無間の英霊   作:サクウマ

4 / 10
ルーキー日間の方で、最高39位を頂いたみたいです。皆さん評価・お気に入り本当にありがとうございます。

何となくお察しの方はいるかもしれませんが、当方は致命傷に見えるのに全く気にせずにこにこしてる女の子が性癖です。なのでこいしちゃんにつきましてはこれからも順当に致命傷を受けて頂く所存です。よろしくお願い致します(何を?)。


暗殺者と無意識

「本能の海に踊りましょう――【イドの開放】」

 

 こいしの言葉に呼応するように、その全身からハート形の妖弾が溢れ出す。妖弾は互いに交差しながら捻じれたような軌道を描いて飛び回り、敵サーヴァントを囲い込んでは圧し潰さんと襲い掛かった。

 

「――――ッハ! 他愛ナシ! 所詮コノ程度カ化ケ物!」

 

 けれど髑髏のサーヴァントは、踊るように隙間を抜けては短刀を投げて牽制する。

 

「もー、せっかく遊んでる(ころしあってる)のにノリが悪いじゃない!」

「何カト思エバオ遊ビ気分カ! 道理デ派手ナ割ニハヤケニ隙間ガアルワケダ」

「ノリだけじゃなくて意地も悪いのね!」

 

 ぷりぷりと怒った風な様子をみせるこいしだが、それでもなかなか妖弾は敵に当たらない。その様子に幾らか余裕を取り戻したらしいサーヴァントはこいしに向かって煽ってみせる。

 

「ドウシタ、ソノ程度デハ私ヲ殺セナイゾ?」

「それならこっちも簡単よね? 無意に溺れることなかれ――【スーパーエゴ】!」

 

 挑発し返すかのようなこいしの言葉が放たれた直後、妖弾が一斉に動きを止める。そのままぐるりと反転すると、まるで逆再生のように同じ軌道を描いてこいしの元へ飛び込んだ。

 

「グ、厄介ナ!」

「……びっくり。おじさん思ったよりやるのね」

 

 流石に後ろからの攻撃には対応しきれないらしく、敵性サーヴァントの動きが精細を欠く。それでも妖弾に掠るだけで直撃を受けない様子に思わずこいしは感嘆をあげた。

 

 妖弾が掠る。一瞬体勢が崩れるが直ぐに持ち直す。

 妖弾が掠る。思わず振り向きそうになったのを全力で堪える。

 妖弾が掠る。足を縺れさせ転がるが、その勢いで直ぐに立ち上がり復帰する。

 

 傍から見れば敵サーヴァントが調子を崩したようにしか見えないが、実際のところ髑髏のサーヴァントは、こいしから与えられた認識異常に抗っているという状態であった。

 

「――精神ニ異常ヲキタサセル光弾……宝具カ。ツクヅク厄介ナ奴ダ」

「だいたい正解。というか、それだけ食らってまだ避けられ続けるなんて思わなかったわ。そこまで理屈で動けるひとは初めてよ」

「ハッ、マルデ褒メラレタ気ガセンワ。ソモソモ貴様、マルデ本気デハナイダロウ?」

「……そんなことはないよー? 私自身はちゃんと本気でやってるもん」

「ドウダカナ」

 

 軽口を叩きながらも、困っちゃうな、とこいしは思った。じきに弾切れになってしまう、と。

 本能と抑制は表裏一体、イドの解放で放った弾を回収するのがスーパーエゴという弾幕だ。逆に言うなら、イドを放ったのと同じ時間しか、スーパーエゴは放てない。相手に余裕を与えるのはよくないと早々にイドを終わらせた彼女の判断が、回り回ってこいしの手札を削っていた。

 

 さてはて、次はどれを切ろうかと悩むこいしの耳元に、驚きに満ちたDr.ロマンの声が届いた。

 

 

 

「ねーねー、向こうでマシュさんと遊んでる(ころしあってる)のって、貴方のお仲間さんなのよね?」

「ソレガドウシタ? 言ッテオクガ、奴トテ素人ノ盾使イ一人ニヤラレル程ニハ甘クナイ」

 

 こいしの発した状況に似あわぬ軽い調子の問いかけに、髑髏のサーヴァントは警戒しながら言葉を返した。

 こいしの弾切れを予期していたのは敵性サーヴァント――静謐のハサンも同じである。彼らの周囲を取り囲む妖弾が確かに数を減らしていたから、それを見抜くのは容易であった。

 妖弾を放ち切ってから次の攻撃に移るまでの隙に短刀を放って体勢を崩し、更に近づいて宝具を食らわせる魂胆である。けれどそんなサハンの考えを知ってか知らずか、こいしはにこりと笑みを浮かべる。

 

「ふーん……一人だったら大丈夫、かあ」

 

 ハサンの視界の端にちらりと、守護障壁が広がるのが映る。恐らく盾使いの宝具である、と彼は即座に判断した。

 彼女が宝具を使えることは予想外であったし、その障壁の強度も驚くべきものであるように見えたが、しかし、それだけである。たかが障壁を張ったところで、ランサーを打ち倒せる訳がない。ハサンはそう即座に断じて目前の少女に向き直る。

 

 けれど。

 

「なら――()()()()()ならどうなのかしら?」

「ナニヲ馬鹿ナコトヲ――」

 

 ハサンがこいしの言葉を鼻で笑ったその瞬間。

 

 

 

「――――『灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』」

「――ッ!?」

 

 視界の端へ、炎を噴き上げながら現れた巨人に、ハサンの意識は完全に()()()()()

 

「馬鹿ナ――()()()()()ガ何故ココニ居ル、何故漂流者ノ肩ヲ持ツ!?」

 

 思わず声を荒げるハサン。気配無き者同士の戦いで、それは致命的な隙となる。

 

 

 

「――――()()()()()()()()()()、なんだっけ?」

「ナッ――!」

 

 

 

 耳元で囁かれた言葉と共に、ハサンはこいしに後ろから抱き着かれる。振りほどかんと身をよじれど、上から更に数十の茨で縛られてしまえば、抜け出すことは難しい。服を貫き全身に茨が刺さるのを感じた瞬間、彼の全身を埋め尽くすように巨大な薔薇が咲き乱れたのを視認して――

 

 

「これにて閉幕(ラストワード)――【ブランブリーローズガーデン】!」

 

「クソ、コノヨウナトコロデ、グッ、アアアアアッ!?」

 

 

 ――そのまま、彼の意識は消失した。

 

 

 

 

 ♡ ♥ ♡

 

 

 

「立花ちゃんマシュさんお疲れー」

「あ、こいしちゃんも終わったんだ。おかえり」

 

 こいしが立花のところへ戻ったのは、彼女たちがどうにか後から来た敵サーヴァント――ランサーを撃破し、一息ついたところでのことだった。

 

「いやー、ほんとはすぐに倒して加勢に行きたかったんだけどねー。まさかこっちが助けられちゃうとは」

「助けた……? 私達が?」

 

 困惑気味に返す立花に、こいしを助けたという自覚はない。こいしの言葉に含まれた意図を理解できるのは、彼女の戦いの経緯を知っているDr.ロマンのみである。

 

「んーまあ分かんなくてもいいよー。とりあえずあれだねー、よく倒せたね。えらいと思うよー」

「私の手柄じゃないよ。偶然助けてもらっただけだから」

「いいのいいの、幸運だって実力の内よ。ほらそんなことより両手出してー」

 

 恥ずかし気に謙遜する立花に諸手を上げて迫るこいし。困惑気味に立花が手を差し出すと、ぱちん、と景気良い音を立ててその手にこいしの手が合わさった。

 

「いえーい、勝利のハイタッチ!」

「あ、うん、いえーい」

 

 そうしてようやく、彼女たちは一息つくことができたのだった。

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