ソロ狩人がグリムガルで頑張るお話   作:古本

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前話タイトル変えました。



【対ゴブリン】

 

 

 

 

 首に矢が突き刺さったゴブは一瞬で体から力が抜け、目から光が失われた。

 

 

 ワンショットキルだ。

 今まで数えるほどしか出来なかったが今ここで出来たのは僥倖だ。これで遠距離から攻撃される心配はなくなった。

 

 感慨に耽る時間も惜しんで、矢を番え新たな獲物に照準を合わせる。

 矢の切っ先にいるのはまだ座っているホブゴブ。

 

 

 リーダーは革鎧を着ているので後回しだ。

 今度は精度よりも速さを重視しておおざっぱに狙いをつける。

 まだ<速目>の効果が続いているのを感じながら矢を放つ。

 ーー命中。腹に矢が突き刺さりホブゴブは大きく叫び声をあげる。

 

 

 ここに至ってようやく事態を把握したのであろうリーダーが何事かを叫ぶ。

 すると、ダガー持ちと盾持ちが前に出てきて逆にリーダーは俺から離れていく。結果的にリーダーが二匹のゴブを盾にした形になる。

 

 

 やはりこのゴブ、知能が高いようだ。無策で俺のほうに突っ込んできたら対処は余裕だったんだが、曲がりなりにもパーティーとして機能している。

 射線を確保するために体を茂みから出していたので、迷うことなく俺のいるところに向かって真っすぐ二匹のゴブは近づいてくる。

 

 

 まだ距離はあるので三度矢を番える。

 盾に防がれるのを嫌がって狙うはダガー持ち。

 

 照準は股間のあたり。

 太い血管が多くある上、足に当たれば行動を阻害できる。

 

 

 弓弦を引き絞り、放つ。

 --命中。右の太ももに矢が突き刺さる。

 

 ダガー持ちは叫び声をあげて、明らかに失速する。

 盾持ちはそいつを気にする様子を見せたが、リーダーが指示をするかように何事か怒鳴るとそのまま俺のほうに向かってくる。

 

 

 それならば、ともう一度ダガー持ちに向かって矢を放つ。

 ーー外れ。前と比べるとかなり命中率は上がっているがそれでも外れるときは外れる。残念だが足に傷を負わせられたので悪くはない。

 

 盾持ちは自分を無視して手負いのダガー持ちを狙った俺に怒りを抱いたのか、眼光で人を殺せそうなほど鋭い目つきで俺を睨みながら走り寄ってくる。

 

 

 

 今、盾持ちが突出していてその後ろにダガー持ち、さらに後ろにリーダーとホブゴブがいる。リーダーは未だに状況を把握していないホブゴブに俺の存在を伝えて戦線に出させようとしているらしい。

 

 つまり、この瞬間俺は盾持ちと一対一ということになる。

 他のゴブが来る前に片づけたい。

 

 

 俺は弓を捨て剣鉈を抜き、俺のほうから盾持ちに走り寄る。

 

 

 

「ーー刈り払いッ!」

 

 

 

 剣鉈スキルの<刈り払い>。

 このスキルは横薙ぎの斬撃を放つスキルだ。

 

 

 盾持ちは咄嗟に盾を構えるが、構わずにそのまま剣鉈を振るう。

 ガキィンッという音を立てて両者は衝突する。

 

 

 

 すると剣鉈で打たれた方向に盾持ちがよろけるように体が流れる。

 これは技量の差とかではなく単純に体格差によるものだ。ゴブリンは厄介な生き物だが身長は子供と変わらず筋力もそれ相応なので単純な力比べなら俺が押し勝つ。

 

 

 そこですかさずもう一度剣鉈を構えて、盾を打たれたことで露わになった左肩にそのまま打ち下ろす。

 

 

 

 肩が裂け、血が吹き出し、盾持ちが悲鳴を上げる。

 俺はそのまま攻撃の当たらないように盾持ちの左側に回り込み、そのまま後頭部に向かって渾身の蹴りを放つ。

 盾持ちは痛みで動きが鈍っていたせいか回避することなくそのまま俺の蹴りが決まり、盾持ちは前に()()()()()ように倒れこんだ。

 

 

 

 地面に伏した盾持ちはその場から逃れようともがくが、そうはさせじと足をのせてゴブの体を抑え込む。

 さっさと逃げられる前にこいつを仕留めるべく間髪おかず足を振り上げ、首筋に向かって二度三度と踏み付ける。

 何度目かのスタンピングでゴキッ、という鈍い感触が足裏から伝わってきて、ゴブが完全に絶命したのが分かった。

 

 

 むごい行動だとは思いつつも躊躇せずに出来るようになっているあたり、我ながら()()()なってきたなぁと苦笑する。

 

 その時、前方からグギャアアッ! という怨嗟に満ちた鳴き声が聞こえてきた。

 パッとそちらを向くと俺のことを睨むダガー持ちがいた。足の矢傷のせいで遅れたようだがもうかなり近くまで来ていた。

 

 

 ダガー持ちに備えて剣鉈を構える。

 そういえばリーダーとホブゴブはどこにいるのかと周囲に目をやろうとした瞬間、後ろのほうからブオンッという鈍い風切り音が聞こえ反射的に地面に向かって身を投げる。地面を転がって攻撃を避ける回避スキル<穴鼠>だ。

 

 

 

 しかし、若干タイミングが遅かったのか背中に痛みが走る。

 急いで立ち上がり振り返るとさっきまで俺いたところに槍を振り下ろしたホブゴブの姿が。恐らく穂先が背中を掠ったのだろうが幸い軽傷のようだ。

 ホブゴブの横にはリーダーの姿も見える。

 

 

 俺から見て左にダガー持ち、真ん中にリーダー、右にホブゴブがいる。

 つまり三方から囲まれた形になる。

 

 

 俺を囲んだことで自分たちの優勢を確信したのか、リーダーが醜悪な顔をゆがめてニヤリと笑う。

 それを見た俺は息を吐き、構えていた剣鉈をだらりと下げる。

 それを諦めと見たのかリーダーは笑みを深めたーーその瞬間、俺は走り出すッ。

 

 

 向かうはダガー持ち。一直線に走り、ダガー持ちを真正面から強襲する。

 剣鉈を引き絞るように右腕を引き、間合いに入った瞬間走っていたエネルギーをそのまま刃に込めるように突きを放つッ。

 

 

 ダガー持ちは何とか剣鉈の軌道を逸らそうとダガーを剣鉈に当ててくるが、若干剣先がぶれる程度でダガー持ちの脇腹が抉れる。

 かなり大きな傷だが、ゴブがこの程度で死なないことは分かっているので、警戒して一歩足を引くとダガー持ちは痛みにひるむことなくダガーを振り上げているところだった。

 

 

 そのまま斬撃を放ってくるがそれを俺は横っ飛びに避け、横から矢傷を負った右足に向かって低く蹴りを放つ。

 

 

 ダガー持ちはアドレナリンでも出ているのかこれにも怯まずに怒りの咆哮を上げながらダガーを構えそのまま突き出してきた。

 俺はこれを身を屈めるように(ダッキング)して避け、そのまま空いている左手でゴブのダガーを持つ右手首を掴んだ。そして左手を後ろに引っぱりながら体をゴブの懐に潜りこむようにしてダガー持ちを背負い、投げるッ。

 

 

 ダガー持ちを投げた先から聞こえるドンッという何かガぶつかったような音。ダガー持ちよリーダーがぶつかったのだ。それもそのはず、俺はリーダーとぶつかるようにダガー持ちを投げたのだから。

 

 

 つまり二匹のゴブが重なり合っている形になる。

 この好機を逃すまいと剣鉈を構えて突進する。構えは剣鉈の切っ先を前を向け腰のあたりで両手で柄を握る、所謂ドスを構える恰好だ。

 数瞬後、構えた剣鉈を伝って腕に衝撃がはしり、ダガー持ちの体を剣鉈が貫いた。

 あわよくば二匹まとめて仕留めたいと思っていたが、さすがにリーダーはよろけながらも何とか後ろに下がったらしく、その革鎧に僅かに傷をつけるに留まった。

 

 

 悔しがっている暇もなく、視界の端に槍を振り下ろそうとしているホブゴブの姿が見え、急いで剣鉈をダガー持ちの体から引き抜き、後ろに飛ぶ。

 ホブゴブは攻撃が当たらなかったのを悟った瞬間、槍の軌道を地面と水平になるように変化させ俺を追尾してくる。

 俺はその槍を<穴鼠>でなんとか回避した。

 

 

 すかさず<穴鼠>を終えた低い体勢のままホブゴブに走り寄り、足に向かって<刈り払い>を放つッ。

 

 

 ホブゴブが慌てて足を引こうとするが剣先がホブゴブに到達するのが早く、ホブゴブの左足に赤い線が走る。

 

 

 もう一撃加えようとホブゴブの腹に向かって剣鉈を振るおうとした瞬間、ホブゴブが振り上げた足が見え、咄嗟に後ろに跳躍ーーしかし、ホブゴブの足は俺の腹に直撃し俺の体は吹き飛ばされる。

 鈍い痛みが走り一瞬息が詰まる。

 

 

 吹き飛ばされながら地面に手を突き、その勢いで立ち上がる。

 数度深呼吸すると痛みは若干収まった。そのまま目線を走らせるとホブゴブとリーダーが同時に俺に向かってくるのが見えた。

 

 

 今までは何とか一対一の状況を作って走っていたが今回は無理だろうな。

 手数を少なさをカバーするために左の腿に縛り付けていたナイフーー師匠からもらったものだーーを引き抜き逆手に構える。

 そして効果が切れかけていた<速目>をもう一度使う。<速目>は弓術スキルだが、効果は動体視力の向上。これは当然のように接近戦でも、否、接近戦でこそ真価を発揮する。

 このことに気づいた時から接近戦の時にも使うようにしている、すると目に見えて被弾率が減るので重宝している。

 

 

 

 <速目>の発動とほぼ同時にホブゴブの槍の突きが放たれる。それを横に跳んで回避すると今度はリーダーが直剣を振り下ろしてくるのでそれをナイフで受け、剣鉈で突きを放つ。剣鉈は一応リーダーの手の甲に当たったがかなり浅い。

 

 ホブゴブが槍の振り下ろしてくるのでこれは<穴鼠>で回避。先ほどと同じようにその勢いで足を狙おうとするが流石に学習したのかさっさと引いてしまったので攻撃は諦める。

 

 

 

 そんな風に二対一の攻防がしばらく続く。

 

 剣をはじき、槍を避け、ナイフで受け、剣鉈を振るう。

 

 致命的な被弾こそまだないが、細かい傷は幾つかできた上かなり消耗が激しい。受けた傷以上にダメージを与えてはいるもののこのままではジリ貧だ。

 だが、焦らず丁寧に攻撃をかわしてゆく。

 

 

 そんな攻防を続けていると妙な感覚に襲われる。

 周りの景色がゆっくり、そして鮮明に見える。体を動かすスピードは変わらずに認識能力のみが他の感覚を置き去りにしているような不可思議な感覚。

 後ろで落ちる一片の落ち葉の模様すらも知覚できる。

 

 

 そんな状態に戸惑う暇もなくホブゴブの槍が襲ってくる。

 それが妙に隙だらけに見えて、いつもなら避けるしかないような攻撃だが今なら刃渡りの短いナイフでも受け止めることができるとなぜか確信する。

 

 ーーだから、そうした。

 少しでもタイミングを誤れば俺がはじき飛ばされるであろう攻撃を卵をキャッチするかのように衝撃を吸収してナイフで受け止め、そのまま思い切り跳ね上げる。そしてさっきのお返しとばかりにホブゴブを蹴り飛ばす。

 ホブゴブは足に切り傷を与えていたためか踏ん張り切れずに弾かれる。

 

 

 追撃しようかと思うが、リーダーに後ろを突かれても嫌なのでその場で構えなおす。

 リーダーは叫び声を上げながら直剣を振り上げながら走り寄ってくる。

 

 

 ゴブが走ってきているにも関わらずゆっくり向かってくるように見えるという奇妙な光景の中で、直剣が振り下ろされる。

 やはりまったく脅威を感じなかった俺はそれを剣鉈で、弾くでも止めるでもなく()()()()()。 

 その流れのまま体を回転させ、後ろ回し蹴りを放つ。俺の踵はリーダーの顎に向かって寸分違わず吸い込まれていき、ーー直撃。

 

 

 リーダーはふらついたかと思うと、一瞬で体中の力が抜けたようにふっと地面に倒れ伏した。ーー脳震盪を起こしたのだ。

 

 

 少しすると立ち上がるだろうが、しばらくは動けないだろう。

 ということで、ホブゴブのほうに振り向くとホブゴブはすでに立ち上げっており、俺のことを警戒しながら槍を構えている。

 

 

 俺が無造作に距離を詰めると、ホブゴブは槍を狂ったように振るってくる。

 しかし、俺はそれを完璧に見切り、時に避け、時に弾き、時に受け止めた。その攻撃が始まる前からどんな攻撃が繰り出されるのか手に取るように分かるのだ。もはやホブゴブの攻撃さえも脅威足りえなかった。

 

 

 

 ホブゴブはいくら槍を放とうとも傷一つつかない俺を不気味に思ったのか、怯えた表情で後退った。

 俺はホブゴブが下がった分だけ足を進め、縄でつながっているかのように両者の距離は変わらない。

 

 

 するとホブゴブは覚悟を決めたように咆哮を上げると、全力で突きを放ってくる。

 それは今までの攻撃の中で最も早く、重いものだった。直撃すればよくて骨折、あたり所が悪ければ即死もあり得るような恐るべき突きだった。

 

 

 しかし、それは「当たれば」の話である。

 俺はそれをむしろ前に進みながらナイフで受けた。

 

 

 キィーンッという耳障りな音を立てながら槍はナイフを滑っていき見当はずれな方向に流れた。

 俺は散歩でもしているかのようにそのまま歩を進める。ホブゴブとすれ違う時にナイフで膝裏を切りつけ、そのまま背後をとる。

 

 

 ホブゴブは膝裏を切られたことで身を崩し、膝立ちになった。

 そして俺は背中の右側に向けて剣鉈を突き刺す。

 剣鉈は特に抵抗なくずるりと入り、引き抜くとドバドバと血が溢れ出してくる。

 

 

 いくら強靭な生命力を持つホブゴブといえど、急所である肝臓を刺されればその命をつなぐことは出来ない。ーー致命傷だ。

 

 

 返り血を浴びないように、その場から離れるとホブゴブの体は糸が切れたようにばったりと地に倒れ伏した。

 

 

 

 それを見てようやく一息つく。

 これであとは気絶したリーダーの息の根を止めるだけだ。

 

 

 その時、あの不思議な感覚は消え去り、周りの景色はいつも通りのスピードで流れていることに気が付く。

 まぁ、もう戦闘は終わったので問題はないだろう。

 

 

 そう思って、リーダーがいるはずの所に目を向けるとそこには何もいなかった。

 

 

「はっ?」

 

 

 思わず声を上げたから慌ててあたりを見渡すと、足元のおぼつかない様子のふらふらとした森の奥へ逃げていこうとするリーダーの姿が。

 

 

「逃すかッ!」

 

 

 逃がすまいと咄嗟に手に持った剣鉈をリーダー目掛けてぶん投げるッ。

 剣鉈は回転しながらリーダーのほうへ向かっていく。そして運よく丁度リーダーの足に直撃しリーダーはそのまま足をもつれさせ前に転ぶ。

 

 

 すぐに立ち上がろうとするリーダーだが、まだ脳震盪のダメージが残っているらしくなかなか立ち上がることができない。

 その間俺は急いで距離を詰め馬乗りになり必死にもがくリーダーの体を抑え込む。

 

 

「……俺の勝ちだ」

 

 

 左手に持ったナイフをリーダーの首にあてがい、一気に掻き切る。

 斬ってからもしばらくめちゃくちゃに暴れていた体も間もなく動かなくなった。

 

 

 

 俺は立ち上がり、自分の作り出した五つの死体を見て溜息をつく。

 それには生き物を殺したことへの罪悪感や死を免れたことへの安堵、そして技量と精神と身体そして思考など己のすべてをかけた闘争に勝利したこで得る達成感と爽快感など自分でも把握しきれないほど様々な感情が込められていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は木の幹に体を預けて休息をとっていた。

 

 

「痛ッ、思ったより攻撃食らってるなぁ」

 

 

 先ほどのゴブリン戦で受けた傷に薬を塗っていきその上から包帯を巻く。包帯と言ってもただの清潔な布だが、これをしておくだけでも結構違うのだ。 

 戦闘中は気づかなかった傷もあったがどれも軽症と言ってよいものしかなかった。五体のゴブを相手取ったことを考えれば受けたダメージはかなり少ないといっていいと思う。

 

 

「ま、いろいろ改善点はあるけど実力はついてきてるって考えてもいいだろうな。ま、とりあえず今日はここで少し休んだらオルタナに帰るか」

 

 

 ちなみにだが、ゴブの装備は適当な茂みに隠しておいた。ゴブたちの身に着けていた装備はそこそこの品質だったので売れ払えばそれなりの額になるはずだ。

 今日はさすがに少し疲れたし、持って帰れるような道具もないのでまた後日取りに来ることにしたのだ。

 

 

 戦利品の買い取り額に思いをはせながら、休憩していると遠くからの物音を俺の耳が拾った。

 

 耳を澄まして聞こえてくるのは、人の怒号に物音、そして獣の唸り声。

 

 

 ーー俺はこれこそが今朝に覚えた予感の原因である事と、これが厄介事であることを確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





戦闘シーン、書くのは楽しいけど時間がかかる上にうまくかけているか自信ないんだよなぁ。気になることとかアドバイスあれば教えてくださるとうれしいです。
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