番外十刃の破面   作:霧島楓

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vs斑目一角

 空間に亀裂が走る。そこから生じたひび割れが広がり黒い空間『黒腔(ガルカンタ)』よりそれは現れた。

 現れたのは四人の人型の存在。巨漢の男ヤミー、小柄で中性的な男性ルピ、青髪に隻腕の男グリムジョー。

 

「不満そうだな」

 

最後に現れた長身痩躯に白い髪と紫色の瞳を持つ青年ローレンスがルピに声をかけた。

静かなその声にルピは忌々しそうに答えた。

 

「当然だろ。なんで君がリーダーなのさ。普通に考えて僕の方が上なんだから僕がやるべきだろ」

「文句なら藍染様に言うんだな。お前にその度胸があるのなら」

「ちっ」

 

 そう言われルピは黙った。居心地の悪い空気が流れるが共に現れた巨漢の男ヤミーは二人のやり取りなど気にもせず眼下の存在に視線を飛ばしていた。そこには四人の男女がいる。

 

「おぅ?中々霊圧の高そうな奴がチョロついてやがる。手始めにあの辺から行っとくか」

「何言ってるの?あれは死神だよ。六番さんの言ってた尸魂界(ソウル・ソサエティ)からの援軍じゃないの?」

 

 そこまで言うとニヤリと顔を歪ませてルピがグリムジョーに言った。

 

「ア・ごめーん。元六番さんだっけ」

 

 ルピがローレンスに対する苛立ちをグリムジョーを煽り発散していく。

 

「あの中にはいねえよ。俺が殺したい奴は」

 

 プライドの高いグリムジョーは当然のように苛立ったが表情には出さない。今彼の中で優先すべき相手は他にいるのだから。

 響転(ソニード)を使い高速でその場を離脱した。

 

「あ!! おい待てグリムジョー!!!」

「放っておけ。別に問題ない」

 

 ヤミーが声を荒げながらグリムジョーを止めようとするがローレンスが静かに遮った。

 

「そうだよ、所詮十刃(エスパーダ)落ちさ。何もできやしないよ」

「ちっ、俺が殺してえ奴もあの中にはいねえんだがよ……」

「キミが殺したいのって腕斬られた奴? ボコボコにされた奴? それとも虚閃弾き返した奴?」

「全部だよ」

「無駄話はその辺にしておけ……向こうは歓迎してくれるらしい」

 

 その声を合図にしたかのように死神たちが立ちふさがった。ヤミーの前には冷気を従えた白髪の少年が。ルピの元には豊かな金髪の女性とおかっぱ頭に顔に鳥の羽を模した飾りをつけた男性が。

 そしてローレンスの前に立ちはだかったのはスキンヘッドに目に赤い戦化粧を施した強面の死神の男だ。

 

「お前は斑目一角だな」

「ほお、俺を知ってんのかい?」

「ああ、抜群の膂力に天性のバトルセンスを併せ持つ。護廷十三隊屈指の兵の一人だろう」

 

 ローレンスの評にニヤリと笑う。

 

「褒めてくれてありがとうよ。知ってるようだが敢えて名乗らせて貰うぜ、十一番隊三席、斑目一角だ! さあ、てめえも名乗んな」

「……ローレンス・ロイス。見ての通り、しがない破面だ」

 

 一角が右手に刀を左手鞘を握り構えた。だが、ローレンスはただ棒立ちしているだけだ。それを一角は訝しげに見る。

 

「……刀を抜かねえのか?」

「抜かせてみろ」

「ああ……そうかよ!」

 

 こめかみに青筋を浮かべた一角が切りかかった。それをローレンスは左腕で受け止める。鋼皮(イエロ)と呼ばれるそれは高い霊圧硬度を持つ破面の外皮。並の攻撃では傷一つ付けることはできない。

 

「てぇあ!!」

 

 刀を受け止められた一角だが即座に左手に持つ鞘で打撃を打ち込む。だが、ローレンスはそれも当然のように受け止めていく。

 

「まだまだぁ!」

 

 刀と鞘による変則的な二刀流で怒涛の勢いで攻撃を仕掛けていくがやはりローレンスの鋼皮を突破出来なかった。そして反撃で打ち込まれた貫手の一撃を回避するため一角は一旦距離を取った。

 

「ちっ、この前の奴より硬ぇな―――なら、伸びろ、鬼灯丸!」

 

 柄尻に鞘を押し当て一角が叫ぶと刀が姿を変えた。刀身は短くなるが代わりに柄が伸びる。

 

「槍か」

 

 一角の渾身の突きを紙一重で避ける。そのまま手刀で鬼灯丸を弾き飛ばそうした瞬間変化が起きた。

 

「っ!?」

 

 鬼灯丸の柄が分離した。中心にワイヤーのようなものが見えている。

 

(槍じゃない、これは)

「鬼灯丸は槍じゃねえ」

 

 ローレンスの思考を遮るように一角が言う。分離した柄が蛇が巻き付くようにローレンスの首に向かう。先端の刃先が狙うのは喉笛だ。

 

「三節棍なんだよ!」

 

 首を竦めるようにしてそれを回避する。距離を取り二人は再び向かい会う態勢に戻った。

 

「なるほど、面白い」

「続けていくぜぇ!」

 

 分離した柄を一本に戻し一角の猛攻が始まった。突きを織り混ぜた円運動による連続波状攻撃。かと思えば柄を分離して腕を巻き取るような攻撃もしてくる。一定のようで一定でない攻撃リズムは対応が難しい。

 

「そらよッ!」

 

 一角が鬼灯丸を振り下ろす。それを手刀で弾くが一つ変化があった。ローレンスの手に赤い筋が走っている。薄くだが確実に切り裂かれていた。

 

「この前の野郎もかなり硬かったがそれ以上だな。だが多少は馴れたぜ。あと何合かやってりゃテメエの腕も切り落とせるかもなぁ?」

(なるほど奴の斬魂刀は直接攻撃系。特に捻った能力はないが、それゆえに使い手の技量がシンプルに反映されやすい)

 

 そう考えれば一角の近接戦闘のセンスの高さが伺える。刀と鞘を利用した変則的な二刀流に始まり始解の三節棍も扱える技量がなければその特性を活かすことはできない。

 そしてこの短期間で鋼皮の硬度に対応できる戦いにおける適応力。事前情報に誤りはなかったようだと。

 

「大した腕前だ。正直想像を超えていた」

「誉めてくれてありがとよ。刀、抜くなら待ってやるぜ?」

「―――いや、今のところまだ必要ないな」

「そうかよぉ!」

 

 ローレンスが人差し指を一角に向ける。指先に霊力が収束する。

 

 虚閃(セロ)

 

 紫色の閃光が放たれた。閃光は一角を飲み込もう迫るが

 

「ちっ」

 

 一角がそれを紙一重で回避する。そして瞬歩で一気に間合いを詰めて凪ぎ払うように鬼灯丸を振るう。分離させ意表を突くためのではなく、鋼皮(イエロ)切り裂くための一撃だ。虚閃(セロ)を撃った直後の僅かな隙を的確についた攻撃だった。

 だが、それを読んでいたかのように、ローレンスは鬼灯丸を掴み取った。

 

「何っ!?」

 

 虚閃(セロ)

 

 そして鬼灯丸を掴んだまま至近距離から一角に虚閃(セロ)を放った。

 紫色の閃光に一角が飲み込まれる。

 

「……仕留め損ねたか」

「やるじゃねえか」

 

 死覇装の一部が破れ軽い怪我を負っていたものの一角はまだ戦闘続行可能だった。

 

(コイツ、俺が鬼灯丸を分離しないと分かってやがった。そうじゃなきゃ掴み取るなんて選択するはずがねえ)

 

 一角の考えは正しい。

 ローレンスは十刃ではない。だが十刃を含めた全ての破面の中で最高制度の探査回路を持つ改造破面だ。その探知能力は筋肉の動きすら知覚し分析できるレベルとなっている。ローレンスは一角との打ち合いの中で一角の筋肉の動きを知覚し分析を行いその癖を把握していた。そして鬼灯丸を分離する時と分離しない時を見極めた。

 

「へっ! 面白くなってきやがったぜ!!」

(多少なりとも手傷を負った筈だが……)

 

 致命傷にいかず、戦闘継続も可能な程度とはいえ虚閃(セロ)の直撃を受けた一角の精神はまるで揺らいでいない。むしろ強敵との戦いに心躍らせている。

 

(まるで戦意が衰えていない、いやむしろ―――)

 

 戦意が高まっている。

 現状だけ見れば一角は不利だと言える。始解をして漸く皮膚を浅く切れただけの一角に対してローレンスは刀を抜かず手札の大半を温存したまま。だがそれでも一角は楽しいのだ。楽しいからこそ戦意を失うことなどありえない。

 

「しかし解せんな」

「あん?」

「戦いを楽しむ性質が故に多少の手傷ではまるで戦意が衰えないというのは分かる」

「んだよ、お前さんもイケる口か?」

「だが、なぜ卍解をしない」

「ッ!?」

「俺は探査回路(ペスキス)に長けた破面だ。霊力の質を感じ取れば分かる。お前は卍解を使えるはずだ。戦いを楽しむという気風に反して何故使わない?」

「はっ、戦いにはな―――」

 

 一角が瞬歩を使い急速接近する。ローレンスの首を狙い鬼灯丸を繰り出しながら己の信条を語る。

 

「譲れねえ信条ってもんもあるんだよ!!」

「……その信条とやらには命を懸ける価値があるのか?」

「当然だ!」

「そうか……俺には理解できないが―――面白い」

 

 一度距離を取ったローレンスが刀の柄に手を添える。

 

「ようやく抜く気になったか」

「そうだな―――ん?」

 

 背後から迫る気配に気づいたローレンスがそれを回避した。白い触手だ。それにローレンスは見覚えがあった。

 

「何の真似だルピ?」

 

 一応は仲間であるはずの()()()()()()ルピに無表情でローレンスは尋ねた。

 

「ア、ごめ~ん。君がチンタラやってるから手伝ってあげようと思ったんだけど邪魔だった?」

「そうだな……まあいい、好きにしろ」」

 

 表情を出さずにそういうローレンスの探査回路(ペスキス)にはこの戦場に近づく新たな強者の霊圧を感じ取っていた。もっともソレをルピに伝えることはなかった。

 

「ヤミー、そっちの子もボクに譲ってよ」

 

 ヤミーと戦っていた冬獅郎も含めてまとめて相手をしようと声をかけるが一角が切り込んできた。

 

「つまんねえ横槍入れやがって」

「え、何キレてんの? 安心しなよ。僕が解放して、あんたら全員まとめて相手してあげるからさ―――」

 

 触手で一角を弾き飛ばしながら斬魄刀の解放を宣言を聞いた白髪の少年、日番谷冬獅郎は数日前の戦闘を思い出す。もし解放されれば戦いはより激しくなるだろう。

 

「させるか!!」

 

 解放される前に倒す。その意思を持って日番谷冬獅郎は告げた。

 

「卍解、大紅蓮氷輪丸」

 

 刀を持つ腕から背後にかけて龍を模した氷の鎧を纏い冬獅郎が急速接近するが。

 

「縊れ、蔦嬢(トレパドーラ)

 

 僅かにルピの帰刃を阻止するには遅かった。解放したルピが触手の一撃を放つ。冬獅郎がその一撃を氷の羽で受け止める。

 

「解放したてめえの攻撃はこんなもんかよ?」

「ハハッよく止めたね。ちょっとショックだなあ。でもさあ」

 

 ルピは帰刃(レスレクシオン)により背に八本の自由自在に操れる触手を持った姿になっていた。

 

「今の攻撃が八倍になったらどうだろうねぇ?」

「なん……だと」

 

 八本の触手で冬獅郎を襲う。四方どころか八方から動じ多角攻撃だ。容易に対応できるものではない。触手の攻撃は冬獅郎に直撃した。

 冬獅郎を撃墜したと判断したルピは驚く乱菊達の隙を突き拘束する。

 

「おねーさんさァ。やーらしい体してるよねぇ。いーなぁ、セクシィだなあ」

 

 ニヤニヤと笑うルピが乱菊の豊満な胸部を強調するように締め付けながら言う。そして彼女を拘束する触手の先端の形状を無数の針に変化させた。

 

「穴だらけにしちゃおっかなあ~~~」

 

 彼女を貫こうと迫る。だがその針が彼女を貫く前に、ルピの触手が紅い斬撃に切り裂かれた。

 

「いや~、間に合った間に合った。危なかったすねえ~」

 

 戦場に響いているとは思えないほど陽気な声だった。

 

「……誰だよキミ?」

 

 自身のお楽しみを邪魔されたルピが表情を消しながらそう尋ねた。

 

「あ、こりゃどーも。ご挨拶が遅れちゃいまして」

 

 それは甚兵衛にゲタを履き帽子を被っている男だった。

 

「浦原喜助」

 

 帽子の陰で目元を隠しているがそれでもその鋭い眼差しは隠し切れない。ローレンスは自分達の主である藍染とはまた別の底知れなさを感じていた。

 

「浦原商店でしがない駄菓子屋の店主をやってます」

 

 浦原は必要以上に自らを語らない。

 

「よろしければ以後お見知りおきを」




ざっくりとした設定

ローレンス・ロイス

身長・184cm
体重・70kg
孔の位置・胸(心臓)
仮面の名残・喉元
階級・番外十刃
虚閃などの色 紫

能力の最たるものは探査回路。正式な十刃ではないが同格の扱いを受けてる番外十刃(エクストラエスパーダ)。
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