毎日更新というのが如何に難しいものなのかを、身に染みて感じるこの頃です。(訳:ストックが尽きました)(少なすぎない?)
友好的なキャスターの宝具によってランサーの撃破に成功した後、立花はキャスターと互いの現状について情報共有を行った。結論として、立花はキャスターの青年と、異変解決の間に限ったサーヴァント契約を交わすこととなる。それを終えたのを見計らって、こいしが二人へと声をかけた。
「それで立花ちゃん、そっちのひとがさっき手を貸してくれたひと?」
「うん、特異点の修正を手伝ってくれることになったキャスターさんだよ」
「おっけー。じゃあキャスターのお兄さん、同じキャスター同士よろしくねー」
「おう。よろしくな、お嬢ちゃん。……どっちかというとアサシンに見えるけどな。いや、俺の言えたことじゃねーか」
「これでも暗殺はあんまりしたことないんだけどねー」
彼女たちは冬木の心臓――『大聖杯』のある洞窟へ足を向けている。道中何度も異形の魔物に遭遇するが、全員にかけられたこいしの妖術の効果によって、彼女たちの存在には魔物の一匹として気付かない。念のためにとキャスターの青年が光弾を放ち魔物の駆除を進めるが、反撃どころか気付いた様子すら見られない魔物たちの様子に、彼は驚きを隠せない様子だった。
「冗談みたいな能力だな……なあ嬢ちゃん、そんな手札があるんならサーヴァントなんか避けて進めば良かったんじゃねえか?」
「やー、これも絶対効くようなものでもないのよね。派手な音をたてたら気付かれるし、勘のいいひとは初見で見抜くし、偶然でぶつかられることもあるし。それで背中を怪我するぐらいなら、立ちふさがる敵の一切合切を滅ぼしていく方が効率的じゃない?」
「おう、最後さえなければ俺も同意したんだがな」
「信じられないほどの蛮族ぶりね……ようやく安心して頼りにできそうな気がしてたんだけど」
キャスター二人の会話に、気を病んだような表情のオルガマリーが入り込む。あまりに覇気のない彼女の様子に冬木のキャスターが何があったかと尋ねるが、何でもないわと首を振りつつ返された。
「ただ……こうしていざ気を張らないでも良いようになると、嫌な想像が頭の中で止まらなくて」
「んーまあ、こんなにみんなから無視されているまんまだと、まるで私達が
「っ!」
にこにこと微笑みながら放たれたこいしの言葉に、びくりと肩を震わせるオルガマリー。一体何が気になったのかと青年のキャスターは軽く首を傾げるが、答えは出そうにもなかった。
「それにしても、お兄さんが来てくれて助かっちゃったわー。私もマシュさんも、あんまり攻撃向きじゃないんだもの」
「はあ? おい嬢ちゃん、あんまりそういう冗談は良くないぜ。お前はどう見ても攻撃役だろ」
何でもないように言ったこいしに困惑交じりにキャスターが返す。けれどこいしはそんなことないと手を振った。
「だって、私は妨害役だもの。攻めはいつもはお姉ちゃんの役目よ」
こいしの言葉を耳にした面々の反応は、様々であった。
「こいしちゃん、妹だったんだ」
「意外だった?」
「ううん、なんだか納得しちゃった」
立花は幾らか驚きつつも、どこか腑に落ちたような様子でこいしを眺めた。
「……そういえば、こいしちゃんはさっきの戦いのときに、本気じゃない、って言われてたね。それはそのことを指してたのかな」
「うーん、どうなのかしら。よく分かんないわー」
Dr.ロマンは、つい先程の戦闘の中で耳に届いていた会話をぽつりと想起する。
「ということは、こいしちゃんのお姉さんは更に強い、ということですか?」
「うん、すっごく強いよ。鬼も閻魔も本気になれば返り討ちにできるぐらい」
「ち、ちょっと待ちなさいよ」
戦慄した様子で確認するようにこいしに問うたのは、マシュだ。それに事もなげに返された言葉に、オルガマリーが慌てたように口を挟む。
「閻魔ってことは神霊クラスよね? それを返り討ちにできるってどういうことだか分かってるわけ?」
「んー? 閻魔さまが神様なのは知ってるけど、そんなに驚くことかしら?」
「……そうよね、何となくそんな気はしてたわ」
「はは、このお嬢ちゃん思った以上にやばい奴じゃねえか」
こいしの言葉にこめかみを押さえるオルガマリーと、乾いた笑いを漏らすキャスター。話の流れが読めず困惑する立花にマシュのフォローが入る。
「基本的に、神霊はサーヴァントとは比べ物にならない力を持ちます。仮にそれらと同格の英霊を呼び出すとなると、一側面のみを切り出すとしても出力不足、敢えて数段ほど格を落とす必要があるほどです」
「……よく分からないけど、とっても強いってことだよね」
「全く伝わってなくて腹立たしいけど、だいたいそういうことよ」
どこか諦観を感じさせるオルガマリーの言葉に立花は首を傾げたが、理解できていないことは明らかであったからそれ以上口を挟むことはなかった。と、そこで、そういえばとキャスターが疑問を投げかける。
「さっきから気になってたんだが、そのこいしちゃんってのはそこの嬢ちゃんの名前だよな。そっちのデミサーヴァントのお嬢ちゃんなら真名とは何の関係もないから気にすることでもなかったが、普通の英霊を名前で呼ぶってのは、真名看破だとかの観点からしてどうなんだ?」
「えー、私は気にしないよー?」
キャスターの言葉に驚きで顔を染めた立花とは対照的に、まるで気負った様子もなくこいしは言う。
「むしろ名前は知って欲しいぐらいだもの。妖怪っていうのは知られて恐れられてこそなのよ?」
「その割には、こいしちゃんについてはほとんど全く情報がなくて困ってるんだけどね……」
「……そうなんですか、ドクター?」
「あーそっか、そういえばあんまり説明してなかったっけ。まあ大した話じゃないけどねー」
呆れ気味の声音をしたDr.ロマンに驚きを込めて聞き返すマシュ。しかし彼が言葉を続ける前に、こいしが自身の正体について語り出した。
「まずお姉ちゃんの話なんだけど……お姉ちゃんはサトリ妖怪っていって、ひとの心が読める妖怪なのよ。もう四百年ぐらい生きてるし、無意識下での不意打ちでもない限りはまず負けないかなーって感じなんだけど」
「覚……美濃や肥前、今でいう岐阜の辺りを中心に、日本全土に名の知られた妖怪だね」
「うん。それで、私も元々はサトリ妖怪だったんだけど、お姉ちゃんは強すぎるし、それに比べたら大したことはできなかったのよ。それが嫌になって私はサトリの能力を捨てたんだけど、そしたら今の能力が手に入ったのよねー」
「えーっと……随分と濃いね」
「そうかしら?」
言葉を選ぶようにDr.ロマンは言ったが、概ねそれはその場の全員の総意であった。
「まあ、そういうわけだから私について分からなかったのは当然よ。名前も大して知られてるわけじゃないから、立花ちゃんたちも今まで通りに呼んでくれて構わないわ」
「おう、そいつはありがたいな。キャスターが二人もいるんだ、呼び分けができないと面倒で仕方ねえ」
「じゃあ、これからもよろしくね、こいしちゃん」
「……」
「所長、どうかしたんですか?」
キャスターは快活に言い放ち、立花はどことなくほっとしたように微笑みかける。妙に難しい顔をして黙り込んだオルガマリーへと不安そうにマシュが問いかけるが、それに彼女が答える前に、事態は急変する。
「――――っ、背後から敵性反応! 途轍もなく早くて、しかも強い!」
Dr.ロマンの叫ぶような警告と同時。そこにいる全員が、地響きの如きそれを耳にした。
「無意の茨に阻まれるといいわ――【サブタレニアンローズ】!」
こいしの言葉に合わせて周囲に広がる茨。それに弾かれ道の端へと追いやられた立花たちが目にしたのは、鉄塊とでも言わんばかりの大剣を持つ大男。そして――紙屑の如く吹き飛ばされる、頼れる幻想種の少女。
「こいしちゃん!?」
「■■■■■――――!!!!」
足に絡まる妖術の茨、そして唐突に周囲に現れた人間と英霊。それを目にした大男――敵性サーヴァントが咆哮を上げた。
遭遇戦が、始まる。
お姉ちゃんとの仲が険悪なこいしちゃんも好きですが、お姉ちゃん大好きなこいしちゃんはもっと好きです。
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