チルノ&大ちゃんのアトリエ ~目覚めし幻想の錬金術士~   作:すくすくAlma

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改行箇所はPC版ハーメルンを準拠しているため、
スマートフォン版ですと正しくなっておらず
読みにくい可能性がございます。

ご了承ください。

内容は その① ~ その② 前半 まで
動画内では無かった台詞やシナリオが
多く含まれておりますので、
動画の作品とはまた違ったものとして
楽しんでいただければ幸いです。

台詞に関しましては

〇〇←キャラクター名
「・・・」←台詞

上記を採用しています。
名前が一度も出ていない場合は「???」
既に登場していても過去の回想などでは
空白、もしくは「???」となる場面も
ございます。

少々わかりにくい可能性もございますが、
よろしくお願いいたします。


心を得し人形編
EP1 分かり合う


チルノ

「大ちゃーん! 遅い! 置いてっちゃうよー?」

 

大妖精

「待ってよー…チルノちゃん…」

 

二人は吸血鬼の住む館、

 

「紅魔館」に向けて歩いていた。

 

チルノが格好の遊び場としている「霧の湖」

 

と呼ばれる場所に紅い外装の館がある。

 

それこそが紅魔館。

 

なんでも元はこの世界の建造物ではなく、

 

館ごと、現在の場所に引っ越してきたとか…

 

 

もちろん大妖精もよく紅魔館を訪れる。

 

二人からすれば

 

「近所のなんか面白い館」くらいの

 

認識である。

 

 

チルノ

「おっしゃー! 着いた!」

 

大妖精

「チルノちゃんあまり大きな声は…」

 

二人は紅魔館の門前に辿り着く。

 

そこには門の横の外壁に寄りかかり

 

ピタリと動かない女性の姿があった。

 

 

 

その装いは華人服、もしくは

 

チャイナドレスを連想させる。

 

赤いストレートヘアーの彼女は

 

「紅 美鈴」。

 

紅魔館の門番であるが…

 

 

 

チルノと大妖精が来たというのに

 

俯いて反応しない。

 

呼吸はしている様子。

 

チルノ

「むー」

 

大妖精

「ね、寝てるのかな…?」

 

大妖精がそう考えるのは

 

至って正常で、

 

美鈴は普段から居眠りをしているのだ。

 

もちろん頻繁とまではいかないが、

 

回数で言えば全体の半分以上は

 

居眠りしている…

 

 

 

美鈴

「し、してないからね!」

 

大妖精に居眠り疑惑を向けられた途端、

 

美鈴は青ざめながら起きているという

 

アピールを始めた。

 

チルノ

「お! 起きてたのか!」

 

美鈴

「チルノに大ちゃん…三日ぶりだね!」

 

大妖精

「は、はい…いつもお世話になってます。」

 

美鈴

「いいのいいの! これも私の仕事だからね。

 今許可もらってくるから待っててね!」

 

美鈴はそう言うと、門を少し開いて

 

中へと入っていった。

 

門が閉まったのを確認したチルノ。

 

チルノ

「へっへー…しめたぜ…

 今のうちに入っちゃうもんねー…」

 

大妖精

「ちょっ…ちょっとチルノちゃん…」

 

大妖精にとがめられたが、

 

構わずチルノは門をそっと開ける。

 

するとそこには…

 

 

 

美鈴の顔があった…

 

チルノ

「どわっち!?」

 

美鈴

「だめだよチルノ?

 ちゃんと待ってなきゃ…」

 

どうやらバレていたようだ。

 

 

 

チルノ

「ちぇー…なんでわかったんだ?」

 

大妖精

「もう…別に入れて

 くれないわけじゃないんだから…」

 

無事、紅魔館に入れてもらえた二人は

 

館の中にある図書室へと歩みを進める。

 

この世界で恐らく最大級の所蔵を誇る場所だ。

 

二人が拾った本はもしかしたら

 

そこのものかもしれない。

 

大妖精

「………」

 

チルノ

「ほんほんほーん♪」

 

廊下の階段を降り、

 

図書室の大扉に辿り着く。

 

チルノ

「ぱっちゅりー!!」

 

大妖精

「ちょっ!?」

 

大声をあげながら扉を

 

勢いよく開けるチルノ。

 

大妖精は顔が真っ青になる。

 

この図書室の主である

 

パチュリー・ノーレッジは

 

筋金入りの読書家であり、

 

なによりも読書を妨げ

 

騒ぎ立てる輩を嫌う。

 

ここまで大声をあげて

 

チルノが何をされるか

 

予想もつかない…大妖精は

 

ただただ自分達の無事を祈った。

 

「よく来たわね、あなた達。」

 

奥から調子の低い女性の声が聞こえる。

 

チルノ

「おう!来たぜ来たぜ~!」

 

大妖精

「…はぁ…チルノちゃん

 図書室では静かにしなきゃだめだって。」

 

チルノ

「むぅ…わかってるしっ」

 

大妖精はそっと胸を撫で下ろす。

 

どうやらパチュリーは

 

読書中ではなかったようだ。

 

二人は奥に進んでいく、

 

するとその先に

 

木製の机と椅子。

 

そこに座り込む女性。

 

彼女はパチュリー・ノーレッジ。

 

紫色の長髪、特徴的な帽子。

 

服装はパジャマにも見えなくはない。

 

パチュリー

「違うわよ、

 普段着が寝間着なわけないじゃない。」

 

パチュリーは眼鏡を外し、

 

こちらに嫌悪感を示す。

 

大妖精

「え、何の話ですか?」

 

パチュリー

「こっちの話よ。

 それより今日は本を読みに来たのかしら?」

 

チルノ

「ちがうよ!これこれ!」

 

チルノは抱え込んでいた本を

 

パチュリーに差し出す。

 

パチュリー

「…うちのではないわね。」

 

大妖精

「そうですか…持ち主を

 特定出来たりしますか?」

 

パチュリー

「内容によるわね。

 ちょっと読んでもいいかしら。」

 

チルノ

「おう!いいぜ!

 代わりになんか面白い本読ませろよな!」

 

パチュリー

「あそこにあるわよ。

 適当に取って読んでちょうだい。」

 

大妖精

「だってチルノちゃん、行こっか。」

 

チルノと大妖精はパチュリーの

 

指示した書庫に向かう。

 

 

 

パチュリー

「………」

 

本の内容はある程度理解出来る。

 

だがそのほとんどが

 

謎の文字に変換されている。

 

同じページに載っている絵から

 

この本に書かれていることは

 

もっぱら錬金術のことだ。

 

パチュリー

「…錬金術…」

 

パチュリーにとっては無縁な術でもない。

 

彼女は精霊魔法の使い手で

 

かつては世界を構成している

 

四大元素について研究をしたことがあり

 

その中で錬金術を一つのツールとして

 

利用したことがあった。

 

パチュリー

「…!」

 

全体のちょうど半分辺りのページを

 

めくった時、印象的な絵と共に

 

他のページとは明らかに違う

 

インクが使われたページが現れた。

 

パチュリー

「アルス=マグナ…ね…」

 

アルス=マグナ

 

それは卑金属を金へと変換する

 

奇跡の力を持つ物質、

 

賢者の石を生成する工程。

 

大いなる業とも言われる

 

錬金術の到達点。

 

パチュリー

「この本に答えが…」

 

パチュリーには到達しえなかった境地。

 

賢者の石は作れない事は無い。

 

だが卑金属を金へと変える性質は

 

持ち合わせてはいない。

 

パチュリーにとって重要なのは

 

金へと変換する性質ではなく

 

そのような奇跡を起こす力。

 

幻想郷にも奇跡を起こす者は居るが、

 

実体のある物質を完全に

 

別の物へと変換している奇跡は見たことがない。

 

パチュリーは賢者の石の手掛かりを

 

得るため、残りのページを読み込む。

 

だがそこには想像していたものとは

 

全く違う手法が記されていた。

 

もちろん記された文字が読めるわけではないため

 

絵からの推測に過ぎないが。

 

 

 

パチュリー

「待たせたわね。」

 

大妖精

「持ち主はわかりましたか?」

 

パチュリー

「残念だけれどわからなかったわ。

 悪いけど他を当たって。」

 

パチュリーはチルノに本を返す。

 

チルノ

「まじかー、ぱっちゅりーでも

 わかんねーのかー」

 

大妖精

「他に本…うーん…小鈴さんかな…?」

 

チルノ

「それより遊ぼうよー、大ちゃーん。」

 

大妖精

「えぇ…」

 

パチュリー

「外でやってちょうだい。」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

チルノと大妖精は紅魔館を後にして

 

湖のほとりを歩く。

 

日が落ち始め、夕焼けの空が広がる。

 

大妖精

「残念だったね…」

 

チルノ

「まーそのうち見つかるでしょ!

 見つかんなかったらアタイの物になるし!」

 

大妖精

「切り替え早いなぁ…

 というかやっぱり

 チルノちゃんの物になるんだ…」

 

チルノ

「あったりめーよ!

 だいたい落としたやつが悪い!」

 

二人が話している最中、

 

空から黒い物体が飛んでくる。

 

大妖精

「…!チルノちゃん!」

 

大妖精は危険を感じて

 

即座にチルノの前に出る。

 

黒い物体は二人に突進するかと思いきや、

 

手前の地面に勢いよく激突する。

 

衝撃波と共に黒い物体は

 

みるみると小さくなり、

 

少女が姿を現した…

 

チルノ

「おまえは…ルーミア!」

 

黄色のボブ、赤い瞳に

 

白と黒を基調とする服を着た幼い見た目の少女。

 

チルノにルーミアと呼ばれた彼女は

 

チルノが持っている本を見ると目を細めた。

 

ルーミア

「チルノ…その本をよこせ。」

 

大妖精

「ルーミアちゃん…この本、

 あなたのものなの?」

 

ルーミア

「違う…」

 

チルノ

「何言ってんだルーミア。

 こいつはアタイが拾ったんだから

 アタイのもんだ。」

 

ルーミアは嫌悪感を露わにして

 

チルノを睨む。

 

ルーミア

「おまえのものじゃない…

 さっさとよこせ。」

 

大妖精

「持ち主を知ってるの?」

 

ルーミア

「…」

 

ルーミアは返答無しに

 

手を前に突き出し、光の球体を放つ。

 

大妖精

「きゃ!?」

 

大妖精はそれを真正面から受け、倒れる。

 

チルノ

「!?」

 

チルノが倒れた大妖精に気を取られた瞬間、

 

ルーミアは高速でチルノの横に入り

 

本を奪おうとする。

 

チルノ

「ルーミア!」

 

ルーミア

「…!」

 

しかし、チルノは即座に

 

ルーミアを目で捉えて

 

胸ぐらを掴む。

 

ルーミア

「バカチルノ…」

 

チルノ

「なんだとぉ!」

 

チルノはルーミアを湖に向かって投げ飛ばす。

 

ルーミアはそのまま空中に浮遊し、

 

チルノに向かって光線を発射する。

 

チルノ

「大ちゃんに謝れ!」

 

ルーミア

「…」

 

チルノは光線を避け、

 

小さな氷塊を六つ作り出し

 

ルーミアに向かって発射する。

 

ルーミア

「本を渡したら謝ってもいいぞー」

 

チルノ

「なめやがってぇ…」

 

ルーミアは飛んできた氷塊と

 

同じ数、光の球体を飛ばして相殺させる。

 

チルノ

「アタイは問答無用で

 『ともだち』を傷つけるやつと

 『ともだち』になった覚えはない!」

 

ルーミア

「…!だまれ!」

 

チルノの言葉でルーミアは

 

激昂し、自身の背後から大量の光線を

 

チルノに浴びせる。

 

チルノ

「こんじょーたたっきなおしてやらぁ!」

 

チルノは次々と放たれる光線を

 

避けながらルーミアとの距離を詰める。

 

ルーミア

「バカチルノ!」

 

ルーミアも退く気は無く、

 

右手に黒い何かを溜め込む。

 

二人が衝突しようとしていたその時だった。

 

 

 

大妖精

「二人ともやめて!!」

 

 

 

湖に大妖精の言葉が響く。

 

チルノ

「…うおおっと!?」

 

ルーミア

「んっ!?」

 

大妖精の声でチルノとルーミアは気を取られ

 

バランスを崩し、抱き合う形で衝突した。

 

 

・・・

 

 

大妖精

「ルーミアちゃん、

 何か事情があるんじゃないの?」

 

チルノとルーミアは湖のほとりで

 

正座させられている。

 

チルノ

(あれ…なんでアタイも…?)

 

ルーミア

「二人には関係ないことだぞ…」

 

大妖精

「そんなことないよね。」

 

ルーミア

「…」

 

大妖精

「さっきの…全然痛くなかった…

 私とチルノちゃんを

 傷つけるつもりはなかったんだよね?」

 

チルノ

「え…そうなの?」

 

ルーミア

「…だから本さえ渡せばよかったんだぞ…」

 

それからルーミアは

 

本には非常に危険な妖怪が

 

封じられていることを二人に話した。

 

大妖精

「つまりこれは妖魔本…ってこと…?」

 

妖魔本とは昔の妖怪が書いた本のことで

 

自らのことを記すことにより

 

その存在を存続させる目的があった。

 

自身が記された本の中で妖怪は

 

確かに存在し、じっと力を蓄えているとか…

 

チルノ

「なんだよそんなことか。

 アタイはさいきょーだから

 この本の妖怪なんて大したことないぜ。」

 

ルーミア

「バカチルノにはわからないんだぞ…」

 

チルノ

「んだとぉ!」

 

チルノは立ち上がって激怒する。

 

大妖精

「まぁまぁ…ということは

 ルーミアちゃんは私たちの身を案じて

 無理やりにでも奪おうとしたんだね。」

 

ルーミア

「…別に心配してたわけじゃないぞ…」

 

ルーミアは少々、頬を赤らめた。

 

チルノ

「なんだよルーミア

 それならそうと早く言えよなー!」

 

ルーミア

「だから違うって言ってるんだぞ…」

 

チルノ

「でもなー…」

 

大妖精

「どうしたの?」

 

チルノ

「その妖怪、本の中にいるってことだよな?

 それって可哀そうじゃない?」

 

大妖精

「可哀そう…かなぁ…」

 

チルノ

「よし決めた!

 アタイはこの本の妖怪を外に出してやるぜ!」

 

チルノは人差し指で天を指しながら、

 

高らかに宣言した。

 

ルーミア

「…」

 

大妖精

「え。」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「ふえっくしょん!」

 

神社の縁側で巫女が座っている。

 

彼女は博麗霊夢、博麗神社を切り盛りしている。

 

黒いウェーブ髪に茶の瞳、

 

少し変わったスタイルの巫女服を着ている。

 

霊夢

「あー…なーんか嫌な感じ…」

 

霊夢の隣には

 

まさに魔法使いのような白黒の服を着た

 

片おさげの金髪ロングの少女が居る。

 

彼女は霧雨魔理沙。

 

「普通の魔法使い」を自称している

 

魔理沙

「お、異変か?」

 

霊夢

「んなほいほい起こってたまるか。はぁ…」

 

この二人は幻想郷でも広く知られており、

 

「異変」、つまり幻想郷にたびたび起こる

 

超常現象を解決してきた。

 

霊夢

「なんか今日ジメジメしてるわね。」

 

魔理沙

「そーか?まぁ言われてみりゃ…」

 

霊夢

「あーやんなっちゃうわ。

 こういう気候だとやる気も落ちるってもんよ。」

 

魔理沙

「ここでお茶すすってるだけだろ

 何言ってんだおまえ。」

 

霊夢

「こう見えていろいろやってんのよ?」

 

魔理沙

「ほぉ?例えば?」

 

霊夢

「妖怪退治のイメトレ」

 

魔理沙

「なるほど寝てるんだな」

 

霊夢

「…うっさいわね…」

 

霊夢はそう言うと、

 

上体を倒して寝込んでしまう。

 

魔理沙

「…」

 

魔理沙は無言でその姿を見る。

 

魔理沙

(…やっぱショックは受けてんだな…)

 

この前起こった異変。

 

「裂空異変(きれうろいへん)」

 

その名の通り、

 

空が強い力で引っ張られたように

 

裂けるという大規模な超常現象が発生した。

 

裂け目からは大量の破片のようなものが

 

落ちてきたという。

 

 

 

霊夢と魔理沙はこの異変の記憶が無い。

 

その当時、何者かに操られ

 

異変を助長していたと後々聞かされた。

 

霊夢

(幻想郷を覆っている大結界が

 実体の無いものだと認知しているのは

 住人、特にヒトの中では限られる…)

 

異変当初は破片が落ちてきたことで

 

大騒ぎにもなったそうだ。

 

博麗大結界は霊夢と博麗神社の周辺の木々を

 

核として幻想郷を覆うように

 

展開されている結界。

 

外界とのつながりを遮断するもので、

 

一部を除き内側から外部へ

 

通過することは出来ない。

 

霊夢

(紫が無事で助かったけど…)

 

普段から霊夢が解決してきた異変は

 

幻想郷そのものを危険に晒すような

 

ものではなかったため、

 

彼女は異変に対する危機感が

 

強かったわけではない。

 

博麗の巫女としての自覚はあるが、

 

異変解決に対してどうこう言われようが

 

気にすることなどなかった。

 

だが、裂空異変は違った。

 

もし自分が操られ

 

そのままこの周辺を焼き払ったとしたら?

 

霊夢

「…」

 

夢に見る。

 

自分がそんなことをしている姿。

 

自分の身体を

 

ろくでもないことに使われた屈辱。

 

霊夢は自分を操った黒幕を許せなかった。

 

そして操られた自分が

 

博麗の巫女としてまだまだ未熟であることにも

 

腹が立って仕方が無い。

 

魔理沙

「…」

 

同じく操られていた魔理沙は

 

霊夢の心境が痛いほどよくわかった。

 

長い付き合いだというのもある。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

異変の黒幕は

 

「人間への復讐」を目的として

 

結果的には失敗に終わったが

 

幻想郷もろとも

 

すべてを消滅させようとした。

 

大妖怪である「八雲紫」は

 

異変解決の現場に立会い、

 

黒幕の叫びを垣間見たという。

 

異常なまでの

 

人間という種に対する怨み。

 

そしてその要因を作り出した

 

幻想郷の「闇」を目の敵にした行為。

 

異変が解決された後、

 

黒幕は正気を取り戻し

 

自らの身勝手な行いを恥じ、

 

贖罪の意味も兼ねて

 

封印される道を選んだらしい。

 

その事実が幻想郷中に伝わることはなく、

 

異変の黒幕は幻想郷の敵として

 

封じられた本と共に

 

親友の元で厳重に保管されている。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

大妖精

「そ、それはまずいんじゃないかな…

 霊夢さんに怒られそうな気が…」

 

チルノ

「大丈夫だって!

 妖怪1人くらいじゃ怒らないよ。」

 

ルーミア

「そういう問題じゃないのか。」

 

三人は湖のほとりから離れ、

 

森の中を進む。

 

大妖精

「ルーミアちゃんの言う通りだよ…」

 

チルノ

「わかってるけど本の中に

 ずっといるっていうのは

 やっぱり可哀想じゃん。」

 

ルーミア

「バカの手に余るぞ…」

 

チルノ

「んだとぉ!?」

 

大妖精

「チルノちゃん…」

 

それから三人は

 

歩いたり

 

遊んだり

 

歩いたり

 

遊んだり

 

遊んだり

 

遊んだり

 

を繰り返し、

 

日をまたいでとある場所に辿り着く。

 

チルノ

「おっしゃ! とうちゃーく!」

 

ルーミア

「日付が変わってるぞ…」

 

大妖精

「私たちも遊んじゃってたからね…」

 

三人が辿り着いた開けた場所には

 

「霧雨魔法店」という大きな看板が付いた

 

一軒家が建っていた。

 

チルノは魔理沙を訪ね、

 

本の中の妖怪を出せないか。

 

もしくは解放出来ないか

 

聞いてみようと考えたのだ。

 

チルノ

「おーい!まーりさー!」

 

チルノが元気いっぱいに叫ぶと

 

霧雨魔法店から人が出てきた。

 

魔理沙

「おうチルノ!

 と、大ちゃんにルーミアか?

 なんだ揃いも揃って。」

 

大妖精

「ど、どうも…」

 

ルーミア

「ちょっとなー」

 

それからチルノたちは

 

魔理沙に事情を説明した。

 

魔理沙は友であるアリスから

 

もらった茶と手作りクッキーを

 

三人に出してもてなした。

 

 

 

結局魔理沙にも

 

本の持ち主はわからなかった。

 

 

 

夕方になった頃、

 

チルノ

「んー?なんだこのツボみたいなの。」

 

魔理沙

「お?こいつに興味があるのか?」

 

大妖精

「ちょっと変わったツボ…

 というより釜ですかね…?」

 

魔理沙

「おう!こいつは錬金術を

 行うときに使う釜だぜ!」

 

ルーミア

「錬金術…」

 

チルノ

「なーまりさー

 れんきんじゅつってなんだー?」

 

魔理沙

「難しいことを全部取っ払えば、

 モノをいろいろぶち込んで

 違うモノを創り出す術だぜ!」

 

チルノ

「へえ!なんかすげー!」

 

大妖精

「混ぜるな危険とか

 言われてるモノは大丈夫なのかな…」

 

ルーミア

「たぶんだめだぞ。」

 

チルノ

「アタイもやりたい!」

 

魔理沙

「お、やるか!?」

 

チルノの一声で大妖精とルーミアの

 

二人は血相を変える。

 

ルーミア

「バカチルノに

 やらせるわけにはいかない。

 魔理沙、今のは無しで頼むぞ。」

 

大妖精

「同感です!今のは

 冗談として受け取ってください!」

 

魔理沙

「お、おいおい

 そこまで言わなくたっていいだろ?」

 

チルノ

「ん?アタイなんかまずいこと言ったか?」

 

魔理沙

「なに、簡単なものしかやらせないぜ。

 何事もチャレンジが大切だからな。

 仮に何かあっても私が責任持ってやるよ。」

 

大妖精

「魔理沙さん…」

 

ルーミア

「なんか頼れるお姉さんみたいだぞ。」

 

チルノ

「なんかよくわからないけどやったぜ!」

 

最も初歩的な錬金、

 

治癒剤の生成を行うこととなった。

 

治癒効果を持つ薬草と

 

濁りの無い綺麗な水を素材とする。

 

魔理沙

「まぁ実は汚い水でも

 出来ないことは無いんだがな。」

 

大妖精

「それお薬としてまずいんじゃ…」

 

魔理沙

「HPが回復すりゃいいだろ。

 (水)って書いてあるんだよ。」

 

ルーミア

「メタいぞ。」

 

チルノ

「この釜ってやつに

 ぶちこめばいいのか~?」

 

魔理沙

「入れただけじゃ治癒剤は完成しないぜ。

 一から教えてやるからちょいと待ってな。」

 

そう言い残して魔理沙は倉庫に向かう。

 

チルノ

「にっしっし…今のうちに

 完成させてまりさを驚かせてやるぜ!」

 

大妖精

「待っててって言われたのに…

 でも私もちょっとやりたいかな…」

 

ルーミア

「大ちゃんまでこのバカに

 付き合っていたら

 ろくなことにならないぞ…」

 

チルノ

「あー!またバカにしたな!

 へん!アタイにかかれば

 こんなのちょちょいのちょいだ!」

 

チルノは勢いに任せて

 

薬草と水を瓶ごと釜に放り込み、 

 

何故かその中に生成した氷を

 

粉々に砕いたものを入れて

 

かき混ぜ棒で釜の中を乱暴に混ぜる。

 

大妖精

「ち、チルノちゃん!?」

 

ルーミア

「あー…もうだめだ…」

 

チルノ

「へへーん!アタイが

 天才だってところを見せてやる!」

 

ある程度かき混ぜた時、

 

突然釜の中が光り出した。

 

大妖精

「な…これは…」

 

チルノ

「お!?」

 

チルノは手応えを感じ、

 

そのままかき混ぜ続ける。

 

釜の中は発光する

 

水色の液体で満たされている。

 

チルノ

「これならいけるか!?」

 

チルノが声をあげたその時である。

 

釜の中が突然爆発した。

 

その衝撃でチルノの身体が

 

空中に放り出される。

 

ルーミア

「…チルノ!!」

 

大妖精

「チルノちゃん!」

 

チルノは意識が飛んだ様子で返事が無い。

 

真っ先に動いたのはルーミアだった。

 

ルーミアは床を蹴り、

 

チルノに向かって跳躍。

 

チルノをしっかりと抱き抱えて

 

床に着地する。

 

その様子を大妖精は

 

驚愕の眼差しで見ていた。

 

大妖精

「る、ルーミアちゃんすごい!」

 

ルーミア

「大ちゃん!チルノは…」

 

チルノの安否を大妖精に確認するルーミア。

 

どうやら大事は無かったようで、

 

外傷も無く意識を失っているだけだった。

 

大妖精

「チルノちゃん…」

 

チルノを大妖精に任せて

 

釜の中を覗いてみるルーミア。

 

そこには緑色の謎の物体があった。

 

ルーミア

「な、なんだ…これ…」

 

ルーミアがそう呟いた瞬間。

 

緑色のソレはルーミアの顔面目掛けて

 

飛び掛かってきた。

 

ルーミア

「…!」

 

しかしルーミアはそれに反応して

 

緑色のソレを殴り、床に叩きつけた。

 

べちゃっという気味の悪い音が響く。

 

大妖精

「ひっ!?」

 

ルーミア

「何かの生き物…なのか?」

 

緑色のソレはわずかに脈動しており、

 

まるで呼吸をしているようだ。

 

大妖精

「う…恐い…」

 

思わず怯える大妖精。

 

ルーミアは大妖精とチルノを

 

守るように立ち、警戒する。

 

ルーミア

「…錬金術で生き物が…?」

 

 

 

「オオォ…ゥオァ?」

 

 

 

口のような部分は見当たらない。

 

だが呻き声のようなものが聞こえる。

 

ルーミア

「生きてる…な…」

 

ルーミアは緑色のソレに触れようとする。

 

が、緑色のソレに向かって

 

規模の小さい魔法弾が炸裂した。

 

魔理沙

「おい!三人とも無事か!?」

 

大妖精

「魔理沙さん!」

 

ルーミア

「…」

 

緑色のソレは跡形もなく消えた。

 

魔理沙の弾で消し飛ばされたのだろう。

 

大妖精

「ルーミアちゃん?」

 

ルーミア

「なんでもない。」

 

ルーミアは立ち上がると

 

部屋から出て行ってしまう。

 

魔理沙

「おいルーミア!」

 

ルーミア

「風に当たってくるだけだぞ。」

 

魔理沙の声掛けに

 

ルーミアはそう吐き捨てた。

 

魔理沙

「…なんだ…?」

 

 

 

しばらくして…

 

 

 

チルノ

「ん…あれ…アタイ…」

 

大妖精

「チルノちゃん!」

 

目が覚めたチルノを大妖精が抱きしめる。

 

チルノ

「大ちゃん…?」

 

大妖精

「ごめんねチルノちゃん…

 私が止めていればこんなことには…」

 

徐々に意識がはっきりしてきたチルノ。

 

目の前には魔理沙とルーミアが立っている。

 

魔理沙

「………」

 

チルノ

「あ、えっと…まりさ…これは…」

 

魔理沙

「全く…お前には

 困ったもんだぜ。

 ま、無事で何よりだ。」

 

チルノ

「その…ごめん…」

 

ルーミア

「バカは死ななきゃ治らない。」

 

チルノ

「んだとぉ!?…っていたたたた!」

 

大妖精

「あーもう…まだあんまり動いちゃだめだよ。」

 

胸元から腹の辺りに鈍い痛みがある。

 

吹っ飛ばされたときに衝撃波が

 

チルノの身体を襲ったようだ。

 

チルノ

「くそう…こんな状態じゃなければルーミアなんて」

 

魔理沙

「ルーミアにもちゃんと謝っとけよー?」

 

チルノ

「…?」

 

大妖精

「チルノちゃんが吹き飛ばされた時に

 ルーミアちゃんが助けてくれたんだよ?」

 

チルノ

「え…」

 

ルーミア

「む…」

 

チルノはルーミアに視線を向けるが

 

ルーミアは背を向けてしまう。

 

チルノ

「ほんと?」

 

ルーミア

「バカだな!誰がお前なんか助けるか!」

 

チルノ

「う…このやろ…ちょっと

 見直しかけたけどやっぱりだめだ!」

 

魔理沙

「おいおい…いつもこんななのか?」

 

大妖精

「ええ、本当に二人とも仲がいいですよね。」

 

魔理沙

「いいのか?これ…」

 

それから二人の言い合いは十分ほど続いた。

 

 

 

チルノ

「まりさーつぎはー?」

 

魔理沙

「おう、この赤色の液体をゆっくり入れるんだ。」

 

魔理沙はチルノに赤い液体が入った小瓶を渡す。

 

チルノ

「おう!任せとけ!」

 

チルノは小瓶を受け取ると台に飛び乗り

 

釜に赤い液体を小瓶ごと投げ入れた。

 

大妖精

「ちょ…」

 

魔理沙

「ゆっくりって言ったよな!?」

 

ルーミア

「…そんな気がしたぞ…」

 

幸い釜の中の液体が変色しただけだった。

 

チルノ

「大丈夫じゃん?」

 

大妖精

「もう…何かあったらどうするの?」

 

チルノ

「へっへー!

 その時はルーミアが助けてくれるでしょ!」

 

ルーミア

「なっ…」

 

チルノの言葉を聞いた

 

ルーミアは思わず赤面する。

 

ルーミア

「全く…バカのくせに…」

 

チルノに聞こえないように呟いた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

はるか以前、

 

ルーミアは幻想郷において

 

食人妖怪として認識されていた。

 

その生態は察しの通り、

 

ヒトを貪り食すことだった。

 

そこに罪悪感は存在しない。

 

なぜなら生きる上で絶対的に

 

必要な行為だからだ。

 

ヒトが他を蹂躙することと

 

何ら変わりないのである。

 

それは同じく必要な行為だ。

 

ルーミア

「………」

 

濁った瞳には

 

自分が食い荒らした跡だけが映る。

 

子供は特に美味い。

 

成人にはない甘みがある。

 

だからよく子供を襲う。

 

今回も人が住む里に帰る途中だった

 

子供を夜の暗闇の中で殺害した。

 

父親と母親を呼んでいたが

 

その声は里にも両親にも

 

届くことはなかった。

 

 

 

そんなことはわかりきっているのに

 

声は決して届かないのに

 

どうして死を前にすると

 

誰かのことを想う?

 

助けを乞うのだろうか。

 

 

 

水溜まりに映る顔。

 

ルーミアの顔は血に塗れていた。

 

それが恐ろしいとは思わなかった。

 

生きるものとして

 

当たり前のことなのだから。

 

 

 

時は過ぎ、

 

ヒトと妖怪の間にルールが生まれた。

 

みだりにヒトを

 

減らしてはならなくなったし、

 

ヒトも妖怪を一層恐れるようになって

 

食事にありつけなくなった。

 

ヒト以外の食事を探さねばならないと

 

ルーミアは様々な方向性で

 

解決を試みたが、やはり、

 

ヒト以上に満足は出来ない。

 

 

 

ある時、ヒトが住む里から

 

ヒトが単独で出てくるのを

 

狙って周辺をうろついていた。

 

それをヒトに見つかってしまったのだ。

 

「このクソヤロウが!」

 

「二度とここに来るんじゃねえ!」

 

「どこか遠くに行って頂戴!」

 

罵声に石や尖った枝。

 

色々と投げつけられた。

 

 

 

ボロボロになったルーミアは

 

抵抗せずに里から離れ、

 

近場の倒木に腰掛ける。

 

ルーミア

「………」

 

ヒトにあのような態度を

 

取られることは理解出来る。

 

なにせ命を狙っているのだから、

 

天敵を威嚇するのは当然だ。

 

だがルーミアには

 

自分の存在そのものを

 

否定された気がした。

 

好きでヒトを襲おうと

 

思ったのではない。

 

もう限界だったのだ。

 

 

 

ルールを知った時から

 

何か解決策が無いか

 

あらゆる手を尽くしてきた。

 

植物を試したこともあるし、

 

時には土さえ口にした。

 

それでも満たされなかった。

 

 

 

視界がかすむ。

 

なら自分はどう生きれば良いのか。

 

ヒトを食べることも許されないのなら

 

この苦しみを味わい続けるしかない。

 

ルーミア

「この世界に

 生まれたことが罪だったのか…」

 

誰もいない空間で呟く。

 

 

 

そこへ足音が聞こえてきた。

 

???

「やぁ、隣、いいかな?」

 

少し高めで幼い声。

 

しかしどこか大人びた感じもする。

 

ルーミアが視線を上げると

 

そこには黒くて長い髪に深紅の瞳。

 

真っ黒い服に身を包んだ女性が立っていた。

 

ルーミアは頷く。

 

???

「ありがとう、よいしょっと。」

 

ルーミア

「おまえは…?」

 

???

「おっとすまないね。

 私は…いや、ただのモルモット。

 君となんら変わらないモルモットさ。」

 

ルーミア

「モル…モット…」

 

???

「ほら、たべてないんだろう?」

 

そう言うと、その女性は

 

懐からヒトの腕を取り出した。

 

ルーミア

「…!どう…して…?」

 

???

「君へのお詫びだ…

 あそこまで里が妖怪を

 恐れていたのは私と彼女のせいだからね。」

 

ルーミアにそれを渡す女性。

 

黒くてあまりわからなかったが

 

よく見るとヒトの血と思わしきものが

 

至る所に付着していた。

 

ルーミア

「殺した…のか?」

 

???

「いいや、腕と脚を

 片方ずつ斬り落としたのさ。」

 

そう言いつつ女性は

 

どこか嬉しそうで

 

どこか悲しげな表情を浮かべていた。

 

???

「人でさえ、人を殺す。」

 

ルーミア

「え?」

 

???

「彼女はそれが許せなかったのさ。」

 

ルーミア

「彼女?」

 

???

「ああ、ごめんよ、こちらの話だ。

 それより早く食べてしまったほうが良いよ。

 せっかくの産地直送が台無しじゃないか。」

 

ルーミア

「う…うん…」

 

不気味だった。

 

何を考えているのかわからない。

 

もしかしたら毒物なのかもしれない。

 

そう思ったが、ルーミアは我慢出来なかった。

 

 

 

ルーミア

「…ありがと…」

 

???

「元気は出ただろうか。」

 

ルーミア

「うん。」

 

???

「それは良かった。」

 

女性はそう言うと

 

ルーミアの口元を拭いて立ち上がる。

 

ルーミア

「あ…」

 

???

「どうだった?あれの味は。」

 

ルーミア

「お、美味しかった…」

 

???

「そうか、じゃあ君は

 克服出来たみたいだね。」

 

ルーミア

「え?」

 

???

「あれは人の腕じゃなくてね。

 植物からとある術で創り出したんだ。」

 

ルーミア

「じゃ、じゃあ腕を斬ったのは…」

 

???

「ああ、ちゃんと斬ったよ。

 だが君に食べさせたのは

 私が創り出した模造品だ。」

 

ルーミア

「そんな力を持って…」

 

???

「能力ではないよ。魔術に近いがね。」

 

ルーミア

「そ、それを教えて…!」

 

???

「いいや、その必要はない。

 使えるようになれば

 この先困らないと思ったんだろうが、

 もう君はヒトを食べなくても

 楽に生きていける身体になったんだ。」

 

ルーミア

「身体が…」

 

ルーミアは自分の身体を見る。

 

特に変化もない。

 

???

「君、友達はいるかな。」

 

ルーミア

「え…?」

 

???

「君には友達が必要だ。

 そして必ず、友達が出来るだろう。」

 

ルーミア

「どうして…わかるの?」

 

???

「どうしてか…勘、としか言えないな。」

 

ルーミア

「一気に不安になった…」

 

???

「はははっ!

 そりゃそうだ!

 正確な予測でもないからね。」

 

ルーミア

「…出来るかな…」

 

???

「安心したまえ。

 私の勘は当たるぞ…?」

 

ルーミアは頷く。

 

女性が自分の恩人だからではない。

 

ただこの時は、安心したかった。

 

女性の言葉は聞いていると

 

不思議と心が安らいでいる気がした。

 

???

「友達は大事にするんだよ?

 失ってからでは遅いからな。

 彼女や私のように。」

 

ルーミア

「…?」

 

女性は林の方へ歩き出す。

 

???

「また会えることを楽しみにしている。」

 

そのままどこかへ去って行った。

 

ルーミア

「…」

 

 

 

それからしばらくして、

 

ルーミアは『ともだち』を得た。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ある日のこと、

 

ルーミア

「うっ…ぐぅ!」

 

ルーミアは森の中で

 

里の小童たちによって袋叩きにされていた。

 

「おまえみたいなやつが

 いるからみんなビクビク

 震えなきゃならないんだよ!」

 

「おれたちを食べる気だろ!」

 

散々に罵声も浴びせられた。

 

ルーミアはたまたま出くわしただけで、

 

襲う気も食べる気も無かった。

 

ルーミア

「ちがう…そんなつもりは…」

 

しかしルーミアが

 

手を出すことは無かった。

 

妖怪の力であれば、

 

数人の小童などすぐさま肉塊に出来る。

 

だがそうしようとは思わなかった。

 

「嘘つけ!バケモノ!」

 

ルーミアはこの前助けてくれた

 

女性の言う友達が欲しかった。

 

今までのやり方ではだめだと思い、

 

小童たちに抵抗せず、

 

ひたすら耐える。

 

その心底では今まで自分が

 

喰らってきたヒトへの罪悪感が

 

今頃になって芽生えていた。

 

ルーミア

「う…ごめん…なさい…!」

 

思わず謝罪の言葉を漏らす。

 

それでも収まることはない。

 

無抵抗のルーミアはただひたすら

 

袋叩きにされていた。

 

 

 

「おい!なにやってんだ!」

 

そこへ甲高い声が入った。

 

小童たちは一斉に暴行を辞め、

 

声の方へ振り向く。

 

ルーミアも顔を上げてみる。

 

羽の生えた少女が二人…

 

そこには青い妖精と

 

それにくっつく妖精の姿があった。

 

「げ…やべーやつだ…おい逃げるぞ!」

 

小童の一人が言い出すと、

 

他の者たちも一斉に

 

散り散りになって逃げて行った。

 

ルーミア

「っ…」

 

起き上がったルーミアの元へ、

 

青い妖精は詰め寄る。

 

 

「おいおまえ、妖怪だよな?

 どうしてやり返さなかった?」

 

ルーミア

「…そ、それは…」

 

 

「チルノちゃん…やめなよ…」

 

もう一人の妖精が青い妖精に進言する。

 

どうやらこの青い妖精は

 

チルノというらしい。

 

チルノ

「ふん…アタイはさいきょーだから

 あんな連中、眼中にないけどね!」

 

確かにチルノを見た瞬間に

 

小童たちが逃げて行ったのを見ると、

 

恐れられているのはわかったが…

 

ルーミア

「…もう…ヒトは食べない…」

 

 

「あなたヒトを食べる妖怪だったんだ…

 だからあんなに叩かれて…」

 

もう一人の妖精は理解力が高いようだった。

 

チルノ

「なんであいつらを食べないんだー?」

 

ルーミア

「なんでって…ルールが…」

 

チルノ

「おまえにあんなことしたんだぜ?

 食べられて当然だと思うけどなー」

 

ルーミア

「…それだと…いずれ独りになる…」

 

俯くルーミアを見て二人は黙り込んだ。

 

ルーミア

「それに…もう食べなくても大丈夫…

 だから…ヒトと…仲良くしたい…」

 

その言葉と共に心の奥底で

 

おこがましいという感情も湧いて出る。

 

ルーミア

「でもわかってた…こうなることは…

 今までのことが…許されるわけが無い…」

 

チルノ

「そっか、じゃあアタイの

 『ともだち』になってくれない?」

 

ルーミア

「え…?」

 

チルノから出た思いもよらない言葉に

 

ルーミアは顔を上げて目を見開く。

 

チルノ

「おまえ、独りがイヤなんだろ?

 じゃあアタイたちと一緒に居なよ。」

 

ルーミア

「…いきなり友達だなんて…」

 

チルノ

「いいよね大ちゃん?」

 

 

「もちろん!もっとにぎやかになるね!」

 

チルノに大ちゃんと呼ばれた妖精は

 

ルーミアにとびきりの笑顔を向けて快諾する。

 

チルノ

「それに、アタイといれば

 おまえもああいうことされないだろ?」

 

ルーミア

「…!」

 

チルノ

「だからアタイのそばにいろよな!

 そしたらあいつらも手出し出来ないからな!」

 

チルノは、にへっと笑顔を見せて

 

ルーミアの右肩に手を置く。

 

ルーミアにはその笑顔が

 

ひたすらまぶしかった。

 

気乗りはしなかったが、

 

この機を逃したら二度と

 

友達なんて出来ないと思った。

 

ルーミアは恐る恐る頷いて、

 

しばらく行動を共にした。

 

いつからかルーミアの濁った瞳に

 

光が灯るようになり、

 

チルノと大妖精に連れられて

 

多くの住人に会い、

 

一部のヒトとも話すようになった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

チルノ

「ルーミアー…おーい!」

 

ルーミア

「む…」

 

ぼーっとしていたらチルノが

 

至近距離で大声を出していた。

 

ルーミア

「う、うるさいぞ…」

 

チルノ

「アタイの錬金術みてたか?

 ほら!すげーのが出来たぜ!」

 

ルーミア

「いちいち自慢してくるな…」

 

チルノ

「へっへー…ルーミアには

 絶対出来ないからなー…」

 

ルーミア

「その言葉、忘れるんじゃないぞ…」

 

そう言うとルーミアは

 

治癒剤の錬成に取り掛かる。

 

魔理沙

「お、ルーミアのやつやる気だな。」

 

大妖精

「チルノちゃんに煽られたせいですよ(汗)」

 

ルーミア

「…」

 

 

 

チルノのバカさ加減には呆れている。

 

チルノ

「な、ルーミアめ…意外に出来る…」

 

大妖精

「すごい!すごいよルーミアちゃん!」

 

 

 

それでも孤独にならずに済んだのは

 

チルノと大ちゃんのおかげなのは確かだ。

 

ルーミア

「ふん、バカチルノに出来て、

 私に出来ないはずがないぞ。」

 

チルノ

「んだとぉ!?こいつ!」

 

きっと今でも、二人が必要だ。

 

だから

 

ルーミア

「でも…おまえには敵わない。」

 

チルノ

「な…頭でも打った?」

 

ルーミア

「打ってない、バカか。」

 

チルノ

「このやろー!」

 

大妖精

「あわわ…もう二人とも

 魔理沙さんのところで暴れないでよー!」

 

魔理沙

「いいじゃねーか大ちゃん。」

 

大妖精

「え?」

 

魔理沙

「ルーミアがあんなに笑ってんだからさ。」

 

大妖精

「…ほんとだ…」

 

取っ組み合いになりながらも

 

チルノとルーミアは

 

楽しそうな笑顔を見せていた。

 

 

 

「お姉さん…勘…当たったよ…」

 

ルーミアは心の中で

 

あの時の女性に向けて呟いた。

 

 

 

チルノ

「あっれえ!?

 まりさー!材料が無ーい!」

 

魔理沙

「おっとまじか。

 じゃあ自分で調達しないとな。」

 

チルノ

「おお!材料も自分で集めるのか!?」

 

魔理沙

「錬金術士の立派な仕事だぜ?」

 

チルノ

「おっしゃあ!燃えてきたー!!」

 

天井に向かって叫んだチルノは

 

窓から外に飛び出してしまう。

 

大妖精

「ああ!チルノちゃんそんなとこから…

 せめて玄関から出てってよ…!」

 

自分で書いた材料のメモをポケットにしまい

 

大妖精はチルノの後を追う。

 

魔理沙

「元気だなぁ…

 おまえも大変だろ?」

 

ルーミア

「日常茶飯事だぞ。」

 

ルーミアは呆れた表情をしながらも、

 

出掛ける準備をする。

 

魔理沙

「行くのか?」

 

ルーミア

「うん、チルノが心配だから。」

 

ルーミアはチルノのことを

 

心配させられているのに

 

どこか嬉しそうな表情を浮かべる。

 

魔理沙

「そっか…

 私は少し用事がある。

 もし帰ってきて居なかったら

 適当にくつろいでてくれよ。」

 

ルーミア

「わかった、行ってくる。」

 

少し遅れてルーミアは

 

チルノと大妖精を追って出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その姿を遠くの木陰から覗く影。

 

???

「ほう、素晴らしい…実に素晴らしい…

 また母を殺さねばならぬ理由が増えた。」

 

そう言うと紅い瞳を持つ影は

 

森の奥深くへと消えていった。

 

 

 

to be continued ~




無駄に長い話でお疲れ様でした。

キャラクターを掘り下げるため、
まずは章ごとに一人ずつ焦点を
当てていくスタイルで
やっていきたいと思います。

今回はルーミアでした。

恐らくみなさんの脳内に
住み着くルーミアとは大きく異なると
推測していますが、
Almaのルーミアはこんな感じです。

そこまで原作を意識しているわけではなく、

「こういうキャラクターならいいなぁ」

程度で創り上げていますので、
イメージと違う点はご容赦ください。



さて、しばらくは多忙を極めることに
なるため、動画を編集することは
不可能だと思います。

ほんへはその⑤で止まっていますが、
こちらは多少手がつけられるので
ブレーキ無しで
進めていきたいと思っています。

至らぬ点も多々…というか
めちゃめちゃございますが、
どうかよろしくお願いいたします。
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