世界は破壊の炎に包まれた。
建物は殆どが倒壊し、人々は逃げ惑う。
そして人々が逃げようとする反対の方向にはある黒い影が立っていた。
人々はその影に気づくと悲鳴を上げ、恐怖に顔を染め上げる。
その世界には絶望しかなかった。
○
変な夢から目を覚ました黒髪の短髪に寝癖が酷い少年、
「また、あの夢か……ふぁ〜………」
夢のせいか寝足りないカイは欠伸をしながら目覚まし時計を見ると時間は既にいつも登校している時間だ。
寝ぼけた頭が徐々に覚めて、そのことに気づくとベットから跳ね起きて慌てて身支度を始める。
「やべっ!何で目覚まし鳴らなかったんだよ !?」
慌てて制服を着て、二階に降りる。
カイが住む家は二階建て木造の古い家で所々傷がある。
居間の横を通りすぎる時に唯一の家族である祖母、キミヨがご飯を食べながらテレビを見ていた。
「ばーちゃん!!何で起こしてくれなかったんだよ!!?」
「あぁん?もう15歳なんだから自分の世話ぐらい自分でしな!!」
「今年で14歳だ!遂にボケたかババア!」
「なんだとクソガキィ!」
孫に向かって茶碗を投げて祖母と怒鳴り合う孫。
随分と元気な家族だ。
○
カイは乱れた服装を直す暇もなく、焦りながら走っていると少し前に自身が通う学校であるラヴェニール学園の女子生徒服を着た小柄な少女が見えた。
すると突然その少女はさらに前から歩いてきていた老婆を空から飛んできた野球ボールから守ろうと飛び出す。
「おばあちゃん!危ない!」
「おい!あぶっ……!」
それに気づいたカイが声をかけようとした時、突然世界の時間が止まった
「は……?」
少女と自分以外は灰色となり、時間が止まったことは何故か体が直感でわかった。
「何が……」
呆然とするカイに次は空から赤ちゃんの泣き声がどこからか響いてくる。
空に目を向けるとピンク色の光が空に輝いていた。
やがて、世界は元に戻り色が戻り、それと同時にボールのことを思い出して少女にぶつかる前にボールを掴んだ。
「ふぇ?」
「大丈夫か?」
「え?あっ、うん」
少女は突然助けられたことに頭がついていけてないのか呆然としている。
「気をつけろよ。じゃあ」
「助けてくれてありがとう!」
カイは学校へ急ごうとするが、背後で会話が聞こえてきた。
「おばあちゃん!私、荷物運ぶの手伝うよ!」
「いいのかい?学校があるんだろう?」
「おばあちゃんを放っておくことなんてできないもん!」
さっきの少女は老婆を助けるつもりだ。
自分が遅刻しそうなのに人を助けるとはいい子なんだろう。
学校へ向かおうとしたカイだがその話を聞いて、立ち止まる。
そんな話を聞いて放っておくのはカイにはできなかった。
少しため息を吐いて振り返り、老婆が1人でよく持てたと思う重い荷物を苦しそうに背負う少女に近づく。
「あの、俺が荷物運ぶよ」
「あっ、ありがとう!」
○
「えっー!?じゃあ同じ学校なの!?」
「おう。ラヴェニール学園2年の不堂 カイだ。よろしく」
「私、
老婆を案内しながら2人は自己紹介をする。
「しかし、野乃さんがうちのクラスの転校生だったとはなー。世間は狭いな」
「うん!私も登校中にクラスメイトと会えるなんて思わなかったよ」
カイは荷物を運び、はなは老婆の手を引いている。
自分のクラスに転校生が来るとは知っていたがそれがはなだと知り、カイは内心驚いていた。
「なんだ2人とも同じ学校なのかい?」
「私が転校してきたの。そして不堂くんは私の新しいクラスメイトなんだ」
「そうかい。不思議な縁だねぇ。お嬢ちゃん、そういった縁は大事にしておきなよ?偶然なんて人生にはないんだから」
そう言う老婆ははなに微笑み、はなはそれを聞いて少し不思議そうにした。
やがて老婆を送り届け、老婆は2人に礼を言って別れた。
はなは手を振って、老婆に別れを言ってカイと共に学校へ急ぐ。
「よし!おばあちゃんを送り届けたし、学校へ急ごう!行こう、不堂くん!」
「なぁ、野乃さん。一つ言っておかないといけないことがある」
「ん?何なの?」
「俺たち遅刻確定」
「めちょっく!」
○
2人は既にホームルームが始まっている教室の入り口前で見つからないように扉の影に隠れていた。
「いいか。俺が後ろからゆっくり入る。そしたら注目が俺に来るから野乃さんはその後にでも入ればまだ変な注目は集めないし、2人とも恥ずかしい思いはしなくて済む。落ち着いていこう」
「ううん!私イケてるお姉さんになりたいから、ここはビシッとかっこ良く行かなきゃ!」
「えっ、ちょっ……!」
はなはカイの提案を却下して、カイが止める間もなく扉を開け、中に入ろうとし、躓いてこけながら入室した。
「あちゃー……」
「野乃さん大丈夫……?」
カイは扉の影から覗き込みながら手で顔を覆い、教師は倒れたはなを心配する。
「負けない……!」
だが、はなは負けじと立ち上がって黒板に名前を書き、元気に新たなクラスメイトに挨拶する。
「野乃はな、13歳! 将来の夢は超イケてる大人っぽいお姉さんになる事です!」
彼女の自己紹介を聞いて、一瞬静かになった教室だが次の瞬間笑いが起こった。
「すっげえ元気だな!」
「おちゃめだね」
笑いが起こり、想像していたのと違ったのかはなは恥ずかしくなり顔を赤くする。
カイはその隙に後ろの入り口から姿勢を低くして教師に気づかれないように入る。
「めちょっく……」
「と、とりあえず野乃さんは遅刻したわけだから後で職員室に来てね。それとこっそり入ってきた不堂くんも」
「気づかれてた……」
カイは苦笑いを浮かべながら立ち上がり、気まずそうにする。
その姿にまた笑いが起こった。
「野乃さんの席は一緒に遅刻してきた不堂くんの隣だよ」
2人は恥ずかしそうにしながら、それぞれの席に着いた。
「えーと、とりあえず隣席同士よろしく野乃さん」
「うん!またよろしくね、不堂くん!」
○
2人仲良く職員室に呼び出され、担任教師である
「それじゃあ2人とも、もう遅刻しないようにね」
「「はーい……」」
「あっ、不堂くん。野乃さんに学校を案内してあげてね」
「へーい」
職員室を出るとはなとカイの前を通り過ぎようとする女子生徒が目に入った。
金色の短髪に長身で脚も長く、スタイルが良く、はなが言う『イケてる』女の子だ。
はながその女子に見惚れていると女子もはなが見ていることに気づき目を向け、はなの前髪に目がいく。
すると、途端に今朝切り過ぎてしまった前髪が恥ずかしくなり慌てて隠すが、その様子がおかしかったのか少し笑みを浮かべて2人の前を通り過ぎて行った。
「美人に…笑われたぁ〜…」
「輝木さんか、今日も遅れて来たのか」
○
カイは学校を案内する前に一度別れ、クラス委員長である薬師寺 さあやを探しに行った。
「俺より薬師寺さんのほうが案内するのがいいんだよなぁ」
ちなみにカイは未だに学校の全体を覚えるのが苦手なほど記憶力が悪く、学校の成績も悪い。
校舎裏など生徒が行かないところまで探しているとまた赤ちゃんの声が空から響いてくる。
「また?ってことは……ぁっ!?がああぁぁぁっ!?」
カイはまたピンクに輝く星があるのかと思い、空に目を向けた途端に頭に激しい痛みと共に謎の映像が頭に思い浮かぶ。
思い浮かんだのは今朝見た夢と同じだが、今度は黒い影により近づき、その輪郭が浮き彫りになっていた。
全身に棘のような物が付いており、眼は紅く、そして怪しく輝いていた。
それからは威圧感を感じ、体が震える。
やがて映像と痛みが終わり、呼吸を荒くしていた。
「はぁ…はぁ…何なんだよ……」
カイは痛みよりも恐怖で体が震えていた。
○
あざばぶ市にあるそびえ立つビルの1つで異様な雰囲気が漂っていた。
その中では会議が行われており、怒号が飛び交っていた。
彼らは何かを探しており、焦っている様子だ。
やがて、1人のチャラそうな男が自分が探し出すと言って、出て行った。
それを見届けた1番位が高い位置にいる男がその会議を見ていた1人のフードを被った少女に声をかける。
「それで、そっちの進捗はどうだ?」
「奴はまだ此方には来てないみたい。動くなら今だと思う」
「なら、さっそく『フォールギア』の製作に移れ。奴が接触したら不味いことになる」
「わかったわ。ルールー、手伝って」
「了解です」
少女は議事録を取っていた紫髪髪の少女を連れて、その場から離れた。