ソロ狩人がグリムガルで頑張るお話   作:古本

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【狩人ギルド】

 

 俺は一本四カパーの串焼きを頬張っていた。

 なかなか食いでがあり、これだけで一食になる。

 

 

 正直、あまり食事の味には期待していなかったのだがいい意味で予想を裏切られてびっくりするくらい美味い。勿論タレーー店主曰く秘伝のものらしいーーも美味いのだが何よりも肉そのものが美味かった。

 特別なものなのかと聞いたが日常的に庶民が食べるものらしい。これはこれからここで生活しなければならない俺にとって朗報だな。なにか楽しみなものが一つでもあれば人間生きていられるものだし。

 

 

 因みに、一カパーが銅貨一枚の価値だ。そして一シルバーが百カパー。

 つまり銀貨一枚が銅貨百枚と同じ価値ということになる。

 

 あと俺はまだお目にかかったことはないが金貨もあるらしく、金貨一枚で一ゴールド。

 百シルバーで一ゴールドらしい。

 

 

 数時間このオルタナを探索して大体の通貨の価値をある程度把握したことで、十シルバーあれば何もせずとも二ヵ月は余裕で生活できるということが分かった。

 だがそうするのは緩慢な死に向かっていくようなものだ。

 

 俺は今ある手持ちの金で、グリムガルで生きる術を身につけなければならない。

 

 

 

 

 今の俺の所持金は、二十五シルバー四十カパーだ。

 

 

 なぜ、事務所を出た時よりも増えているのか。それは俺の恰好を見てくれれば察してもらえると思う。

 俺は今、このオルタナに溶け込んだ恰好をしている。多分俺を見た街の人は俺のことを出稼ぎにきた農民か、どこぞの商家の丁稚くらいに見えているだろう。

 

 

 そう、ここに来た時の服は売り払ったのだ。

 ひよむーに連れられているときにも思ったことだが、オルタナの住民が来ている服というのは俺の着ていた服と比べて、数段レベルの落ちるものだった。

 逆に言うと、俺の着ていた服というのは庶民には手が出ない程度には仕立ての良いものだったということだ。というか、そもそもの技術レベルから違っているように感じた。

 なら、高値で売れるんじゃないかと思っていたが、案の定だった。

 

 

 

 初め古着を打っている店の店主一人に服を売ろうとしたのだが二束三文で買いたたかれそうになったので近くにいた別の店主を連れてきて競合させると元の買値の十倍近いの値段がついた。

 スラックスとシャツあと迷ったが靴ーー頑丈だが動きにくいものだったーーもすべて売り払い、結局、六シルバーと代わりの服をもらうことで話がまとまった。

 正直あの服の価値はそれよりも高いとは思うが、俺にコネがないので仕方ない。六シルバーになったことを喜んでおくべきだろう。

 

 

 そして、減った六十カパーの使い道は、情報収集の経費だ。

 

 義勇兵であろう人に手当たり次第に声をかけて、時に酒をおごり、時に相手を持ち上げて話を聞いた。

 

 

 義勇兵を見分けるのは簡単だった。

 剣だの鎧だの弓矢だのを持っているやつを探すだけなので分からないほうが難しい。それに鉄火場に身を置いてる人間はやはり普通の人とはどこか違うのか、なんというか纏っている空気が重いというかなんというか、まぁ説明はしにくいが直ぐに見分けがついた。

 

 

 

 

 思ったより酒がいい値段して、先輩義勇兵から話を聞くのに高くついたがそれに見合うだけの情報は得られた。

 色々と話は聞けたが、特に重要なものだと思ったものは、クラスとギルドだ。

 

 

 まず、義勇兵は各種職業ギルドに所属することになる。

 その入ったギルドで、それぞれのクラスのスキルを学ぶ事で義勇兵としてやっていくことになるそうだ。

 オルタナでなれるクラスは、戦士、魔法使い、盗賊、神官、狩人、聖騎士、暗黒騎士の七つ。

 この中から所属するギルドを決める事になる。

 

 

 それぞれのクラスにメリットとデメリットがあるが、俺がソロで活動していくことになるので判断材料は、単独での継戦能力と生存能力だ。

 

 

 

 

 話を聞いた中で、パーティーに必須なのは神官なのだという。神官は簡単にいうとヒーラーでパーティーの怪我や状態異常を癒すことができるらしい。しかし、自分に対する魔法は失敗する可能性が高いうえ、ギルドの掟で刃のついた武器を使用できないらしく火力に乏しい為に却下。

 同じ後衛職の魔法使いも近づかれたらその時点で詰みなので却下だ。

 そもそも後衛職はソロには向いていない。

 

 

 では逆に前衛職はどうか。

 神官と並んでパーティーにかかせない職である戦士、そして魔法も使える前衛である聖騎士。

 この二つも悪くないが、そもそもの役割はパーティーの戦線維持。そして神官に癒してもらう事が前提で多少の被弾覚悟の動きをするので、神官の援護がない俺には不向きだ。

 それに重装備なのでどうしても動きは遅くなる。ソロのなけなしのメリットである身軽さを失ってしまうのでこれも却下だ。

 

 

 

 残るは、盗賊、狩人、暗黒騎士だが。

 ま、この中だと、答えは決まっているようなものなんだよなぁ。

 

 

 

 

 さて、と、ちょうど串焼きも食い終わったことだしそのギルドに向かいますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 オルタナの北区の端、北門のすぐ近くまで俺は来ていた。

 

 俺の目の前には目的のギルドであろう建物があり、その建物は柵に囲まれていて入り込めないようになっていたが一部が門のように開くようになっていたのでそこから中に入る。

 

 

 中は広めの庭でそこには檻がいくつもあった。

 その中には犬がいて俺の姿を認めると吠えだした。

 唸り声や吠え声にはかなり迫力がある。なんというか檻の中にいても野生を感じさせるようなたくましい生命力が感じられる。

 

 

 この犬たちが街で聞いた狼犬なのだろう。

 じぃっと狼犬を見つめる。

 

 

 うーむ、なんやこいつら。めっちゃかわええー。

 

 

 謎の関西弁がでてくるレベルで可愛い。

 ふらふらと檻に近づいて手を差し出す。

 

 檻の中の狼犬は初めは警戒しているのか唸っていたが、しばらくすると敵意がないことが伝わったのか、警戒を解いて、俺の手をぺろぺろと舐めだした。

 

 

「ふふ、やめろよ。くすぐったい」

 

 

 顔がどうしようもなく緩んでしまう。

 正直今まで気の休まらないときが続いていたので、久しぶりの癒しなのだ。こんなとこでゆっくりしている場合ではないのだが、まぁいいや。

 アニマルセラピーってやつだ。うん。

 

 

 

「ちょっと君、そんなに近づいたら危ないよ!」

 

 

 

 そんな苦しい言い訳で自分をごまかしながら犬を愛でていたら、上のほうから女性の声が降ってきた。

 声をかけられても動きがとまらない手で犬を撫でながら、声が聞こえたほうに顔を向ける。

 

 

 直ぐ近くの建物ーー恐らく俺の目的地の狩人ギルドーーの二階の窓から一人の女がこちらを見下ろしていた。

 女は、フードのついたローブを来ており顔がよくみえない。

 

 

「あー、すみません。でも大丈夫っすよ。こいつ俺に噛みついたりしてこねーし」

「あれ、本当だ。うーん、まぁそこにいる子たちはまだ幼いしそんなもんなのかな」

 

 

 

 女は少し納得いかなそうな顔をしていたが、俺のほうに向かってビシッと人差し指をさして言った。

 

 

「とにかく! ここは堅気が来るとこじゃないよ。用がないならさっさと帰りなさい」

 

 よくはわからないが悪い人ではなさそうだ。

 

「いや、俺はここが目的で来たんだ」

「うん? もしかして君、このギルドに入りたい見習い義勇兵だったりする?」

「ああ、その通りだ」

 

 そういって見習い章を掲げる。

 すると女はそれが見えたのか納得したように数度うなづいた。

 てか掲げてから見づいたけど、けっこうな距離あったけどあそこから見習い章が見えたのだろうか。だとしたら凄まじい視力だ。

 

 

「にゃるほどねー、だからこんなとこに。見習い君、すぐそこに行くからちょっと待ってて!」

 

 そういうや否や女は二階の窓から身を乗り出した。

 

「は? ちょっなにして……」

 

 まさかとは思ったが女はそのまま窓から飛びだした。

 女の体が地面に近づき、思わず「危ない!」と言ったその瞬間、女は猫のような身のこなしで衝撃を逃しながら見事に着地した。

 確認するまでもなく女に怪我はないだろう。

 素人目にもそう確信できるほど女の身のこなしは熟達した動きだった。

 

 

「おいおい、まじかよ。そこそこの高さあるぞ……」

「にゃははー、驚かせて悪かったね。見習い君」

 

 

 そういって快活に笑う女はスズラン、と名乗った。

 

 

 

 

 

 

 そのあと、建物の中に招き入れられた俺はスズランと相対していた。

 

「で、君は狩人になりたいってことでいいんだね?」

「はい」

 

 スズランは俺の恰好をじろじろと見てくる。

 

「君、最近見習い義勇兵になったんだよね?」

「あ、あぁ今日なったばっかりだ」

「へぇ~、まさか現地の人だったりする?」

「は? 現地?」

「うん、グリムガルの出身?」

「いや、違うな。今日こっちに来たばっかりだ。というより気づいたらここにいたって言ったほうが正しいかな」

「ふむふむ。にゃるほどねー。にしては恰好がこっちに馴染んでるけどどうしたの?」

「あ? あぁ、元の服なら売ったぞ」

 

 

 スズランはへぇ、と呟いた後黙り込んでしまった。

 その間、俺もその間にスズランのことをなんとはなしに観察する。

 スズランは茶髪に茶色の目をしており、少々童顔だがかなり整った顔立ちをしていた。

 身長は俺の胸あたりで女性としても小柄なほうだろう。

 

 

「ま、いっか。それで? なんで狩人ギルドに入ろうと思ったの? パーティーの子たちとちゃんと相談した?」

「いや、俺にパーティーはいないんだ。こっちに来たのは一人だったからそのままソロで活動していくことになる」

「あらら、それは大変だねー、それで君はなんでここのギルドを選んだの?」

 

 

 そう聞かれたのでさっき考えた前衛職、後衛職が自分に向いていないと思った理由を語り、そして盗賊、狩人、暗黒騎士の中で狩人を選んだ決定的な理由も言っておく。

 

 

 

「狼犬?」

「そう、俺が狩人ギルドを選んだ最大の理由の一つが狼犬だ。俺はソロだから長時間外に出るときだとか、野営をしなけりゃならん時の疲労は尋常じゃなくなる。そこで索敵能力に優れるらしい狼犬にカバーしてもらおうと思ったんだ。それに戦闘能力もあるらしいし。あとは狩人自体、サバイバル能力が一番あると思ったってのもあってここに入ろうと思った」

 

 

 そういうとスズランは頷いて、自分のうすい胸をどんと叩いて言った。

 

 

「うん、ベテランの狩人として保証してあげよう。狼犬ちゃんたちはすっごく頼りになるよー、あの子たちは天然の狩人だしね。狼よりも従順で犬よりも獰猛な狼犬ちゃんは下手な義勇兵よりもよっぽど戦力になる! それに一度主人と認められればまず裏切らないし!」

「おおー、やっぱ俺の判断は間違ってなかった」

 

 そんなことを言われてはいやがうえにも期待が高まってくる。

 可愛くて強くてしかも裏切らないなんて理想的な相棒だ。

 狼犬との生活を期待していると、スズランはただし、と指を突きつけきた。

 

「楽しみにしてるとこ悪いけど、まだ君に狼犬を渡してあげるわけにはいかないんだなーこれが」

「えっ、まじか。なにか条件とかがあるのか?」

「その通り! 実は義勇兵になって初めて狼犬を飼うことが認められるのだ!」

 

 

 スズランはない胸を張りながらそう言った。

 つまり見習い義勇兵は狼犬を貰えないらしい。

 そんなことはオルタナでは聞かなかった。情報収集が甘かったらしい。

 でもどうするかな、これで割合期待していた戦力がしばらく手に入らないことになってしまった。

 

 

 

「君には申し訳ないけど、これはギルドで決まってることなんだよ。義勇兵にすらなれないような子に狼犬を任せて結局世話しきれませんでしたー、なんて私たちには許容できないからね」

「あー、まぁ確かに理解はできるが」

 

 

 至極真っ当なことを言われ、頭を抱える。

 あてにしてた戦力ががが。

 

 

「でも安心したまえよ、見習い君。狼犬がいなくとも狩人は優秀だよ。狩人は弓とか剣鉈とかを使って前衛、後衛ともに熟せて、動物を狩って小遣い稼ぎもできる万能職なんだからね、ソロでは重宝するスキルを色々教えてあげられるはずだよ!」

「まぁさっさと義勇兵になったら問題ないか、他のギルドよりも合ってると思うし」

 

 

 まぁそれまでが難しいんだが。

 俺は他の人の倍額で義勇兵団章買わなきゃならんし。

 とはいえ、今更他のギルドを選ぼうとも思わないしな。

 

 

「うむ、なら我らが狩人ギルドに入るってことでいいかな?」

「ああ」

「よし、なら歓迎しよう。ただし、、、」

 

 

 そう言うとスズランは手を差し伸べてきた。

 握手かと思ったが手のひらは上を向いているのでそれはないだろう。

 

「ん?」

「お金だよ、お金。どこのギルドでも入るには八シルバーが必要なんだよ。まぁ君は知っててここに来たんだろうけどね」

「あぁ、金か。そのことなんだが……これでもいいか?」

 

 

 そういいながら革袋を差し出した。

 俺の態度から八シルバー持っていないと思ったのか、スズランは腰に手を当てながら口を開いた。

 

 

「見習い君、値切ろうったってそうはいかないよ。ギルドで決まってることだから八シルバーからびた一カパーまけるわけにはいかないよ」

「あーいや、そういうわけじゃないんだ」

 

 そういって革袋をスズランに押し付ける。

 するとスズランはその革袋の予想外の重さにに少し驚いたようだった。

 

 

 

 

「君、これは……」

「全部で二十四シルバー入ってる。通常の三倍払うからできるだけ多く俺にソロで生き残る術を教えてくれ」

 

 

 

 

 

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