チルノ&大ちゃんのアトリエ ~目覚めし幻想の錬金術士~   作:すくすくAlma

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今回の内容はその④前半です。


EP3 失ったつばさ

チルノ

「むう、なんだったんだあいつ…」

 

天子から本を差し出すように言われたチルノたち。

 

自分たちでは本に封じ込まれている妖怪に

 

対処出来ないと言われた。

 

ルーミア

「チルノ、やっぱり

 やめといたほうがいい…」

 

チルノ

「ん? 何を?」

 

ルーミア

「その本を持ち続けていたら

 痛い目に合う可能性がある。」

 

チルノ

「そんなのわかってる。

 でもあいつ、この本を封じるって…」

 

ルーミア

「この前起きた異変を覚えてないのか?」

 

チルノ

「異変…?

 あの空がばーっとなったやつか?」

 

それは「裂空異変」のことだ。

 

当時は住民の中でも動揺する者も居たが、

 

博麗の巫女を含む幻想郷を管理する者たちが

 

調査した所、異変発生後に裂けていた空は

 

元通りになり、色も戻ったこと。

 

裂けた際に落下してきた破片は

 

謎の物質で出来ていたことが判明。

 

幻想郷を外界から隔離する博麗大結界には

 

異常は見られず、視覚的なフェイクであったことが

 

幻想郷で一時的に話題となった。

 

 

 

そしてチルノの持つ本にその黒幕が

 

封じ込まれている。

 

ルーミア

「あの異変を引き起こした妖怪…

 私たちにそれが対処出来るのか…

 あの天人の言うことも

 でたらめな話じゃない。」

 

チルノ

「おかしい。」

 

ルーミア

「…?」

 

チルノ

「アタイだってあれくらいの

 異変は起こせちゃうし、

 アタイくらいの妖怪だって

 幻想郷にはいっぱい居るじゃんか。」

 

ルーミア

(そういえば…こいつはバカだった…)

 

ルーミアは心の底でため息をついた。

 

チルノ

「こいつだけ…

 封印されなきゃいけない。

 そんなのアタイは納得いかない。」

 

しかしチルノが

言わんとしていることを察し、

彼女の言葉に耳を傾け始める。

 

ルーミア

「チルノ…」

 

チルノ

「ルーミアならわかるだろ?」

 

ルーミア

「…」

 

ルーミアは黙って頷いたが

 

何か言いたげな表情を浮かべながら

 

チルノから視線を逸らす。

 

チルノ

「…ん? 大ちゃん?」

 

大妖精が呆然としている様子が

 

チルノの目に入った。

 

大妖精

「…あの人の言う通りかも…」

 

チルノ

「え?」

 

大妖精

「あ、何でもないよ!

 それより素材を集めないと。」

 

チルノ

「お、そういえばそうだった!

 おいルーミア! アタイと勝負だぜ!」

 

ルーミア

「全く、バカには付き合ってられないぞ。」

 

駆け出すチルノを追うルーミア。

 

2人の背中を見ながら

 

大妖精は大きくため息をついた。

 

 

 

 

 

 

3人は素材集めを終え、

 

霧雨魔法店の2階で

 

アリスに指導を受けていた。

 

アリス

「ちょっとチルノ?

 それはまだ後よ。

 覚えられないなら

 メモしておきなさいって

 さっき言ったでしょう?」

 

チルノ

「ええ?まじ?」

 

大妖精

「チルノちゃんこれ読んで…」

 

チルノ

「お! さすが大ちゃん!」

 

錬金術の工程をチルノは

 

上手く飲み込めていなかったが

 

大妖精とルーミアが創り出した

 

調合品と比較して

 

チルノの創り出す物は高品質で

 

完成度が高かった。

 

魔理沙

「どうだ?」

 

アリス

「あなたの見込み通り、

 チルノは才能がありそうよ。

 でも大ちゃんが居ないと

 発揮は出来なさそうね。」

 

魔理沙

「そりゃ…あの2人で

 やっと一人前って感じだしな。」

 

アリス

「3人で…でしょ?

 とはいえ…いつまでもそれじゃ困るわよ…」

 

アリスはため息をつくが

 

落胆ではなくどこか嬉しそうだ。

 

魔理沙

「楽しいのか?」

 

アリス

「…ええ。」

 

魔理沙

「私もさ、あいつらを見てると、

 なぜかわくわくしてきやがる。」

 

アリス

「…羨ましいのかもしれないわね。」

 

魔理沙

「…?」

 

アリス

「ああやって余計なことを

 考えずに友達と和気藹々としているのが…」

 

魔理沙

「…へへ…私達じゃ不満か?」

 

アリス

「そんなことないわ。

 ただのないものねだりよ。」

 

アリスは窓から

 

落ちてゆく夕陽を眺め微笑む。

 

アリス

「もちろん、私の思い出も

 あの子たちの思い出に

 劣っているとは言い難い

 素晴らしいものよ。

 ただ優れているとも言えないわ。」

 

魔理沙

「一番大切なのは

 それで満足しないことだぜ。」

 

アリス

「魔理沙…」

 

魔理沙

「自分を無理に納得させるのは簡単さ

 だがより良い時を過ごそう。

 そう思い続ける事は案外難しいことだ。」

 

アリス

「…そうね…理想は追い求めるほど

 遠くなってゆくものだわ。」

 

魔理沙

「あいつらと一緒に錬金術を

 学ぶのが楽しいなら、

 とことんやってみたらどうだ?」

 

アリス

「…」

 

 

 

日が落ち辺りが暗くなってきた頃。

 

アリス

「みんなお疲れ様、またね。」

 

大妖精

「ありがとうございました!」

 

チルノ

「またいつでもこいよー!」

 

ルーミア

「来てもらう側だぞバカ…」

 

アリスは帰路につく。

 

魔理沙

「…アリス…」

 

チルノ達が屋内に戻っていく中、

 

魔理沙はアリスの背中が

 

見えなくなるまでその場に留まり続けていた。

 

魔理沙

「…お前だけじゃねぇさ…」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

後日、チルノ達が錬金術の特訓を

 

行っているウワサを聞き、

 

パチュリーが訪ねてきた。

 

パチュリー

「こんにちは、やってるかしら?」

 

チルノ

「ぱっちゅりー!」

 

大妖精

「パチュリーさん! こんにちは。

 お身体の方は大丈夫なんですか?」

 

パチュリー

「ええ、これくらい大したことないわ。」

 

どう見ても疲れているパチュリーの様子を見て

 

大妖精は心配していたが、

 

敢えてそれ以上の追求はしない。

 

パチュリー

(ここに来るまで何度も休憩したけど…)

 

パチュリーは身体を動かすことが苦手である。

 

紅魔館と霧雨魔法店はそこまで

 

距離があるわけではないのだが、

 

浮遊移動しているとはいえ、

 

パチュリーとしては相当な疲労を伴う。

 

パチュリー

「今は何をしているのかしら?」

 

チルノ

「大ちゃんに勉強してもらってる!」

 

パチュリー

「あらそうなの…うん?」

 

大妖精

「えっと…チルノちゃんは覚えるのが

 少し苦…得意じゃないんですよ。」

 

パチュリー

「つまり…手順はあなたに

 全部任せっきりだということかしら…?」

 

大妖精

「あはは…そうなりますね…」

 

パチュリー

「困ったものね…

 私も見ていていいかしら?」

 

大妖精

「もちろん!

 せっかく来てくれたので

 ぜひ見ていってください!」

 

パチュリーはチルノと大妖精の

 

錬金術を見学することにした。

 

チルノ

「あ、そうだ!

 ぱっちゅりー何か作って欲しくない?」

 

パチュリー

「あら…そうね、じゃあ

 試作型治癒剤でも作ってもらおうかしら。」

 

大妖精

「え? それでいいんですか?」

 

パチュリー

「ええ、今の私には必要なのよ。」

 

チルノ

「おっしゃあ任せとけ!」

 

意気揚々と作業に取り掛かろうとするチルノだが

 

釜の前で動きが止まってしまう。

 

チルノ

「………大ちゃん、

 それどうやって作るんだっけ。」

 

大妖精

「…」

 

パチュリー

「…」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

天子

「…」

 

天子は人里のはずれにある

 

少々大きめの墓の前に居た。

 

墓の向こうには立派な桜の木が

 

まるで天子を見下ろすような顔を見せる。

 

 

 

「ほう、余所者がここを訪れるとは。」

 

墓とは反対の人里の方から

 

年老いた男性の声が聞こえてきた。

 

天子

「…悪いかしら?」

 

天子は振り向き、声の主を睨む。

 

そこには木製の車椅子に

 

腰掛けた老人が居た。

 

その老人は隻腕隻脚。

 

しばらくそれで過ごしてきたからか

 

年老いているにも関わらず

 

片方しかないその腕と脚は

 

若々しく、厚い筋肉に覆われていた。

 

老人

「ほっほっ…まさか…

 ありがたいのですよ。」

 

天子

「ここに埋まってるわけじゃないでしょう。」

 

老人

「ええ、誰が誰の遺体か…

 当時は酷い有様でしたからなぁ。」

 

老人は片腕で懸命に車輪を動かし、

 

天子の隣で止まる。

 

天子

「私は弔い目的で

 来たわけじゃないわ。

 勘違いしないことね。」

 

老人

「…わかっていますとも。

 あのお方の命で降りられたのですな。」

 

天子

「…!」

 

天子は老人と距離を取る。

 

天子

「あんた…やっぱりまだ

 繋がってるみたいね。」

 

老人

「そう慌てることはありません。

 もう縁などありませんからな。」

 

天子

「…河童たちがここへ侵攻する前夜…

 あいつらの発明品が人里側に送られた。

 あんたはその受け取り手だったはずよね。」

 

老人

「いかにも、おかげ様で

 こちらも無事に人里を

 守り切ることが出来たのです。」

 

天子

「ほざきなさい。」

 

老人

「いえいえ、

 孫を守らねばならなかったもので。」

 

天子

「孫が知ったらどう思うかしらね。」

 

老人

「自らを…大切なるものを

 守るために足掻くのは

 ヒトに限ったことではありませぬ。

 天人であるあなたも

 そのことは重々承知では?」

 

天子

「…嫌味ったらしいジジィね。

 それで妖怪を殺すことが

 正当化できると本気で思ってるわけ?」

 

老人

「正当化する気などございませんよ。

 ただ、そう自身を納得させるしか

 ありますまい…この狂った世界では…」

 

天子

「………そうね、私たちはただただ

 決まった役割(ロール)

 演じさせられている…

 人形…いえ、ただの材料なのよ。」

 

老人

「人形…ですか…

 果たしてそのような扱いは

 されているのですかな。」

 

天子

「さぁね…ただ1つ言えることは

 それを良しとしないヤツが

 居るってことよ。」

 

老人

「ほっほっ

 それは困りますなぁ。

 あなたがどうにか

 してくださるのですかな?」

 

天子

「そういう時ばっかり

 頼ってくるんじゃないわよジジィ。

 自分の身は自分で守りなさい。」

 

天子は老人を置いてその場を後にしようとする。

 

老人

「おや、生になど興味はございません。

 孫が何も知らず、幸せに生きている。

 それこそが唯一の願いです。」

 

天子は一度立ち止まる。

 

天子

「…人形の私たちには

 そんな願いを抱くことすら

 おこがましいのかもしれないわ。」

 

老人

「…あのお方は、

 あなたが思うほど

 情の無い化け物なのでしょうか?」

 

天子

「私にはわからない。

 どれだけ長く…

 どれだけ一緒に過ごしても

 ちっとも理解なんて出来なかった。」

 

そのまま老人に背を向けたまま

 

天子は人里の方へ去って行った。

 

 

 

老人

「…全く…見た目以上にお若いですなぁ…」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

チルノ

「お、おおう!?

 あれ!? なんか違うのになっちゃった!?」

 

大妖精

「そんな…手順に間違いは無かったのに…」

 

パチュリー

「………」

 

パチュリーは出来上がった調合品を

 

手に取りながら興味深そうに観察している。

 

チルノ

「ぱっちゅりーごめん…

 言ってたやつ作れなかった…」

 

パチュリー

「いいえ、まだわからないわよ。」

 

チルノ

「え?」

 

パチュリー

「構造の変異…かもしれないわ。」

 

チルノ

「こう…なんだって?」

 

パチュリー

「錬金術で稀に発生する現象なのよ。

 本当に稀なのだけれど、

 レシピ通りに手順を踏んでも

 全く異なる性質のものが

 生み出されることがある。」

 

大妖精

「つまり失敗ですか…?」

 

パチュリー

「それを確かめてあげるわ。」

 

パチュリーは出来上がった

 

薬のようなものを服用する。

 

パチュリー

「むきゅう!?」

 

大妖精

「パチュリーさん!?」

 

突然、膝をついたパチュリー。

 

チルノと大妖精は困惑していたが、

 

パチュリーの顔には笑みが浮かび上がる。

 

パチュリー

「これは…素晴らしい…」

 

チルノ

「ぱっちゅりー…?」

 

パチュリー

「大成功よチルノ!」

 

心配してかがみこむチルノの肩を

 

パチュリーががっちりと掴む、

 

チルノ

「おわぁ!?」

 

パチュリー

「すごい…身体が滅茶苦茶軽いわ!」

 

先ほどとは比べ物にならないほど

 

元気になったパチュリーはその場で飛び跳ねる。

 

大妖精

「…せ、成功…なのかな?」

 

チルノ

「成功! やったぁ!」

 

パチュリー

「ありがとうチルノ、おかげさまで

 身体が若返ったようだわ。

 こんな体験は初めてよ…!」

 

チルノ

「よっしゃ! やっぱりアタイったら天才ね!」

 

大妖精

「あはは…良かった…」

 

それからしばらくパチュリーは興奮していたが

 

落ち着くとチルノの錬金術に興味が湧いたらしく、

 

素材の収集などを手伝ってくれることになった。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

にとり

「本を読んでもらう?

 いったい誰に…」

 

大妖精

「はい、パチュリーさんでさえ

 わからなかったのですが…」

 

チルノ

「それで今から本屋に行く!」

 

魔理沙

「小鈴か、確かにあいつなら

 どうにかなるかもな!」

 

チルノ

「我ながらナイスアイデアだぜ。」

 

大妖精

「でもチルノちゃん、

 またあの天人が来るかも…」

 

チルノ

「大丈夫だって!

 あんな奴アタイが倒してやる!」

 

魔理沙

「天人…まさか天子か?」

 

チルノ

「そうそう!

 本をよこせー!

 とか言ってきたんだぜ!」

 

魔理沙

「そうか…」

 

魔理沙の脳内では一つの仮説が

 

組み立てられていた。

 

比那名居天子…

 

血の気が多く度々騒ぎを起こすことがある

 

幻想郷の住民たちの中でも

 

特に問題児とされている1人だ。

 

天界の住人である天子だが

 

地上に降りてきては尊大な態度で

 

何かやらかすのはお約束であった。

 

 

 

魔理沙

(…この本を利用して

 何か起こそうって魂胆か…)

 

魔理沙にとって、それだけならば良かった。

 

ただの異変ならば、

 

いつも通り、面倒事ならば良かったのだ。

 

しかし脳裏によぎってしまう。

 

霊夢が心の底から

 

憤りを露にしていた姿が…

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

異変は嫌いじゃない。

 

魔理沙

「おい霊夢!

 また妖怪が面倒起こしたみたいだぜ!」

 

霊夢

「…あっそ、あんたが退治しといてよ。」

 

魔理沙

「おいおいお前それでも博麗の巫女なのか?」

 

霊夢

「うっさいわね、好きでしょ? 譲るわよ。」

 

魔理沙

「相変わらずだなー」

 

何かにつけて異変の時は騒いでいた。

 

そんな感じで良かったんだ。

 

 

 

魔理沙

「…う…む?」

 

空が裂ける異変が起きた日、

 

箒で空を飛んでいた、

 

私は気がつくと紅魔館の門前で

 

地面に寝そべっていた。

 

咲夜

「起きたようね。」

 

白銀の髪を持つメイド…

 

紅魔館のメイド長、十六夜咲夜だ。

 

魔理沙

「…咲夜…?

 こりゃいったいどういうことだ?」

 

咲夜

「あなた、うちの館で暴れたのよ。」

 

魔理沙

「は? 確かにここには向かってたが

 暴れた記憶なんか無いぜ?」

 

気になって辺りを見渡してみると

 

隣に霊夢が寝かされており、

 

近くでいくつかの人影が集まって

 

話をしていた。

 

魔理沙

「くそっ…痛ぇ…」

 

頭痛が襲ってきたもので

 

側頭部を手で抑える。

 

どうやら話をしているのは

 

河城にとり、藤原妹紅、八雲紫のようだ。

 

白髪の長髪に紅い瞳の女性が藤原妹紅。

 

カッターシャツにサスペンダーで

 

赤いズボンを吊るという

 

特徴的な服装をしている。

 

炎を操る妖術を使用できる。

 

とある経緯で不死身となっているが

 

一応元人間である。

 

金髪のドレス姿の女性が八雲紫。

 

妖怪でありながら賢者と呼ばれ、

 

外界から幻想郷を隔離することを画策し、

 

実行に移した経歴がある。

 

あまり接点が無い連中が

 

そこには集まっていた。

 

一緒に居る姿を見るのは

 

初めてかもしれない。

 

にとり

「あ! 魔理沙! 起きたんだね。」

 

魔理沙

「おいにとり…いったいこれは…」

 

にとり

「異変が片付いた…」

 

魔理沙

「…まじかよ…私は何してたんだ…」

 

妹紅

「お前さんは操られてたのさ。

 にとりの親友にな。」

 

魔理沙

「そんな馬鹿な話が…霊夢もなのか?」

 

「ええ、ただ霊夢だけは

 また違った者に操られていたようね。

 いえ…乗っ取られていたと言うのが

 正しいのかしら…」

 

にとり

「え、河水の他に誰が…」

 

「それは………わからないわ。」

 

霊夢を見る。

 

どうやら眠っているようだが

 

目を覚ますのだろうか。

 

 

 

魔理沙はにとり達から事情を聞き、

 

混乱する中、情報を整理する。

 

レミリアと霊夢と共に自分も

 

操られていたため、

 

紅魔館でにとり達と戦うことになり

 

気絶させられる形で敗北。

 

気がつくまでの間に

 

黒幕は無事退治され、

 

空は元に戻り、

 

異変は解決したとのこと。

 

魔理沙

「…」

 

今まで感じたことのない不安感に駆られ、

 

どうにも落ち着かない。

 

魔理沙

「私やレミリアはともかく霊夢まで…」

 

博麗の巫女が操られる…?

 

霊夢にそういった術は

 

効くはずもない。

 

結界に弾かれてしまうからだ。

 

どれほど強力かつ精密な妖術を掛ければ

 

そんなことが出来るのだろうか。

 

しかも一切異変で

 

表舞台に出てきていないと聞く…

 

魔理沙

「っ…」

 

不気味だった。

 

悪寒が身体に走った。

 

意志に関係無く誰かの駒として

 

動かされることを想像しただけで

 

気分が悪くなる。

 

霊夢は起きたらどう感じるのだろうか…

 

 

 

一抹の不安は現実となった。

 

霊夢は悪夢を見たと言っていた。

 

大切なものを焼き払う自分自身の姿を見たと。

 

炎の中、不気味に笑う自分の姿を見たと。

 

 

 

魔理沙

「汚ねえよ…」

 

心に何か燃え上がるものがあった。

 

魔理沙

「…自分の手は下さないで…」

 

あんな霊夢を見たからか?

 

魔理沙

「ふざけんなッ!!」

 

霊夢

「うわ…びっくりした…」

 

思わず立ち上がって空に向かって叫んでいた。

 

魔理沙

「…あ、悪いな…」

 

霊夢

「疲れてんじゃないの?

 今日はさっさと帰って寝れば?」

 

魔理沙

「…そう…するぜ…」

 

祖父の身を案じ始めた時以来だ。

 

こんな嫌な気分は…

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

魔理沙

(天子…頼むから

 下手なことはしないでくれ…

 ただの異変であってくれ…)

 

人里へ行こうと張り切る

 

チルノたちを尻目に魔理沙は

 

黙り込み、祈っていた。

 

魔理沙

(私はただ…気のいい連中と、

 馬鹿な事をして、

 意味も無く力比べして、

 流行りに乗って努力したり、

 集まって騒ぎたいだけだ…

 それが出来るだけでいい。)

 

魔理沙は目を瞑る。

 

魔理沙

(私らしくねぇのは

 わかってるさ…でも

 あいつのあんな顔は見たくねぇんだ…)

 

顔を上げる。

 

魔理沙

「チルノ、もし行くなら誰か誘っていけ。」

 

チルノ

「お? 誰かって…?」

 

魔理沙

「ほら、パチュリーとかな。

 なんかこの前、元気になったとか…」

 

大妖精

「あぁ…そうですね。お願いしてみます。」

 

にとり

「私も同行するよ。」

 

チルノ

「お? 本当か?」

 

にとり

「もちろんその本を狙う

 連中を探るのもあるけど、

 内容をいち早く知りたいからさ…」

 

大妖精

「そうですよね、にとりさんも

 来てくれるなら安心です!」

 

チルノ

「あ、そういえばルーミアは…」

 

魔理沙

「ルーミアなら出掛けたぜ。

 用事があるとか言ってな。」

 

チルノ

「なんだよ用事って~…

 アタイに断りも無く…」

 

大妖精

「まぁまぁチルノちゃん…」

 

魔理沙

「そのうち戻ってくるだろ。」

 

チルノ

「じゃあルーミアが戻ってくるまでに

 ちゃちゃっと行っちゃおうかなー!」

 

大妖精

「そうだね、内容がわかったら

 ルーミアちゃんびっくりするかな?」

 

ルーミアが不在の中、パチュリーとにとりを

 

同伴してチルノと大妖精は

 

人里のとある本屋に向かうこととなった。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

チルノ達が霧雨魔法店を出て

 

数分後にルーミアが戻ってきた。

 

ルーミア

「ただいま…」

 

魔理沙

「お、ルーミア戻ったか!」

 

ルーミア

「…チルノは…大ちゃんは…」

 

魔理沙

「ああ、それならついさっき出掛けて…」

 

ルーミア

「…そうなのか…」

 

突然ルーミアが倒れた。

 

魔理沙

「…!? おい! ルーミア!」

 

魔理沙は咄嗟にルーミアを抱きかかえる。

 

魔理沙

「なんだこれ…すげぇ熱だ…

 ちょっと待ってろ!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

一方その頃、博麗神社にて…

 

霊夢

「…錬金術ね、私とは無縁な力よ。」

 

「あら、そうとも限らないわ。」

 

霊夢の隣に紫が座っている。

 

「『あちら』では

 もう忘れ去られた古の術、

 世に存在する元素を元に、

 物質を分解し、再構築することで

 よりよい物質を創り出す試みね。」

 

霊夢

「はぁ、それがなんだって?」

 

「霊気も物質の対象になり得るのよ。」

 

霊夢

「つまり何か?

 住民も分解出来るって言いたいの?」

 

「ふふ、どうかしらね。」

 

霊夢

「…まぁ、困ることには困る。」

 

霊夢は茶を啜り、大きなため息をつく。

 

霊夢

「まさかあんたがやる…

 なんて言わないわよね。」

 

「あら、どうしてそう思ったの?」

 

霊夢

「…別に、忘れて。」

 

紫は霊夢の表情を目で追いながら、

 

湯呑を床に置く。

 

「言いたいことがあるなら、

 言っておいた方がいいわ。」

 

霊夢

「…この前の異変で暴れた野郎を

 入れてる本、どうして放任してるわけ?」

 

「…あの子は違うことが私にはわかったのよ。」

 

霊夢

「違う?」

 

「あれは被害者。

 この世界の裏に存在する歪みに

 弄ばれた愚かな人形だったわ。」

 

紫は目を細める。

 

霊夢

「………」

 

「霊夢、あの子はあなたと…」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

チルノ

「おっしゃあ来た来た!」

 

大妖精

「なんだか静かですね…」

 

チルノ、大妖精、パチュリー、にとりは

 

人里に到着した。

 

人出がほとんど無い時間なのか、

 

普段の和気藹々とした様子は見られない。

 

パチュリー

「鈴奈庵の場所はわかるかしら?」

 

大妖精

「はい! 何度かお邪魔させていただいてるので。」

 

にとり

「私たちはここで待ってるよ。

 気をつけて行ってきてね。」

 

チルノ

「おう!」

 

大妖精

「にとりさん?

 なんだか顔色が悪いですが…」

 

にとり

「ああ、気にしないで、

 ここにはあまりいい思い出が無くてね…」

 

 

 

チルノと大妖精が目的地である鈴奈庵へ

 

向かう姿をパチュリーとにとりは見送る。

 

パチュリー

「大丈夫?」

 

にとり

「…ああ、思い出していただけだよ。」

 

パチュリー

「あの子のこと?」

 

にとり

「…私が置いてきた皆のことさ…」

 

パチュリー

「…聞くわよ。」

 

にとり

「ありがとう、でも大丈夫。

 チルノ達を待とう。」

 

パチュリー

「わかったわ。」

 

にとりは橋の手すりに背を付け、

 

空を眺める。

 

その青い瞳には懸命に飛ぶ

 

一羽の小鳥が映っていた。

 

にとり

(そうか…君も一緒だな…)

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

にとり

「人間…か…」

 

妖怪の山にある渓谷で

 

岩の上に座りながら望遠鏡を覗くにとり。

 

足をぶらぶらと振りながら、

 

ひたすら滝の方へ進む人影を眺める。

 

にとり

「…少し脅してみるかな。」

 

人間が嫌いなわけではなかった。

 

ただ、ちょっとした好奇心だった。

 

 

 

 

 

 

霊夢

「あんた、どうしてそうひねくれてんの?」

 

にとり

「人聞きの悪いことを言わないでおくれよ。」

 

魔理沙

「もう少し外で過ごしたらどうだ?

 お前のことを気にかけてる奴も居たぜ?」

 

博麗神社で開かれた宴会の席で

 

にとりは酒が進んでいなかった。

 

にとり

「…臆病なのさ、根っからのね。」

 

霊夢

「臆病なわりによく私たちに

 突っかかってきたわね。」

 

にとり

「言ったじゃないか、

 あれは警告だって。」

 

魔理沙

「そいつは盟友ってやつだからか?」

 

にとり

「…どうかな…臆病だから

 無益な事はしない性分なんだ。」

 

魔理沙はにとりの隣に座り込む。

 

魔理沙

「そのスキルをもっと有効活用したらどうだ?」

 

にとり

「…」

 

魔理沙の言葉を聞いたにとりは

 

明らかに不機嫌そうな表情を浮かべる。

 

にとり

「すまないが、風に当たってくる。」

 

そのまま立ち上がって席を外した。

 

霊夢

「…めんどくさそうなやつね。」

 

魔理沙

「でも結構おもしろいぜ。」

 

霊夢

「は? 何言ってんの?」

 

魔理沙

「嘘つきに悪い奴は居ない、私の勘だ。」

 

霊夢

「呆れた、あんたには付き合ってらんないわ。」

 

魔理沙

「へへ、そう言ってどれだけ経ったんだ?」

 

霊夢は頬を少し膨らませて

 

にとりが出ていった方を眺める。

 

霊夢

「何かに怯えているのね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

私の手は何かを生み出すことは出来る。

 

それでも落ちてくる物を

 

受け止められるほど大きくは無かった。

 

にとり

「………」

 

友が喜ぶ姿を見て

 

自分には誰かの助けになれる力があると思い込んでいた。

 

それだけ自分の手が大きく、

 

頑丈だと思い込んでいた。

 

 

 

でもそんなことは無かった。

 

 

 

私は大切な親友よりも保身に走った。

 

誰かの悲鳴を聞いても聞かないフリをしてきた。

 

次は自分じゃないかと怯えながら

 

震える手を抑えて何かを作ることに没頭した。

 

気が楽だったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙

「物思いにふけてるな。」

 

縁側で夜空を眺めるにとりの隣に魔理沙が座る。

 

にとり

「盟友には無いのかい。」

 

魔理沙

「…無いと思うか?」

 

にとり

「…いや。」

 

しばらくお互い黙り込んでいると

 

魔理沙が先に口を開いた。

 

魔理沙

「私も実は臆病でな。」

 

にとり

「………」

 

魔理沙

「型にハマることが嫌な性分で

 それを避けるために

 いろいろとやってきたぜ。」

 

にとりはそっと視線を魔理沙の横顔に向ける。

 

魔理沙

「親の言うことも

 まともに聞けない問題児。

 そんなんでも面倒を

 見続けてくれた人が居る。」

 

にとり

「………」

 

魔理沙

「その人が妖怪のせいで

 腕と脚を一本ずつ持ってかれた。」

 

にとり

「それは…気の毒に…

 酷いことをする妖怪も居るもんだ。」

 

魔理沙

「…まだ幼かった私は

 何にもわかっちゃいなかったのさ。

 いつも私をこっぴどく叱るもんだから

 その時は心の底で大いに喜んださ。」

 

にとりは魔理沙から目を逸らし、

 

地面に目線を落とす。

 

にとり

「後悔…してるのか。」

 

魔理沙

「ああ、後悔してる。

 今じゃあ、どの面下げてあの人に

 会っていいのかわからない。

 家を飛び出してから一回も戻ってない。」

 

にとり

「その時にはわからない…

 仕方のないことなんじゃないかい。」

 

魔理沙

「そうやって自分を正当化してきた。

 認めるのが怖くてな。

 口先では型にハマるのが怖いと言ってきたが

 本当はただ自分を否定するのが怖いだけだ。」

 

魔理沙は立ち上がり、月を見ながら少し歩く。

 

魔理沙

「恐怖は変わらない。

 乗り切るために踏み出す勇気もない。

 臆病なら臆病な者なりに

 何かに没頭するしかないだろ。」

 

にとり

「…言う通りだよ。」

 

魔理沙

「なぁ、お前は何が怖いんだ?」

 

にとり

「自分を失うことと

 誰かを失うこと、両方が怖いのさ。」

 

魔理沙

「それは何故だ?」

 

にとり

「私は誰かを助ける力は無いし、

 自分を守る力も無いから

 きっと誰かを犠牲に生きることになる。」

 

魔理沙

「………」

 

にとり

「怖い、怖くてたまらないよ。

 次は自分か…

 はたまた自分の代わりに誰が…」

 

魔理沙は振り返り、にとりの顔を見る。

 

苦悶に塗れた表情。

 

目が酷く泳いでいた。

 

にとり

「どうして私だけを

 終わらせてくれない…

 この手でいったい

 何が出来るって言うんだい…」

 

魔理沙

「誇れよ。」

 

にとり

「…え?」

 

魔理沙

「お前が見せてくれたもんは

 どれもその小さな手から

 生み出されたもんだ。」

 

にとりは手のひらを見る。

 

魔理沙

「あれはお前が失った全てと

 震える手を奮い立たせた

 お前の意志、いやそうさせるに至った

 お前にとって大切な何かが創り出した。」

 

にとり

「………」

 

魔理沙

「恐怖に打ちひしがれるのも

 臆病なりに歩みを進めるのも

 お前だけの意志じゃないぜ。」

 

にとり

「でも…」

 

魔理沙

「お前に今出来るのは、

 応えてやることと

 その小さくも、クソ重い手を

 誇ってやることなんじゃないのか?」

 

にとり

「………」

 

にとりはしばらく

 

拳を握りしめて俯いていた。

 

そして顔を上げる。

 

にとり

「ああ、重すぎる。

 でも誇ることにするよ…臆病なりにね。」

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

にとり

(一緒じゃない。

 私はあんな風には飛べないな…)

 

鳥は遠のいていく。

 

パチュリー

「少し長いわね…」

 

にとり

「解読も楽じゃあない。

 私のことは気にしなくていいよ。」

 

パチュリーはにとりの視線を追って

 

遠くへと飛んでいく鳥を見つける。

 

パチュリー

「まるで羨ましがっているみたいね。」

 

にとり

「そんなことないさ。

 私には私なりに誇れるものがあるからね。」

 

パチュリー

「…今度、その誇れるものを見せてくれるかしら。」

 

にとりはパチュリーを見て

 

少し驚いた様子を見せる。

 

パチュリー

「あなたと試したいことがあるのよ。」

 

にとり

「ああ、喜んで。」

 

パチュリーが微笑むと

 

にとりは不器用ながら微笑み返す。

 

にとり

「魔理沙も一緒にね。」

 

パチュリー

「ええ、もちろん。」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

チルノ

「どどーん!」

 

入口ののれんをくぐり、

 

チルノは仁王立ちのポーズで叫ぶ。

 

大妖精

「ち、チルノちゃん…!」

 

チルノと大妖精は

 

鈴奈庵という人里の貸本屋を訪ねる。

 

 

「わぁ! お二人とも来てくれたんですね~!」

 

奥から快活な少女の声が聞こえてきた。

 

奥にあるのれんから顔を出したのは

 

鈴の付いた特徴的な髪留めをした

 

飴色のツインテール。

 

淡黄色のエプロンをした少女。

 

チルノたちを見るや否や

 

満面の笑みで出迎える。

 

大妖精

「小鈴さん…ごめんなさい…

 毎度毎度うるさくしてしまって…」

 

小鈴と呼ばれた少女は

 

右手を前に出して振りながら

 

小鈴

「いえいえ、大丈夫ですよ~

 いつものことですし、

 今は他の人も居ませんから。」

 

彼女は本居小鈴。

 

鈴奈庵の店番をしており、

 

チルノたちが訪ねた目的の人でもある。

 

チルノ

「ちょっと読んでほしい

 本があるんだよねー」

 

小鈴

「本ですか? どんな本です?」

 

大妖精

「いやそれが…全然わからなくて…

 小鈴さんに解読してもらいたいんです。」

 

小鈴

「おお! そういうことなら

 お安い御用です! 任せてください!」

 

気合を入れる小鈴を見て

 

頼もしさを感じたチルノは

 

黒い本を渡し、しばらく待つことにした。

 

 

 

 

 

 

鈴奈庵の奥にある部屋で黒い本を

 

読み込む小鈴。

 

彼女にはあらゆる文字を読む能力があり、

 

黒い本に書かれていた文字も

 

読むことが出来る…はずだった。

 

小鈴

「…どうして…?」

 

文字というよりも絵に近いからか、

 

文字という概念を持っていないからか、

 

小鈴の能力を以てしても、

 

黒い本に書かれた内容の解読は難航する。

 

小鈴

「でも余計気になった…!」

 

小鈴は椅子から立ち上がると

 

黒い本を抱えて裏口から外へと駆け出す。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

一方その頃、博麗神社にて…

 

霊夢

「…全く…実感なんて湧くわけない…

 相手の顔すら知らないのよ。」

 

紫から話を聞いた霊夢は

 

鳥居の柱に寄りかかり独り言を呟いていた。

 

霊夢

「…誰?」

 

気配を感じ取り周囲に神経を向ける。

 

しかし誰の姿も見当たらない。

 

霊夢

「…思い過ごしね…」

 

???

「なぜそう思ったんだい?」

 

霊夢

「…!?」

 

声は目の前からだった。

 

気がつくともう片方の柱に

 

人の姿があった。

 

霊夢

「何よ…あんた。」

 

???

「私は人形、ただの人形さ。」

 

自身を人形と呼ぶ者。

 

肩まで伸びた赤みがかった黒髪に

 

深紅を称える瞳。

 

そしてどこかで見覚えのある服に

 

良く似た黒い服。

 

よく見ると自分と同じ顔立ちをした少女。

 

霊夢

「何しに来たわけ?」

 

???

「君に会いに来た。

 そして提案がある。」

 

霊夢

「異変なら手は貸さないわよ。」

 

???

「まさか、博麗の巫女である

 君にそんなことはさせないよ。」

 

霊夢

「ふぅん?

 それくらいは知ってるみたいね。

 じゃあ妖怪退治の依頼…

 って訳でもなさそうね。」

 

???

「ああ、君は聡明な人だ。

 だから君とは良い関係を築きたい。

 単刀直入に言おう、

 私の復讐…いや、仇討ちに

 付き合ってもらいたいんだ。」

 

霊夢

「仇討ちねぇ、そういうのって

 後々面倒だから嫌なんだけど。

 他を当たってもらえる?」

 

霊夢は冷めた顔を見せて

 

吐き捨てると本殿に戻ろうとする。

 

???

「縛られたく無いんじゃないかな?」

 

黒服の少女は強引に立ち去ろうとする

 

霊夢に語気を強めて言い放った。

 

それに反応し、霊夢は足を止める。

 

???

「何かに縛られるのが嫌いだよね?

 なら悪い話じゃあないよ。」

 

霊夢

「どういう意味?」

 

???

「博麗霊夢、数多の妖怪を相手にし、

 異変をことごとく解決してきた。

 それが博麗の巫女の役目だから。」

 

霊夢

「それが何だって言うのよ。」

 

???

「君のやり方を気に入らない者も

 この世界には存在するということさ。」

 

霊夢

「………つまり、

 あんたの仇討ちの相手は

 私のやり方にケチを付けてるわけ?」

 

???

「君は本当に有能だ。

 話が早くて助かるよ。」

 

霊夢

「お褒めに預かり光栄です。

 ならわかるわよね?

 お断りよ、さっき言った通り。」

 

???

「残念だ、実に残念だよ。」

 

落胆した調子で黒服の少女は

 

霊夢に背を向ける。

 

???

「君には、外れて欲しかったんだ…」

 

と、言い残して石段を降りていく。

 

霊夢

「………」

 

それに対し特に反応を見せず、

 

黒服の少女に背を向けたまま、

 

霊夢は立ち尽くしていた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

小鈴

「阿求! 居るよね!?」

 

柱をノックしながら否応なしに

 

別の建物のとある部屋に入る小鈴。

 

そこではおかっぱ茶髪の

 

着物を着た少女が

 

小鈴とは対照的な落ち着いた様子で

 

机に向かって作業を行っていた。

 

 

「騒々しいわね…

 私はあなたみたいに

 暇じゃないのよ。」

 

小鈴のおかげで作業を

 

中断せざるおえない状況に

 

苛立ちを見せる彼女は稗田阿求

 

人里でも特に力を持つ稗田家の九代目であり、

 

大きな屋敷に住んでいる。

 

小鈴

「いやでも真っ先に見せたくてさ。

 見て! この黒い本!」

 

阿求

「本? って…それは…」

 

小鈴

「あんたでも見たこと無いんじゃない?

 妖精のお二人さんが持ってきたの。」

 

阿求

「小鈴、今から言うことを聞いて頂戴。」

 

小鈴

「ふぇ? 何よ藪から棒に。」

 

阿求

「その本を持ち主の二人に返して金輪際、

 本に触れないこと、いい?」

 

小鈴

「何言ってるの?

 いきなりそんなこと言われても…」

 

阿求

「その本はあなたが扱うには危険過ぎる。」

 

小鈴

「ぐ…わかんないよ! もういい!」

 

小鈴は阿求の元から去ってしまう。

 

阿求

「あ、待って! 小鈴!」

 

手を伸ばし、引き留めようとするが、

 

小鈴の姿は既に無い。

 

阿求

「…はぁ…」

 

一つ大きなため息をする阿求。

 

そこへ声が響く。

 

映姫

「困りましたね。」

 

阿求

「…! 申し訳ございません。」

 

映姫

「仕方がありません。

 既に彼女が向かっています。

 我々にお任せください。」

 

阿求

「…はい…」

 

他に誰も居ない部屋で

 

阿求は会話を済ませると

 

小鈴のもとへ行こうと考えたが、

 

作業を再開することを選んだ。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ルーミアは高熱を出し、

 

ベッドに寝かされていた。

 

体調を崩した要因は前日に遡る。

 

 

 

紅魔館の図書館で

 

錬金術に関する資料を探していたルーミア。

 

彼女自身は錬金術に対して

 

そこまで興味があるというわけでもなく、

 

自分が読破するつもりも無かった。

 

ただチルノと大妖精の

 

役に立てることをしたいという想いから

 

行動を起こしたのだ。

 

何分、大きな図書館であったため、

 

そう簡単に目当ての資料が見つかるはずも無く、

 

見たかどうかもわからない

 

通路をうろうろしていた。

 

半分迷子に近い状態だったルーミアに

 

声を掛けたのはパチュリーであった。

 

パチュリー

「これを探しているのかしら?」

 

パチュリーは近くの本棚から

 

いくつかの資料を魔法で

 

吸い寄せるとルーミアの方へ差し出す。

 

ルーミア

「!? どうしてわかったのか?」

 

驚くルーミアにパチュリーは

 

薄く微笑み

 

パチュリー

「あの二人のためなのでしょう?

 頑張って。」

 

ルーミア

「ありがとう…」

 

ルーミアの想いを察したパチュリーは

 

何冊か資料をルーミアに貸し出した。

 

少し多かったため、

 

パチュリーには多すぎないかと

 

心配されていたが、

 

ルーミアはやせ我慢をして

 

重い資料を抱えながら

 

紅魔館を後にした。

 

 

 

紅魔館から霧雨魔法店。

 

たいした距離ではないものの、

 

ほぼ自分と同等の荷物を

 

抱えているとなれば話は変わる。

 

ルーミア

「う…ぐぅ…」

 

ちょうど半分に差し掛かった時、

 

ルーミアはその場に座り込んでしまう。

 

バランスが崩れ、資料が辺りに散らばる。

 

ルーミア

「さすがに無理をしたか…」

 

日は落ち周囲には暗闇が広がっていた。

 

ルーミア

「…く…」

 

チルノと大妖精を喜ばせたい。

 

しかし身体が動かない。

 

満身創痍だったその時、

 

突然ルーミアの脳内に声が響いた。

 

聞き覚えのある声だった。

 

???

「君は見掛けによらず

 温かい心を持っているようだね。」

 

ルーミア

「あの時の…お姉さん…!」

 

ルーミアが飢餓に苦しんでいた時、

 

颯爽と現れ、救ってくれた人物。

 

ルーミアの表情はたちまち明るくなる。

 

???

「友達の為に…か…

 そんな君を助けてあげよう。」

 

突然、地面に散らばった資料が

 

宙に浮き上がり、1ヶ所に集まる。

 

ルーミア

「え、何を…」

 

資料たちは徐々に小さくなっていき…

 

最終的には手のひらに

 

収まるサイズへ変化してしまった。

 

???

「さっ、これを友達に

 届けてあげるのだろう?」

 

ルーミア

「あ、あのお姉さん…」

 

???

「ではまた会おう。」

 

ルーミア

「あ…」

 

声は途切れ、

 

2度と聞こえては来なかった。

 

ルーミアは名残惜しそうな表情をして

 

しばらく呆然としていたが、

 

不器用な笑顔を作り、

 

ルーミア

「ありがとう…」

 

誰も居ないはずの空間に

 

お礼を述べたのであった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ルーミア

「…チルノ…大…ちゃん…」

 

変だ

 

胸の辺りがズキズキと痛む。

 

ルーミア

「…っ…」

 

ゆっくりと身体を起こす。

 

居候で借りているベッド。

 

二人は帰ってきているだろうか。

 

いや、帰ってきているならば

 

きっと私の元へ来るはずだ。

 

ルーミア

「…はぁ…」

 

高熱を出すなんて何年振りか。

 

そういえばあの二人が体調を

 

崩した時には私が看てあげたっけ。

 

チルノは本当に大ちゃんが居ないと

 

ダメな奴で…

 

大ちゃんはチルノが居ないと…

 

ルーミア

「…くすっ…」

 

思わず笑ってしまう。

 

ただその感情は一瞬で溶けて消えた。

 

 

 

二人にとって私は?

 

その疑問がルーミアを侵すことに

 

時間は掛からなかった。

 

魔理沙

「お、起きたか。

 どうだ? 具合は…」

 

寝室に魔理沙が入ってくる。

 

ルーミア

「う…えぐっ…」

 

魔理沙が目にした光景は

 

ルーミアの泣き崩れる姿だった。

 

魔理沙

「………」

 

熱が出ていたため、

 

氷のうを持ってきていた魔理沙。

 

しかしルーミアの姿を見て

 

手に持っていた氷のうを近くの机に置く。

 

ルーミア

「ごめん…こんな…姿…」

 

魔理沙

「喋らなくていい。」

 

魔理沙はルーミアの身体を

 

優しく抱きしめると

 

冷たい手でルーミアの頭を撫でる。

 

魔理沙

「ここで泣いとけ。

 帰ってきたら泣けねぇんだろ。」

 

ルーミア

「…!」

 

それからしばらくの間、

 

ルーミアは泣き続け、

 

魔理沙はルーミアを看ながら

 

傍に居続けた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

小鈴

「ふふ~…お二人とも出来ました!」

 

チルノ

「お、マジ!?」

 

大妖精

「どうでしたか?」

 

小鈴

「いやぁ…正直にお答えしますと。」

 

チルノ

「しますとー?」

 

小鈴

「これわっけわかんないです。」

 

大妖精

「え、えと…そうですか…」

 

小鈴があまりにも清々しく言うもので

 

大妖精は多少、困惑した。

 

チルノ

「そっかー流石に無理かー」

 

小鈴

「あっ、でもでも

 なんとーなく翻訳…? したものは

 こちらにメモしときました!」

 

小鈴は大妖精に紙を何枚か渡す。

 

大妖精

「えぇ!? この短時間で

 これだけの解読を…!?」

 

小鈴

「ふふっ…私を誰だとお思いですか?」

 

チルノ

「すげー! わかんないけど!」

 

紙には小鈴が今までの知識と経験から

 

推測した本の内容が

 

ずらりと書かれていた。

 

大妖精

「ありがとうございます!

 何かお礼をしないと…」

 

小鈴

「あーいえいえ、

 私も楽しませていただいたので

 これくらい構いませんよ。」

 

大妖精

「しかし…」

 

大妖精があまりにも

 

申し訳なさそうな顔をするため、

 

小鈴は少し考え込む。

 

小鈴

「ではちょっとした

 お手伝いをしていただく

 というのはどうでしょう?」

 

チルノ

「お! アタイに任せろ!」

 

大妖精

「小鈴さんのお手伝いですか?」

 

小鈴

「ああいえ、どちらかといえば

 霊夢さんのお手伝いですね。」

 

大妖精

「え、霊夢さんの?」

 

小鈴

「はい、実は少し前から

 人里で出た要望や相談を

 まとめたりしてるんですよ。」

 

チルノ

「へぇーえらいな!」

 

小鈴

「いえ、阿求に言われて仕方なく…」

 

明らかに嫌そうな顔をしているので

 

大妖精が苦笑いする。

 

大妖精

「要望っていうのは妖怪退治ですか?」

 

小鈴

「それもありますけど

 だいたいは必要な物とか

 欲しい物とかを皆自由に出してます。

 なので、人里の人間だけで

 解決しちゃうこともしばしばあります。」

 

大妖精

「最近、錬金術を習ったので

 少しは役に立てると思います。」

 

小鈴

「それは心強いですね。

 気が向いた時に簡単なものを

 消化してくれればいいので!」

 

チルノ

「おーけー!

 アタイにかかればイチコロだぜ!」

 

大妖精

「ただ今は外で待たせている

 人たちが居るので今度にしますね。」

 

チルノ

「あ、そうだった。」

 

チルノと大妖精は

 

小鈴にお礼を述べて

 

鈴奈庵を後にする。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

天子

「動いた…」

 

鈴奈庵の裏側に位置する路地裏の

 

壁に寄りかかりながら

 

独り呟く天子。

 

天子

「…手ぇ出すんじゃないわよ。」

 

自分以外誰も居ない空間で嫌悪感を

 

示しつつ言い放つ。

 

映姫

「ええ、よろしくお願いします。」

 

天子は帽子を被り、

 

路地裏から表に出る。

 

 

 

彼女が向かう先には…

 

 

 

to be continued ~




【皆様お疲れ様です】
稚拙な文章にも関わらず読み進めてくださりありがとうございます。こちらのシナリオは主に休日に書き進めているのですが、思ったように捗らないものですね。執筆に限らずMMDや動画編集もそうなのですが、作業開始時に何か気分を上げないと眠くなってしまいます。



【今回のお話と時系列質問の回答】
言い訳はこれくらいにして、今回はにとりと魔理沙がメインになっちゃいましたね。何人かの方から「風神録と冥哭童とチル大の時系列がわからん」という意見があるので一応、ここでまとめさせていただきますと、

冥哭童(河童の国、人里侵攻のシーン)

風神録

冥哭童(裂空異変)

チルノ&大ちゃんのアトリエ

となります。

今回もキャラについてコメント書きかきしますね。

【魔理沙について】
魔理沙って普段は快活だけど、シリアスな時は空気が読めて頼りがいのあるお姉さんっていうイメージを勝手に持ってるんですがどうでしょう。もちろん経験から様々なものを吸収していき人間性が形成されていくものですから、暗めのバックストーリーがいくつか付けられたらなと試行錯誤していって今の形になった感じです。アリスと話すシーンとかでは積極的に入れていく予定です。

【パチュリーについて】
なんだかんだ魔理沙とは腐れ縁って感じですよね。勝手なイメージなんですけど、やはり色々と迷惑を掛けられても見限ることはしないし、今の関係を崩すことも無くって感じで。病弱体質設定ですが、チルノが錬成した薬で万事解決。他に解決法が無かったのかと言われると確かにそうなのですが、この解決法の方がアトリエっぽいかなーと思いました。ムキムキにはなりません(残念ながら)。魔法の実力は作中最強…?

【アリスについて】
恵まれているけれどどこか満たされないアリスを描いています。なかなかの完璧主義で魔理沙以外にはそういった欲を見せないように振る舞う感じが個人的に好きなんです。人間関係や功績とかに恵まれていても心に言いようのない寂しさを感じている…そんなアリスです。なお今作ではパチュリーとも仲良し。



以上です。
読者の皆様、今後ともよろしくお願いいたします。

※文章ミスがございました。申し訳ございません。
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