でも凄い好きです。各家庭の関係が見れて…ウッ
※誤字というか書き忘れた所を見つけてしまったので編集しました
Q.人間に戻りたいとか言って何日が過ぎました?
A.大体二週間
機体の方にカレンダー機能もあったからそれを眺めながら過ごす事二週間、二週間も経っている。二週間もいればエンジニアの顔ぶれとかも覚えるし、俺が人間に戻れるかも疑わしくなってくる。着々とファフナーは完成に近づいていってるし。
父親ともいえるミツヒロ・バートランドは喜びながらマークニヒトを完成へと近づけている。本当にうっきうきだ。笑顔じゃなかった日は、マークニヒトのコアが過剰反応を起こして熱が出ていると聞いて、徹夜しても原因不明のままで放っておけって匙投げた時くらいだ。
「ふむ…後はパイロットを使ったテストか」
「はい、理論上搭載できる機能は全て取り付け、後はパイロットの負荷計測と動作確認のみです」
「レスポンステストのみということか…、パイロットも人類軍の者では同化作用に耐えきれない、…島の人間が必要だな。」
そう言って少し考えながらミツヒロはあぁ!と思い出したように言い出した。
「少し出掛けてくる、二日程空けるが調整は続けろ。
それから、手土産が無かった時の為に彼女を呼んで来い、拘束は解くように言ってある」
「了解しました」
白衣の研究者にそう告げてミツヒロはさっさと部屋から出ていった。何処に出かけるのか、少し気になるのでミツヒロの後を追いかけることにした。ずっとあそこにいても変わり映えしないし。それから透けた俺があの機体からどれだけ離れて動けるのかも気になるし…ってもう飛行機手配して乗ってる、フットワーク軽いな。
「では、一人の父親として娘に会いに行くとしよう」
そう言って、飛行機内でミツヒロは通信を切った。旅行先で誰かと連絡を取り合っていたみたいだ。その通信先では男三人しかいなかったし、心良くも思われてなさそうな反応だった。
それにしても、娘に会いに行くんだ。わざわざ飛行機使っていく程遠い場所に?複雑な家庭事情なのか。…あんなに機体ばっかり弄っていれば、家族との縁も疎遠になるか。
(というか、ここまで離れても大丈夫なんだ。)
遠くの方で機体の俺が整備されてる感覚はしているし、目も機体の方と同期すればあのエンジニアたちが作業している姿が見える。こうしてみると、本当に人間じゃなくなったんだと実感してしまう。
「そろそろ到着か」
飛行機が降下するアナウンスが入った。
窓を見れば雲に覆われた島が見えた。それから、ちろちろと道を歩いている人も見える。そんな細かい所まで見れることに今更ながら驚いた。着々とファフナーに近付いていってる、人に戻りたい。
落ち込む空気をよそに、海辺で何やら楽しそうに遊んでいる人たちが…。子供と保護者?子供は11人、大人は2人。その内通信先で見た覚えのある茶髪もいる。へぇ、まだ子供だったんだ。いや、アルヴィスの制服が白色だったな…。
ビーチボールを持った長い黒髪の女子はこっちを見ていたが、気のせいだと思って視線を逸らした。
無事に何のトラブルも無く旅行先の島、竜宮島へと到着した。ここからどうしようと考えたがミツヒロにずっと付いていっても面白くなさそうなので、別行動することにした。帰るときに合流すればいいだろ。
という訳で、久しぶりの外だ!空気が美味しい…、今まであんな閉鎖的な空間にしかいなかったからか、外の空気がとても新鮮に感じる。
とりあえず辺りをうろうろすればいいか。確か、前もふらふら散歩するのが楽しかった覚えがある。
あれは…駄菓子屋だ。駄菓子屋なんてまだあったんだ、流石文化の保存を目的とした島。お金があったなら何か買おうと思ったが、今の状態で食事なんて出来るのか?確か今の俺は空気中の微小物質やらなんやらを同化してそのエネルギーで動いている状態らしいが…ってその前に幽霊って透けた状態で物を食べられるかって話だ。
飛行機に座れやしたけど、物を口から取り込んでエネルギーに変換する必要が今の俺には無いし、怪しい所だ。
でも見てるだけでも美味しそうに見えるんだよな。きなこ棒とか、ひも飴とか。
「駄菓子屋に入らないの?」
「入ってもなぁ…。買うお金も食う必要も無いしな」
「そうなの?私はよく食べるよ」
「私はって…」
え。
今、俺、誰と話してた?
「初めまして、ファフナーのコア」
飛行機で目が合った少女が背後にいた。驚きで飛び上がりたいのを抑えて、女子と向き合う。それよりも聞き捨てならない言葉が聞こえた。
「ファフナーのコア?俺が?」
「気付いてなかったのね」
呆れたように笑われた。ぐ、ファフナーのコアなんて発想、普通は無いし…。
目の前の少女が目を細めて笑う。あれ、何か目の瞳孔が特徴的だ、なんだかこの目は何処かで見た覚えがある。入力された情報に何かないか。いや、それにしても。
「俺が見えるのか?」
「うん、でも人の形をしたもやだってことしか分からないよ。不思議な形ね」
今の俺、他人から見れば黒い人の形をしたもやなのか…。俺から見れば普通に服も来ているし、笠も身につけているし、袈裟の調子もばっちりなんだが。一体何故だろうか。
「何で貴方はこの島に来たの?」
「さっきこの島にミツヒロって奴が来たんだ。俺はそれに勝手に付いてきただけで、特に深い理由はないよ」
「ふぅん?」
訝し気に此方を見つめてくる。それからぐるぐると俺の周りを回りながら考えること数分。満足したのか少女は離れた。その数分の間に瞳孔の答えが出た。
「貴方がこの島を自由に出歩くことを許してあげる」
「それはどうも。竜宮島のコア」
「…気付いたのね」
「その瞳孔の形、確か島のコア特有の物だってことに気付いたからな」
そうだ、あの瞳孔の形は島のコアと呼ばれる存在の特徴の一つだった。島の名前は入力された情報から出せた。瞳孔については入力されてなかったが、きっと昔の俺の記憶だろう。ナイス俺の記憶。
「おーい、どうしたの乙姫ちゃん。って何そのもや!」
「もしかして、幽霊…?」
「ゆ、幽霊なんている訳ないでしょ」
わらわらと後ろから浜辺で遊んでいた子供たちが来た。どういった集まりなんだろう。
「なんか…邪魔したみたいだな」
「「「しゃ、喋った!」」」
「離れた方がいいよ乙姫ちゃん!」
「ううん、この人は大丈夫だよ芹ちゃん。この人は私と同じような存在だから」
「同じような存在…お前は、島のコアなのか?」
長い薄茶の…先程の通信先で見た少年が話しかけてきた。よくよく見ると左目に傷痕があった。
「ファフナーのコアらしい」
「ファフナーの…?」
「そんなことがあり得るのか?」
「あり得るんじゃないのか。俺もさっき竜宮島のコアに教えられただけなんだけどな」
笑いながら言ったつもりだけど、今の俺はただのもやなんだっけか。黒髪の少年と薄茶の少年は益々顔を顰めた。
「ま、お前らに何らかの危害を加えるつもりはないよ。そんな事したら竜宮島のコアに追い出されちまう。」
そう言って集団から離れるように散策を始めた。
「本当にあの存在に島を徘徊させて大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ、総士。今のところ純粋に島を楽しんでるみたい」
「楽しむ…?」
「お前たちに危害は加えない」と言った、ファフナーのコアを自称する人型のもや。その存在によって島の平和が崩されるのではないか、新手のフェストゥムではないのか…そんな疑問が胸に残っていた。
それでも、落ち着いたように乙姫は言った。大丈夫だと言われたなら、そう思うしかないのだろう。
「ねぇ総士。本当はファフナーに乗れるのに、その人を庇うために嘘を吐いている人がいたら、総士はどうする?」
「データ隠蔽は重大な裏切りだ。しかし、罪に問うかどうかは場合による」
「ふふっ、そう言うと思った。いいわ、特別に教えてあげる」
乙姫の口から出された言葉は、僕に衝撃を与えるには充分な物だった。
◇
竜宮島を歩くこと数時間。すっかり俺は疲れていた。いやー、幽霊になっても歩き疲れる概念があるなんてと驚くと共に、まだ俺にも人間らしいところを見つけれて嬉しかった。まだ俺は人間なんだ、だからファフナーのコアだったとしても戻れる筈だ。
今の俺は鈴村神社という小高い場所にある神社で休憩していた。
(あの飛行機の前にいる金髪…ミツヒロだ!)
飛行機前でミツヒロと竜宮島のコアと話していた時に見かけた茶髪の少女が会話している。ミツヒロ帰るのが早すぎないかと思いながら、俺は急いで飛行機前を目指して走った。壁も物もすり抜けられるので一直線だ。こんな時は幽霊で良かったと思う。
「闘いに勝ったとしてお前に何が残る」
「勝てるなら何も残らなくていい」
急いで飛行機前に来たら、周りの空気は重い物だった。
どうしてそんな話題になったかは分からないが、ミツヒロのその言葉はやけに重さを持っていた。
「状況は絶望的だ」
そう吐き捨ててミツヒロは飛行機に乗った。俺も遅れずに乗り込んだ。竜宮島のコアがこちらを見て手を振っていたので、俺も手を振り返した。ミツヒロと話していた茶髪の少女が驚いたようにこちらを見ていた。
(竜宮島…平和だったな)
窓に近い席に座る。竜宮島は全員が全員、いきいきとしていた。データの中でしか見たことのない“平和”っていう物を感じた気がする。何か、俺の感覚だと、島民ってあまり優しくない感じがあったから。何だろうな、平和なのは良いことだけど胸がもやもやする。
(これって“羨ましい”?)
羨ましい。なんでそんな単語が出てきたんだか。記憶を無くす前の俺は嫌な事でもあったのか。考えても、記憶が断片的で朧げではっきりと思い出せないから、答えは見つからなかった。
俺が作られている基地に着くまでは長い距離があるから、少し目をつぶることにした。
ニヒトになってから、眠れた試しが無いけれど。
次回
もう戻れない