起きたら虚無の申し子   作:一億年間ソロプレイ

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ゆきっぺ意外と好きなんですよね
エグゾダスのop2でゆきっぺと弓子さんと道生さんが出た瞬間なんて
涙出てきますよ
ちゃんとゆきっぺにも楽しそうに過ごしてた人生があるんやなって…


まぁでも、このお話ではゆきっぺは救われないんですがね





第3話 かひなし

 

 第一アルヴィスにいる娘に会いに行ったミツヒロだったが、その娘には素気無くされてしまい傷心…。かと思いきや、そういう風ではなかった。

 無言で怒ってやがる。あからさまに不機嫌ですという顔をしながらガラス越しの部屋で椅子に座っている。周りの研究員も少し怯えたような表情だ。

 

 純粋な気持ちではなく、あの時言っていた“島のパイロット”というかフェストゥムの因子を組み込まれた子供の調達と、離婚した妻で人工子宮コアギュラの設立に一役買った遠見千鶴さんを新国連側に連れてこうとしていたらしい。

 わぁ…。疑いようもなく自分の作るザルヴァートル・モデルに一途なのが分かる。それは人間としてどうなんだミツヒロ…。家庭を大切にした方がいいだろうに…。こんな父親に誰も付いていきたくないな、俺だってそう思う。

 場合によってはあの茶髪の女子が俺に乗っていたかもしれないと思うと…うん。とても賢明な判断だと思う。

 

 

 

 俺は、他のモデルより燃費というかパイロットの同化現象を進行させるのが早いらしい。

 

 

 

 竜宮島から帰ってきた後のこと、新国連で密かに行われている実験のせいで、人類軍兵士でも俺を動かせないかという説が出てきたようだ。

 その実験というのは、とある島…というか竜宮島のパイロットから複製したフェストゥムの因子を人類軍兵士に投与して、竜宮島のパイロットのようにフェストゥムのコアを使ったファフナーを運用してみよう…みたいな感じだった気がする。

 人類軍兵士が主に乗っているファフナーは大体がグノーシス・モデルというフェストゥムの因子やシナジェティックコードも必要なく、誰でも訓練すれば乗れるモデルが運用されている。グノーシス・モデルにはフェストゥムのコアを使用しておらず、同化現象も竜宮島で扱っているモデルよりは抑えられている。

 竜宮島のモデルが扱っているのは…ティターン・モデルだかノートゥング・モデルだったような気がする。そのどちらもが機体にフェストゥムのコアを使用しており、同化現象がグノーシス・モデルより進むのが早い。フェストゥムの因子やシナジェティックコードを形成できるように、遺伝子段階で弄られた子供、人工子宮コアギュラから産まれた子供位にしか扱えないモデルだ。

 

 その実験を聞いたミツヒロは投与した兵士を3人ほど寄越すように上層部に言ったらしく、そんなこんなで、複製された因子を投与された人類軍兵士が3人、俺に乗った。

 

 

 乗った人類軍兵士の3人中3人が同化現象の末期症状を起こして、割れていった。

 

 

 俺に接続した瞬間、緑色に光る結晶がニーベルング・システムと接続した指から、手から生えてゆき、体中にその結晶が生えた時に、一斉にバリンと音を立てて割れた。体の一片も、髪の毛一本すらも残らず結晶になって割れた。

 

 ただ俺と接続しただけで結晶が生えて死んだんだ。俺と同期する前にあっさりと、簡単に死んだ。コクピット内にあった人の温かさが瞬時にして冷たくなっていく。それに伴って、中途半端にパイロットと接続されて、結晶の生える痛みが俺にも伝わっていた。腕の中を、体の中身を無理矢理中から引きずり出されるような痛み。割れた瞬間には、強く叩かれたような痛み。頭が首までめり込むような強さで叩かれて、じぃんと衝撃に耐えている間にパイロットの命は絶えた。星の飛ぶ視界の中で見えた飛び散る結晶は、人の命だった。

 

 

 

 こんなに危険な機体だとは思わなかった。こんな簡単に人を殺せるものだと思っていなかった。

 

 

 

 なんて言っても、俺が人を3人も殺したことなのは紛れもない事実だった。震えた体と、俺の危険さに怯えた心中で、慣れていないお経を唱えた。せめて、肉体は結晶になって消えてしまっても、魂だけは輪廻転生の輪に入っていますようにと祈っておくことしか、命を奪った俺には出来なかった。

 

 その事件から、何とか同化現象もとい俺と同化する際の負荷をどうにかして幽霊の俺に回せないかと考えていた。俺に回せば、パイロットはすぐに同化現象の末期症状、肉体の結晶化を引き起こすことはないと考えたからだ。

 ファフナーに乗る時点で変色体の変異は決まっているようなものだが、少しくらい寿命が延びたって罰は無い筈だ。

 

 …とは言っても、俺に負荷を回そう計画は企画段階で終了した。よくよく考えても幽霊の俺はパイロットに負荷を与えるマークニヒトだ。そのパイロットは俺と同期して動かすのだから、結局負荷はパイロットに掛かる。

 それに、こんなこと実践しようとしてまた人が死んだら嫌だからな。

 

 代わりに幽霊の俺が機体の俺を操縦する案も出た。自分の体を動かすようにして機体の体も動かせるだろうと考えたが、不思議なことにまったく動かせなかった。

 本当になんでだ。マークニヒトは俺で、機体の俺も幽霊の俺も俺であって動かせないということはまったく無い筈だ。

 これについてはまったく考えても答えが出なかったので保留だ。早くその答えを見つけられたらいいのだけれど。

 

 

 

 そして、結晶化によって3人の命が消えた日から二日後。

 

 

 

 外されたコクピットにシナジェティックスーツを着た黒髪の女性が入っていくのが見えた。人類軍兵士といった感じではなく、どちらかと諜報とかスパイとかやってそうな女性だった。

 俺は、また人を殺してしまうのではないかと気が気でなかった。女性を乗せたコクピットが迫るときなんて、女性が処刑台に登っているような光景に見えた。

 

 

 それでも、女性を乗せたコクピットがマークニヒトに接続される。その際に、俺にも腹部に痛みを感じる。

 

 …ああもう、こういうことが起きると本当に人間に戻れるのか不安になる。

 

 

 そして、目の前で黒髪の女性が苦し気な声を上げて接続された。

 

 

 

 …。

 

 

 

 ……。

 

 

 

 どうやら、直ぐに末期症状は起きなかったようだ。ほっとした…。

 

 パイロットの情報が俺に流れ込んでくる。狩谷由紀恵、竜宮島から逃げたフェストゥムの因子を埋め込まれた人間。今の彼女はその因子を末期症状の限界まで増幅されている。それに加えて、ファフナーの搭乗限界の年齢であることも確認できてしまった。

 このまま俺に乗っていれば、俺が狩谷の命を奪ってしまうのは、考えなくても分かることだった。

 

 負荷がどうにも出来ない、俺がパイロットの命を死なせるというのなら、俺はパイロットをサポートすることに徹底する。戦闘時での雑魚処理とかアンカーユニットによる妨害工作とかフェストゥムのガードの中和など、やれることはたくさんある筈だ。

 より多くのフェストゥムを倒せるように。同化現象の末期症状が起きても、悔いが無いように。

 

 接続して俺と同期したからか、狩谷はコクピット内に浮かぶ俺に気付いた。

 

 「何よこのもやは…」

 「初めまして。俺はマークニヒト。」

 「マークニヒト…!?」

 「詳しい説明は省くが、お前をサポートするシステム程度に考えてくれればいい。」

 「マークニヒトのサポートシステムですって…?そんな機能、ミツヒロさんから聞いたことが無いわ。嘘を吐くのはやめてちょうだい。」

 

 キッと睨む狩谷には悪いが、事実だ。パイロットと俺が同期したおかげで、俺への猜疑心やら困惑やらの感情がありありと流れてきている。仕方ないけど、実感を持たせる為に言った方がいいのかね。

 

 「このまま俺に乗り続ければ、お前は死ぬけどそれでいいのか?

 想い人であるミツヒロに、想いを伝えなくていいのか?」

 

 この言葉を聞いて、狩谷はハッと目を見開いた。

 

 「何故そのことを…!

 …いや、これが私と同期しているということね…。」

 

 それから何処か納得した様に顔を振った。納得してくれたようで何より。パイロットと潤滑なコミュニケーションが取れないと、俺が上手くサポートできない場合とか、サポートした状況を上手く生かしてくれない場合があるからな。フェストゥムの攻撃でパイロットを殺したくはない。

 せめて死ぬなら活動限界になってから…。じゃない。何を言っているんだ俺は。そう、易々と人の死を願うなんて。

 俺の考えたことが伝わったのか、狩谷は顔を顰めながらこちらを見た。

 

 「悪いけど、余計なお世話よ。

 貴方がマークニヒトのサポートシステムというのなら、フェストゥムをより多く倒せるように私をサポートしなさい。」

 「もちろん、元からそのつもりだ。」

 

 挑戦的に笑った狩谷にこちらも口元が上がる。よし、こちらの準備は大丈夫。いつでも出撃できるぞミツヒロ。

 

 

 

 「我々は、私によってこの場所を理解し終わった。」

 

 

 

 背筋が、ぞっとした。人の言葉を喋っているのに、人ではない感じ。コンソールの方で研究者のおっさんが金色に光り、茶髪の青年に変化した。なんだ、あれ…!いや、人型のフェストゥム…!?

 

 「我々はお前たちの感情と力を私によって獲得する。」

 「テスト中止!ファフナーの中を完全閉鎖しろ!」

 

 異変に気付いたときにはもう遅かった。体が何かに入り込まれている感覚がする。隙間という隙間から、俺の全てを解析されているような気持ち悪さがする!

 それから、ニーベルング・システムに接続した手から狩谷の体が緑色の結晶に包まれていく。

 痛い、狩谷の痛みを伝わって凄く痛い…!結晶化に伴う痛みと解析される気持ち悪さで、どうになってしまいそうだ。システムの方にも入り込んでくる、気持ち悪い、かき混ぜられている、気持ち悪い気持ち悪い、何かが生えていく!

 

 

 

 ぬるりと目の前に茶髪の青年が現れて。

 

 

 

「お前は私だ」

 

 

 

 

 

 心臓を掴まれた。

 

 

 

 

 

 同期対象が狩谷からフェストゥムに変わってしまった。いけない、このままだと狩谷が同化される、俺も同化されて制御できなくなる!

 体が、肩のレーザーに信号が走る。待ってくれ、この場所でそんなレーザーを出してしまったら…!止まれ、止まれ止まれ!!

 

 それでも、俺の体は無差別にレーザーを放射して基地を壊していく。人を、殺していく。

 

 狩谷は結晶化の痛みで狂ったように叫んでいる。俺にも痛みが伝わっている。

 

 

 「私の、私の夢だハハハハハハハ!!!」

 

 

 壊れた格納庫、死んでいった研究者の死体を背に、ミツヒロは笑っていた。

 

 

 そんなミツヒロ目掛けて、俺は腕を振りかぶって潰した。

 

 

 腕に、濡れた肉の触感がする。指の隙間に液体が入り込んで、掌が濡れていく。掌から、鉄臭い香りがする。千切れた黒いスーツの破片も見える。

機体の方ではぺっ、と汚い物を拭うように壁に手を擦りつけた。ずるりと肉が引きずられている。ミツヒロの、死肉だ。

 体が、機体の俺が止まらない。

 

 

 「ミツヒロ、さん」

 

 

 狩谷は絶望しきった声で呟いて、全身に結晶が生えきった。それから、狩谷の体が金色に光ってフェストゥムと同化していく。髪を振り乱しながら、狩谷が男性の形になっていく。その様子は練られた土のようだった。

 

 

 

 敵だ。フェストゥムという敵が、敵を殲滅する筈の機体に乗っていた。

 

 

 

 「これが、憎しみ…っぅっう!これがぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 狩谷と、茶髪の青年の声が混じった気持ちの悪い音が響いた。青年は涙を流しているような、怒っているような顔をして叫んだ。

 胸の内に、愛しい者を無くした憎しみが、敵への憎しみが混ざり合って広がっていった。それは狩谷が感じた物だけど、俺の物ではない。

 

 

 

 

 俺の視界は、暗くなっていった。

 

 

 

 




次回



ボイドシティへウェルカム!


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