ゴトランドさんは指輪が欲しいようです。(初期艦縛り) 作:島国住み
主な登場人物
ゴトランド:Gotland級 1番艦 軽(航空)巡洋艦
自分の事を初期艦だと思っている初期艦。
二人用の家具を新調するために北欧の家具メーカーのカタログを見て吟味するのが最近の楽しみ。
電:暁型 4番艦 駆逐艦
少し前まで初期艦だった初期艦。
ソワソワしてたと思ったら、今度は思いつめたような表情を見せるようになり姉たちを心配させている。
提督(司令官)
……公正で透明性の高い人事に定評がある。
本人曰く、『一途な性格』。
大規模作戦が終わったら意中の相手にプロポーズするらしい。
作戦は成功裏に終わった。そして私は無事に練度が最大になった。
最初は混乱があったけどみんな私が初期艦の世界に順応したみたいで、イナヅマを含め記憶の混濁はなくなった。
提督はすぐにでもケッコンカッコカリしたいのだろうけど、時期がちょっと悪かった。
作戦後はとても忙しい。書類、書類、書類……あれだけ大規模な作戦だったから後処理も一苦労。
秘書官の経験が長いイナヅマと私が手伝ってるけど中々書類の山は崩れてくれないわ……
「いやぁ、今回の作戦も誰一人失わずに終えることができて良かった良かった」
「提督の指揮のおかげですね!」
「いやいや。みんなの頑張りのおかげだよ」
「まぁ、謙虚なのね」
「……二人とも、口じゃなくて手を動かして欲しいのです。作戦後の後処理が終わるまでが作戦なのです」
「そうはいってもなぁ……作戦は無事終わったんだから少しくらいのんびりしてもいいじゃないか。なぁゴト?」
「そうね。イナヅマは真面目すぎるわ」
「そんなことは、ないのです」
「……そういえば、提督。私の艤装のチェック終わりましたっけ?」
「まだだな。資源の備蓄量の確認で忙しくて、まだ艤装にまで手が回らないんだ……」
「じゃあ……先に私だけでも確認してください。ちょうど今装備してますし」
「そうだな。……どれどれ」
「あーん、そこは格納庫じゃなくって……。ああっ……提督ぅ、そこは、危ないですよぉ……」イチャイチャ
「異常を見逃したらマズイ。仔細に確認しないと……」イチャイチャ
「…………また始まったのです」ハァ
提督とスキンシップをしてもそれを邪魔するものはこの世界にはいない。
始めこそイナヅマを警戒してたけど間違いだったわ。
窮鼠猫を噛むというけど、それは鼠にだって牙があるから反撃ができるというだけの話。
牙を失った鼠に注意を払う必要なんてこれっぽっちもないはずだわ!
「…………よし。ゴトの艤装に異常はなし、と」
「ゴト、検査されちゃいました!」キラキラ
「…………………………ちょっとお手洗いに行ってくるのです」
バタン!
「あら。どうしたのかしら?」
「さあな。……それよりも、ちょっといいか?」
「なぁに?」
「明日の夜、空いてるか?」
「ええ。空いてるわよ」
「その……
「了解しました♪」
ああ!ついに!ついに!運命の日がやってくるのね!
正直指輪がなくても私は十分幸せなのだけど……やっぱり目の前にそれがあると欲しくなっちゃうわね。
「……よし!予定は決まったし、仕事に取り掛からないとな。この調子じゃまた電にどやされてしまう」
「そうね。明日のためにも……ね?」
「………………………………」
■■■
もうすぐ約束の時間だ。
こういう時って時間が遅く感じてしまうものだと思ってたけど、なんかあっという間だったわ。
なんか昨日の夜から今日の朝にかけての記憶があいまいなのよね。気が付いたら朝だったというか……お酒も飲んでないのにヘンだわ。
でも、良かったかもしれない。普段の私だったらきっとソワソワして寝てなんていられなかったと思う。
そうこうしているうちに執務室の前まで来ちゃった。
今日はまだ一度も提督に会ってない。緊張する……
すぅ~~はぁ……よし!
コンコン
「ゴトです!」
「いいぞ」
ガチャ
「わざわざこうやって呼んでしまってすまない。だだな、どうしても二人きりの時に渡しておきたいものがあってだな……」
「なんでしょうか?」
「まず。ゴト、練度が最大になったな。おめでとう」
「はい。ありがとうございます」
「それで、だ。記念というかなんというか……その……これを受け取って欲しい!」サシダシ
提督の手には綺麗にラッピングされた手のひら大の箱。
どうしよう。中身が何なのか知らないふりをする?それとも……
分からないわ。こんな時どんな顔をすればいいのだろう。緩む口元を抑えられてる自信もない。だって、だって私が夢見てたことが今、ここで、実現しようとしてるんだもの……
「はい。……あ、あの。開けても……?」
「もちろんだ」
丁寧にラッピングをはがすと紫苑色の上品なケースが。
ごくり。微かに震える手を無理やり動かし蓋を開けると……
「ん?」
…………ブレスレット??指輪じゃないの?
あ。紙が入ってる。どれどれ…………
『本当は司令官さんにプレゼントする予定だったけど、あなたにあげるのです。
その石はジェットと言って魔よけの効果があるらしいのです。石言葉は
あなたのような悪魔が、浄化作用があるこれを身に着ければきっと苦しんで消えてくれると思ってプレゼントしました。苦しいですか?もしそうだったら嬉しいのです。
電より、愛をこめて』
「提督、これ……」
「実は電にこれをゴトにプレゼントしてくれって頼まれてなぁ……そんなの自分でやればいいのにと思ったがどうしてもって言われて……」
「どうして?指輪は……?世界は、世界は正されたはず……」
「指輪?……そういうことか」
「そういうことって、どういうことなの!?」
「確かにこんな渡し方だったら誤解させちゃうな。すまない。指輪はな、初期艦に渡すってずっと前から決めてるんだ」
「それなら!」
「ああ。そうだ。……
修正が不十分だったの?いや。ちがう。昨日まで提督は私が初期艦だと信じて疑わなかった。
……考えられることはただ一つ。イナヅマも編纂室を使えるってこと。彼女も世界のシステムが
「イナヅマは……イナヅマは今どこにいるの?」
「今か?遠征に行ってるよ。急に遠征に行きたいなんて言い出して……ってゴト!」
今遠征に行ってるってことはこの鎮守府に現在イナヅマはいない。
編纂室に……その前に艤装を装備しよう。
編纂室で然るべき修正を加えたのち遠征帰りのイナヅマを迎え撃つ。あくまでも私と提督の仲を拒むなら……あの女を滅ぼすしかない!
今の世界は安定してるから編纂室は閉まってる。……そんなの関係ないわ!
私の国の装備は質がいいのよ。だからこんなオンボロな扉、艤装を展開するまでもなく……
ドカーン!!!
タックルで十分。障害物にすらならないわ。
私の製本はどこ!?……あったわ!
備考欄が枠ごと消されている……どうしよう。
そうだ!イナヅマの製本。あの女さえいなければ練度から考えて私が一番の候補になる。初期艦が
…………ない。ないわ!他の艦娘の製本はきちんとある。でもどこを探してもイナヅマのだけがない。
「探し物はこれですか?泥棒猫さん?」
「イナヅマ……」
手にはイナヅマの製本。持ってたのね
というかどうしてここに?遠征はどう考えてもこの時間には終わらない。
まぁいいわ。飛んで火にいるマリアナターキーとはこのことよ!
練度は互角。ならば排水量の多い私の方に分がある。
「泥棒猫ですって?その言葉、そっくりそのままお返しするわ!」ジャキ
「私に勝つつもりですか?ふふっ……面白い冗談なのです」ジャキ
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
ドカーン!!!!!
「うそ……どうして……」大破
「あなたは
「このダメージに、カットイン。ありえないわ……」
「私は遠征から
しまった。あまりにも急ぎすぎて色々なことが考慮できてなかった。イナヅマはこの世界を私以上に熟知してる。
……ってことは?
「ヤマトの製本が荒らされてたのはあなたの仕業だったのね……」
「大和さん?……ああ……あの時は私も血の気が多かったのです。何もあそこまでしなくてもよかったのに……
でも、大和さんがいけないのです。司令官さんの運命の人は私なのです。それなのに運命に挑戦するような姿勢を見せるから……司令官さんは戦力として大和さんを重用してたのですでもあの女はひどい勘違いをしたのですいつのまにか秘書艦があの女になることが多くなって朝昼晩と食事を作るようにもなったのですホテルなんていかがわしい言葉を使って司令官さんを惑わしたのです許せないのですそんなのダメなのですあのままじゃ司令官さんが毒に侵されて危険だったのです解毒も必要だし毒のある危険生物を司令官さんの傍には置いておけないのですそんなときに編纂室の存在に気づいたのですあの女が存在しなかったことにすれば解毒と排除が同時にかつ完全に行えると思ったのですあの女の製本にはあろうことか司令官さんに対して恋慕の情があると書かれていたのです潰さないといけないのです念入りに念入りに念入りに壊したのです塵一つ残らないようにしたのです電はおりこうさんなのです」
イナヅマの目に光がない。瞳孔が不自然に開いて漆黒に染まった目にはどこを探しても正気の色はなかった。顔は完全に無表情なのに口だけは薄く笑っていてどう考えてもマトモじゃない
「あなた……正気じゃないわ……」
「正気?私はまともなのです。結果的に目標は達成されたけどあれはやりすぎだったとちゃんと反省してるのです。大規模な修正は世界に大きな副作用をもたらすことをあの時知ったのです。あれからみんなの記憶は絡み合ってしまって落ち着くのに長い時間がかかったのです。司令官さんもあんまりこの世界に来てくれなくなって、電はとっても、とっても寂しかったのです……」
やはりズレてる。良識のある艦娘ならたとえ世界を修正できる能力があったとしても自分の都合だけでその能力は使わないはずだ。艦娘を一人消しておいて
「しかも久しぶりに来てくれたと思ったら他の子ばっかりかまって私のほうを全然向いてくれなかったのです。司令官さんがそんな調子だから
「じゃあ、あなたはヤマトだけじゃなくて何人も……」
「人聞きが悪いのです。司令官さんは私と結ばれる定めなのです。だから他の女に気持ちを向けられても司令官さんは困ってしまうのです。無駄な争いは何も生まないのです。だって勝負はもうついてるのだから。これは、優しさなのです」
話にならない。頭がクラクラする。いったい何を食べたらこんなに狂ったことを考えられるようになるのだろう。
だが、今の私は艤装が使えないし大破状態だ。この狂気を止めることができない。常識が通用しないのだから私の身も危ない
どうにかしてこの場を切り抜けないと……
「それで、私のことはどうするの?製本をいじって危険思想ってやつを取り除くの?」
「ゴトランドさん。あなたには感謝してるのです。あなたが着任してから司令官さんがここにいる時間が長くなったのです。……必要悪だったのです。私の練度も上がってケッコンカッコカリが現実的になってきたのです。……でも私はそのせいで浮かれてたのです。提督をたぶらかす悪い悪いヘビの存在に気づけなかったのです」
「だから、」
「今から
「い、嫌っ!!」
こんな狂女に理性を期待した私の方がバカだった。話の通じない人とは関わらないのが一番だ。
逃げなきゃ────
「逃げようとしたって無駄なのです!」
ガツン!!
「いつも持ってる魚雷は飾りじゃないのです」
ガツン!!
「こうやって……」
ガツン!!
「トドメをさすのにちょうどいい優れものなのです!」
ガツン!!
「初期艦は私なのですそしてケッコン艦も私なのですこのことはずっとずっとずっとずっとずっと前から決まっていたのです約束したのです司令官さんもそれを望んでるのですそうに決まってるのです」
ガン!!ガン!!ガン!!ガン!!ガン!!ガン!!
「はぁはぁはぁ……………………………………………………ちょっとやりすぎちゃったのです。いくら叩いたって製本で修正すれば元通りになるって
さらさらさら
「ふぅ……これで、よし!新人指導は初期艦の大切な務めなのです♪」
■■■■■■
「ねぇ、ゴト。今日の号外読んだ?」
「ゴウガイ?……まだだわ。何かあったの?」
「あったもなにも大ありだよ!提督がね、ついに指輪を渡したらしいんだよ!」
「へぇ。誰に?」
「電だってさ。まぁ分かってたけどね。昔からあの二人はいつくっついてもおかしくなかったし」
「…………………………」
「どうしたの?」
「え!?いや、なんでもないわ。なんかちょっと引っかかって……」
「あー、ゴトはこの鎮守府には割と最近来たんだもんね。あの二人の仲を知らなくても無理ないか。みんなの前じゃお互い興味ないふりしてるからねあの二人」
「そうだったのね。でも、やっぱりなるべくしてなったって感じはするわね……」
「号外によると近日盛大な記念パーティーも開かれるらしいよ」
「へぇ。それは楽しみわね」
……なんでかしら。
おめでたいニュースのはずなのになんか胸がモヤモヤするわ。なんか
私が初期艦だったような……ってバカね。そんなわけないじゃない。
イナヅマが初期艦でケッコン艦もイナヅマ。当然だ。そう思えば思うほど説得力が増してる気がする。
指輪も初期艦も私には全く
■■■■■■
「非番なのにわざわざ来てもらってすまない」
「……あの、『一人で来てくれ』なんて……どうしたんですか?」
「
「もちろんなのです」
「……そうか。ずっと前の話だったのに覚えていてくれてたんだな」
「今日はその日から6年3か月23日後なのです。電は、ちゃんと、覚えてるのです」
「そんなに昔だったか。……うーん。もっと最近だったような……」
「……」
「いや!そうだな。電のいう通りだな。うん。」
「なのです」
「電の練度を優先して上げているつもりだったのだが……こんなに遅くなってしまった。すまない。本当にどうしてこんなに掛ったんだろう?考えうる限りの最善を尽くしていたはず……」
「司令官さんは悪くないのです。私を最大練度にしてくれて電はとっても嬉しいのです」
そうです。悪いのは泥棒ねこさんたちなのです。悪い悪いねこさんたちを懲らしめてたらいつのまにかこんなに時間がたってしまったのです。
「オホン。長い長い時間がかかってしまったが……これを!頼りない俺を今までずっと傍で支えてくれた感謝の証だ!」
「感謝、だけなのですか?」
「いや、その、改まって言うとなんか恥ずかしくってな……察してほしい……」
「言葉でちゃんと言ってくれないと受け取れないのです」
「……俺は!昔から!電のことが好きだった!だから!俺とケッコンカッコカリしてくれ!!」
「その言葉を、ずっとずっと待ってたのです」
「私を
「私の指にぴったりなのです。どうですか?似合ってますか?」
「……似合ってるぞ」
「はわわわ、びっくりしたのです♡急に抱きついてこられると困ってしまうのです♡」
「ケッコンしたんだからいいじゃないか」ギュー
「なのです♪」
司令官さんと出会ってから今日は7年1ヶ月と25日。やっと、やっとこの日がやってきたのです。
大本営からケッコンカッコカリ制度の発表があった時、司令官さんは真っ先に私を指名してくれたのです。まだ練度が全然足りなかったけど嬉しかったのです。
それなのに…………………………
完全勝利、なのです!
ゴトランド 戦術的敗北C(前提条件である初期艦を満たしていないため勝負以前の問題である。だが、彼女の奮闘と奇策に敬意を評してこのような評価になった。)
電 完全勝利S (やくそくされたしょうり。だって初期艦縛りだもん)
思い付きでゴトランドが初期艦になる話を書こうと思ったらいつの間にかこうなった。どうして。
ゴトランドが初期艦?何言ってんだ!そんなわけないだろ!!(正論)