最強は、最も強いからこそ最強なのである   作:お願いマッスル

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中村千秋

 この世界にはISと言うものが存在する。

 世才最強の兵器だそうだ。女にしか扱えぬ故に、世界は女尊男卑の風潮が流れる。

 女は男より優れているのだがら、男に何を命じても良いのだの。

 

「理解できんな」

 

 今日も今日とて女がクラスメートの、転校生の男にこのクラスの支配者が誰であるかわからせようとしたが、帰ってきた言葉はそれだった。

 

「ISを身に纏えば、確かに人間など圧倒するだろう。だが、ただの一般市民。ISを学ぶための学園に行く気もない貴様が何故ISを動かす前提で話す?」

 

 それは蔑みでも、ムキになったわけでもなくただただ純粋な疑問。小さな凧を背に空を飛べると言った間抜けを見て正気を尋ねるそれ。

 かっ! と女の顔が赤く染まる。怒りだ。

 机を蹴り、倒し、叫び罵倒する。が、それだけ。

 だって、そうだ。ISに触れる機会のない女が、どうして男に勝てようか。ましてや目の前の男は190は超える長身に加え、細いながらもがっしりとした筋肉を身に纏うまさに強い男というのを体現したかのような男なのだ。

 それでも、強者相手には群で挑むとでも言うようにクラスメートの女達と共に罵倒する。男に向かって机や椅子を蹴り倒し、消しゴムや丸めた紙などを投げつける。

 男はやり返さない。いい気になった一人が、ペンケースを投げつけ…………ペンケースがその女の真横を通り過ぎ壁を破壊し砕け散った。

 

「……………へは?」

 

 ぶわ、と汗が流れる。ペタンと床に付し、チョロチョロと生暖かい液で床を汚す。

 

「流石にそれは敵対行動とみなす…………敵であるなら、俺は容赦する気はない」

「「「─────」」」

 

 ゾワリとその場に居た全員が悪寒を覚える。

 肉体的に勝てないなら、精神的に追い詰めようなどと考えていた者たちも居たが、その全員の心が逆に折られた。敵意を向けられたくない。敵対したくない。怒らせたくない。

 圧倒的な恐怖。女尊男卑の風潮に流され増長していた女達は、たった一人の男によって、あっさり女である矜持などと謳っていた支配欲を捨てた。

 

 

 

 

「ふっ………ふっ……………」

 

 そんなクラスを恐怖で支配し生意気な男が居るとやってきた他クラスや学年別の女達も一日で心をへし折った少年、中村千秋は超巨大ダンプ用にセメントを詰めたものを()()()に乗せ、腕立て伏せをしていた。

 汗が砂を湿らせる。それでも初めた時からそのペースは変わることなく、1万回目。

 背中からタイヤを落とす。ズズン、と地面が揺れた。逆立ちをやめ立ち上がった千秋は塩分を含んだ水を飲むと部屋から立ち去る。

 ぶち抜かれた分厚い鉄板、潰れた銃弾、折れた刀が散らばった部屋には、奇妙な人型の人形が散らばっていた。

 

 

 

 

「ちーくんお疲れ様〜♡ ご飯にする? お風呂にする? それとも、ク・ロ・エ?」

 

 千秋の家はかなり広い。トレーニングルームが本邸とは別に存在するほどだ。その本邸に戻るとキャピるん♪ と空中に浮かぶ謎の文字を背にうさ耳をつけたアリスドレスの女性がデコピースで待ち構えていた。

 千秋はその横を通り抜けキッチンに向かった。

 

「お疲れ様ですお兄様。えっと………ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも、わ・た・し?」

 

 キッチンに向かうための居間の扉を開けると銀髪の少女がカンニングペーパーを読みながら尋ねてきた。

 

「飯にする、手伝えクロエ」

「はい、お兄様」

 

 

 

 

 

「むぐむぐ。あー、やっぱりちーくんの料理は美味しいなあ!」

「その煮物はクロエが作った」

「おお、成長を感じる」

 

 3人で卓を囲み食事を取る。まるで家族の団欒だが、この二人は千秋の家族ではない。

 庭の桜を見ながら食事しているとISがうさ耳の女性を襲いながら壁を破壊し、目撃者か! と叫び敵意を向けてきたので()()したら興味を持たれて住み着かれたのだ。

 体の殆どを機械で代替していた女は、肉の部分は丁寧に灰に返した後壺に収め、桜の下に埋めた。機械の部分はうさ耳の女性が何かを作る材料にするとか言っていた。

 

「あ、そうだちーくん、IS学園に入学しよーぜ☆ 世界最強の座が手に入るかもよ〜?」

「? 宇宙服の扱い方を学ぶ学舎で、何故世界最強の座を得ることになる」

「ちーくん大好き! 結婚して!」

「俺はまだ16だ。2年待て」

 

 これは、間違いなく人類最強の男と、人類最高の頭脳を持つ女の、何気ない恋愛である。IS学園? 少年に入学する気はない。少年には…………。




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