破面の一団が根城としているのは
修練場にてローレンスは一人の破面と向かい合っていた。ノイトラ・ジルガ。
そんな彼とローレンスは修練場で模擬戦を行っていた。
独特な形状の鎌だ。ノイトラの八の字のような形状の大鎌の一撃と鍔迫り合いをしながらローレンスは楽しそうに笑う。以前戦った死神、斑目一角の影響も少なからずあるのか、戦うことが少し楽しいと感じるようになっていた。
その笑みを見て馬鹿にされていると感じたノイトラが吠える。
「なめてんじゃねぇぞローレンスッ!」
大鎌でローレンスの刀を弾き追撃を加えようとするが、距離を取らず敢えて踏み込んだローレンスの方が速く刀で左下から切り上げる。
「っがぁ!」
最高硬度と言われるノイトラの
足刀を避けるために体勢を崩したノイトラだがそのまま倒れこみながら口を開け舌先から
「……ふん」
ローレンスはそのセロを片手で受け止め、無造作に腕を凪ぎ打ち消した。倒れてたノイトラが起き上がりながらその光景を忌々しげに見る。
(コイツは番外だぞ。藍染様のお気に入りらしいが
「さて次はどうする?」
「言ってんだろ……なめてんじゃねぇぞ!!」
ノイトラが
「クソが!」
事実ノイトラは回避できず顔面に直撃してしまった。しかし、彼は最高硬度の
勿論ローレンスもそんな事は重々承知していた。今の
距離を取ったローレンスが人差し指をノイトラに向ける。指先に紫色の霊力が集まる。
それを見たノイトラが再び
一瞬早くローレンスの指先から
「―――ちょうどいい機会だ」
「あん?」
煙の向こうにいるローレンスを
「少し試してみたいことがあった」
「試す、だと?」
ノイトラの蟀谷に青筋が浮かぶ。試す。それではまるで自分との間に実力差があるから丁度いい。そう言われている等しい。ノイトラの神経を逆なでするのに充分な言葉だった。
「縛道の六十一、六杖光牢」
ノイトラの周囲に帯状の光が出現しノイトラの腕と胴体に突き刺さり拘束された。その攻撃をノイトラは知識として知っていた。
「これは死神の!?」
ノイトラが驚愕する。ローレンスが鬼道を扱えることを知らなかったのだ。
「ああ、俺はそういうために生み出されたからな。そしてある程度の力量があればお前クラスの
「……ふざけんじゃねえ!!」
文字通り実験体にされている事実にノイトラが激昂する。六杖光牢を破壊せんと霊圧を高めていくが、ローレンスの動きのほうが早かった。
縛道の七十九 九曜縛
ノイトラを囲むように九つの黒い玉が出現しノイトラをその空間に固定する。
「―――お前なら大丈夫だろうが」
「て、めぇ―――!」
「―――滲み出す混濁の紋章」
ローレンスが鬼道の詠唱を始めた。ノイトラにはその詠唱が何の鬼道を発動するためのものかは分からなかったが、霊圧の高まりと態々自身を拘束してまで使おうとしているのだ。扱いの難しい術を使おうとしていることは容易に想像がついた。
「不遜なる狂気の器 湧きあがり・否定し 痺れ・瞬き 眠りを妨げる 爬行する鉄の王女 絶えず自壊する泥の人形 結合せよ 反発せよ 地に満ち己の無力を知れ」
「クソがあああああああああっ!」
ローレンスの詠唱中に九曜縛から抜け出そうと更に霊圧を高めるが僅かに遅かった。ローレンスが静かに唄うようにその詠唱を完成させた。
破道の九十 黒棺
ノイトラの周囲を黒い直方体のエネルギーが覆う。重力の奔流により対象を圧砕する。それこそが破道の九十『黒棺』。彼らの主である藍染が九十番台の鬼道で最も得意とする術だった。
「……」
ノイトラは死んでこそいなかったが俯せに倒れて意識を失っていた。
「やはり扱いが難しいな。完全詠唱して詠唱破棄藍染様とそう差がない威力か」
九十番台の鬼道を扱うのは非常に難しい。今の黒棺もローレンスの想定していた威力よりも低かった。藍染であれば詠唱破棄した黒棺で今のものと同等の威力を出せる。一度藍染自ら披露されていたローレンスは力の差に驚愕するしかない。
気絶したノイトラを彼の従属官が連れていく。それを見届けてからローレンスも修練場を出る。
「またやっていたのか?」
修練場を出たローレンスに声をかける青年がいた。
「スタークか、何か用か?」
気怠そうな青年の名はコヨーテ・スターク。ノイトラと同じく
「通りかかったらお前らが戦ってたから少し見学をな……。―――なあ、いい加減藍染様に報告するべきじゃないのか? ノイトラとやり合うの今回が初めてじゃないだろ?」
「あの方ならとっくに気がついているだろう。その上で自由にさせてるのさ。それが俺かノイトラなのかは知らないがな」
「そうかい、ところでお前。最後のあれはやりすぎじゃないのか?」
拘束したうえであれだけの鬼道をぶつける。その出自から
「そうだよ! ノイトラ死んだかと思った!」
リリネットも抗議するが、ローレンスは涼しい顔だ。
「まさか。アイツの防御力の高さは分かってる。藍染様の黒棺ならともかく俺の鬼道で死ぬことはあり得ない」
それくらいのことは
「いや、
そう言われてもローレンスは無表情で首を横に振った。
「いや、俺は番外のままで構わない。」
「藍染様も何でまたお前に数字を与えないんだろうな」
スタークの言葉はローレンスの力量を知る
(死神の鬼道を扱える以上他に何か理由があるのかもしれねえな―――)
疑問に思うスタークだが調べる気にはならなかった。藍染もローレンスも数字は必要ないと言っている以上自分がどうしたって状況は変わらないだろう。
「それにあんな色物集団の中で上手くやれるとは思わん」
自室に戻ろうとすれ違う瞬間に放ったその一言にスタークとリリネットは固まった。
「まてまて、色物って俺もか? 心外だぜそりゃ」
「そうだよ!スタークはともかく私はまともだろ!」
「リリネットてめぇ」
「相変わらず仲がいいな」
呆れているような、それでいてどことなく楽しそうな表情でそう言った。