本気、見せてやるぜ……!」

「本気? ……まさか!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 バスターの身体を禍々しいオーラが包み込むと、彼の姿が見る見るうちに変化していく。

 頭から黄金の角が何本も生え、腕は四本に増え、肌は赤くなり装甲が身体を包み込んだ。

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 第二形態に変化したバスターがチコに襲い掛かる。

「グォォォォォォォォォォォ!!」

「抱擁の風!」

 バスターは拳をチコに向かって振り下ろす。

 チコは何とか風の魔法を唱えて攻撃を防いだが、大きく仰け反ってしまった。

 なおもバスターの連続攻撃は続き、リバイアを使ったがパワーの前に結界が壊れてしまう。

「アイスストーム!」

「ウォォォォォォォォォォォ!!」

「魔法が効かない!?」

「くそ、剣も効かないよ!」

 アルルの氷魔法を跳ね返すバスター。

 セイバーの剣もバスターの強烈なパワーで弾き返した。

 

「なんというパワー……これが本気の彼でしょうか」

「ぐー、ぐぐーぐー!」

「……」

 カーバンクルとチコがバスター第二形態のパワーに驚愕している時、

 バスターは既に必殺技の構えを取っていた。

 あれを食らえば、ひとたまりもない。

 チコは何としてでも、バスターの必殺技を止めなければ……と考え続けた。

 一体どうすればいいのか、と考えていた時、バスターが目の前に突っ込んでいった。

「!!」

「みんな、攻撃をかわして!」

「ウオォォォォォォォォォォ!!」

「うわぁ!」

 攻撃をかわそうとするアルル達の周囲に、大量の岩が落ちてきた。

 これで必殺技が必ず命中するようにするためだ。

「ウガアァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 そして、バスターの四本腕による一撃が、まさに命中しようとしたその時。

 

「グ……ッ!?」

 突然、バスターの動きが止まった。

 一体何をしたんだ、とバスターが狼狽える。

 その時に彼が見たのは、光っている杖を持ったチコの姿だった。

「チコ!?」

「必殺技が来る瞬間にスネアを使って、動きを止めたんです。

 魔法が効いている間に、決着をつけましょう!」

「うん……分かった。ダイアキュート! ダイアキュート!」

 バスターが動かなくなった今がチャンスだ。

 チコに助けてもらったアルルは、自分とセイバーにダイアキュートをかける。

「ジュ・ジュゲム!」

「グランドクロス!」

 アルルが放った爆発魔法と、セイバーが放った十字の剣閃が、バスターを纏う装甲に命中した。

 攻撃が命中した装甲は砕け散り、角にもパキパキと罅が入っていく。

「グオオオオオオオオオオオ!!」

 そして、角が砕け散ると同時に、バスターは塵となって跡形もなく消滅した。

 

「やったぁ!」

 今度こそ本当にバスターを倒し、この世界の脅威を1つ退けた。

「私達の勝利ですね!」

「ぐーぐぐーぐー!」

 アルル達は互いに勝利を喜び合った。

 すると、洞窟を覆っていた闇が徐々に引いてきた。

「バスターがいなくなったから……」

「この洞窟も、だんだん平和になっていきますね」

「これを見たら、本当にボク達、勝ったんだなぁ、って思うよ」

「ぐぐーぐー」

「それじゃあそろそろ、この洞窟を出ようか」

「うん!」

 アルル達は喜びながら、洞窟を後にするのだった。

 

「これで、世界を奴らの手から少し解放できたね」

 目標を達成したセイバーは、晴れ晴れとした様子で周囲を見渡していた。

 一息ついたところで、セイバーはアルルとチコの方を振り返る。

「二人ともありがとうね。君達がいなかったら、私はあいつに勝てなかったよ」

「どうして?」

「ぐーぐぐ?」

「どうしてですか?」

 セイバーは一人でも十分強いはずなのに、どうしてそんな事を言ったのだろう。

 アルルとチコが疑問に思っていると、セイバーはこう答えた。

「私は、力は強くても心は強くないからだよ。

 強い力には相応の強い心がなければ、すぐに人は力に飲み込まれてしまう。

 末路は死か、生き残っても堕落だよ」

 セイバーの言葉に、アルルとチコはごくり、と唾を呑んだ。

「私はトライブレードのリーダーだけど、エッジやソード、そして父さんと違って、

 心なんてまだ全然強くないよ」

「父さん……?」

 セイバーの「父さん」という言葉が気になったアルルはセイバーに聞こうとするが、

 彼女は「気にしないで」と話を続ける。

「とにかく、君達がいたおかげで、私は精神的に支えられたって事」

「うん、だってキミはボクの仲間だから」

「だーかーらー、友達って言ってるだろうが!」

「だからボクはキミの事を友達だって知らないし、友達も仲間も一緒でしょ?」

「全然違うってば!」

 ムキになるセイバーを見て、チコは何とも微笑ましくなっていた。

「二人とも楽しそうですね。こっちまで笑顔になってきました」

「あっ、チコ! そ、それはね……!」

「し、下心なんて私にはありませんよ?」

 三人が楽しく会話をしていると、突然、空が揺れ出した。

「! 空が……!」

「もう、世界は終わりつつある、って事だね……どうする?」

「一度、宿屋に戻ろう。休息もいつかできなくなると思うと……」

「……そうだね」

「ぐーぐぐー」

 アルル、カーバンクル、チコ、セイバーは、疲れを取るために宿屋に向かうのだった。

 今この時間から、刻一刻と、世界は終焉に向かっているのだ。




~次回予告~

アミティはプリンプタウンに戻るため、エッジと共にパラレルワールドを冒険する。
そこは、プリンプタウンよりも危険な世界であった。
しかし、アミティは諦めず、脱出のための方法を考えるのだった。
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