次の日、カイは漸くはなをさあやと共に学校を案内することができた。
「ありがとう、薬師寺さん。俺だけじゃ学校案内するのは不安でさ」
「ううん、全然大丈夫だよ」
成績優秀でクラス委員長も務めるさあやの案内は分かりやすく、とても助かっていた。
しかし案内を受けている当の本人であるはなはどこか心ここに在らずで、落ち込んでいるように感じた。
それを心配したカイとさあやははなを昼食に誘って、屋上で弁当を食べていた。
はなの話を聞くとどうやら理想の自分とはかけ離れた結果にしかならずに落ち込んでいるらしい。
それを聞いたさあやははなの弁当箱に自分の卵焼きを渡した。
「野乃さんって素敵だね」
「え?」
「自己紹介のとき倒れてもすぐに起き上がって、夢を語って……カッコイイな!って思った」
「……あ、ありがとう」
はなはそうとは思われていると思っていなかったらしく照れてしまう。
それを見ていたカイもさあやに倣って自分の唐揚げを渡す。
「俺も凄いと思った。人を助けるのに何も躊躇せず動けるのは凄いことだし、あんなに堂々と夢を言えるのは俺もカッコイイと思ったよ」
2人の言葉にはなは照れ笑いで答え、少しは元気になったかと2人は安心した。
○
昼休みも終わり、教室に戻ろうとしたときカイの背筋がゾワっと逆立つような感覚に襲われた。
「うぅっ……!」
「どうしたの?」
「いや……なんか変な感じが」
その様子に気づいたはなが質問してくるがカイも訳が分からず不思議そうにする。
すると、突然空は薄気味悪い雲に覆われ、目の前で次々と生徒達が倒れていく。
「何が起こっているの?」
「わからない。けど只事じゃないってことは確かだな」
さあやが不安そうに呟くとカイも何が起こっているのかはわからないが不味いことが起こっていると確信する。
すると、はなは倒れている同じクラスの2人に駆け寄る。
「大丈夫!?」
「とにかくここを離れましょう!」
1人はさあやが肩を貸し、もう1人はカイが背負って安全な場所を探すことにした。
グラウンドに隣接している校庭を抜けようとすると突然空から学校の時計台を模した怪物が落ちてきた。
『オシマイダーー!!!』
「走れ!!」
不味いと思ったカイ達は足を速める。
すると、はなは足を止めて怪物の足元を見つめる。
「野乃さん!何してるんだ!?早く!!」
「ごめん!先に行っといて!」
はなはあろう事か怪物に近づいて行ってしまった。
「なっ!?おい!」
「不堂くん!どうするの!?」
「……とにかく一旦安全なところに行こう!」
カイとさあやは学校の影に身を隠した。
「とりあえずここなら安全だと思うから待っといてくれ。俺は野乃さんのところに行ってくる」
「危険だよ!あの怪物がいるのに!」
「野乃さんを放っておくことはできないだろ?」
そう言って、安心させるためか自分を奮い立たせるためか笑みを浮かべて言うとはなの所に走る。
○
先の場所に向かうとはなは怪物から逃げようとはせず対峙して、カイは驚く。
「なんで逃げてないんだ!?」
カイははなの所に走ると怪物は腕を振り上げ、はなを襲おうとする。
振り下ろされた腕がはなに当たる直前にカイははなを抱きしめて、転がるようにして怪物の攻撃を避けた。
「あ〜ん?また邪魔者の乱入?」
怪物のすぐ隣に立っていたチャラそうな男『チャラリート』がカイの姿を見て、苛つくように呟く。
「ゲホッ!ゲホッ……!あ、危なかったぁ……」
「う〜ん……あれ?私……あっ!不堂くん!何でここに?」
「何でここにじゃないよ。心配だったから戻ってきたんだ。それと……その赤ちゃん、何?」
カイははなが抱きかかえる淡い金髪で髪に飾りをつけた赤ちゃんを見て、質問する。
「この子は『はぐたん』!」
「はぁぎゅっ!」
はなは嬉しそうにはぐたんをカイに見せるように持ち上げ、はぐたんも嬉しそうにカイに挨拶する。
「いや、名前どうこうじゃなくて何でここにいるのか……って」
「お前ら無事やったか!?よかったわ〜!」
すると、今度はキャリーバッグを引きずってきたネズミが安心したように話しかけてくる。
「……………ネズミが喋ったあぁぁぁっ!?」
「誰がネズミやねん!!ハムスターや!ハリハム・ハリーさんや!!」
言葉を話すネズミ、もといハムスターのハリーの登場にカイは頭が追いつかなくなる。
すると、今まで黙っていたチャラリートが声を上げた。
「ったく!何度も邪魔しちゃってくれてさぁ……ホントウザいよ!アンタら!」
カイ達を睨んでくるチャラリートにカイははな達を庇うように前に立ち、はな達に聞こえるように呟く。
「野乃さん。俺が囮になるから逃げろ」
「え?」
「野乃さんみたいにカッコ良くできるかわからないけど、やるだけやってみる」
震える身体を何とか抑えつけ、更に一歩前に出て怪物と対峙する。
カイの身体が増えるていることに気づいたはなは決心したようにカイの横に並び立つ。
「不堂くんを置いて逃げるなんて……そんなのカッコ悪い!そんなの私のなりたい野乃はなじゃない!!」
「野乃さん……」
自分より小さい女の子なのにその姿はとてもカッコよく見えた。
2人の様子を見て、チャラリートは更に苛つく。
「何茶番見せちゃってくれてんの!?やっちまえオシマイダー!!」
『オシマイダーー!!!』
怪物、オシマイダーがその巨体を揺らしながら近づいてくる。
その時、はぐたんから光が溢れる。
「はぁ〜ぎゅ〜…!!」
「え!?なに!!?」
はぐたんから溢れる光はやがてはなを包み込み、更に光が強くなる。
「力が…湧いてくる!」
そう言ったはなからハート型のクリスタルが生まれた。
「ミライクリスタルが生まれよった!おわっ!プリハートまで反応しとる!」
ハリーのキャリーバッグから謎のピンク色の機械も光輝き、はなの元に飛んでいく。
「はな!そのプリハートにミライクリスタルをかざすんや!そうすれば、お前はプリキュアに変身できる!」
「うん!」
ハリーの言うことを信じ、はなはプリハートにミライクリスタルをかざした。
「ミライクリスタル!ハート、キラッと!」
途端にはなは光に包まれ、その姿は一変していた。
「輝く未来をー!抱きしめて!みんなを応援!元気のプリキュア!キュアエール!!」
光が収まるとはなの姿は桃色の髪にチアリーダーの姿に変わっていた。
「……めっちゃイケてる」
「……………」
突然の出来事にカイは口を開いたまま固まってしまう。
「え、えっと……野乃さん?」
「不堂くん!今の私は野乃 はなじゃなくてキュアエールだよ!」
「あっ、はい」
「それとはぐたんをお願い!」
キュアエールはカイにはぐたんを渡し、オシマイダーに立ち向かう。
「くそっ!新しいプリキュアだと!?ふざけんじゃねぇ!!やれ、オシマイダー!!」
チャラリートは新しいプリキュアの誕生に焦りを見せながら、命令を出す。
オシマイダーはキュアエールに向かって腕を振り下ろすがそれを受け止め、押し返した。
「はぐたん達には手を出させないんだから!」
エールはオシマイダーに攻撃するとその姿からは信じられないほどの力を見せつける。
「すげぇ……」
「はぎゅ♪はぎゅ♪」
カイはエールの戦う姿に圧倒され、はぐたんはカイの腕の中で喜んでいる。
すると、カイの後ろにチャラリートが近づいていた。
「へっ!プリキュアの相手はオシマイダーに任せて、俺ちゃんがミライクリスタルをうばってやる、っよ!!」
「おわっ!?」
チャラリートがカイに向かって腕を振るい、カイは間一髪で避けるが、その手から衝撃波が放たれカイとはぐたんは吹き飛ばされてしまう。
カイははぐたんに怪我をさせないように庇って傷を追ってしまう。
「ぐっ…いってぇ……」
「はぎゅぅ〜……」
「不堂くん!はぐたん!」
オシマイダーと戦っているエールがカイが襲われていることに助けに行こうとするが、オシマイダーが邪魔をする。
「邪魔しないで!」
「おい!お前大丈夫か!?」
倒れているカイとはぐたんにハリーが慌てて駆け寄る。
「いてて……はぐたんに怪我はないよな。良かった」
「ぅぅ〜……」
カイは痛みで顔を歪ませながらはぐたんを見て、怪我がないことを確認し、安心する。
そこにチャラリートが近づいてくる。
「もう終わりにしてやんよー」
「くっ!お前は逃げえ!巻き込まれたらアカン!」
ハリーが2人を守るようにチャラリートに立ちはだかる。
「はあ!?赤ちゃんとハムスターおいて逃げれるかよ」
「あほか!お前じゃアイツには勝てん!そんなのさっきのでわかるやろ!?」
「そうだぜー。その赤ん坊とハムスター置いてサッサと逃げな。どうせ俺ちゃんには勝てないんだから。諦めなってーの!」
チャラリートの言葉にカイは固まる。
「……
カイはハリーにはぐたんを預けて立ち上がり、ハリーより前に立ってチャラリートを真っ直ぐに見据える。
『未来を諦めるな』
記憶の奥底に残る言葉を思い出す。
「諦めたら未来はそこで終わるんだ」
「はっ!言葉だけならなんだって言えるじゃん!ほら!くたばりな!!」
チャラリートが腕を振るい、衝撃波をぶつける。
凄まじい衝撃音が響き渡り、エールもそのことに気づいた。
「そんな……!不堂くんっ!はぐたんっ!」
悲惨な状況にエールは声を震わせる。
しかし、その時立ち込めた煙から銀色の光が差し込むのと同時に機械音が響いた。
『ブレイク』!!!