起きたら虚無の申し子   作:一億年間ソロプレイ

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映画見ていて思ったんですけど、もうルガーランスがルガーブレイドに改名した方がいいんじゃないかってくらいにルガーブレイドでした。もうカノンちゃんや堂馬くんみたいに正しくランス扱いしている子が見当たらないんじゃが…。

ん?この人選は……まさか………?



第14話 食事は意外と必要

「いいかクジラ。『人を殺さないこと』、『今まで以上に人や物や施設は同化しないこと』。

 これら二つは守れるか?」

「ーーー!」

「よし。そうでなければ俺もお前も……あのアルヴィスの飯が食べられなくなる」

「ーー!ーーーーーーーーーーーーーーーーー!ーーーー!」

「嫌だよな?俺も嫌だ」

 

 午前六時に起床し、記憶を整理しながら考えていたことをクジラに話していた。ちょっと監視カメラのことも考えて、洗面所で真剣そうにアルヴィスの食事について話す俺達はお笑いものだろう。

 

 

 

 食事。

 その重要性に気が付いた時は、それが過ぎた後のことだった。

 

 

 

 自分の記憶整理中で気が付いた。

 俺はコアになってから人間食を一切食べていない。食べる必要が無くなったからだ。

 

 昨日は何となくで鮭の塩焼き定食を注文して食べていたが…。今思うと食事って凄く久しぶりのことだった。

 他の一般的なファフナーだったならどうなるかは分からないが、周囲の微生物すら同化して動力に変えるエンジンを持つザルヴァートル・モデルに搭載された今ではエネルギーは摂取しなくても稼働することが可能だ。

 つまり、今の俺に食事は余分なエネルギーを摂取する行いだ。

 しかし、とてつもなく重要なことだった。物を噛んで咀嚼する行為が当たり前じゃなくなった時にやっと気が付いた。

 

 考えてみれば今の所、衣食住が保証されているのは人類軍本部か人類軍基地、それからアーカディアン・プロジェクト産の島だけだ。人類軍には追われているし、基地の食事は出ても味気の無い携帯食料ばかりだ。新鮮で多彩な野菜類や豊富な魚類や肉類を扱う食事にありつけるのはヘスター・ギャロップら上層部の人間しかいない。

 竜宮島では上層部関係なく、美味しい食事が食べられる。海に囲まれた島なので必然的に海洋系の食事が多いが、それは蓬莱島の時でも変わらないので問題は無い。植物プラントで栽培されている植物も大体同じものだと思われる。

 

「これで酒もあれば十分…。いやでもここは蓬莱島じゃないから購買するのも飲むのも難しいか…。いつか飲ませて欲しい…いや、お前にも飲ませたいな」

 

 蓬莱島の時では母が酒豪だったのと、俺の事情を汲んでくれた婆さんが融通してくれてたもんだからいくらでも飲めたものだったけど…。飲み過ぎてコアにしかめっ面もされた時もあったけど…。

 はぁ、と強めに息を吐きながらクジラの入った水槽を抱き込む。酒が飲めなくても食事をするだけでこんなに満たされている。自分でもこの感情の荒ぶりが制御できない。

 

「鮭美味かったな…」

 

 熱々の白米に程よく塩が振られた鮭、漬物、味噌汁に冷たい冷奴…。それらを食べていると、クジラが物欲しげに見ていたから水槽の蓋を開けて鮭の切り身をあげた。

 暫くしてクジラが「不思議な味がする…!もっと寄越せ!」と言ってきたので鮭の半分はクジラに持っていかれた。

 周りの大人が驚愕した目で見ていたが気にしないことにした。溝口なんてぱっくり口を開けて驚いてはタンクトップを着た女性に小突かれていた。

 

「いいか。約束をちゃんと守れば俺達は無害だとアピールできる。あ、約束にこれも追加だ。

 『竜宮島の防衛に協力すること』だな。俺達の有用性を見せれば、島にいるファフナーパイロットたちの負担も軽減出来るのと、島民から信頼を得られる筈だ」

「ーーーー!」

「物分かりがよろしいようで…。さ、長く話していると不審がられるから出ようか」

 

 清々しい気分で洗面所から出て、机の上にクジラの入る水槽を置いた。夕食の終わりに溝口に今の部屋に案内され、「指令が出るまで部屋を出るな」と言われたのでクジラの観察でもしていよう。

 クジラはグロテスクな口を開いてはフッと突き出す形になって泡を作り出していた。何らかの遊びのようで、何連続出来るのか試しているみたいだ。

 椅子に座り、クジラによって揺れる水や泡を見ながら俺達の状況を確認する。

 

 部屋とは言われたがここは完全に隔離部屋だ。出入口のある壁はガラス一面張りで俺達の状態は丸見え。隅には監視カメラが設置されている。

 受け入れたようで警戒はされている。指令とやらも来る気配はまだ無さそうだ。

 

 今の所は相手側からのアプローチを待つ他ないので暇だ。あの頭上からの視線も感じず、人類軍からの追撃も来ない。目の前の水槽でクジラが悠々と泳ぎまわるのを見ているだけの時間。

 しかし、暇ということは悪いことじゃない。何にも焦らずに考えられる時間がある、余裕がある。それは希少なことだったんだとコアにされてからは実感した。意外と蓬莱島での生活は穏やかな方だった。帰れる家があって、フェストゥムにも人類軍にも追われない。それだけでも安心できる環境になるのだと。

 

 自分の手を見つめてみる。蓬莱島での俺の態度を顧みて、あのままの態度では駄目だと思い直した。

 

 今度はああならないように。飲んだくれでろくでなし、努力もしないような奴から変わろう。

 

 クジラに対する意識改革に無害アピールを進んでやる。それから人との距離の取り方とかもだ。しっかし、後者に至ってはあまり自信が無い。大体同年代問わず、一応設置されていた学校に通っていた奴等には睨まれていた記憶しかない。

 ただでさえ島というのは閉鎖的なんだ。嫌な感情よりも良い感情を持ってもらった方がお互いに心身健康でいられる筈だ。なるべく丁寧な受け答えに当たり障りない会話。これを目指そう。笑っておけば何とかなるってどこかの漫画に描いてあった気がする。

 

 これからの身の振り方を考えていたその時、コツ、コツ、という足音が廊下側で聞こえた。クジラから視線を外して音のする方へ振り返るといつぞやかに見覚えのある薄茶色の髪をした少年がいた。左目には特徴的な傷がある。

 …あれ?よくよく感じると人じゃない?フェストゥム?いや、それよりも微弱な反応…コア型?いや、それだったら島のコアになっていないか?俺の知る限りでは竜宮島のコアは女性の筈だ。

 

「君にアルヴィスの各施設を案内する。皆城総士だ」

「石上榊です。よろしくお願いします」

 

 とぷりとクジラが泳ぎ回った。

 

 

 

 

 皆城に聞けばクジラも同伴して良いようだった。なのでクジラを持ち歩いてアルヴィスの内部を案内されている。とは言っても作戦会議室、食堂、廊下、休憩室など、一時島の情報を入手した時に知っている場所ばかりだ。皆城からはこういう部屋名でこういう機能がある、みたいな一種の機械的に近い説明をされている。中々ウェットな会話というのが出来ない。

 

「ここは水上展望室だ」

「どういった時に使う部屋ですか?」

「特には無い。景色のある休憩室だ」

「なるほど」

 

 すいーっと魚たちが泳いでいる。その奥の方に白いファフナーが見えた。いや、ファフナーというにはあまりに大きすぎて操作出来やしなさそうなものだった。

 

「あの奥の方に見えるものは?」

「エーギル・モデル、またの名をゼロファフナーともいう」

「へぇ、名前から考えると最初期に作成されたファフナーって感じですか?」

「そうだな」

「でもあの大きさだと一人で動かすには無理がありそうですが」

「二人で同化現象を分かち合いながら操作するものだ」

「なるほど」

 

 二人でファフナーを操縦するとか蓬莱島では考えられないことだ。ファフナーを操縦できるほどシナジェティックコード形成値が黄金比に近い奴がいるのといないのだと、こうした兵器研究の考え方とかも変わるもんなんだな。

 俺がそう返した後から会話が無い状態が続いていたが…。

 

「蓬莱島と竜宮島ではアルヴィスの構造は違っていたのか?」

 

 相手側から話がやってきた。これはチャンスだ。

 

「えぇ。島の地形とかも関係しているのでしょうか。主要な施設は変わりませんが、部屋の配置や距離などは違っていますね。それからこの部屋もありませんでした」

「そうなのか」

「そうですね?」

 

 

 ……。

 

 

 そこからは互いに何も言わず、どこにも移動せずゼロファフナーを見つめる時間になった。

 思わず浮かべている笑みが引き攣りそうになる。

 

「おいおい、あの様子じゃ打ち解ける以前の問題じゃねーか?」

「そうね。不器用な総士に案内を任せたのが敗因よねぇ…」

 

 後ろの方から小声で何かが聞こえてくる。隣の皆城にも聞こえてきたのか、僅かに咳払いをした。

 多分隠れているつもりなんだろうが、俺からすれば生体反応で丸分かりだ。…いいや、姿も丸見えだった。センサー使うまでも無かった。

 

「他に何か質問はあるか」

「では、竜宮島の魅力を教えてくれますか?」

「…今までのことについての質問は無いのか」

「ええ。基本的な場所は蓬莱島の施設と共通していることが分かったので特には。気になるようなことも大体その場で聞きましたし、それなら今の内に現地の方から島の魅力でも聞こうかと」

「良いだろう。その代わり、君の島のことも教えてくれ」

「構いませんよ」

 

 水上展望室に設置されている席に座る。隣には抱えていたクジラの水槽を置く。

 一度は来て見て回って襲ったこともある島だが、現地の人ならでは面白スポットがあるかもしれない。

 

「何とか大丈夫そうだな」

「ほら剣司。そろそろ検査の時間だから行くわよ」

「おおい、待てよ咲良」

 

 

 

 

 あれから長いこと皆城と話を進められたが、「そろそろ別件があるんで回収するぜ」という溝口によって終わることになった。

 結局その話の中でも彼の違和感については聞けなかった。出会って初日で「貴方フェストゥムですか?」と聞くなんて出来なかった。相手にとんでもなく失礼だ。

 

「お前さん、昨晩はソイツに飯やってたが本当に食ってんのか?」

「食べてますよ。味の感想も言ってますし」

「味って、フェストゥムに味が分かんのかぁ?」

「分かりますよ。な、クジラ」

「ーーーーーー!ーーーーーーーーーー!」

 

 キュィィ!という鳴き声を出しながらクジラが泳ぎ回る。ははあ、他の種類の料理も食べたいと。

 その様子に溝口は訝しみながらクジラを見て、次に俺の方を見てきた。

 

「お前さんには何言ってんのか分かんのか」

「まぁ、大体は」

「へぇ、じゃあこれとかどんな評価だ?」

 

 溝口がポイっと投げてきた物を咄嗟にキャッチする。感触としては小ぶりな袋に入っている飴玉みたいなものだ。手を開いて確認すると、それはのど飴だった。レモン味で喉がスーッとするタイプ。

 渡してきた意図を確認するために溝口の方を見るが、にんまりと笑いながら見ている。

 確かに、こののど飴をクジラがどう思うのかが気になる。俺は小袋からのど飴を取り出して水槽の蓋を開ける。クジラは小袋を開けた時から期待するように俺の手を見つめていた。

 俺は望み通り、手の中ののど飴をクジラのがぱりと大きく開いた口に落とした。すぐに口は閉じられ、暫く咀嚼するように口を細かに動かした。

 

「ー、ーーーーー!ーー!ーーーーーーーーーーー!ーーーーーー!」

「駄目みたいです」

「良い余り物処理になったぜ」

「ーーーー!」

 

 溝口が笑いながら先を歩き、クジラが水槽で暴れまわるのを見ながら俺はその後を追いかけた。

 そして案内された場所は先日検査を受けた場所でもある医務室だった。

 

 




いずれクジラの言葉も分かりやすく書きたいとは思っているんで…(読みにくい定期)
今までの話で出てきた「ーーー」が何話しているとかまとめられたらなと思います。(激遅)
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