死に目に魂貰いに来るタイプのロリババア 作:Pool Suibom / 至高存在
あるいは新世界への旅路(引きこもり)
大陸が無くなってから、まず初めにやったことはあの黒水の調査及び研究だ。
分身体でとりあえず突貫してみたところ、着水と同時に意識が戻ってしまった。多分分け身とはいえ"魂"が吸われたか、弱すぎる実体が保てなくなったかのどちらか。いや、どちらもかな。
これだと調査のしようがないので、じゃあ壊れない黎樹を用いてでっかいスプーン……というか受け皿的なものを作って、黒水を掬ってみようと再チャレンジ。
わかったのは、掬う事は出来るっぽいんだがクソ重い、という事。流体の癖になんだあの重さは。黎樹が折れる事は無かったけど、危うく地面が捲れ上がるところだった。けど中に沈める事は出来るんだよな。粘性が特別高いってわけじゃなくて、比重が死ぬほど重いって感じか? いやいや、どういう物質だよ。水銀でもこんな重くはねーぞ。
けど、黒水は近くに寄ってみるとなんとなく金属光沢があるようなないようなので、まぁそっちの線も捨てないで置くのが吉と見た。
黎樹で完全に防ぎ切れているから黒水に関してはとりあえず問題は無い……が、流石にこの森も生物である。森そのものの栄養が無から生まれるわけもなく、たとえば今いる魔物娘全員を死なせて"魂の摂取"を行い、その肉体で肥料を作った所で、何百年。千何年保つかどうか。魔物娘の複製だって元手無しに出来るわけじゃないので、やっぱりエネルギー問題は出てきてしまう。
早々にこの黒水をなんとかする手段か、黒水の向こうに何かが無いか、というのを確認する必要がある……のだが、如何せんこの水の性質が俺の分身体を悉く許さない。さてどうしたものか、というのが現状の問題。
うーん。しかし全く手段が見えてこない。
船でも作ってえんやこらするか? ……非現実的だな。一応作っておきはするが。
困った。仕方が無いので、研究をしよう。今やれることをやって、人事を尽くすんだ。至高存在さんは必ず見ていてくれる。その先で、フラグが立ってさえいればなんか新しい切っ掛けでもあるだろ。
嘆いていても仕方がない。前を向こう!
森にはいくつかのコロニーが形成されている。言わずもがな魔物娘達のそれだけど、数百いる魔物娘達がそれぞれ縄張りを作ろうとしても、この森の面積的に衝突は避けられない。俺の家のある場所と毒の水溜まりがある場所を除き、そのほとんどで終日喧嘩が起きている……そんな状態が何日も続いていた。
まぁ天井閉じちゃったから一日の感覚とかわからないんだけどな。なんとなくだ。なんとなく。
いつ死ぬかわからない、というのは、今すぐに殺される、という状況よりも感情の振れ幅が大きいらしい。これは魔物娘に限った観察結果だから、人間種や亜人種ならば違ったのかもしらんが、残念ながら外は黒。一面真っ黒の大海だ。人間種も亜人種も残っているとは思えん。
……あ、ってことはディスプの息子も死んだのか? いや、いやいや。あの再生能力なら砕かれようと削られようと生きて……あー、でも黎樹の分身が消えた辺り、魂に干渉する系統だったらマジで死んでるかもしれん……。ほんっと、勿体ねえ。楽しみに取っておいたデザートを火炎放射器で消し炭にされたみたいなもんだ。俺は食わなくても生きていけるとはいえさぁ。
ほんと、なんか俺が悪い事したかよ。理不尽すぎるだろ。
まぁ、過ぎた事を悔いても仕方が無いわけで。
「んー……傷に対して、再生率は20%くらいか。んー。どーも、上手く行かんな……」
前を向くと決めた日から、ずっと再生者を作る研究をしている。単に回復量を高めるだけだと、"寿命"がガリガリガンガン削れて行っちゃうんだよな。で、最後には"魂の規模"がぶっつんする。それらは同質の"魂"であるけれど、起点となり得るものがないのか、再び舞い戻ったりすることなく雲散霧消する。まぁ"魂の摂取"が回収してしまうからなんだけど。
これも最近ちょっと仇だ。研究において「経過観察」っていうのは結構重要な要素なんだけど、肉体が死んだ時点で"魂の摂取"がそれを回収してしまうせいでその後の動きが理解できない。この森にいる内は"魂の摂取"範囲だからなぁ。全体に黎樹があるからさらに範囲は広いし。
「んー。ダメだな。ほいじゃま、ぷすっと」
あと少しで死ぬだろう魔物娘に興奮剤を打ち込む。これも改良に改良を重ねて、挿した直後に最大にまで上がるようにした。一瞬で"魂"の質が変化する。変化する事で、ぶっつんする前に融合可能になるわけだ。あとは"魂"の質を変えた魔物娘が自ら融合先の所にまで這いずって行って、融合。
その融合先は、ディアスポラだ。最初は十体だけだったが、今や何百という魔物娘の"魂"を融合したこいつは、"魂の規模"だけならファムタとファールに次いで大きい。キマイラ娘ズがいないからこの順位、というのもあるんだが。
ちなみに実験に使っている魔物娘は複製体な。複製元はアルタ。森に残り続けた魔物娘の中では一番頑丈だったもんで、都合が良かったんだ。
そういえばファムタとファールに関して何だが、実はまだ確保できていない。
あの白い丸、黎樹を通さねえんだよな。入り口も閉じられたせいでマジで干渉できん。まぁ全体を覆っているから中で死ぬ分には回収できて良いんだが……せめてバックアップは取りたい所。複製さえ出来れば死んだ所で問題ないんだが、やっぱり一回限りとなると惜しくなるこの気持ち。
せめてファムタとファールのどっちかがこちらの手中に収まってくれればなぁ。
「くそっ、こんなところに連れてきて、何をするつもりだ、女王!」
「えーと、次試す事は……」
「な……なんだ、これは。わた、し、か? この──死体の山は」
回復薬だからいけないのか? あー、じゃあ例えば、外部から肉を強制的に継ぎ足す、とかどうだろう。傷によって出来た欠損の修復に元来の自然治癒力を消費しているのだとすれば、外から欠損を補ってやれば"魂の規模"はどうなる?
「女王……やめろ。それを、その枝を私に近づけるな」
しかし、黎樹というか模倣転移術というのはほとほと便利なものである。切断や除去においては精密機械も真っ青な精度で可能だし、魔物娘の体構造を把握しているから皮を傷つけずに内臓へ干渉する事も可能。なんなら胃の中のものを体外に排出したり、逆に腸の中に石ころを入れたりも出来る。意味ないからやんないけど。
一度ぶつ切りにしたものを同じところに戻してくっついた! が出来ればそれが一番だったんだけど、流石に無理。生物は基本不可逆なのがなぁ。まぁ複製いっぱいあるからいくらでもやり直しは利くんだけど。
「ぁ──ぎ、い……!」
「えーと、甲虫の魔物娘用の肉スライム肉スライム……」
「ひ──やめろ、その気持ちの悪いものを近づけ──ぅあ」
どうしても"魂"に関する実験をしていると肉体が余るもので、同族の身体は流石に受け付けないのか魔物娘に与えても食べようとしないものだから、仕方なく肉スライムとして保存している。分身を乗せるやつな。普段は俺と同じ姿にしているけれど、中身はグロい肉のスライムだ。まぁ魔物娘の肉ってのは動物のそればかりではなくて、虫だったり植物だったりの肉スライムは割とマシな方だと思う。
これらは森中にいて、縄張り争いで死んだ魔物娘の肉体を取り込むことで回収と森の清掃を行っている妖精さんみたいなものだ。あるいはキジムナー……木霊かもしれんが。
見境なく、ではなくちゃんと種別ごとの肉スライムが回収に行くから、混ざったりすることも無い。そうして取り込んだ肉体は今の様に補肉として使用したり、魔物娘の複製時の素材にしたりと様々。余すことなく有効活用だ。俺は学んだのだ。
素材は全て、管理する。野放しにしない。放置しない! ……ファムタ達はまだ回収できていないけれど。
「──! ──!!」
癒着速度は微妙だが、"寿命"の減りはまだ緩やかな方だな。恐怖と嫌悪に関しちゃまぁ、いつもと同じか。
ふむ……このアプローチはあってる、か? じゃあディスプの息子は、外から肉となるものを集めていた? ……肉となるもの、つったって……森の中には魔物娘と植物、あと土やら小石くらいしか……。
……。
「まさかとは思うが……そういうことか?」
「──」
アルタの複製体に興奮剤を突き刺し、肉スライムを引かせる。
なるほど、なるほど。だからあんなに頑張っても出来なかったのか。
くそ、やられたぜ。この世界がファンタジーなのを忘れてた。
俺が出来ないから、誰しもが出来ない、なんてのは……はは、余りに驕りが過ぎたな。調子に乗っていたんだ。自戒しねぇと。
「えーと、だから、つまり」
今必要なのは──オーゼルだ。
結果から言うと、オーゼルはいなかった。クレイテリアも。
回収し損ねた、という事だ。
しかぁし!
俺にはバックアップがある。やはりバックアップ最強だなあらゆる場面で役に立つ。
今回クレイテリアに用は無いのでオーゼルのバックアップをポッドから取り出し、複製。またバックアップをポッドへと戻して、複製の方で実験を開始する。
オーゼルは疑似的な無機物の魔物娘である。どう頑張っても無機物に"魂"を乗せられない事がわかったから、黎樹範囲内においてのみ、常に体表から体内に向かって発動する模倣転移術を身に纏った、ゴーレム娘。自己増殖を行ってもその仕組みは同じで、俺のかけた模倣転移術をそっくりそのまま増殖先の幼体も身に纏っている。
今更だけど、自己増殖はもしかしたら複製と似た原理なのかもしれないな。
この模倣転移術が必要な理由はオーゼル内部にある二つの水、"微かに魂の宿る無機物水"を逃がさないようにするためだ。これはこれで実は違う魔物娘で、スライム娘の複製体の残滓、みたいなものと思ってくれればいい。
オーゼルはクレイテリアの肉体を石に変換したものと、ホマリアというスライム娘の残滓を組み合わせて作られた疑似的な無機物の魔物娘。疑似的とは言え、無機物の魔物娘なのだ。
そのオーゼルに、新たな機構を追加する。
それは周囲の無機物を自動収集する模倣転移術。俺の"魂の摂取"の無機物版。あるいは、生物が当たり前のように持っている食事という行為のオート無機物ver.
アルタを見るに、有機物の……生物でも、周囲からの自己素材の補填で"寿命"減少の緩和が見られた。結局生物と言うのは不可逆的で、くっつけたところで修復には更なるエネルギーが必要である、というのがいけないのだ。肉を補填したところで、それを肉体にするにはまず取り込んで、結合して、経路を通して、馴染ませて、といった様々なプロセスが必要になる。
自然治癒力で行うよりは効率が良いから"寿命"減少も緩慢になるけれど、それでも消費は避けられない。
だが、オーゼルは違う。
オーゼルの身体は特に特別な要素のない石だ。いなくなってしまったが、外に出ていたオーゼルが様々な鉱石を食していたのも確認済み。まぁそうなるように作ったんだが、それが成功していた事が何よりの証左。オーゼルは、なんでもいいのだ。自分を構成する要素が……つまり、無機物なら、なんでも。
恐らく流体だとそもそもくっつかないから保てはしないんだろうけど、土とか、石とか、身体の形成さえ出来れば何でもいい。
スライム娘のホマリアもそうだな。その後に作った改良版のスライム娘も含め、身体に纏うのが水であれば、流体であればなんでもいい。保有できる流体量はぶっちゃけかなり少ないんだが、流体さえあれば供給に困らない。あいつらは逆に固体だと困るのやもしれんが。
ファンタジーにおけるゴーレムって、まさにそうだよな。どこからともなく岩石を収集して、何度倒されようとも復活する自然の驚異。あるいはコアさえ潰せば倒せるけれど、それさえ無事ならあまりに強力。
それがゴーレム娘とスライム娘なんだ。
それが出来るのが、無機物の魔物娘。
というか、無機物に"魂"を宿した奴ら、なんだろう。
「調べてないから何とも言えんが……あの溶解した国」
あの溶け方は、あの
あの国で行われていた研究……あるいは実験は、無機物に"魂"を宿らせる実験。いや、"魂"の宿った無機物は元からいて、それを……自分たちに適用する実験、か? 何らかの事故で国中にその結果が暴発して、実験の成功と共に国は滅んだ……。その後なんらかの要因で国も人間種も溶けだした。
仮定Xが多すぎる。が、式はこれであっている気がする。こっちは勘だが。
「……そうだ、ホマリアとアルディーカ。ホマリアは……無理か。アルディーカ、アルディーカ……」
オーゼルに追加機能の処置を施して、そのまま黎樹の根を纏わりつけて、閉じた天井にまで持っていく。
その間に水溜まり周辺にいる分身体に意識を向け、アルディーカを捜索。いなけりゃ新しいのを作ればいいんだが、えーと。
あ、いた。
「アルディーカ!」
「あれ。主。用。珍しい」
アルディーカはホマリアの後に作った改良版のスライム娘だ。血液ではなく"微かに魂の宿る無機物水"を用いて作ってあるため、コアらしいコアがない。アルディーカは自らの拠所たる無機物水を周囲の液体に希釈する事で、元の身体よりも多い流体を扱うことが出来る。まぁそんなに量は多くないんだが、模倣転移術の範囲内であれば外傷によって死ぬことは無い。水だからな。蒸発したら多分一瞬で死ぬ。水だからな。
痛みを感じる器官がないためか、"経験"の横幅はあんまり広くない。感情はあるっぽいんだが、恐怖を抱いたことがない臭いんだよな。生物的恐怖に直面しないと感情と言うのは中々育たないものなのだ。今度熱してみるか? フライパンとかで。
「何? 何? 持ち上がる」
「よし、これで……あとは、船だな」
アルディーカも黎樹で作った皿で持ち上げて、黎樹ドームの外へ持っていく。
外の分身体につなげて、と。
船を作っておいて良かった。やっぱ前々に前もっての準備って大切だな。
初めて、森の外を見た。
「君。石?」
「……うん。僕は、オーゼル。君は、水かな?」
「水。色々。ちゃぷちゃぷ。アルディーカ」
染みない木で掬われて、ちょっと前に全部が閉じてしまった森の上のところにまで上がってきて、そこには水底にある小石の集まりみたいな見た目の子がいた。私はその子を見て驚いたし、その子は私を見て驚いたみたい。
びよーんと体を伸ばしてあげれば、また、石の子は驚いた様に、わ、と言った。
「……ホマリア、じゃないんだ」
「アルディーカ」
「……うん。わかった。アルディーカ、君も、女王に、連れ出されたの?」
「用。珍しい。嬉しい」
「……変わってるね」
生み出されてすぐ、あの泉に放された。何か下の方に出口があるようだったけど、不便が無いからずっとそこにいた。時折畔を通る子を驚かせたり、主じゃない主の姿を真似したり。毎日、楽しい日々。
何をすればいいのかよくわからなくて、何をしたいのかも無かったから、毎日、楽しかった。
「森。外。水?」
「……うん。僕も、初めて見た。こうなってたんだ。魔王国っていうのは、どこにあるんだろう」
「丸?」
「……あれが、そうなのかな。女王が魔王国を守ったの?」
森から染みない木が伸びて、丸くなっている。あれが魔王国というものかな。名前だけは知ってた。畔を通る子が、たまに話していたから。
行く機会があったら行ってみたいと思っていたけど、行っても何をしたらいいかわからないから、別に行かなくていいや、って。そう思ってた。
「よし、進水式……は別に良いか。誰が見てるわけじゃねーもんな」
「主」
「……僕たちに、何の用?」
主じゃない主は、この森のどこにでもいる。森の外にいるのには驚いたけど、それだけ。主じゃない主は普段はふらふらしているだけだけど、たまに、主じゃない主が主になって、何かをしている事がある。これも主じゃない主だけど、主になってる。
「オーゼル。アルディーカ。お前たちには、この黎樹の船で外洋探索に行ってもらう。あの水は、全て無機物だ。補給は出来る。金属っぽい性質もあるからオーゼルでも行けるはずだ。陸地でもなんでもいい。見つけて、帰ってこい」
「……無かったら」
「主。任せて。頑張る」
初めて、自分の生に目的が出来た。
何かを見つけて、持って帰る。嬉しい。オーゼルは、嫌なのかな。
「オーゼルには黎樹を持たせる。黒水に着水した黎樹からは分身体が削ぎ落されるが、削ぎ落されて単なる頑丈な樹木と化した黎樹の上なら、黎樹は元の力を保ったままに出来る。観葉植物と同じだな」
「……?」
「?」
「大陸があったころでも効果は発揮していたから、大丈夫だとは思うが、この黎樹を黒水に浸けることが無いようにだけ気を付ければいいだろう。この黎樹さえあれば"魂の摂取"も発動するからな。デメリットは無い。不味い事があったらこの黎樹を強く掴めばいいという事だ」
「……?」
「?」
主は喋ってるけど、私達に喋ってるわけじゃない。みんな主に喋りかけるけど、主は聞いてない。だから、私も主の前では、自分の事だけを喋るようにしてる。ただ、名前にだけは反応してくれる。名前を出すと、主は必ず私を見てくれる。
「アルディーカ」
「ん?」
「頑張る」
「なんだ、アルディーカ。どうした?」
普段は絶対に見せてくれない、主の瞳。正面から見た時にだけ見える、空色の瞳。
「オーゼル。一緒。見つける。帰る。ね?」
「……わかったよ。君は、本当に、変わってるね」
「なんだ?」
初めて出る森の外。初めてもらった、生きる目的。
……絶対。
うん。行こう。
10隻、出した。
オーゼルの複製体とアルディーカの複製体を乗せた黎樹の船を、10隻。
キマイラ娘ズと違って名付ける程の"魂の規模"ではないからまぁ回収しなくてもいいっちゃいいんだが、ご飯粒一粒でも残したら罰が当たるって言うしな。食わないでいい俺にとっちゃ、どんな小さな"魂"も回収対象だ。
で、10隻中回収できたのは8隻だけ。
探索先で何があったのやら、マルチタスクが出来ないから一個一個チャンネルを切り替えるようにして監視して、意識を戻しては研究をして、って感じだったから、転覆なりなんなりをした原因はわかってない。ただ模倣転移術による自動回収機能は正常動作しているようで、オーゼルの複製体もアルディーカの複製体も、回収時の"魂の規模"は出立時よりも大きくなっていた。
で、残りの2隻なんだが。
1隻は、今も黒水の上を漂ってる。転覆はしていない。けれど、オーゼルの複製体とアルディーカの複製体は乗っていない。
もう1隻は……なんか、金属で出来た城? か? これ。よくわからんが、なんかの上に座礁しているようで、こちらも周囲にオーゼルの複製体とアルディーカの複製体の姿は見えない。
でも一応これで、黒水に飲まれない陸地……? があるのはわかったな。
問題はどこにあるか、である。
「……どう考えても、どう感じてもコレ……下、だよなぁ」
黎樹のある場所は大体わかる。
わかるから、疑問だった。
真下ではないにせよ、下。黒い海のある、下。でも見た感じ海底ではなくて、けれど海の下。ん~?
んー。んっんー。んーん。
「わからん。でも深さはわかったから……やってみる、か」
とりあえず俺では、つか有機物の魔物種では黒い海は通れない。潜るなんてもっての外だ。じゃあどうするか。
方法は二つ。といっても実質一つだが、一応二つ。
この森は別に黒い海に浮いている、というわけではない。ちゃんと地面があって、その地面を黎樹の根が補強する形になっている。その深度は結構なもの。ただ地下水脈だのなんだのに当たる気配はなく、もっと深くまで地面が続いている、という印象がある。熱もなさそうなんだよな。
だからここに大穴を開けて、海底に至るまでの通路を作る、という方法。これは多少の心配がある。地盤がある程度緩んでしまうことと、もし黒水が入り込んできたときに森の中にまで浸水しかねないってことだ。そうなると、結構痛い。
となるともう一つの方法を取らざるを得ない。こっちもまぁ、やる事は同じだ。
ただ森の外にトンネルを作るというだけの違い。黎樹で、分身体は抜けてしまうから、何度も何度も重ね塗りしていく感じで掘り進める。施工期間は前者の方法の何倍もかかるし、消費する黎樹の量も跳ね上がる。
……うーん。
まぁ、やるかぁ。なんかこの、必要な事? 死ぬほど嫌なんだけど、やらないと終わりが見えてるのがなー。こんなことが起きなかったら生きるためにー、なんて考えなかったんだけど、まぁ仕方がない。うーん。面倒。面倒面倒ドメインドメイン。
「気長にやるか……気持ち早めで」
やっぱり完全な【不老不死】のチートが欲しいよー至高存在さん。
頑張る子は可愛い
アルタはかつてジャクリーンの世話をしていた魔物娘だな! 責任感が強い代わりに頑固で意固地で、森から出るという誘いも流行には乗らん! って断ったんだぜ!