神曲奏界ポリフォニカ 黄昏の黎明   作:ヴィヴィオ

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第5話

 

 

 

 現在、トルバスへ向けて列車の旅二日目。ベットで寝転がりながら俺の腕を枕にして眠った振りをしているイアリティッケを放置して自分のレベルを確認する。今の俺のレベルは9で神曲楽士5、ジーニアス4だ。訓練でも少ないが経験値が入るのでありがたい。数年かけてこの状態だ。現在のステータスはこんな感じ。

 

 グランドレベル/9

 神曲楽士/5

 ジーニアス/4

 特技

 《神曲演奏》《分野熟練》《癒しのレスピレ》《死神のバガテル》《神曲の才能》《夢心地のテネレッツア》《攻撃のアルコ》《早弾き》

 《異常な集中力》《戦術指揮》《マルチワーク》《稀有な才能》《先見の明》

 

 まあ、この中で何が強いかっていうと先見の明と夢心地のテネレッツア、攻撃のアルコ+早弾きだな。先見の明は予測に対する補正だ。これは色々と便利だね。簡単に言えば直感とかそんなのだ。ゲームでは支援系には微妙かも知れないが、現実となればそれは話が別だ。そして、夢心地のテネレッツアはMP、精神の回復能力だな。精霊限定だけど、そもそも俺の戦い方はフォロンと同じ支援系だし関係ない。より、神曲を与え安くなったという事だ。次に早弾きは即座に引く事。ゲームではセットアップだったので準備する前に即座に使える。まあ、俺の場合は言葉を発するだけで可能になるという事だ。もちろん、精子力を消費するので乱発はできない。そして、これに組み合わせて即座に攻撃のアルコを奏でる事でイアリティッケに追加行動を与える。つまり、トランザムとかできるのだ。イアリティッケが。そして、イアリティッケは俺の計画通りになれば何処ぞの英雄王の如くシーン攻撃を連発してくれるだろうから期待大だ。

 

「イアリ、そろそろ起きようか」

「は~い。っ!? なっ、何っ!!」

 

 イアリティッケが起き上がると同時に列車が急ブレーキを踏んで激しい急制動がかかり、イアリティッケが飛ばされていく。俺はそんなイアリティッケを捕まえて抱きよせる。

 

「何事かしら?」

「さあな。でも、歓迎できる自体ではなさそうだ」

「みたいね」

 

 少し離れた所から爆発音が聞こえてきたのだ。列車強盗とかそんなのかも知れない。

 

「イアリ、緊急事態だからアズサの所に向かう」

「ええ」

 

 手っ取り早くギターを持って外に出てアズサを探す。だが、彼女は何処にも居なかった。

 

「きゃああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 だが、外から誰かの悲鳴が聞こえてきた。さて、ここでどうするかゲームなら選択肢が出るんだろう。俺の場合はライフカードか。

 

「どうするのよ?」

「どうしたい?」

「アタシはレイに任せるわ。でも、出来たらアズサの安全は確保したいわね」

「なら、決まりだ! 行くぞ!」

「ええ」

 

 俺とイアリティッケはコンパートメントから外へと出る。そして直ぐに周りを確認する。ここは列車の後方1両目の車両、一番最後になる。後ろの方を見ると、そこは壁がえぐり取られて居て、後方から物凄い速度でこちらに突っ込んでくるトラックがあった。

 

「イアリ」

「銃を持ったのが三人、学士が一人ね」

「所属を示している物は?」

「ないわ。装備はアサルトライフルにスナイパーライフル? レイっ!」

「うぉっ!?」

 

 俺はイアリティッケの言葉に慌てて伏せる。すると直ぐに銃弾が頭の上を飛んでいった。その後も無数の弾丸が放たれてくるが、俺の前に立ったイアリティッケが手をかざして展開した障壁に全て弾かれる。

 

「良くもやってくれたわね。丁度いいから実験台にしてあげるわ、感謝なさい」

 

 サディスティックな笑みを浮かべたイアリティッケが腕を組みながらゴシックドレスを靡かせ、トラックを睨みつける。イアリティッケの周りの空間に高エネルギーが集まって来て、それは剣の形を取っていく。たったの6本の帯電する剣が精製された。

 

「蹴散らせなさい」

 

 イアリティッケの声と共に帯電する剣は瞬時に衝撃波を残して消える。次の瞬間にはトラックが大爆発を起こした。その後、直径50メートルほどのクレーターが出来上がっていた。

 

「ちょっと威力が高いわね。やっぱり、電磁誘導に剣の物質化が耐えられなかったのかしら?」

「イアリ、電磁誘導ってまさか超電磁砲か?」

「超電磁砲ってのは知らないけれど、レイに教えて貰ってから剣を作り出して発射する方法を考えたのよ。でも、コントロールが難しいから予め誘導する事にしたの。そしたら、なんかできたわ」

「そっ、そうっすか……」

 

 コイン投げるだけでも充分な破壊力でそうだな。しかし、刺さった瞬間爆発とかどこの壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)だ。ああ、そうだ。英雄王じゃなくて英霊エミヤの方じゃないか。剣を作るって事はそこに込められたエネルギーは当然あって、超電磁砲で加速して接触と共に爆発。強度も普通の剣より高く、何よりイアリティッケの精霊雷から作られているので超電磁砲との親和性も高く剣は直ぐに壊れないが、物体との接触により崩壊して中のエネルギーが爆発する。料理もできるし、やっぱエミヤだな。性格はどちらかというと英雄王かも知れないけど。

 

「車内では手加減するように」

「そうね。もっと込める量を減らすわ。でも、なんだか前よりも格段に強くなってる気がするわね。レイと契約してからだけど」

「そうなんだ……まあ、とりあえず片付けるとしようか」

「ええ」

 

 列車強盗は確実に死んだだろう。あんなので生き残れるのは化け物だけだ。しかし、自分が殺した訳じゃないからかも知れないが、殺人に忌避感がない。いや、綺麗さっぱり消し飛んだからかも知れないが。

 

「さて、じゃあ次に行きましょうか」

「そうだな」

 

 最後尾からイアリティッケを先頭にして前方の車両へと進んでいく。前方の車両の一部は破壊されたのか、何人かの武装集団が前の方の車両からこちらに向かってきていた。

 

「レイ、神曲頂戴」

「おっけ」

 

 死神のバガテルをギターで演奏し、イアリティッケの過剰な攻撃力を更にあげる。支援を受けたイアリティッケは即座に精霊雷を飛ばして敵兵力の無力化を行なっていく。銃弾は全て障壁にはじかれ、相手の精霊雷はイアリティッケの精霊雷によって蹴散らされる。力の差は歴然だった。神曲を受けて巨大な羽根を展開したイアリティッケを相手になすすべも無く敵兵は蹴散らされる。

 

「生かしておいた方がいいのよね?」

「できればそれでお願い」

「わかったわ。じゃあ、さっきの応用してみましょう」

 

 そういいながら、録に力を込めずに作った物を弾にして撃って弾き飛ばしていく。単身楽団にある電磁フィールドで防げば衝撃だけで済むレベルまで威力が下がったので敵は簡単に無力化できていく。

 

「なっ、何事かね!」

「列車強盗です。彼らを拘束しますのでロープか何かありませんか? それと出来れば部屋に入っていてください」

「わかった」

「手伝います」

「じゃあ、彼らをお願いします」

 

 騒ぎを聞きつけた人達が出て来るので、その人達に彼らの拘束をお願いして先へと進む。アズサを探しているが何処にも居ない。まあ、この先が食堂なのでそちらにいるんだろう。

 食堂への扉を開けると、そこには……嫌な奴が居た。

 

「おやおや、あっちの部下達が伸されてるって報告が来ていたのでありんすが、まさか小娘が居たとは気づきまへんでしたで」

「……アンタ、生きてたの?」

「ええ、まあ。わっちもドミティエムも無事でありんす。それで、何用でありんすか?」

「知り合いを探しに来ただけよ」

「おやまあ、あの殺戮する黎明がお優しい事でありんすな……それに……」

 

 俺はおばさんを無視してアズサを探す。アズサは人質達と一まとめにされていた。その近くに鎧を着た武人風の男性型フヌビック、ドミティエムが居る。

 

「そっちが新しいあんさんの契約者さんですか。あっちはウコン・タリヴァーナですえ。以後よろしゅう」

「よろしくするつもりは無いな」

「そうですか、まあそろそろ役者も揃った事でありんすから構いまへんけど」

「役者?」

 

 前方の方の車両の扉が吹き飛んで、そこから金色の髪の毛をオールバックにした身長2メートルを超す大男が現れた。両手には巨大な拳銃を持っている。

 

「ちょっと失礼するぜ。私はルシャゼリウス市警精霊課マナガ警部補だ。大人しく投降してくれんかね?」

「お断りでありんすな。そちらが物を引き渡してくれはるんなら、人質は無事に返して差し上げても構いまへんで?」

「それはできない」

 

 大男の後ろから黒髪の小さな女の子が出て来た。半精霊の女の子が。

 

「なら、人質がどうなってもよろしいんですなぁ~」

「ひっ」

 

 おばさんがよりによって人質の一人であるアズサを立たせて拳銃を頭に向ける。

 

「アズサに手を出してみなさい、跡形もなく消し飛ばしてやるわよ」

「あっ、馬鹿」

「おやおや、お二人の知り合いですか……ええ事思いつきました。あんさんらで殺し合いなさい。断るごとに人質を殺していきまひょ」

「……」

「イアリ」

「仕方無いわね。そっちはどうするのかしら?」

「殺戮する黎明さんよ、アンタはあっち側じゃないのか?」

「違うわ」

「マナガ、彼女は契約者が変わって司法取引が行われている最中だから、今は味方だと思っていいよ」

「そうか」

「そっちには悪いが、ちょっと付き合ってもらうぞ」

「まあ、仕方ねえな。行くぜ、嬢ちゃん」

「ええ、来なさいデカブツ」

 

 イアリティッケが瞬時に加速してマナガに大男に対して殴りつける。大男の方は拳銃を締まって殴りつける。どちらも神曲は無しだ。その結果、両者が吹き飛ばされるという異常事態が起きた。

 

「おいおい、その身体でとんでもねえパンチじゃねえかよ」

「ふふふ、丈夫な身体を持ってるみたいね。楽しみだわ」

 

 イアリティッケは尋常じゃない速度で駆け抜け、拳と蹴りを叩き込んでいく。マナガはそれを防ぎ、時には失敗してダメージを負う。俺は彼の契約者のマティアを見つめ、おもむろに楽器を取り出して神曲の演奏を開始する。ギターでの演奏を行う。

 

「ふふふ、ギアを上げていくわよ」

「出来れば勘弁して欲しいなぁ……」

 

 イアリティッケは羽根を広げて自ら光を発しながら光の塊となって突撃する。イアリティッケの高速移動はつまるところ、自身を弾丸にした超電磁砲だ。そして、背後に回ってマナガの首を絞めに掛かるがマナガの防御力が凄まじく、大した効果は無いようだ。

 

「マナガ」

「おうよ」

「くっ!?」

 

 マナガが神曲を受けてイアリティッケを強制的に引き離して投げる。それもドミティエムの方に向かってだ。それと同時にマナガがウコンに銃を向ける。

 

「罪ってぇのはよ……償い時ってものがあるんだぜ」

「ちっ!? 人質がどうなってもいいみたいだね! ドミティエム!」

「承知!」

 

 瞬時に弾丸を切り落とし、人質に斬りかかる。

 

「アタシの事忘れるんじゃないわよ!」

「くっ!?」

 

 ドミティエムを蹴り飛ばして離れるイアリティッケ。俺は演奏しながら移動してアズサ達人質の前に立つ。マティアもこちらに来ている。

 

「マナガ、いいよ」

「イアリ、やっちまえ」

「ウコン」

「分かっとります。ここは引かせてもらいましょうか。でも、これは置き土産や!」

 

 ドミティエムがウコンを抱えて飛び出ると同時に食堂が閃光に包まれた。俺はどうにかアズサを押し倒して背中に衝撃を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

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