チルノ&大ちゃんのアトリエ ~目覚めし幻想の錬金術士~ 作:すくすくAlma
月が見える頃、博麗神社にて。
魔理沙は博麗の巫女である
博麗霊夢と縁側で話をしていた。
霊夢
「黒い本?」
魔理沙
「ああ、妙だと思わないか?
小鈴かもしれないが…」
霊夢
「パチュリーじゃない?」
魔理沙
「違かったらしいぜ?」
霊夢
「…小鈴がへまやらかした
産物じゃなければいいんだけど…
とりあえず様子を見ててくれるかしら?」
魔理沙
「…どうせお前も探るんだろ?」
霊夢
「面倒事が嫌いなのよ。
ましてやあのバカだし…」
魔理沙
「おいおいひでぇやつだなぁ。」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
チルノ
「おおーここの水使えそう!」
大妖精
「ち、チルノちゃん待って…」
日が昇ってきた頃、
チルノと大妖精は
錬金に使用する材料を探し、
妖怪の山近辺の森を散策していた。
あとは綺麗な水を手に入れれば
治癒剤の材料が揃う。
綺麗な水の流れる小川を
見つけたチルノは早速、
その水を採取しようと試みる。
大妖精
「あ…チルノちゃん
川が凍っちゃうよ!」
チルノ
「ん?何かだめなの?」
大妖精
「だめってことはないけど
川に居る生き物たちが…」
チルノ
「へーきへーき!
そのうち元に戻るし!」
大妖精
「そういう問題じゃ…」
チルノの身体からは
冷気が溢れでている。
その理由は長時間の
活動による興奮。
力の制御が若干、
効かなくなっていた。
その結果、チルノが
水に手をつけただけで
たちまち凍ってしまうのだ。
???
「なんだい朝っぱらから。」
そこへ声がかかる。
チルノ
「だ、誰だ!?」
???
「誰だとは失礼な。
テリトリーに侵入しているのは
君たちのはずなんだけどな?」
青い短めのツーサイドアップ、
作業着に近い青コートに
青いリュックを背負い、
緑色の帽子を被った少女が
凍った川の上を歩く。
チルノによって凍らされた面は
非常に薄い為、本来であれば
氷が割れてしまうところだが。
大妖精
「に、にとりさん…!」
大妖精ににとりと
呼ばれたその少女は
青い瞳でチルノに
明らかな敵意を向ける。
彼女は河城にとり。
妖怪の山の麓に住居兼工房を
構えている河童のエンジニア。
同時に幻想郷に住み着いている
妖怪の一種、河童たちの
リーダー的存在でもある。
にとり
「…相変わらず考えなしに。
水をどうするつもりだい?」
チルノ
「錬金術ってのに必要なんだ。」
にとり
「なるほど?
それでこの川の水を凍らせたのか?」
大妖精
「ご、ごめんなさい!
チルノちゃんは
そんなつもりは無くて…」
にとり
「別に怒ってないけど
この子たちが迷惑してるんだ。」
にとりはそう言うと
足元の氷を足先でつつき、砕く。
すると砕けた隙間から
数匹の魚が川の中で
元気よく泳ぎ出した。
チルノ
「う…」
不思議なことに、
にとりは水の上でも
平然と立っている。
にとり
「確かに時間がたてば
元には戻るだろうけど
この子たちのことも
考えておくれよ。」
大妖精
「チルノちゃんここはやめとこう?
他の場所にも綺麗な水はあるよ。」
チルノ
「う、うん…」
チルノは大妖精に諭されて
川から手を抜く。
にとり
「全く…次からは気をつけ…ん!?」
にとりはチルノが
持っている黒い本を見て目を見開く。
チルノ
「え…?」
にとり
「その本…いったいどこで…!?」
大妖精
「えっと…霧の湖周辺の森に
落ちていたところを拾ったんです。」
にとり
「く…す、すまないが
その本を私にくれないか?
もちろんちゃんと礼はする!」
先程の冷静そうな面持ちとは
打って変わってにとりは
明らかに慌てた様子で言う。
チルノ
「えぇ!?やだよ!
これアタイが拾ったものだよ!」
にとり
「…っ…」
大妖精
「にとりさん…この本の
持ち主を知っているんですか…?」
にとり
「それは…」
ルーミア
「バカチルノ!大ちゃん!」
そこにルーミアがやってきた。
チルノ
「お、ルーミア!
ちょうどいいところにきたな!
この本アタイのだよね?」
にとり
「ルーミア!
わかっているだろう?
チルノにこの本を渡すように
言い聞かせてくれ…!」
ルーミア
「な…!?」
ルーミアはにとりに黒い本の
捜索を協力するように頼まれていた。
その代わり、本の中に封じられている
妖怪について知ることとなった。
にとり
「…そうか…ルーミア…
君もこの本を狙っていたのか…」
ルーミア
「…ちが…!」
にとり
「すまないが、力づくでも
渡してもらう!悪く思うな!」
チルノ
「くっ…来る!?」
にとりは右手に銃を具現化させ、
チルノ目掛けて引き金を引く。
大妖精
「させません!」
それに合わせて大妖精が
間に入り、緑色に発光する結界で
発射された弾丸を防ぐ。
にとり
「…いい反応だ…だが…!」
弾丸を弾かれたことを
確認したにとりは
大妖精の結界が及ばない
上方へ飛び上がり、
数発、撃つ。
しかし大妖精は
結界を上部へ移動させることで
全ての弾丸を防ぎ切った。
ルーミア
「…二人とも!」
そこへルーミアが加わり、
チルノと大妖精を
闇の中に引き入れた。
にとり
「…!」
三人が暗闇の中へ消えたことを
確認したにとりは
闇の近くへ降り立ち様子を見る。
にとり
「日が落ちてもいない時に
こんな方法で騙せるとでも?」
にとりの言う通り、
森の中は射し込んだ日光によって
照らされている。
ルーミアの展開した闇は
くっきりとその姿を視認可能なため、
誰かが出てくればすぐにわかる。
にとり
「…容赦はしないよ?」
そう言うとにとりは闇の中へ
小さいカプセルを投げ入れた。
中でプシュッという音が鳴り、
闇をすっぽりと囲うように
光るネットのようなものが広がる。
次の瞬間、ネットの範囲内に
激しい電流が流れた。
ルーミア
「うぐぅ!?」
にとり
「…甘かったね。
行動範囲を狭めたようなものだよ。」
ルーミアの声を闇の中から
聞いたにとりは
わずかな笑みを浮かべる。
闇が徐々に小さくなっていき。
最後にはルーミアだけが出てきた。
にとり
「!?」
そこにチルノと大妖精の姿は無い。
にとり
「二人をどこへ?」
ルーミア
「…」
にとり
「ルーミア!」
にとりはルーミアの
胸ぐらを掴む。
ルーミア
「…」
しかしルーミアは口を割らない。
にとり
「どうしてそこまで…
あの本については
全面的に協力してくれる
話だったじゃないか。」
ルーミア
「友達…だから…」
にとり
「…何…?」
にとりの手が緩む。
チルノ
「やめろ!!」
にとりに向かって
氷の刺が飛んできた。
にとり
「助かったよ…」
しかしにとりに当たる前に
六角形の光の板が出現し、
消えてしまう。
ルーミア
「チルノ!逃げろ!」
チルノ
「やだ!逃げるもんか!!」
ルーミア
「!?」
にとり
「バカなことを…
だけどおかげで
探す手間が省けたよ。」
にとりはもう片方の手に
大きめの銃器を具現化させる。
ルーミア
「くっ!」
にとりの脚をルーミアが
両腕で捕らえる。
にとり
「ルーミア、
邪魔をしないでおくれよ。」
ルーミア
「…!」
にとりはルーミアに
冷たい視線を送るが、
ルーミアはにとりの脚を
放すまいと力を入れる。
にとり
「…なんだって言うんだ…
そんなに仲が良かったのかい。」
チルノ
「…ルーミア!
今助けてやるからな!」
チルノは全身に冷気を纏い、
にとりに飛びかかる。
にとり
「自ら突っ込んでくるとは…!」
にとりはルーミアの方を
ちらりと見て左手の銃器を放棄し、
右手の拳銃でチルノを撃つ。
カンッという音と共に、
弾丸が地面に落ちた。
チルノが纏っていた冷気が
小さな氷塊を形成しており、
チルノの身体に弾丸が
到達する前に、
氷塊に弾き落とされたようである。
にとり
「ちぃっ…!」
チルノ
「うおー!!」
チルノはそのままの勢いで
にとりに突っ込んだ。
チルノはそのまま数メートル
後ろの地面へにとりと共に吹っ飛ぶ。
ルーミア
「チルノ!?」
衝撃を免れたルーミアは立ち上がり、
チルノに駆け寄る。
先程の電流で足取りがおぼつかない。
大妖精
「チルノちゃん!ルーミアちゃん!」
そこへ大妖精が戻ってきた。
チルノ
「いたたた…
大ちゃん逃げてって言ったのに…」
大妖精
「置いてなんかいけないよ!
二人とも大丈夫!?」
ルーミア
「私は…それよりチルノが…」
チルノ
「へへ…大したことないぜ…
ルーミアが無事なら…」
ルーミア
「チルノ…」
チルノとルーミアは
土で少し汚れているが、
怪我をしている様子は無い。
大妖精
「よかった…二人とも
今すぐ逃げないと…」
にとり
「どこに逃げるって言うんだい。」
三人は声の方へ振り向くと
そこには帽子やリュックなど
身につけていたものを
地面に置いたにとりの姿があった。
恐らく動きやすさを
確保したようだが…
にとり
「チルノ、本をこちらに。
じゃないと君たちを
さらに傷つけることになる。」
チルノ
「アタイは…この本に
封じられたやつを助けるんだ!」
にとり
「…!?」
チルノ
「この本に封じ込まれた妖怪が
外に出て元気にしてるのを
見るまでアタイはこの本を守るんだ!」
にとり
「っ…それは
君たちには出来ない。
私に任せて手を退くんだ。」
チルノ
「やだ!アタイがやるんだ!」
にとり
「そうか…なら仕方ない。」
にとりは左手に着けている
腕輪に触れる。
するとその腕輪から
虹色の光が発せられる。
大妖精
「っ!?何なのあの光…」
チルノ
「二人とも下がって!」
チルノは大妖精とルーミアを
庇うように前に出る。
にとり
「君たちにこれを使うのは
大人げないが…そうも
言っていられる状況では無い!」
チルノ
「やる気か!」
大妖精
「チルノちゃん気をつけて!
あれは…危険だよ!」
チルノ
「任せろ!」
にとりはチルノたちに向かって
1歩ずつ距離を詰めていく。
チルノ
「くらえ!」
チルノは大きめの氷塊を生成し、
にとりに放つが…
にとり
「…」
にとりは片手でそれを受け止める。
ルーミア
「な!?」
チルノ
「おお!?」
チルノたちが驚いているうちに
氷塊は蒸気を出しながら
みるみると小さくなっていく。
大妖精
「ど、どうして…
チルノちゃんの氷が
あんなに早く溶けて…」
チルノ
「ん…!?
おまえ燃えてるぞ!?」
チルノはにとりを指さし、指摘する。
ルーミア
「どうなってる…」
三人が目にしたのは
チルノの言う通り、
にとりの全身が
炎に包まれている姿であった。
チルノ
「おい!そんなんじゃ火傷するぞ!」
にとり
「安心しなよ。
そんなことにはならない。
これは私の大切な仲間の
力を借りているだけさ。」
にとりは全く苦しむ様子は無い。
大妖精
「身体の性質が変化した…?」
虹色の光を放つ腕輪は
気づかない内に鉄の色から
赤色に変色していた。
チルノ
「く…火を使うなんて卑怯だ!」
にとり
「…なんとでも言いなよ。
私にはそんな手加減をしている
余裕は無いんだ…命よりも
大切なものを取り返す為なら…!」
大妖精
「命よりも…大切…?」
にとりの腕から業火が発せられる。
チルノ
「うわ!?」
ルーミア
「ばかなのか!?
本が燃えたらどうする!?」
にとり
「…私がそんなミスをすると…?」
その瞬間、チルノの右手に弾丸が直撃する。
チルノ
「あぐぅ!?」
大妖精
「チルノちゃん!?」
突如走った激痛に思わず悶えるチルノ。
本が落ちる。
にとり
「…今だ!のびーるアーム!」
近くに置いていたにとりのリュックが
突然開き、中から白い手が出る。
『のびーるアーム』
にとりの発明品の一つで、
機械で出来ている大型の手に
精密な動作をさせることが可能。
にとりのリュックに内蔵された
バッテリーから電力を供給し、
フレキシブル構造のケーブルを
支えとして上下にも動作する。
にとりがチルノの右手を撃った瞬間から
本の落ちる軌道を計算し、
落下地点に向かって動作を開始していた。
黒い本がのびーるアームに
向かって落ちていく。
ルーミア
「…!」
その直前にルーミアが本を取り上げた。
にとり
「ち…ルーミア…」
ルーミア
「…間違ってるぞ…
一人でやりとげようなんて…」
にとり
「君たちが加わったところで
何か変わるというのかい?
それに私はまだ彼女を解放する気は無い!」
ルーミア
「…それは…本心なのか?」
にとり
「わかっていないなルーミア。
私個人の願望と幻想郷の平穏。
どちらを優先すべきか
考えればわかることだ。」
にとりはルーミアの腕に銃口を向ける。
大妖精
「チルノちゃん…手が…!」
チルノ
「どうってことないよ大ちゃん…
アタイは無敵だからね…」
先ほどの弾丸は着弾後、
そのまま突き抜けたようだ。
チルノの右手からは血が流れ出ている。
チルノ
「ルーミア…いいよ…
その本をアタイに…」
ルーミア
「出来ない…」
チルノ
「いいから…」
ルーミア
「出来ない!!」
ルーミアの声が周囲にこだまする。
大妖精
「…!」
大妖精が見たものは…涙だった。
ルーミア
「失いたくない…
もう独りは嫌だ…」
チルノ
「ルーミア…」
ルーミア
「バカチルノ!
いつもいつも私のことばかり気にして
自分のことはそっちのけで
そのくせ後先考えずに突っ走って…!」
大妖精
「ルーミアちゃん…」
ルーミア
「おまえがそんな怪我をしたのに
一人にして逃げられるわけない!
少しは考えろバカ!」
チルノは目を見開く。
初めて見たルーミアの涙。
どんなに酷い目にあっても
一切見せたことのなかった顔。
チルノは薄々だが気づいていた。
ルーミアが無愛想にしているのは
きっと失う痛みが怖いからだ。
何がルーミアを
そこまでさせるのかはわからないが、
自分達と出会う前に
何かあったのは間違いない。
それでも聞く勇気が無かった。
チルノ
「…バカって言ったほうがバカなんだぜ…」
チルノはルーミアに
笑みを浮かべながら言い放つ。
ルーミア
「チルノ…?」
チルノ
「安心しなよ。
アタイだってルーミアを置いて
どっかに行ったりしねーからな。
そうしなきゃまた
酷い目に合いそうだし。」
ルーミア
「…う、うるさい!」
ルーミアは思わず赤面する。
それを見た大妖精は嬉しそうに微笑む。
にとり
「…仲間のためか…」
チルノ
「勘違いすんなよ!
アタイたちは仲間じゃない。
『ともだち』だ!」
にとり
「そうか、だけど私は君たちから
本を取り上げなくちゃならない。
私にも大切な『ともだち』が居るんでね。」
にとりは拳銃をしまい、
左腕を横に伸ばす。
すると腕輪が眩い光を放ち、
複数回、金属同士がぶつかる音が鳴り響く。
大妖精
「な、何?」
光が収まった時、
うっすらと影が見えてきた。
にとりの左腕が
にとりの全長以上の巨大な
ロボットアームに変貌しており、
金属と金属の隙間には
虹色の光が走っていた。
チルノ
「うお!?でっけえ腕だ!」
にとり
「こいつは『I.C.C.アームド・Ⅰ』。
君たちの友情ってやつを私が試してやる。
全力でかかってこい!」
ルーミア
「…チルノ…」
チルノ
「へへ…ちょうどいいや…
アタイが最強だって
証明するチャンス到来…!」
大妖精
「チルノちゃん…」
チルノ
「大ちゃん、そこで見てて。
アタイの本当の力を見せてやる!」
チルノは前に出る。
目を瞑り、怪我をしていない方の手に
力を込め始めた。
チルノの周囲に少しずつ氷霧が現れ、
足元の草が凍り始める。
にとり
「…」
その様子を見ていたにとりは、
身体を少し曲げて
左腕のアームを後ろに回し、力を込める。
プシューという音と共に、
アームの後部から煙が噴出し、
排熱を完了させる。
その動作は、チルノへ重撃を繰り出す
予備動作でもあった。
チルノ
「今アタイが出せる全力で…」
大妖精
「チルノちゃんだけじゃないよ。」
チルノ
「…!」
ルーミア
「バカチルノだけじゃ不安だからな…」
チルノ
「へへ…うるさいなぁ…」
チルノの右肩に大妖精、
左肩にルーミアが手を置く。
にとり
「力が増幅している…?」
チルノ
「いくぞ!パーフェクトフリーズ!!」
チルノが叫ぶと同時に
にとりとの間に大量の氷塊が生成される。
にとり
「…!」
にとりがそれを目視した時、
アームからパキパキと
凍てつく音が響いた。
にとり
「ちっ!」
アームが封じられたにとりは
その場を離れ、
一度距離を取ろうとするが、
足が凍り付いていることに気づく。
にとり
「…しまった!?」
チルノ
「くらえ!
これがアタイたちの全力だあああ!」
にとり
「くっ!?」
氷塊が一斉ににとりに向かって突撃する。
爆発と共ににとりの居た場所は
煙に包まれた。
ルーミア
「当たった…」
大妖精
「…」
チルノ
「おっしゃあ!」
喜ぶチルノとは対照的に
大妖精はにとりの姿を探す。
大妖精
「…倒せて…無いかも…」
チルノ
「え?」
大妖精がそう言った直後、
煙の中ににとりの影が映る。
ルーミア
「そう簡単にはいかないようだぞ…」
影は動かない。
ただそこに立っているのみ。
チルノ
「…ゴクリ…」
しばらくすると煙が晴れてきた。
そこには無傷のにとりの姿があった。
チルノ
「な…効いてないのか!?」
にとり
「…見事な技だったよ。
アームド・Ⅰを先に凍結させ、
そこへ私の注意を引かせている
間に足元まで冷気を…チルノ、
私は君を見誤っていたみたいだ。」
チルノ
「よくわかんねーけど
褒められてるのかな?」
大妖精
「にとりさん…たぶん
チルノちゃんはそこまで
考えてないと思いますが…」
ルーミア
「だね。」
にとり
「なるほど…意識的ではないか…」
チルノ
「そ、それよりおまえ!
なんで傷一つないんだ!?」
にとり
「…」
にとりはチルノの疑問に
答えるように腰に付けた装置を
前に突き出す。
その小型の装置は金槌か何かで
強く叩かれたようにへこんでいる。
にとり
「君たちの渾身の一撃は届いたさ。
『ブレイズルミナス』の
発生装置がぶっ壊れる程度にね…」
ルーミア
「…さっきの結界のような光…!」
にとり
「そう、こいつは外界から
流れてきたガラクタの一つでね。
また動くようにしてみたんだ。
まぁ30%の性能も発揮出来てないけど。」
大妖精
「パーフェクトフリーズは
確かに命中しました…
にとりさんに回避する余地も無かった…
つまり…その装置で肩代わりを…」
にとり
「…危ないところだったよ。」
ルーミア
「でも防御はもう出来ない。」
チルノ
「おお!じゃあもう一回…」
チルノが話している途中、
チルノ目掛けて炎の弾が飛んできた。
大妖精
「…!」
それを大妖精が結界を張り、防ぐ。
にとり
「もう一回?何を言っているのかな。」
チルノ
「あ、あぶねー!
アタイに火はだめだろー!?」
にとり
「構っていられるか…」
鈍い音と共に、
にとりが装着していた
アームがバラバラになる。
地面に散乱した部品からは
虹色に輝く煙がもくもくと上がっている。
にとり
「これが最後だ。
今すぐ本を渡してくれ。」
チルノ
「…」
大妖精
「チルノちゃん…」
ルーミア
「チルノ…」
にとり
「…頼む。」
チルノ
「アタイは詳しいことはわかんないけど、
この本から気持ちが溢れ出てるのはわかる。」
にとり
「…いったい何の話だい。」
チルノ
「この本の中で、
ずっと後悔しているんだ。
自分が悪い…友を殺したって。」
にとり
「…でたらめを…」
にとりはチルノの胸元に拳銃の照準を当てる。
チルノ
「きっとこいつは悪いやつじゃないから。
アタイは助けてあげたい。
それにどんなに悪いやつだって
変われないことなんてない!」
にとり
「………」
にとりは引き金に指を掛ける。
大妖精
「チルノちゃん!」
チルノ
「止めないで大ちゃん!
アタイはどうなっても
こいつを守る!」
チルノは本を抱え込みながら
にとりの前に出る。
にとり
「…チルノ、それが君の覚悟なのか?
どうして会ったこともない相手に
そこまでしてやれる?」
チルノ
「そんなもんわからないよ。
アタイはアタイが
やりたいことをやってるだけ。」
にとり
「なら命も惜しまないと。」
チルノ
「…」
にとり
「そうかい、じゃあ悪いけど…」
チルノに向けて弾丸が発射されようとしていた。
大妖精
「やめて!!」
ルーミア
「バカ!避けろ!」
チルノ
「…!」
チルノはその場に留まる。
にとり
「…」
引き金が引かれた。
カチャンという音が周囲に響く。
チルノ
「あ、あれ?」
弾丸が発射されることは無かった。
にとり
「全く…本当に
意味のわからないやつだな君は。」
チルノ
「おまえ…」
にとり
「…わかったよ、私の負けだ。
ここまでしておいてあれだけど…
その本、君に任せてもいいかな?」
チルノ
「…おう!任せとけ!」
大妖精
「助かった…?」
その場に座り込む大妖精。
背中をルーミアが優しく擦る。
ルーミア
「…」
にとり
「君たちに話しておかないとな。
その本について。」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
チルノたちの様子が水面に映っている。
大理石で造られた真っ白な回廊。
通路の傍らに流れる水を
覗き込む人影とその横に浮く光る球体。
「彼女が河城にとりと遭遇したようです。」
右が少々長い緑髪、凛とした出で立ちの
女性が水面に映る光景を確認しながら言葉を発する。
彼女は四季映姫・ヤマザナドゥ。
地獄での裁判を取り仕切る閻魔であり、
幻想郷の死者を担当している。
???
「見えている。
この程度では目覚めぬか。」
映姫に答えるように球体から声が発せられた。
映姫
「彼女は本から何を感じ取っているのでしょうか?」
???
「残留思念。
入るべき身体を持たぬ魂の声だ。」
映姫
「魂の声…REX-0000-09ですか。」
???
「REX-0000-09は完全に身体を失った。
本に自らを封印する際に、
魂を抜き取られたのだよ。」
映姫
「抜き取られた?…いったい誰にでしょうか?」
???
「【災厄】だ。」
映姫
「…【災厄】は私が就任するはるか以前に
地獄に堕とされたと聞きますが。」
???
「アレを留めて置ける場所があるとすれば、
全能の神が創り出した監獄くらいなものだ。」
映姫
「上様、彼女が完全に復活するとなれば…」
???
「何、心配することは無い。
住人が消えるだけだ。」
映姫
「…」
???
「この世界の住人は
質の良い材料でしかない。
我々もその一部だ。」
映姫
「お言葉ですが上様。
生き方を選ぶ権利というものは
ありとあらゆる存在に
あると思うのですが。」
???
「映姫、貴様が言いたいことは理解しよう。
だがこの世界に在る全てが
存在、もしくは生命という概念に
囚われていないとすれば話は変わる。」
映姫
「我々は生命とすら扱われていないと?」
???
「生命ではない。材料なのだよ、永遠に。」
映姫
「…アルス=マグナを成した時、
我々の魂は何処へ向かうのでしょうか。」
???
「神のみぞ知る領域よ。
ヒトも妖も、蹂躙していた者も
されていた者も皆平等に
扱われることになることは間違いない。」
「それは由々しき問題ね。」
映姫と球体が話していたところへ
青長髪に丸い帽子を被った女性が現れる。
紅き瞳を持つ彼女は天人、比那名居天子。
???
「待ちわびたぞ。」
天子
「そんで?今更私たちを招集するなんて
世界が崩壊でもするのかしら?」
映姫
「どうでしょうね。
近いうちにそうなるでしょうが。」
???
「お前には踊ってもらう。
彼女を目覚めさせる材料になるのだ。」
天子
「相変わらずストレートでよろしいことで。
言っとくけど、あんたみたいな
クソババァの言いなりになる気はないから。」
映姫
「口を慎みなさい。」
???
「よい、映姫。
それだけの口を叩けるのだ。
期待以上に応えてくれるのだろうな。」
天子
「ふん…あんたが手出ししなければね。
まぁ、今はしたくても出来ないでしょうけどね。」
???
「する気など無いさ。
優秀な手足が働いているのでな。」
映姫
「上様…」
天子
「そう、新入り。
私は私のやりたいようにやらせてもらうから。
あんたは指くわえて見てなさいよ。」
映姫
「…」
映姫は天子を睨みつける。
???
「お前たちは組織だということを忘れるな。
問題があれば、一族を動かすことになる。」
天子
「…わかってるわよ。」
天子は吐き捨てると一瞬でその場から姿を消す。
映姫
「あのような無法者をなぜ?」
???
「あれは優秀な駒だ。
最大限活かすには
放し飼いにすることが重要なのだよ」
映姫
「また幻想郷を壊しかねませんが。」
???
「あの小娘に出来るのは
せいぜい傷を付ける程度だ。
幻想郷は貴様が思っている以上に頑丈でな。」
映姫
「『遊び場』ということですか…」
???
「そう悲観するな。
我々は元々存在しないものなのだから。」
映姫
「…ですが私は何かを残したい。
このまま名も無き材料として
無になりたくはないですよ。」
???
「それは貴様の自由だ、映姫。
私はその願望を止める気はない。
だが残るかどうかは貴様の頑張り次第だろう。」
映姫
「上様、私は…」
???
「これから貴様は下るだろう。
その後はそんな情けない顔をするな、
素顔を見せて良いのは私だけだ。」
映姫
「…はい。」
???
「よろしい、引き続き動向を監視せよ。
干渉、報告は貴様の一存で決めるといい。」
映姫
「お任せください。」
球体は散り散りになって消え去る。
映姫
「…命の重さを…
あなたに思い出させたい…」
映姫は拳を握りしめ、その場を後にする。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
チルノ
「じゃあこの前のすっげーのは
そいつがやったことなのか。」
大妖精
「復讐のために…ですか。」
にとり
「母親のような存在を
目の前で殺されたからね。
気に触れたのかもしれない。」
チルノ
「アタイ細かいことは
よくわかんねーけど、
そいつはにとりの
『ともだち』なんだろ?」
にとり
「どうかな、
私がそう思っていただけで、
彼女のことは
何一つ理解出来てなかった。
『ともだち』の資格なんて…」
チルノ
「資格はあるよ。」
にとり
「無いさ…私がもっと
わかっていれば、
彼女が思い詰めることも無かった。
それに、私は彼女を見捨てたんだ。
人間たちに連れていかれる彼女を。」
大妖精
「にとりさん…
それはあなたに逃げてと
彼女が訴えていたんでしょう?」
にとり
「本当に『ともだち』なら
迷わず助けにいくだろう。
君たちのような素晴らしい関係は
私には築けなかった。
それだけのことさ…」
にとりは項垂れ、
自分の両手を見ながら唇を噛み締める。
にとり
「前からそうなんだ。
私は臆病で勇気が無い。
ずっとずっとそうしてきて、
たくさんのものを失った。
チャンスならいくらでもあったのに…」
ルーミア
「…」
大妖精
「にとりさん、勇気と蛮勇は
異なるものですよ…
そういう選択を迫られて
完璧な判断を出来る者なんて
そうそう居ないですし…」
にとり
「…仮にそうだとしても、
残ったのは私が彼女を
見捨てたという結果だけだ。」
チルノ
「おまえ結構くだらないやつだなー」
大妖精
「チルノちゃん!」
にとり
「…いいんだ、
全くもってその通りだからね…」
チルノ
「『ともだち』の資格、
とっくに持ってんじゃん。」
にとり
「なんだって?」
チルノ
「そんなに悩むくらい
そいつのこと考えてるんだからさ。
『ともだち』じゃないやつは
にとりみたいに悩んだりしないよ。」
にとり
「…」
チルノ
「あとそいつもにとりのこと
『ともだち』だと思ってるはず。」
大妖精
「そうですよ! にとりさんを逃がしたのは
にとりさんのことが大切だからです!
自分から本に封印されたのだって…」
にとり
「まるで知っているかのような
口振りじゃないか…
私の話だけでわかるっていうのかい?」
大妖精
「いえ…わかりません。
でも、さっきのチルノちゃんが言っていた
話で…そう思ったんです。」
ルーミア
「後悔しているって話か。」
チルノ
「なんか似てるね。そいつとにとりは。」
にとり
「似ている…? はは、まさか…」
大妖精
「とにかく、お互いに自分が悪いとか…
そういうのは無しにしましょうよ。」
チルノ
「賛成! くよくよしてたら
守りたいもんも守れないしな!」
ルーミア
「バカが珍しく良いこと言ったぞ。」
チルノ
「んだとこのやろー!」
にとり
「それもそうか…
わかった、善処するよ。」
大妖精
「私に出来ることがあったら
言ってください。役に立てるか
わからないけど…協力しますよ!」
チルノ
「アタイも忘れないでね!」
ルーミア
「同意…」
にとり
「…君たち、あまりにもお人好し過ぎるな。
そんなんじゃ利用されて損するよ?」
チルノ
「アタイはさいきょーだからな!
利用できるもんならしてみろって感じ。」
大妖精
「そこは同感ですけど…」
ルーミア
「利用されるのはチルノだけだから
心配はしなくていい。」
にとり
「わかった、頼らせてもらうよ。」
チルノ
「ほんとか!?」
にとり
「君たちを見てると本当に
悩んでいるのがバカらしく思えてきてね。
おかげで元気出たよ。」
大妖精
「あはは…それは良かったです。」
チルノ
「ん? なんか馬鹿にされてる気がする…」
ルーミア
「手立ては考えてあるのか?」
にとり
「今のところは無いな。」
チルノ
「そうだ!アタイの錬金術で
どうにかなるかも!」
にとり
「錬金術ね…私からすると
不思議かつ謎が多いけど…」
大妖精
「チルノちゃんどうするつもりなの?」
チルノ
「本をあのかまの中に
入れちゃうってのはどうかな?」
ルーミア
「………」
にとり
「…ん?」
大妖精
「あ、あはは…
聞かなかったことにしてください…」
にとりに本を任された3人は
一度、霧雨魔法店に戻り、
魔理沙に事情を説明することとなった。
説明を終えると3人は
緊張が解けたのか
はたまた素材集めの疲れからか
たちまち眠りについた。
チルノ
「…あれ?」
チルノは暗闇に立っていた。
周囲は黒一色。
光を発しているのか、
自身の身体は視認出来る。
チルノ
「アタイ、寝てたんだけどな…
もしかして夢の中かー?」
夢の世界にやってきたのだと
思い込み少し嬉しそうにしながら、
チルノは前へと歩き出す。
もちろんどこへ続いているかもわからない。
しばらくすると
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
大妖精
「お願い…やめて…」
チルノ
「大ちゃん?」
確かに大妖精の声。
チルノ
「大ちゃんどこ!?」
慌てて周囲を見回す。
不思議なことにどちらから声が
聞こえてきたのかわからない。
音を反射する何かがある可能性がある。
チルノ
「大ちゃん…大ちゃん!」
その時、
大妖精
「嫌…死にたくない…
私まだ死にたくないよ!!」
チルノ
「!?」
大妖精の悲痛な叫びが聞こえてきた。
大妖精
「お願いします!
もうやめてください!
これ以上は…やめて…」
チルノ
「おい!誰だか知らないけど
大ちゃんに手出ししたら
ただじゃおかねーぞ!!」
精一杯声を張り上げて、
姿の見えない何かに怒号をあげる。
しかし…
大妖精
「いやぁああああ!!」
大妖精の悲鳴がこだました。
チルノ
「…大ちゃん…?」
チルノは顔面蒼白になる。
チルノ
「大ちゃんどうしたの!?」
返事が無い。
チルノ
「大ちゃん!!」
思わず飛び起きる。
チルノ
「はぁ…はぁ…!」
息を荒げながら、周囲を見渡す。
隣には大妖精が眠っていた。
チルノ
「………大ちゃん…」
大妖精を見て安堵の息を漏らす。
チルノ
「…」
チルノは大妖精の傍に再び横になり、
大妖精の身体をそっと抱き締めた。
チルノ
「大ちゃん…どこにもいかないでね…」
大妖精
「ずっと一緒だよ…」
チルノ
「!?」
大妖精は起きていた。
目は瞑ったままだが、
震えるチルノを宥めるように
後頭部を撫でる。
チルノ
「だ、大ちゃ…」
恥ずかしさのあまり
チルノは顔を真っ赤にする。
大妖精
「なぁに?」
チルノ
「アタイ…怖い夢見た…」
大妖精
「うん。」
チルノ
「大ちゃんが…」
大妖精
「ここにいるよ…
チルノちゃんの傍にいるよ…」
大妖精は目を瞑ったまま
落ち着いた声で話す。
チルノ
「大ちゃん…」
疲れていたのかチルノは安心すると
大妖精の腕の中でそのまま眠ってしまった。
大妖精
「…」
チルノが眠ったことを
把握した大妖精は目を開く。
するとチルノのリボンが
光っていることに気づいた。
しかし1秒にも満たない内に
光は失われてしまう。
大妖精
(あのお方の気配…ううん…気のせい…かな…)
大妖精もそのまま眠りについた。
翌朝。
霧雨魔法店に金髪の女性が訪ねてきた。
青のノースリーブとロングスカートを
身に纏ったその姿はさながら人形を
彷彿とさせる容姿端麗な女性。
彼女はアリス・マーガトロイド。
魔理沙と同じく魔法使いであり、
チルノたちとも面識がある。
アリスがドアを優しくノックすると
魔理沙
「はいよー、おっ!
来てくれたんだなアリス!」
魔理沙が出迎える。
アリス
「あなたの頼みだもの。
ただ私がチルノちゃんの師匠って…
パクリにならないか心配だわ…」
魔理沙
「そいつは私たちが
気にすることじゃないぜ。
なるようにしかならねえ。」
階段で二階上がる二人は
他愛もない話をしながら
チルノたちのもとへ向かう。
魔理沙
「おーい、心強い助っ人を連れてきたぜ!」
チルノたちは錬金術の勉強をやめて
部屋に入ってきた魔理沙に注目する。
チルノ
「助っ人?」
そこへアリスが部屋に入ってきた。
大妖精
「アリスさん!」
アリス
「あら、みんな元気そうで何よりだわ。」
チルノ
「よ!アリスも元気そうだな!」
大妖精
「ちょ…チルノちゃん失礼…」
アリス
「ふふ、大丈夫よ大妖精ちゃん。」
大妖精
「しかし…」
アリス
「堅苦しいのは無しにしましょう。
好きに呼んでいいわよ。」
ルーミア
「マーガレットは?」
アリス
「だめです。」
チルノ
「マーガリン。」
アリス
「そういうことで
言ったわけじゃないのよ?」
大妖精
「す、すいません…」
チルノ
「じゃあ今まで通り
アリスでいいかなー?
アタイのことはチルノでいいぜ!」
アリス
「全然OKよ。」
アリスは魔法使い。
錬金術士ではない。
だが錬金術に関する知識は
この時点で錬金術士と言っても
差し支えないほど有していた。
アリス
「これからあなたたちに
出来る限り錬金術について
教えていこうと思う。」
それはもちろん錬金術に
触れる機会が多かったわけでも
魔法使いだからだというわけでも無かった。
数日前、
アリスは魔理沙から相談を受けていた。
アリス
「錬金術?」
魔理沙
「ああ、あの難解な術さ。」
アリス
「どうしたのいきなり。」
魔理沙
「チルノがそれをものにしたいって
言ってきてよ。勢いでやらせてみて
うちに居候までさせちまってるんだが…」
アリス
「らしくないわね。
そんなに押しに弱かったかしら?」
魔理沙
「そんなんじゃねえさ。
あいつが持ってきた本があってな。
パチュリーのとこのじゃねえらしい。」
アリス
「外界から流れ着いた?」
魔理沙
「さぁな…一切が不明…
だけどその本を一目見た時に
『こいつはとんでもない代物だ』って
感じちまったんだ。」
アリス
「ふぅーん?」
アリスはマドラーでカップに注がれた
茶をかき混ぜながら目を瞑る。
魔理沙
「霊気が溢れ出していた。」
アリス
「…妖気じゃなくて?」
魔理沙
「ああ、感覚的には霊夢に似てやがる。」
アリス
「…霊夢に…そう…」
魔理沙
「ちょいと借りて中を
見させてもらったんだが
小さい絵がずらーっと並んでてよ…」
アリス
「そもそも読ませる気が無い…
魔法の形跡は?」
魔理沙
「いいや魔法では無かったな。
ただ絵が印象的だったぜ。」
アリス
「絵?」
魔理沙
「ああ、おそらくあれは
アルス=マグナについて
書かれている。」
アリス
「まさか、賢者の石の
製造方法については
完全に失われているはずじゃない。」
魔理沙
「ああ、だいたい賢者の石なんて
伝説上の物質だしな。
疑似的に作ったとしても
なんでも願いが叶うなんてもんを
作っちまった暁には
『あいつ』が黙ってねえさ。」
アリス
「そうね…つまり
挑戦した誰かが残した遺書…
ってことかしら?」
魔理沙
「どうだろうな。
パチュリーも心当たりが
無かったらしい。」
アリス
「その子たちを居座らせているのは
手元に置いておくためって?
あなたらしくないじゃない。
異変とドタバタ好きでしょ?」
魔理沙
「おいおい確かに賑やかなのは好きだが
今回みたいな気色悪いのは勘弁だぜ?」
アリス
「いつからそんな臆病になったのかしら…」
アリスはテーブルに肘をついて
空を仰ぎ見る。
魔理沙
「いつからかって?
へっ…そいつはつい最近さ。
わかっちまったのさ。
考えなしに突っ込むのは
愚か者のすることだってな…」
アリス
「…どうかしら。
あなたのそういうところが
私にはとても美しく
見えたのだけれど。」
魔理沙
「すまねぇな。
私にはそうは思えなかったぜ…」
魔理沙の神妙な面持ちを見て
アリスは魔理沙の心に巣食った
恐怖を感じ取った。
アリス
(この前の異変、魔理沙も
気がつかないうちに操られていた…
無理も無いわね…こうなるのは…)
異変というものに関して
慎重になるのは至って自然。
本人の話によれば
箒に跨がり飛んでいたはずが
紅魔館の前で倒れていたとか。
魔理沙
「それでよ…あいつらに錬金術を…」
アリス
「OKよ。」
魔理沙
「へ…いいのか?」
アリス
「私に任せておきなさい。
魔理沙、あなたは休んでいて。」
魔理沙
「アリス…」
アリス
「あなたの背中だけ見るのは、
もうこりごりなのよ。」
魔理沙
「…すまねぇ…」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
チルノ、大妖精、ルーミアの三人は
森の中で錬金術に使用する
素材を収集していた。
チルノ
「へっへー!
アタイは天才だから一日で
集まりそうだぜ!」
ルーミア
「調子に乗ると
素材が出なくなるぞ…」
大妖精
「あはは…でも
今日中に集まるといいね。」
チルノ
「集まるよ、きっと!」
和気藹々と素材収集に励むチルノたち。
場所を移動しようとしたその時、
目の前に影が立ちはだかった。
チルノ
「ん? なんだおまえ。」
大妖精
「…!」
大妖精は思わず息を呑む。
そこに居たのは四季映姫と
声を発する謎の球体と
言葉を交わしていた女性。
比那名居天子であった。
天子
「やっと見つけた…」
帽子を深く被り、
表情はよく見えない。
だが、紅く煌めく鋭い眼光は
チルノが持つ黒い本を捉えていた。
大妖精
「天人…!」
天界に住まうとされる者たち。
天子は天界からここへ降りてきた。
チルノ
「アタイたちは素材を
集めるので忙しいんだ。」
天子
「錬金術のために?」
チルノ
「おう! そうそう!」
チルノを返事を聞くや否や、
天子は軽く嘲笑う。
天子
「あんたがねぇ…身に過ぎる。」
ルーミア
「…何が目的…?」
天子
「その本。
私に渡してくれないかしら?」
チルノ
「…!」
天子の言葉を聞きチルノは
本を背に隠す。
天子
「あら、逆らうつもり?」
チルノ
「どうするつもりだ?」
天子
「もちろん封印するのよ。
二度とここには顕現できないように。」
ルーミア
「封じられたら、
中の妖怪はどうなる…」
天子
「そんなの決まっているじゃない?」
チルノ
「絶対にダメだ…
お前には渡せない。」
天子に反抗的な姿勢のチルノ。
その様子を見た天子は
憐れみの表情を浮かべ、
チルノを見下ろす。
天子
「そいつが本から出てきた時に
あんたたちで対処出来るかしらね?」
大妖精
「…っ…」
チルノ
「出来るさ!
アタイはサイキョーだからな!」
天子
「…ふぅん…ま、いいわ。
今は見逃してあげる。
今度会った時までに
覚悟を決めておくことね。」
天子はそう言い放つと
突然姿を消してしまう。
チルノ
「な…どこ行った!?」
ルーミア
「消えた…居なくなったぞ。」
大妖精
「………」
天子の姿を探すチルノとルーミアを余所に
大妖精は俯いて手を強く握りしめていた。
天子
(あの本さえ燃やしてしまえれば…)
チルノたちと距離を置いた天子、
その足で人里の方へ向かう。
天子
(大丈夫、私は正しいことをやり遂げる。
恨まれようが知ったこっちゃない。
あいつらは自分がどれだけ
悪に染まろうとも意志を貫いた。
私だって成し遂げてやる…)
そこにはチルノたちに向けていたものとは
全くの別物とも言える、酷く弱弱しくも
悲哀に満ちた顔があった。
to be continued ~
皆様お疲れ様です。
前のあとがきで一人に焦点当てていくって言ってたのにガバガバなAlmaです(一応今回はチルノなんですけど…)
【動画版を視聴の皆様】
失踪した雰囲気になっており本当に申し訳ございません。多忙ながら戦闘画面・会話シーンの改良やモデリングをちまちまとやっております…正直なところ、その①からその⑤まで、低クオリティな作品をお見せしてしまったことに罪悪感がございます。その点もお詫び申し上げます…
その⑥以降は本当に納得出来る内容をお届けしたいのでいつお出し出来るか見当がついておりません。なお、今はMMD修行の一環で番外編に力を入れてます。ぶっちゃけ失踪したことにしてもらったほうが気が楽かもしれません。すぐに出せるわけでもないのに制作してる姿ばかり見せるのは広告者様や視聴者様に失礼だと思いますし。
こちらのハーメルン版はその補填という位置で捉えてくださればと思います。ここまで読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
以下、主要キャラ3人のちょっとした解説。
【チルノについて】
本作のチルノはバカな方です。妖精ですので…ただ錬金術に関しては才能があるように見えます(リボンが関係)。魔理沙の喋り方を遊び感覚で真似してる感じを出してます。子供っぽくてかわいい感じを出したい…
【大妖精について】
本作の大ちゃんはブレインです。実は頭がチルノより良い。チルノを傍でサポートしてくれる心強い存在として書いています。また洞察力や状況把握能力が高く、チルノやルーミアでは気づかないことに気づいたりします。シナリオ的に「頼れるお姉さんだけどどこか掴みどころがない」感じを出したいですね。
【ルーミアについて】
本作のルーミアは原作に沿ったしゃべり方は薄めです。ただ、たまに出てきます(シリアスな場面になると多め)。Almaの妄想で人格が形成されているので違和感を覚える方も多いと思いますが、ご容赦くださいませ。ほのかなツンデレです。