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オドリドリを見て最初に思い浮かんだ話です。
4話構成で後の3話は、6/6の07:05, 13:05, 19:05に投稿されます。
水のようにたゆたう動き。腰を振り、腕をゆらゆらとなびかせて。
舞台の上で、私だけ。後ろには、三匹の同じ囚われ者がいる。
踊らされる事なんてちっとも楽しくなかった。こうして囚われないで、自由きままに踊れていた頃はなんて楽しかったこと。
ニンゲンの観客達が、私の踊りを色んな目で見て来る。
興味のある目から、退屈そうな目まで様々。
そんな沢山の目に対して、私は馬鹿にする目で見返したかった。嫌々踊っている私達を興味のある目で見られるのも、退屈そうな目でただ見ているのも、どれもこれもが私にとって馬鹿らしかった。
でも、それがばれるともっと馬鹿らしい事になるから、やらない。
私の踊りが終わると、次は黄色の番だった。
パチッ、パチッと静電気の音を鳴り響かせて、表面上だけは元気一杯な素振りをしてピッピピッピ歌いながら踊り出す。
馬鹿らしい。
けど、やらなきゃ生きられない。
今日は赤色の調子が悪く、何度か転んでた。いつの間にか足を痛めていたみたいだった。
ぱち、ぱち、といつも通りのちらほらとした拍手の後に、私達は舞台の上から退場する。
舞台から観客の目の届かない所に来た瞬間から、赤色がびくびくと怯えだした。
このまま主人の元へ戻りたくない様子だったけれど、このままここに居ても私達も巻き添えになるだけだから、押していく。
ピィピィと恐怖に震えて鳴いていた。足を痛めたあんたが悪いんだ。
暫く歩いて、観客の声も聞こえなくなってくる頃、暗闇の中で赤く光る目が八つ、見えた。
ぞく、と体が震える。
ぽた、ぽた、と涎が垂れる音、それをじゅるりと吸う音。唸る声。
明かりがついて、目の前のルガルガン四匹の姿が露わになる。頭と胴のとても硬そうな岩と、血のように赤い毛皮と凶悪そうな赤い目。一様に自分達の事を美味しそうな獲物と見る目。
何度見ても慣れない。主人に従ってさえいれば、踊りさえちゃんとやっていれば何もして来ないと分かっていても。
程なくして主人がやって来た。
太り気味の、つやつやしたニンゲンだ。とても酷いニンゲンだ。
私達を捕えて、ここで無理矢理躍らせる、とても酷いニンゲンだ。
そのニンゲンが、ぽつ、と言う。
「ルガ。赤が悪さをした」
一匹のルガルガンの腕が振り上げられた。赤色は体を縮こまらせた。
鈍い音。強く叩きつけられた腕の下で、赤色は血を吐いた。
「三度、だ。転んだ分だけ、な」
その言葉が、びく、と赤色を震えさせた。疳高い鳴き声を鬱陶しそうに眺めるニンゲンの元で、ルガルガンに命令が下された。
爛々とした目で、ルガルガンがまた、腕を振り上げた。
足を引き摺るように赤色はふらふらと歩いていた。
三度、ルガルガンに強烈に叩かれた体は、とても汚い。
「さっさと歩け」
どうしても遅れてしまうのを、必死に痛みを堪えながら歩いていく。
いつもの頑丈な小屋に着いて、最後に赤色が倒れ込むように入った所でドアが閉められ、鍵を掛けられる。
中にはそう大した量でもない飯がいつものように置いてあった。
変わらない日常。
外からは、海辺で人間やポケモン達がはしゃぐ音が聞こえる。忌々しくて仕方がない。
飯を食べ終えた後に出来る事は、寝る位しかない。
次の日。
扉を開けられ、ルガルガン四匹が目の前に居る中、飯を置かれた。
赤色は足が更に悪化しているみたいで、ずりずりと痛んだ足を引き摺りながら歩いて来た。
主人がそれを見て、赤色をルガルガンに捕えさせる。
両足を持たれて、逆さになったままどこかへ連れて行かれていく。必死に泣き叫んでいると、主人がそのルガルガンに命令をした。
赤色が岩に叩きつけられる。
あ、今、逃げられる? 私は思った。
主人はその泣き叫ぶ赤色に集中しているし、目の前にはいつも四匹居るルガルガンが一匹抜けて、三匹しか居ない。
ふらり、ふらりと私は踊った。私を見た全てが、正気を保てなくなる踊り。
とても久しぶりに、私は本気で踊った。命を賭けて、私自身のこれまで踊って来た歴史を賭けて、私は踊った。
ほんの短い時間だったけれど、踊り終えるとルガルガン達の目があらぬ方向を見た。紫色も黄色も含めて皆の足取りが覚束なくなる。全員混乱した。
今だ! 今しかない!
私は翼を広げて飛び出した。
広い、広い青空に。とても眩しい太陽に向かって、心地良い自由に向かって。
とても気持ち良い。とても気持ちが良い! 空を飛ぶ事がこんなにも気持ち良い事だったなんて、どうして忘れていたんだろう!
一度、二度、羽ばたく。高く、高く!
……あれ? あれ? ……落ちてる。
そう思った時、私の目の前には、巨大な岩が迫っていた。
何故、何故という思いがぐるぐると巡る。
片方の翼が折れている事にやっと気付いた。もう、体も動かなかった。飛んで来た大岩は、私の体を壊してしまった。
真っ逆さまに落ちながら、涎を垂らして走って来るルガルガンの一体が見えた。混乱してなかった。
混乱が解けるのが早過ぎる。
どうして? なんで?
私は死ぬの? どうしてこんな事にならなきゃいけないの?
私は何かしたの?
嫌だ、嫌だ。
どさり。私が落ちた音。体はどうしてか、もう全く痛まない。
いやだ、いやだ。
ルガルガンがやってきた。
乱雑に掴まれ、口元に持っていかれる。
微かに声が出たけれど、ルガルガンは聞いちゃいなかった。私の体が私のものじゃないみたい。
ルガルガンの大きな口が開く。
食べないで。死にたくない。動かない。
大きな牙が私の腹に食い込んだ。ぶちぶちと音がする。血がたっぷりと出た。どうして痛くない、でも。
みちぃ、みちぃ、ぐちゅ、ぐちゅ、ごきゅぅ。
とても美味しそうな顔。
がぶぅ。ばきゃっ。