トルバス神曲学院入学式。沢山の人間神曲楽士を夢見て入学する。基礎課程2年、専門課程2年の4年制で、下は13歳から上は30歳まで入学可能なので新入生の年齢は様々だ。毎年数百人が入学して進級できるものは少ない。それでも他の学院と比べて神曲楽士になれる人は多いのだが。まあ、安くて入りやすいから集まり易いというのも理由の一つだろう。
「レイさん、ここみたいですよ」
「そうだな」
入学式の席は事前に決まっているのでそこに座る。梓も出身が同じ場所だからかすぐ隣のようだ。
「レイ、手をどけて」
「ん?」
イアリに言われて手をどけると、直ぐに俺の膝の上にイアリが座ってきた。
「なっ、なにしてるんですか!?」
「だって、私の席はないし?」
「あー精霊だしな」
「そりゃそうですけど……」
普通は契約精霊持ちなんて入学してこないし、離れているか姿を消すだろう。イアリはどちらもする気がないみたいだが。
「それにいらない虫がつかないようにする為にも、レイが誰のかしっかりと教えないとね」
虚空を見ながら告げるイアリ。別に甘えてくれるのはいいんだけど周りの視線が無茶苦茶痛い。まあ、小さい美少女を膝の上に乗せているのだから当然だろう。生徒だと思われる可能性もあるが。
「おい、そこの貴様! 何をしている! さっさと席につかぬか!」
「ちょっと待ってよコーティ」
「相変わらずのようねおばさん」
「誰がおばさんだ! って、お前は!」
「あれ、イアリティッケ」
生フォロンに生コーティカルテか。確かに红な。
「えっと……君は新入生かな?」
「はい。レイです」
「おい、サーギュラントはどうした」
「……死んじゃったわよ」
「ごめんね。コーティ」
「ふん、悪かったな」
「いいわよ。私にはレイがいるし、もう乗り越えたから」
イアリのあたまを優しく撫でてあげる。
「じゃあ、君がイアリティッケの新しい契約者?」
「そうです。学院長が知っているはずですよ」
「わかった。それとイアリティッケ、流石にそれは問題あるからね」
「そうだぞ。そんな羨ま――こほん。けしからん事をするな」
「じゃあ、椅子を用意してよおばさん。できたらでいいけどね」
「私はおばさんじゃない!」
「あれ、もしかしてまだ物質化もできないのかしら? ボケたんじゃない?」
「こっ、このぉぉっ!!」
「おっ、落ち着いてよコーティ! イアリティッケも煽らない! レイ君からもお願いして!」
「イアリ、ストップ。椅子は用意できるだろ?」
「ちっ、仕方ないわね」
イアリが指を鳴らすと並べられているパイプ椅子よりも高そうな椅子が出てきた。3脚も作られている。
「こんな安物じゃなくてこっちにしましょ」
「ぐぐぐ」
「流石にそれもダメじゃないか? イアリのだけならともかく」
「そうだね」
「仕方ないわね」
スペースをずらして貰うしかないが。
「というか、お前は非物質化ができるだろうが!」
「ちっ、気付いたか」
「あはは」
「あ、あの……もうすぐ式が始まりますけど」
「ああ、ごめんね。コーティ、行くよ。イアリティッケは悪いけど非物質化してともにいるか、あっちで待っててくれないかな?」
「それならここにいるわ」
直ぐにイアリが俺の膝に座り直して姿を消す。微妙にイアリがいる感覚だけは感じられる。コーティカルテもフォロンに引っ張られていった。
それから学院長による挨拶から始まり、教員と在中精霊の紹介などが行われた。それにしても、学院長たフォロン……先生とレンバルト先生は人気があるようだ。
それから入学式で精霊による歓迎の演舞が行われて各自の教室へと移動する。梓も同じクラスになれた。
「心細かったので同じクラスになれて良かったです」
「そうだな。親御さんにもよろしくと頼まれてるし、こっちの方がありがたいね」
「頼まれたのはアタシだけどね」
「一緒のことだ」
「それもそうね」
「どちらもお願いします」
教室に到着して席に座り、担任が入ってくるのを待つ。担任がやってきたら自己紹介が始まった。俺の番で自己紹介を行い、イアリティッケの事も紹介する。
「こっちは俺の契約精霊でイアリティッケ・シン・ゴルオット」
「よろしく」
制服から何時ものゴスロリ姿となり、羽根を広げるイアリ。
「じょ、上級精霊……」
「確か、上級精霊を彼女にして入学してきた先輩もいたんだよな」
「後、彼は既に神曲を奏でられるそうだから、特別カリキュラムを作っておられる」
「まあ、色々と理由があって正式な免許は発行されず、仮免扱いです。理由の一つが知識面なので皆さんと一緒に勉強する事になります」
知識面もそうだが、本当に俺がイアリを扱いきれるかの様子見なんだけどね。学院長もそのつもりでもしもの場合に備えてコーティカルテとフォロン先生を呼んでるんだろうしな。