無間の英霊   作:サクウマ

7 / 10
ルーキー33位頂いていたようです。
評価バーにも色が付きまして、大変ありがたい限りです。

それと、いい機会なので匿名解除しました。もともと、慣れないものを書く気恥ずかしさから匿名にしていたのですが、ここまで伸びたなら恥ずべきではないと思い直しまして。

ともあれ、もう残り短い旅路ですが、どうぞお付き合い下さいませ。

最後に、こいしちゃんに投票をよろしくお願い致します。


直感と本能

 洞窟の中で待ち受けていたアーチャーへの対処は、非常にあっさりとしたものだった。

 キャスターが光弾を放つ。放ち返された剣のような弾丸を、マシュがその盾で防ぎ切る。そこで、敵サーヴァントの目前に現れたこいしが茨を放ち、貫くことでとどめを刺した。

 

「……あっという間に終わっちゃったね。私が指示を出す暇もないや」

「そりゃあ、流石に三対一でそこらのサーヴァントに負けるわけには行かねえからな」

 

 立花の言葉を鼻で笑ってキャスターは言う。けれどその軽い調子とは裏腹に、彼の瞳に余裕の色は見られない。

 

「だが……格の高いサーヴァントってのは、二人の差ぐらいなら易々と引っ繰り返せる。そしてこの洞窟の先、聖杯の前に陣取ってるやつってのは、そういう類の輩だ」

「そんなに……?」

 

 キャスターの真剣な瞳に見つめられ、立花はたじろぎながら言う。その言葉に彼は首を振りながら答えた。

 

「ああ、少なくとも俺は手も足も出なかった。ゲイボルグがあれば話はまた違ったんだろうがな」

「相手はどのようなサーヴァントなのですか?」

 

 マシュの問いに、キャスターは端的に言った。

 

「かの高名な、『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』の所持者、アーサー王だ。……これまでで一番の好機なんだ。お嬢ちゃん達、易々とやられてくれるなよ?」 

 

 

 

 ♡ ♥ ♡

 

 

 

 黒い甲冑に纏められた銀髪。手に握られた漆黒の刃。そして、震えるような存在の圧。

 彼女――アルトリア・ペンドラゴンは、不意に立花たちの方へ向き直り、その口を開いた。

 

「――――キャスターか。仲間を連れてくるとは、随分と死に急ぎたいと見える」

「はっ。御生憎様だが、ここで死ぬのはお前の方だよセイバー」

「……驚いた。初見で私の妖術を見破ったのは貴方で二人目、人間に限れば初めてよ」

 

 心底意外と表情に出してこいしは呟く。それを聞き逃すことなくセイバーは言う。

 

「なるほど、キャスターが二人に……シールダーか。私を倒すには些か戦力過少ではないか?」

「さあ、どうだかな。――そいつは試してみなきゃ分からねえだろうよ!」

遊戯開始(ゲームスタート)ね! 旧い情動に身を焦がして――【恋の埋火】!」

 

 言葉と共にルーンを描き、キャスターが光弾を展開する。同時にこいしが袖を振ると、炎をなびかせる妖弾がばら撒かれ、壁を跳ねるようにセイバーへと襲い掛かった。

 

 

「――ほう、思ったよりもやるな」

「……え?」

 

 

 しかし、その妖弾の全てをセイバーは剣で切り潰す。のみならず、同時に襲い掛かった光弾はその幾らかを切り払うのみで、多数の直撃にまるで動じた様子を見せない。圧倒的なその様子に思わず声を漏らす立花を前に、セイバーは嘲るように口を開く。

 

「なんだ人間、お前はキャスターから聞いていなかったのか? ――私の対魔力はそれなりに高くてな。小手先程度の魔術なら千当たったとて傷も付かぬぞ。なあキャスター?」

「その割に、嬢ちゃんの弾には当たりたくないみたいだがな。あんた程のセイバーが、もしや未知にでも恐れをなしたか?」

「追い詰められた仔犬ほどよく騒ぐ。どれ、次は私の番だな」

「セット」

 

 その言葉と共にセイバーは一歩踏み出し――瞬く間に距離を詰めると剣を振り下ろす。咄嗟にマシュの掲げた盾が剣を受けるが押されて一歩後ずさる。間髪入れず再びセイバーが剣を振り上げ――

 

「――っ!」

「【スティンギングマインド】」

 

 ――瞬間的に飛び退ると、つい今いた場所に薔薇が咲き乱れる。間髪入れずに十程の光弾がセイバーへ襲い掛かるが、彼女はそれを切り伏せながら後退した。

 

「気持ち悪いぐらい勘がいいのねー。霊夢さんみたい。今のは決まったと思ったんだけどなー」

 

 むむうと不平を漏らすこいし。僅かに間を空けて圧に当てられた立花がへたり込む。

 

「鍛え抜かれた直感は未来予知にも等しい。今の私はそこまでではないが――貴様には荷が重かったか、幻獣種のキャスター?」

「むー、いいもん。遠距離から弾幕でタコ殴りにしてあげるもんねー!」

「――ほう?」

 

 こいしの言葉に、不敵に笑うセイバー。キャスターが舌打ちを漏らすと同時、セイバーの聖剣に魔力が集まりだす。

 

「『約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガーン)』――誰が遠距離攻撃の手段を持ってないと言った?」

「マシュ! 宝具を!」

「――っはい! 『仮想宝具 疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)』!」

「セット――【リフレクスレーダー】」

 

 立花の言葉に反射でマシュがその手の宝具を展開した瞬間、黒色の魔力光が魔術障壁と衝突する。歯を食いしばり耐えるマシュに、セイバーが驚きの声を漏らした。

 

「ぐう……っ!」

「っ、ほう――混ざりものと侮っていたが、なかなか耐えるではないか」

「セット――」

 

 魔力光の影でキャスターがルーンを展開し次に備える。こいしの姿はいつの間にか消えていた。二人のキャスターを信じて立花はマシュに身体強化の魔術をかける。

 

 

「……っはあ!」

「防ぎ切ったか! 半端ものの身でよく耐えるものだ――だがまだ終わりではないぞ!」

「余裕ぶっこいてねえでさっさと吹っ飛びやがれ!」

 

 魔力光が途切れた瞬間にこれでもかと光弾を放つキャスター。けれどその悉くがセイバーの刃に弾かれ、或いはその切っ先から放たれた魔力に吹き飛ばされる。そのまま再び剣に魔力が集まり――

 

「【コンディションドテレポー――――っ!?」

「そこだ!」

 

 

 ――その背後から現れたこいしを、袈裟切りに両断した。

 

 

「まだ! 疑心に溺れて――【弾幕パラノイア】!」

「こいしちゃん!」

「いやーんもう直感鋭いひと嫌いー!」

「こいしちゃん!?」

 

 血は、流れていない。

 慌てて漏らした叫びに軽い調子でこいしが答え、驚愕に顔を染める立花。それを気にする余裕はないとばかりにこいしは両断された下半身へと伸ばした茨で絡みつくと、そのまま一目散に入口の方へ駆け出した。

 

「撤退よ撤退! こんなんやってられないわー!」

「……分かった。キャスターは所長を運んで! マシュは私をお願い!」

「了解です、先輩!」

「ちょっと、待ちなさいよ!」

「いや、あいつの言う通りだ。一旦仕切り直すぞ」

 

 立花の指示を受け、こいしの後を追うキャスターとマシュ。

 

「……追ってはこないみたいだね」

 

 マシュの腕に抱えられたままに後ろを覗き込んだ立花は、未だ立ち尽くしたままのセイバーの姿を目にしていた。

 

 

 

 ♡ ♥ ♡

 

 

 

「――『約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガーン)』」

 

 立花たちが去った広間の中、セイバーは無造作に宝具を放つ。漆黒の光の奔流が広間を突っ切ると、それを追うように無数の茨と妖弾が現れ、しかし即座に吹き飛ばされた。

 

「私の直感の鋭さを知って、尚も釣りを仕掛けるとは――随分と胆の据わった奴だ」

 

 さあ、次はどう来る、と。

 セイバーは獰猛な笑みを漏らした。

 

 

 

 ♡ ♥ ♡

 

 

 

「――と、彼女は思ってるはずよ」

 

 洞窟の中腹で腰を下ろした立花たちに、自身の断面を揃えようとしながらこいしは言う。

 

「宝具を展開している隙に、一発だけだけど撃ち込めたの。それを使って疑心暗鬼を埋め込んだから、今の彼女はカウンターばかり警戒してるはず」

「通りで追撃がなかったわけだ」

 

 こいしの言葉に頷くキャスター。彼を見てふと気付いたように立花が問う。

 

「キャスターの宝具は、セイバーに届かないかな」

「ああ、無理だろうな。一度挑んだ時にぶつけてみたんだが、一刀のもとに吹き飛ばされちまった」

「そっか……」

「一応、当てられるなら有効打には十分だろうがな」

 

 は、と笑うキャスターに、オルガマリーが不安に揺れる目を向ける。

 

「それで、どうするのよ。ルーン魔術も大して効かない、妖術も見切られる、そもそも弾が届かない……どうやって勝つつもりなわけ?」

「それは……」

 

 オルガマリーの言葉に対し、立花は答えに詰まってしまう。実際のところ、立花自身も勝つビジョンが浮かんでいなかった。

 

 

「――策ならあるよー?」

 

 

 そこに、こいしが爆弾を投げ込む。予想だにしなかった言葉に、立花たちは顔を見合わせた。

 

「……そうか、宝具ですね! こいしちゃんはここまで宝具を隠していたと!」

「……んー、まあそんな感じかなー」

 

 マシュの気付いたと言いたげな表情に、こいしは曖昧に頷いて見せる。一方それを胡散臭げに見るのはキャスターだ。

 

「……そんな都合のいいもんがあるなら、最初に使ってたはずだろうよ。違うか?」

「キャスターさんたらなかなかの勘の鋭さね。怖いわー」

 

 キャスターの言葉にこいしはにこにこと笑いながら言葉を返すが、続いてすっと真面目な顔で立花たちの瞳を見つめた。

 

「二分間。私はあの広間のところで、それだけの時間動けなくなる。セイバーさんにはカウンターを恐れてもらってるから、それで時間はちょっとは稼げると思うけど……それでもそこそこ長い時間、キャスターさんとマシュさんの二人にセイバーさんを抑え込んでいてもらわなくっちゃいけないの」

 

 できる?と、首を傾げてこいしは言う。二人は頷き、続いて立花が口を開く。

 

「こいしちゃんにはここまで頼ってばかりだったしね。最後ぐらいは頼れるところを見せないと」

「んー、立花ちゃんたら頼りになるわー」

「あはは……それよりもこいしちゃん、真っ二つにされてたけど、本当に大丈夫なの?」

「うん、お姉ちゃんと違ってしぶといことが取り柄だもの。もうちょっとしたら治ると思うわー。まあでも、あと二、三発ぐらい両断されたら危なかったけどねー」

「八つ裂きって比喩じゃなかったんですね……」

 

 呆れたように言いながら、マシュが盾の様子を確認する。キャスターは幾つも小石を拾うと防護のルーンを表面に掘り、立花は幾つかの強化の魔術をオルガマリーに教わり直す。

 

「うん、もう傷は大丈夫よー」

「――分かった。みんな、行こっか」

 

「……待ちなさい、藤丸立花」

 

 そして数分後。こいしの言葉に立ち上がり、正真正銘最後の戦いへ意気込む立花たちに対し、オルガマリーが声をかけた。

 

「……どうしたんですか、所長?」

「いえ、大したことではないのよ。ただ、戦いの前に一つ言っておきたいことがあるだけ」

 

 こほん、と咳払いをして、オルガマリーは立花に言った。

 

「ここまでの働きは及第点です。カルデア所長として、あなたの功績を認めます。――この後のセイバーとの戦い、そしてその後に待ち受ける人理の復興への道。決して簡単なものではないでしょうが、貴方ならやり遂げることができると、私はそう信じています。……頼みましたよ、人類最後のマスター」

 

「はい!」

 

 

 

 ――そうして、決戦が始まる。




ちなみに今回の、こいしちゃんの妖術を見破った一人目とはフランちゃんのことです。
回収する予定のないネタなので、参考までに。
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