あ、今日の更新が遅れたのはバイトが午後にあったからです。申し訳ない。
その分明日は二話投稿するのでそれで許してください。
再び――今度は堂々と姿を見せたまま現れた立花たちに、セイバーは警戒しながら剣を向ける。
冬木のキャスターは構えてはいるものの、即座にルーンを描こうはしていない。ここでセイバーが動いたなら、反撃が来るまでには数瞬の隙ができるだろうというのは、想像に難くないことだった。
けれど、セイバーは動かない。
彼女の直感が、今の立花たちの元へ飛び込むことは危険だと叫んでいた。
……十秒。
立花たちもまた、動かない。
シールダーはその盾を構えたまま。その影に手を隠した冬木のキャスターは、恐らくそこにルーンを刻んだ何かを隠しているに違いなかった。
そして、更に一歩後ろ……目には映らないものの、幻獣種のキャスターの気配がそこに確かに存在する。
……二十秒。
セイバーが最も警戒しているのが彼女だった。
幻獣種のキャスターが妖弾を放った瞬間、信頼ある彼女の直感が全身全霊で警告を発した。あれに触れてはならないと。
それに従い愛剣で妖弾を切り潰し、そこでセイバーは驚きに震えた。剣に纏わせていた風の魔術がその一振りで掻き消えたのだ。
……魔術を掻き消す妖弾。恐らく英霊の肉体すらもその対象たる可能性がある。
その事実に、彼女はうち震えた。
……三十秒。
先の戦いの中で既に、セイバーは幻獣種のキャスターから妖弾の一撃を食らわされていた。
幸いにして、その一撃のみで彼女の肉体が崩壊する……ということにはならなかった。けれど、それでも彼女の警戒感は収まることを知らない。
直感が、鈍った。
本来の彼女であれば、幻獣種のキャスターの放った奇襲など余裕で看破できる筈だった。それが、ぎりぎりになるまで気付けなかった。今、盾の影にいるはずのキャスターも、先程であれば瞳でも捉えられていた筈だった。
……精神を侵す妖弾。
目前の三体のサーヴァントの中で、最も危険な存在であることは、最早明白であった。
……四十秒。
ふと、セイバーは違和感を覚えた。
僅かに考え込み、認知を整理するだけで、鈍っても優秀な彼女の直感は即座に解を導き出した。
……五十秒。
セイバーが剣を振り上げる。シールダーがびくりと一つ震える。
セイバーの剣に魔力が籠る。冬木のキャスターが隠した手に力を籠める。
わずかそれだけの情報で、セイバーの疑念は確信へと変わった。
……六十秒。
違和感なら先程からあった。幾らカウンター狙いと言えど、一歩も踏み込んで来ないのは異常である。先手を取られ得るような隙を冬木のキャスターが見せていることもおかしい。端的に言って、彼女の直感と矛盾している。
それまでのセイバーは迷うことなく直感に従っていた。それが最善手であったし、つい先程までもそうだった。
だが、その直感が信じられなくなった今は?
……七十秒。
「――――まさか、私の直感を逆手に取られるとはな。どうやら、未だに貴様らを過小評価していたようだ」
そして、漸くセイバーが動き出す。その聖剣から漏れ出しているのは、先程と同じ黒色の光。
「まあよい。貴様らがその気なら、我が全力を以てそのまま削り殺してくれる。」
セイバーの言葉に反応し、キャスターが守護のルーンと強化のルーンの描かれた石をばら撒く。マシュが盾を構え直し、その二人へと立花が身体強化の魔術をかける。
「――――『
「――――『
そして、再び宝具が衝突する。
……八十秒……九十秒。
「――ッはあ! 何度やっても同じです、私の盾に貴方の宝具は通じません!」
周囲に散りばめられたルーン、立花のかけた強化の魔術、何より前回耐えられたことによる精神的な余裕もあり、前回よりも余裕を持ってセイバーの宝具を防ぎ切ったマシュ。けれど彼女の自信に満ちた様子を嘲笑うように、セイバーは三度目の黒い光を紡ぎ出す。
「この威力ならば三度目はない、とでも思ったか? 残念ながらこの私は魔力の多さが自慢でな……この調子ならあと六発は放てるぞ?」
「なっ……!」
「そら、何度やっても同じなのだろう! 耐えてみろシールダー!」
「――っ令呪を以て命ず! 【マシュ、もう一度、宝具をお願い】!」
……百秒。
「――『
「はい、先輩! ――――『
そして、三度目の衝突。
「っぐう――!」
「マシュ……!」
連続で宝具へと圧し掛かる負荷に呻き声を漏らすマシュ。立花が不安に声を漏らすが、流石の彼女もここから更に身体強化の魔術をかけられるほど魔力リソースに余裕はない。
「クソッ、更に威力が上がってやがる……!」
一波目で殆どが砕け切った準備済みのルーン石に代わり、キャスターが防護のルーンを描き続けるが、それも端から直ぐに砕けていく始末。
仮にこれを凌げたとして、四発目はまず防げない状態であったが――しかし、その必要がないことも立花たちは理解している。
……百十秒。
「――――【眠り眠り眠り眠りて、
そして、何処からともなくセイバーの耳へと届いたその言葉の羅列は、確かにあの、幻想種のキャスターの声。
「――――【目覚め目覚め目覚め目覚めて、夢の終わりに同じ】」
「――――っはあああああ!!」
直感的に自身の詰みを確信し、けれどそれでも一矢をと言わんばかりに、更に魔力をつぎ込むセイバー。
……だが、それでも紙一重で立花らの元へ届かぬまま、遂に百二十秒のタイムリミットが訪れる。
「
謳い上げるように告げられたその述べ口上は、正しく一種の死刑宣告。
「――――『胎児の夢』」
そして、世界から境界が失われた。
ときに、前話とその前には、幾つかの透明文字が隠れています。
全部こいしちゃんのセリフです。
気になる方は探してみて下さい。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
明日の一本目は日中、15時頃に更新したいと思います。
二本目は……なるべく早くお送りできるようにします。