無間の英霊   作:サクウマ

10 / 10
エピローグです。
或いは、新たな門出へのプロローグ。


無間の英霊

「まずは、オルガマリー前所長についての話だけど」

 

 カルデア、管制室。

 そこで立花は一人の英霊――レオナルド・ダ・ヴィンチと向き合っていた。

 

「残念ながら、前所長が【霊長の守護者】――これがつまり【アラヤ】に記録された英霊のことを指すんだけど――として観測された事例は、今のところ、並行世界においても見られなかった」

「それじゃあ……」

「どうだろうね。彼女が英霊になれたかどうかは、まだ判断がつかないよ。そもそもが悪魔の証明なんだ。まったく彼女も意地の悪い置き土産を置いて行ったものだね」

 

 ダ・ヴィンチは首を振りながら言う。その顔には呆れが強くにじむものの、彼女の身を案じていることは立花にもよく感じられていた。

 

「それで、次はこの世界における古明地こいしの存在について。……これはもう、私としては諦めることをお勧めするよ。前所長との会話のログがあったから興味深いキーワードを端から探索してみたんだけど、結果は壊滅的だった。「幻想郷」「博麗神社」「守矢神社」「旧地獄」「地霊殿」……全て、該当候補地は存在しない」

「……」

 

 改めて突きつけられた事実に俯いた立花。そんな彼女を慰めるようにダ・ヴィンチは言う。

 

「まあ、悪い話ばかりじゃない。立花の魔力パスを検査した結果、確かに不明のサーヴァントとの魔力パスが確認できた。辿ることこそできなかったけど、彼女との縁はまだ切れてないってことだよ」

「うん……ありがとう、ダ・ヴィンチちゃん」

 

 

 

 ♡ ♥ ♡

 

 

 

「そろそろ、立ち直らないと……」

 

 冬木の特異点を攻略してから、七日。立花は未だに、当時のショックから抜け出せていない。

 魔術師としての経験豊かで知識も豊富だったオルガマリー。そして幼い様子ながらも、戦いのときには高い実力で立花を支えてくれていた古明地こいし。極限状態だったあの街の中で、二人の支えは立花にとってとても大きく――そして、それが隣からいなくなってしまった事実は、彼女には非常に重いものだった。

 

「こんな調子だと、次に二人に会った時に顔向けできないし……」

 

 立花はそう漏らしながらも、しかし暗い顔を隠せないままにカルデアの廊下を歩いていた。

 二人に会える目は未だ残っているとはいえ、それがいつになるかは分からないことであった。それでなくとも、彼女はこれから幾つもの特異点を渡り歩かなくてはならない、という重圧を抱え込んでいるのだ。下手をすればすぐに死んでしまうかもしれないという事実は、彼女の精神状態を著しく悪化させていた。

 

 

「――ふむ、貴方が藤丸立花ですか。さてはて、聞いていたよりも随分と覇気がないようですが」

「――!?」

 

 

 ――そして、そんな彼女に、投げかけられる声が、一つ。

 

 

「ええ、貴方のことは知っていますよ。特異点攻略、おめでとうございます。いえ、この言葉は少々酷だったかもしれませんね。なにせまだ最初の一つですから。ええ、分かりますよ。視えますから。ですが賛辞というものは受け取れるときに受け取った方がいいですよ。いつもあるとは限りませんもの」

 

 慌てて周囲を見回し、言葉の主を探そうとする立花。けれどそれを嘲笑うかのように、声は発信源の特定を拒み続ける。

 

「サーヴァントを呼んで探してもらう? それは素敵な発想ですね。ですが貴方の元には混ざりものが一人しかいないと聞いていたように思うのですが……ほう、三人も増えたのですか。それは素晴らしいですね。キャスターのクーフーリン。ええ、彼のことは分かりますとも。アーチャーのエミヤ? なるほど、確かに妙な弓を持った男はいましたね。……ほう! 最後の一人は酒吞童子と! いえ、失礼しました。なにぶんこちらの世界の萃香嬢がどのような存在かは非常に興味がそそられるものでして」

「……こちらの世界?」

 

 妙に饒舌な声の主。その言葉に僅かな違和感を感じた立花が問い返すと、暫しの沈黙ののちに返答が返ってきた。

 

「……本音を言えば、もう少し貴方の心を読んでいたかったのですけどね。まあ良いでしょう。それを口にしてしまったのは私の落ち度ですし、貴方がそれを拾えた以上、遊びの時間はここまでです」

 

 その言葉とともに、小さな人影が廊下の影から姿を現す。その姿を見て、立花は思わず声を上げた。

 

「――こいしちゃん?」

「ええ、よく似ているでしょう?」

 

 そうして、その小柄な少女――不遜な様子こそ似ても似つかないものの、服装、背丈、何より身体に巻き付けたコードが古明地こいしとそっくりなその紫髪の少女は、口角を上げて立花に言った。

 

「では改めて――初めまして、藤丸立花さん。私は古明地さとり――貴方に分かるように言うならば、古明地こいしの姉です。短い間ではあるでしょうが……楽しい交流となることを願っていますよ」




とりあえず、今のところは、本作はこれにて完結です。
お付き合い頂きありがとうございました。

人気投票前日に連載を始め、無意識の日のうちに連載を終えることができたこと、大変嬉しい限りです。これも皆さまの応援のおかげです。閲覧・評価・お気に入り登録、本当にありがとうございます。

さて、今朝がたに人気投票の速報値が出たと聞きました。
どうやらこいしちゃんは3位を奪還できたようで、たいへん喜ばしい限りです。他にもこいフラの魔理沙サンドとか、微動だにしないお姉ちゃんと勇儀さんとか、数年ぶりの霊夢一位陥落とかwin版最下位変動とか、あとは偶像が楽曲四位ランクインとか。なかなか激動の回でしたが、皆さんは誰に投票しましたでしょうか。
……なんて、そんな話題で盛り上がれるのが人気投票の魅力だと思います。

半分見切り発車で投稿を始めた本作ですが、ここまで読んで頂き、重ね重ね感謝申し上げます。

これからも(短編が中心ではありますが)投稿は続けていこうと思いますので、どうぞ見かけましたら覗きに来て頂けますと幸いです。

それではまた、次の幻想でお会いしましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。