チルノ&大ちゃんのアトリエ ~目覚めし幻想の錬金術士~   作:すくすくAlma

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その⑤の途中までです。


EP5 記憶を継ぎし者

大妖精

「落ち着いた?」

 

チルノ

「うん…なんかごめん…

 最近アタイ変なんだ…」

 

大妖精

「いいんだよチルノちゃん。

 そのために私が居るんだから。」

 

チルノ

「ありがとう大ちゃん…」

 

大妖精

「あ…それでね。

 ルーミアちゃん、帰って来てたみたい。

 私とチルノちゃんが人里に

 出掛けていったすぐ後に。」

 

チルノ

「ホント!?」

 

大妖精

「だけど体調崩しちゃったみたいで…

 まだ寝込んでるみたいだから…」

 

チルノ

「ルーミア!!」

 

チルノは大妖精の話を途中まで聞くと、

 

ルーミアを探しにすっ飛んで行ってしまった。

 

大妖精

「あはは…もうチルノちゃんったら…

 ルーミアちゃんだって困っちゃうよ?」

 

 

 

ほどなくしてルーミアが

 

横になっている部屋に

 

チルノは突撃する。

 

チルノ

「ルーミア!!」

 

ルーミア

「!?」

 

そこにはベッドの上で

 

上体を起こしたルーミアが

 

窓の外の景色を眺めていた。

 

チルノが来ると咄嗟に振り返る。

 

ルーミア

「ぬぁ、来るなっ!?」

 

チルノはルーミアに飛び付いて

 

思い切り抱き締める。

 

チルノ

「ルーミア心配したんだぞ…!

 勝手に居なくなっちゃったから!」

 

ルーミア

「な、何を…」

 

チルノ

「1人だとまた

 ひどい事されるんじゃないかって…」

 

ルーミア

「む…こいつ…」

 

ルーミアは少し頬を膨らませる。

 

チルノ

「言ったじゃんか!

 アタイから離れるなって…」

 

ルーミア

「う、うるさい!

 こんなにくっついたら

 風邪が移るぞ…」

 

ルーミアはチルノの肩を押し、

 

自分から引き剥がそうとするが、

 

それに対してチルノは

 

更に強い力で掴まってくる。

 

チルノ

「絶対離さないからな!

 あ、そうだ、アタイが居れば

 具合も良くなるぜ!」

 

ルーミア

「ぐ…むぅ………はぁ…」

 

ルーミアは観念した様子で

 

チルノへの抵抗をやめる。

 

チルノ

「まったくー…せめて

 何か言ってから

 出掛けてくれよー」

 

ルーミア

「サプライズだったんだぞ…」

 

チルノ

「さぷらいず?

 なんだそれおいしいのか?」

 

ルーミア

「…後で見せる…」

 

チルノ

「よっしゃ! じゃあ

 さっさと治さないとなー!」

 

チルノはルーミアの額に

 

自分の額を押し当てる。

 

チルノ

「大ちゃんが

 具合悪くなるといつも

 こうしてくれるんだぜ!

 ルーミアにもしてやるよ。」

 

ルーミア

「ふぁ!?」

 

チルノ

「あっれ、めっちゃ熱い。

 こりゃ大変だな…アタイが」

 

ルーミア

「こ、このバカぁ!!」

 

チルノ

「ぐはっ!?」

 

顔が真っ赤に染まったルーミアに

 

チルノは押し飛ばされてしまった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

魔理沙

「本当に錬金術の本だとはなぁ。

 お前らは知ってたのか?」

 

魔理沙は霧雨魔法店の一階で

 

机の上に置かれた黒い本と

 

小鈴の解読メモを見ながら話す。

 

にとり

「まさか、錬金術なんて

 私は専門外だよ。知ってるだろ?」

 

魔理沙

「はは、わりぃわりぃ。パチュリーは?」

 

パチュリー

「確信は無かったわ。

 ただ中に描かれていた絵から

 恐らくそうだとは思っていたのよ。」

 

魔理沙

「なるほどな…私も薄々

 感じてはいたんだが…

 どうにも引っ掛かる。」

 

にとり

「と、言うと?」

 

魔理沙

「小鈴のメモに目は通したよな?

 前半の内容を要約すれば

 『無からは何も生まれる事は無い』だ。」

 

パチュリー

「『等価交換の原則』…

 何かを犠牲にしなければ

 何も得ることは出来ないということね。」

 

魔理沙

「ああ、それを著者は

 長年の研究で悟ったらしい。」

 

にとり

「わかる気がするよ。

 錬金術に限った話じゃないと思う。」

 

パチュリー

「見方によっては、

 錬金術の存在意義は

 用意出来るものを自分達にとって

 一番需要のあるものに変換する事

 なのかもしれないわね。」

 

魔理沙

「自分達にとって都合の良いものに

 作り替える…ただその為には

 ベースとなる

 材料を用意しなければならんと…

 当たり前の事だけどな。」

 

にとり

「それで? 引っ掛かるって言うのは…」

 

魔理沙

「後半のページさ。

 内容的には、前半の

 『等価交換の原則』を覆してんのさ。」

 

パチュリー

「無から何かを生み出す事では無く、

 犠牲から等価ではない

 圧倒的な価値を生み出す…」

 

にとり

「現実的じゃないな。

 要は1つの犠牲で膨大な価値を

 得ようっていう魂胆だろ?」

 

魔理沙

「ああ、こいつを見てくれ。」

 

魔理沙は黒い本の後半にある

 

あるページを開く。

 

そこにはヒト、獣、妖怪らしきもの。

 

それらが何かの結晶のようなものを

 

取り囲んでいる絵だった。

 

パチュリー

「この絵、私も気になるのよね。」

 

パチュリーは絵を覗き込む。

 

にとり

「中心に描かれている

 石みたいなのはあれかい?

 『賢者の石』ってやつなのかな。」

 

魔理沙

「間違い無いと思うぜ。

 それで隣のページに

 描かれてる絵も見てくれ。」

 

魔理沙が指し示した絵。

 

『賢者の石』を何かの容器に格納し、

 

そこから雷や光を示すと思われる

 

紋章が大量に溢れ出ている絵だ。

 

パチュリー

「『賢者の石』は無からも

 何かを生み出す力を持っている…

 そう言いたいのかしらね。」

 

魔理沙

「ああ、だから皆こぞって

 『賢者の石』を目指すんだろうな。」

 

にとり

「錬金術の到達点…か…

 ただこの絵から推測するに…まさか…」

 

魔理沙

「恐らくそのまさかなんだろう。」

 

3人は複雑な思いで絵を注視する。

 

パチュリーはこの本を初めて読んだ時、

 

『賢者の石』に関する記述があると

 

思われるページに目を通していた。

 

もちろん、この絵を見て、

 

それが何を意味しているのか。

 

ある程度わかっていた。

 

絵から連想される答え、それは…

 

パチュリー

「存在の消耗…ね。」

 

魔理沙

「…えげつない事を考えやがる。」

 

魔理沙は帽子を深く被り目元を隠す。

 

にとり

「つまり…錬金術によって

 誰かを分解し、『賢者の石』を

 生み出す…というのか。」

 

パチュリー

「鈴奈庵の子のメモで

 確実になったと思うわ。」

 

魔理沙

「ああ、小鈴はどんな気分で

 これを読んだんだろうな…」

 

にとり

「とにかくこの本の著者は

 その方法を試したんだろうか?」

 

パチュリー

「成功でもしない限り、

 ここまで詳細には記さないはずよ。」

 

魔理沙

「私が引っ掛かってるのは

 前半と後半でどうしてこうも内容が

 ひっくり返ってんのかってことだ。」

 

パチュリー

「著者に聞かなければ

 わからないことね…」

 

魔理沙

「まぁこればっかりはな…」

 

魔理沙は本を閉じる。

 

魔理沙

「今ある問題は、この本は

 いったいどこで書かれ、

 何故、にとりの所に

 保管されていたはずが、

 チルノ達に渡ったのか…」

 

にとり

「紫さん…ではないな…得が無い。」

 

パチュリー

「そうね、幻想郷をむざむざ

 危険にさらすような行為は…」

 

魔理沙

「…」

 

魔理沙は窓に向かって

 

咄嗟に振り返る。

 

一瞬だけ何者かの影を見た。

 

魔理沙

「ちょいと外を散歩してくる。」

 

にとり

「気をつけるんだよ。」

 

魔理沙は右手を挙げながら

 

玄関に向かう。

 

にとり

「いっ…つつ…」

 

パチュリー

「…どうしたの?」

 

にとり

「いや…なんだろう…

 右手の甲が痛くてね…」

 

パチュリー

「前から?」

 

にとり

「うーん…実は…」

 

 

 

 

 

魔理沙

「おい、何してる。」

 

魔理沙は霧雨魔法店から

 

立ち去ろうとする人影に声を掛ける。

 

ルーネ

「…どうも、こんばんは。」

 

人影がこちらに顔を向ける。

 

魔理沙

「お前…霊夢………

 …じゃないな…

 それより何してたんだ。」

 

ルーネ

「可愛い女の子達のやり取りを

 眺めていたんですよ。

 チルノちゃん…でしたか?」

 

魔理沙

「おいおい、変態か?

 それともストーカーか?」

 

ルーネ

「どうなんでしょうね。

 興味があるのはあの子の

 『身体』なんですが。」

 

魔理沙

「それはもうクロだろ。」

 

ルーネ

「ああ、言われてみれば。」

 

魔理沙

「見たことねぇ顔だが…

 最近こっちに来たのか?」

 

ルーネ

「いえ、この『身体』は最近ですが、

 『私』は遥か以前からこちらに。

 ずいぶんと様変わりしましたね。

 のどかで素晴らしい世界だ…」

 

魔理沙

「どういうことだ…」

 

ルーネ

「霧雨魔理沙さん。

 あなたにも興味がある。

 ヒトの身でありながら、

 特異な性質を持っている…」

 

魔理沙

「勘弁してくれよ?

 ストーカーはお断りだぜ。」

 

ルーネ

「はは、そうですね。

 しないように今後は気をつけます。」

 

ルーネは深々と頭を下げる。

 

魔理沙

「…なぁ、聞きたいことがあるんだが。」

 

ルーネ

「はい?」

 

魔理沙は目を細めてルーネの

 

容姿を一つ一つ確認するように眺める。

 

魔理沙

「お前…人里に居たことはあるか?」

 

ルーネ

「………」

 

魔理沙の問いにルーネは黙り込む。

 

魔理沙

「黒い悪魔って噂があってな。

 悪さをした妖怪が人里を守る

 組織に捕らえられてたんだが、

 散々に暴れて姿を眩ました。」

 

ルーネ

「それはおっかないですね。」

 

魔理沙

「お前さんが

 その腰に提げている刀。

 赤と黒を基調とした刀で

 人を斬ったって話がある。」

 

ルーネ

「偶然じゃないですか?」

 

魔理沙

「それと赤みがかった黒い髪…

 黒い服に身を包んで…」

 

ルーネ

「…何が言いたいのですか?」

 

魔理沙

「何か知ってるんだろ。」

 

魔理沙はルーネを睨み付ける。

 

疑いの目を向けられた彼女は

 

一つ、大きなため息を吐く。

 

ルーネ

「………」

 

その直後に目を大きく見開く。

 

魔理沙

「ッ…!?」

 

ルーネの瞳から放たれた気の圧。

 

草木は激しく揺れ、

 

霧雨魔法店の外壁に

 

薄い亀裂が生まれる。

 

ルーネ

「知り過ぎる事は後悔に繋がりますよ。

 忠告しておきますね…

 それではごきげんよう。魔理沙さん。」

 

ルーネはにっこりと笑顔を見せると、

 

背を向けて立ち去って行く。

 

魔理沙

「はぁ…はぁ…」

 

魔理沙は無意識に息を止めていた。

 

今まで何度か妖怪から

 

威嚇をされたことがあったが、

 

今回は質が違った。

 

威圧…と一言では片付けられない

 

説明しようが無いもの。

 

畏怖の具現化とでも言うのか、

 

魔理沙は未知の恐怖に

 

焦りを抱く。

 

魔理沙

「クソ…なんなんだあいつは…

 とにかく霊夢に知らせるべきだよな…」

 

魔理沙は室内に戻ると

 

パチュリーとにとりに事情を説明し、

 

博麗神社へと飛び去った。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

ルーネ

「…おや…」

 

ルーネは足を止め、

 

視界に入る人物に目を向ける。

 

映姫

「お初にお目にかかります。

 全人類の『敵』…『淵王』。」

 

映姫は木に寄りかかり

 

片目でルーネを睨みつける。

 

ルーネ

「勤勉な事だ、関心するよ。

 だがその呼び方は古い。」

 

映姫

「業はそう易々と

 消えるものではないのですよ。

 生きる化石とも

 相違ないあなたにとっては

 遥か昔の事でしょうが。」

 

ルーネは映姫に微笑む。

 

ルーネ

「なるほど、相変わらず

 大いなる母は実験を

 繰り返しているみたいだね。」

 

映姫

「『正義』ですからね。」

 

ルーネ

「否定はしないさ。

 『正義』は確たる形など

 持たないものだからね。

 ただ、私はそれに準じるつもりは無い。」

 

映姫

「それは機関への反逆と

 見なしてもよろしいのですか?」

 

ルーネ

「さぁ? 君が決めたらどうだい?

 私は構わないよ。」

 

映姫

「狡い御方ですね。」

 

ルーネ

「どうかな、少なくとも、

 『正義』を掲げてありとあらゆる

 事象に息をかける老害よりかは

 馬鹿で単純だと思うけど。」

 

映姫

「そのままお伝えしますよ。」

 

ルーネ

「君ってチクリ魔なの?

 どちらかって言うと

 報告される方じゃない?」

 

映姫

「ふざけないでください…」

 

ルーネ

「まぁ、君がチクろうが

 チクらなかろうが、

 大いなる母は

 全部監視してるんだから。

 気にしたら負けってヤツさ。」

 

映姫

「…」

 

ルーネは相手が映姫であろうと

 

砕けた態度を取り続ける。

 

その様子を映姫は虚飾だと感じ、

 

警戒を解かない。

 

映姫

「あなたは奪う事しか出来ない。

 何かを守るなんておこがましい。」

 

ルーネ

「…ルーミアちゃんの事か。

 別に守る気なんか無いさ。」

 

映姫

「干渉し過ぎている。」

 

ルーネ

「困っているから助けた。

 それだけの事なんだけど。」

 

映姫

「何故に?」

 

映姫の問いにルーネは

 

大きなため息をつき、

 

真剣な面持ちで映姫と目を合わせる。

 

ルーネ

「己の欲望に忠実に従って

 何が悪いと言うんだい?」

 

映姫

「欲…ですか。」

 

ルーネ

「正当化するのは確かに

 良くないとは思うが、

 あんな状態の子を

 黙って見捨てろというのは

 あまりに非人道的だ。」

 

映姫

「どの口が言うのですか。」

 

ルーネ

「この口。」

 

にこりと微笑むルーネに

 

映姫は軽蔑の眼差しを送る。

 

 

ルーネ

「どこまで調べたか知らないが、

 君は大いなる母にとって

 都合のいい駒でしかないよ。」

 

映姫

「慣れてますので。

 『正義』の判断と行使を

 任されることには。」

 

ルーネは映姫の顔を見て

 

少し苦笑いをする。

 

ルーネ

「…そうか。

 それが君の役割(ロール)

 それを誇りに感じているのか。

 なんだか羨ましいよ。」

 

映姫

「誇り…?

 私は誇りなど持ち合わせていません。

 ただ正しいと信ずるものに

 忠実に従っているだけ。

 あなたと本質は何も変わらない。」

 

ルーネ

「似た者同士ってことかな。

 お友達になれる?」

 

映姫

「嫌です。」

 

ルーネ

「ひぇ…悲しいなぁ。」

 

ルーネが醸し出す

 

掴み所の無い雰囲気に

 

明らかな嫌悪感を示す映姫。

 

ルーネ

「そう睨まないでくれたまえ。

 せっかくの美人が台無しだよ。」

 

映姫

「戯れ言を…いったい

 何を嗅ぎ回っているのですか。」

 

ルーネ

「全く…霧雨と言い…君と言い…

 私を疑い過ぎじゃないか?」

 

映姫

「疑われるもなにも、あなた、

 異常行動してるじゃないですか。

 のぞきや待ち伏せ、尾行。

 ストーカー紛いの事を…」

 

ルーネ

「それは否めない。

 まったくもって君の言う通りだ。」

 

キリッとした顔でルーネは頷く。

 

ルーネ

「ただね、

 私は興味があるだけなんだよ。」

 

映姫

「チルノの身体は創られたものです。

 あなたが性的に求めるものだという

 確信に足る材料があるのですか?」

 

ルーネ

「いやいやいやいや

 別にそういう意味で

 興味があるんじゃない。」

 

映姫

「…というと?」

 

ルーネ

「不思議だと思わないか?

 あの子はリボンから膨大な量の

 霊気を注がれていながら、

 生まれた自我を保っているんだ。

 あまりにも特異…」

 

映姫

「本来、意識を

 乗っ取られていても

 おかしくはない…と?」

 

映姫の問いにルーネは頷く。

 

ルーネ

「私のこの『身体』もそうだけど

 一つの『肉体(ソーマ)』に

 発現出来る精神には限りがある。

 その抽選はもちろん霊気…

 つまり存在の強さ、大きさだ。」

 

映姫

「つまりあの『身体』で

 チルノが発現しているということは

 チルノという存在が『彼女』を

 上回っているということですか?

 にわかには信じがたい話ですね…」

 

ルーネ

「そう、あの子という存在に

 そこまでの力が

 あるというのだろうか…

 私にはそれが気になって仕方が無い。

 もしイレギュラーがあれば

 それを調べてみたいってわけさ。」

 

ルーネは映姫にウィンクする。

 

映姫

「はぁ…我々にとって

 その分析結果は有益だと…」

 

ルーネ

「頼むよえいきっき~

 私に調べさせてくれよ~」

 

ルーネは拝むような仕草で

 

映姫に懇願する。

 

映姫

「裁かれたいですか?」

 

ルーネ

「ごめんなさい…」

 

深々と頭を下げるルーネに

 

呆れた様子で映姫は大きなため息をつく。

 

映姫

「わかりましたよ。

 しばらくはあなたはあなたで動いてください。

 ただ監視は外しませんからね。

 妙な行動を起こせば…わかりますね?」

 

ルーネ

「助かるよ。

 何かわかり次第、君に伝えよう。」

 

映姫

「期待していますよ。」

 

二人は互いに頷くと、

 

背を向けてそれぞれ

 

別の方向へと立ち去って行く。

 

ルーネ

「さて…そろそろ

 次のフェーズへ移ろうか…」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

霊夢

「…さてと…こんなもんかしら?」

 

霊夢は毎日のルーティンを終える。

 

掃除、洗濯、賽銭確認。

 

さて、ここから何をするか

 

考えようとしていた矢先、

 

霊夢を訪ねる者が居た。

 

霊夢

「あれ、魔理沙…今度は何よ。」

 

魔理沙

「霊夢! 聞いてくれ! 実は…」

 

 

 

先ほど出会した相手の事を

 

事細かに説明する魔理沙。

 

霊夢

「ああ、そいつならこの前来たわよ。」

 

魔理沙

「まじか!? 何もされなかったか?」

 

霊夢

「なんか異変の勧誘はされたけど

 巫女らしく丁重にお断りしたわ。」

 

魔理沙

「霊夢を?

 やっぱ何考えてんのかわかんねぇな…」

 

霊夢

「ま、結構面白そうな奴だったわよ?

 他の連中よりかは骨はありそう。」

 

魔理沙

「悪いが私は出来れば

 関わりたくないぜ…」

 

霊夢

「何よあんた、珍しくビビってんの?」

 

魔理沙

「そうじゃねぇよ!

 ただ…嫌な予感がするだけだ…」

 

霊夢

「ふーん…」

 

視線を落とす魔理沙を見て、

 

霊夢は空を見上げる。

 

霊夢

(ちょっと小突いてみようかしら…)

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

チルノと大妖精は小鈴のメモから

 

得られた情報を確認し、

 

黒い本の前半を参考に

 

自分達の錬金術を見直していた。

 

チルノ

「中のもんがバラバラになったり

 一緒になったりする時に

 薬とか入れなきゃいけないのか。」

 

大妖精

「そう、だけど私が指示した

 タイミングじゃなくてチルノちゃんが

 自分で入れるタイミングを

 見極めないといけないんだよ。」

 

チルノ

「ふむふむ、まー!

 アタイなら問題無いよ。

 なにせ天才だからな!」

 

ルーミア

「バカだから間違えそう…」

 

チルノ

「こら! 今なんか言っただろ!」

 

チルノとルーミアが言い合う光景を

 

眺めて微笑む大妖精。

 

視線をチルノのリボンへ移す。

 

大妖精

(…ああ、悲しいな…)

 

ぽつりと心の中で呟く。

 

チルノとルーミアには

 

悟られまいといつも通り笑顔を向ける。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

人里にて天子と闘ったチルノ一行。

 

突如として現れた映姫は

 

大妖精を連れ、とある小屋の中に入る。

 

外からの光が徹底的に遮断され、

 

入口の扉を閉めれば視界は真っ暗。

 

映姫は大妖精を中に入れ、

 

扉を閉めるとロウソクをつける。

 

大妖精

「話…とは?」

 

映姫

「…グラキエーリ。」

 

大妖精

「…!?」

 

映姫が発した謎の言葉に

 

大妖精は目を見開く。

 

映姫

「大いなる母があなたのことを

 あまり話さないので、

 こちらで調べさせてもらいました。」

 

大妖精

「…そう…ですか…」

 

頭を垂れ、俯く大妖精。

 

先ほどチルノと居た時とは

 

打って変わり、瞳から光が失われる。

 

映姫

「…あなたが『零王』の領域を

 たった一人で守護していたという、

 『原始の精』…なのですね?」

 

大妖精

「…はい…そうです…」

 

映姫

「大妖精…なぜそう名乗っているのです?」

 

大妖精

「………」

 

映姫

「………」

 

大妖精

「私を…どうするつもりですか…」

 

映姫

「私は知りたいだけです。

 『不毛な戦争』と『アルス=マグナ』

 この二つの中でいったい何が

 起きていたのか…その事実を…」

 

大妖精

「チルノちゃんは…いえ、

 今を生きる皆さんには関係ありません。

 あの人たちは…皆さんは

 私の大切なものなんです!」

 

大妖精は首を横に振り、

 

映姫に懇願する。

 

映姫

「…わかっています。

 だから今後手出しをしない…

 大いなる母の決断に

 私は安堵したのです。」

 

大妖精

「どういうことですか…

 あなたにとって大いなる母こそが

 正義では無いのですか?」

 

映姫はロウソクの火に視線を移す。

 

映姫

「そうであれば

 どれほど楽であったでしょうね。」

 

どこか哀愁の漂う映姫の声。

 

映姫

「ヒト、妖、獣、神…

 あらゆる者達はこうして

 存在している限り、絶対的に

 正しくあることは不可能です。

 私も自身が下してきた判断を

 完璧に正しかったとは

 微塵も思っていません。」

 

大妖精

「映姫さん…」

 

映姫

「大いなる母はヒトでも妖でも

 獣でも神でも無い…?

 そんなことは無いはずです。

 あの方はしっかりと存在する…

 絶対的に正しいとは限らない。」

 

映姫の喋りは

 

普段の淡々としたものではなく、

 

非常に感情に満ちたものだった。

 

映姫

「私には残念ながら

 理解出来ませんでした。

 あの方の思想、理念、正義を…

 人形失格ですね…」

 

大妖精は映姫の話を聞くと、

 

突然立ち上がり、

 

首を横に振る。

 

大妖精

「違います…絶対違います!」

 

映姫は驚いて、彼女の顔を見る。

 

大妖精

「確かに…『ここ』の住人は

 あのお方にとっては

 皆、人形なのかもしれません…

 でもチルノちゃんやルーミアちゃん…

 天子さんも映姫さんも

 私は人形だとは思えませんよ!」

 

映姫

「…我々は人形だという事実を

 覆すほどの力を持ち合わせていない…

 あなたが一番良くわかっているはず。」

 

大妖精

「…そうかもしれません…

 でも私はチルノちゃんと

 一緒に過ごしてわかったんです…

 私達には私達なりの生き方があるって。」

 

映姫

「我々なりの生き方…」

 

大妖精

「天子さんは…あのお方とは

 別で動いているんですか?」

 

映姫

「今はまだ従っています。

 しかし反抗の兆しは度々。」

 

それを聞き大妖精は

 

一度目を瞑り、何かを考え込む。

 

そして瞳を再び開くと

 

何かを決心した様子で

 

大妖精

「近いうちにあのお方と

 話をさせてください。」

 

映姫

「…掛け合ってみましょう。」

 

 

大妖精の願いを

 

映姫は聞き入れた。

 

映姫

(…私は…このまま

 正義に準じて良いのですか…

 大妖精…あなたは…)

 

しかしその心には

 

迷いが生じていた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

チルノ

「すぅ…」

 

大妖精

「…」

 

夜になり隣で寝息を立てるチルノを

 

見守る大妖精。

 

大妖精

「…大丈夫だよチルノちゃん…

 私が…絶対に守るからね…」

 

小さな声でチルノに語り掛けるが、

 

チルノは眠ったまま起きない。

 

大妖精

「…主様とお話してるのかな…

 それとも怖い夢でも見てるのかな…」

 

チルノの髪を優しく撫でる。

 

大妖精

「怖い夢…そうだね…

 その夢ももうじき見なくて

 済むようになるから…安心してね…」

 

優しく微笑んだ大妖精は

 

物音を出来る限り立てないように

 

立ち上がり、

 

チルノの傍にある黒い本を手に取る。

 

大妖精

「………」

 

大妖精は本を開こうとしたが、

 

動きを止めて窓の方を見る。

 

大妖精

「…ごめんねチルノちゃん…」

 

そう言うと窓際に本を置き、

 

チルノの隣に横になり目を瞑る。

 

大妖精が寝息を立て始めた頃、

 

窓が音を立てずに開き、

 

そこに黒い人影が現れた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

チルノ

「ん~…むむむ?」

 

チルノは夜中に目を覚ます。

 

今夜は特に夢を見ることも無かったが

 

起きてしまった。

 

チルノ

「ふぁ~…あれ…」

 

大きなあくびをした直後に

 

異変に気づく。

 

チルノ

「…本が…無い!?」

 

思わず少し大きな声を出してしまったが

 

隣の大妖精は起きなかった。

 

チルノ

「…!」

 

 

 

チルノは霧雨魔法店をくまなく探したが

 

ついに本は見つからなかった。

 

 

 

チルノ

「くそ…外探すか…」

 

チルノは窓から外に出て、

 

森の中へと姿を消す。

 

 

 

大妖精

「…」

 

 

 

その様子を大妖精は

 

二階の窓から見ていた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

チルノ

「くっそー!

 どこいったんだ?」

 

周囲は暗闇に包まれており、

 

黒い本を見つけるのは至難を極める。

 

絶望的な状況。

 

チルノ

「なんか明かりを

 持ってくればよかったぜ…」

 

準備不足に後悔しつつも、

 

心には焦りが募っていく…

 

 

 

チルノ

「…あだ!?」

 

ルーネ

「おっと…」

 

 

 

ふよふよと低空飛行していた所、

 

誰かと接触した。

 

チルノ

「あたたた…」

 

ルーネ

「大丈夫かい?」

 

チルノは黒服の少女の腹部辺りに

 

顔面から突っ込んでしまった。

 

チルノ

「う、うんアタイは…」

 

顔の痛みを堪えつつ、

 

ぶつかった相手を視界に捉える。

 

チルノ

「大丈夫だけど…」

 

ルーネ

「そうか、それは良かった。」

 

相手は特に怒りもせず、

 

にっこりと微笑むと、

 

しゃがみ込み頭を撫でてくる。

 

チルノ

「おおお? なんだおまえ。」

 

ルーネ

「私かい? そうだな…

 魔法の力で世界を救うp…」

 

チルノ

「え…?」

 

ルーネ

「噛んだからいいや…

 私はルーネ。ここら辺を

 ぶらぶらしてる妖怪だよ。」

 

チルノ

「なんだって!?

 アタイのテリトリーを

 ぶらぶらしてんのか?」

 

ルーネ

「あれ、君ここらへんを

 支配してるの? 驚いた。」

 

チルノ

「そうだぜ! アタイはチルノ!

 妖精だけど氷を使うし、

 めっちゃ強いんだぜ!」

 

ルーネ

「おお、なんだかかっこいいね。

 でもこんな時間に

 森の中でどうしたんだい?」

 

チルノ

「あーそれが大事な本を

 無くしちゃってさ。

 近くに置いて寝てたんだけど、

 起きたら無くなってたんだよ!」

 

ルーネ

「…ほう…本か…それは大変だ。」

 

ルーネは目を細めて、

 

チルノのリボンを注視する。

 

チルノ

「それで探しに来たんだけど

 暗くて困ってたんだ。」

 

ルーネ

「そうだ、じゃあ

 お姉さんが一緒に探してあげよう。」

 

チルノ

「まじ!?」

 

ルーネ

「こう見えて魔法少女だから

 物を探すのなんて朝飯前なんだよね。」

 

チルノ

「へぇー」

 

ルーネ

「信じてないだろ。

 ついてくればわかるよ。」

 

チルノ

「うーんわかった。」

 

チルノは半信半疑で

 

ルーネと共に

 

本を探しに行くことにした。

 

どうやら自信たっぷりの様子で

 

ルーネの迷いの無い歩みに

 

チルノは頼もしさを感じていた。

 

ルーネ

「君は友達とか居るのかな。」

 

チルノ

「居るぜ! 大ちゃんとルーミアと

 ぱっちゅりーとか魔理沙とか…」

 

知り合いを全部言いそうな

 

チルノの勢いにルーネは苦笑いする。

 

ルーネ

「あはは…羨ましいな。

 君は人気者なんだね。」

 

チルノ

「あったりめーよ。

 アタイは天才だからな。」

 

ルーネ

「…ああ、君は

 間違いなく天才だよ。

 あまりにも天才で

 恐ろしいくらいにね…」

 

チルノ

「お…? 褒めてるのか?」

 

ルーネ

「どうかな、私にも

 君みたいな天才な友達が居たんだ。

 宿敵…ってやつかな。」

 

チルノ

「宿敵…なんかかっけえ言葉だな!」

 

ルーネ

「少年漫画に必要な要素だよねぇ」

 

チルノ

「ふ…アタイにもルーミア

 っていう宿敵が居てな…」

 

暗い森の中を二人は歩きながら

 

盛り上がっていた。

 

 

 

 

 

ルーネ

「大ちゃんと仲が良いんだね。」

 

チルノ

「まーな!」

 

ルーネ

「それが偽りで無いと…

 私は信じたいが…」

 

チルノ

「いつ…ん?」

 

ルーネ

「おっと、そろそろかな。」

 

二人が向かった先で

 

佇む一つの人影。

 

天子

「どうなって…

 封印が…解かれてる…!?」

 

チルノ

「あー!!」

 

チルノは黒い本を調べている

 

天子の姿を視界に捉え、

 

すぐさま声をあげる。

 

天子

「…!」

 

チルノ

「おまえか! アタイの本を…」

 

天子

「うっさいわね…

 ちょっと借りただけ…って…」

 

天子は本を閉じて

 

二人の方へ振り向くと

 

目を見開き、言葉を失う。

 

天子

「…あんた…

 どうしてあんたがここに居るのよ!!」

 

天子が声を荒げた相手はルーネだった。

 

ルーネ

「…はい? 初対面のはずですが…」

 

ルーネは困惑した様子で答えるが、

 

否応無しに緋想の剣を抜き、

 

臨戦態勢を取る天子。

 

天子

「氷精、そいつから離れなさい!」

 

チルノ

「お、おい! 何するつもりだ!?」

 

天子

「そいつをぶった斬る!」

 

チルノ

「何言ってんだ!

 お姉さんは悪いヤツじゃない!」

 

天子がルーネへ斬りかかろうとするも、

 

チルノが間に入り天子に立ち塞がる。

 

天子

「邪魔だって言ってんの!」

 

チルノ

「どういうことか説明しろ!」

 

天子

「今のあんたには理解出来ない…!

 退かないとあんたも斬る!」

 

ルーネ

「だそうだ。

 チルノちゃん、危ないよ…?」

 

チルノ

「心配すんな、アタイが守ってやる!」

 

ルーネ

「………ああ…ありがとう…」

 

天子

「馬鹿じゃないの!?

 いいわ、ならまとめて…!」

 

天子は緋想の剣を構え、

 

斬りかかる態勢になる。

 

緋想の剣からは

 

炎はゆらゆらと発せられる。

 

 

 

天子

「…今度こそ止めてやる…!」

 

 

 

天子が斬りかかる直前に

 

ぽつりと呟いた一言を

 

ルーネは聞き、少し驚きつつ、

 

地面強く踏みしめる。

 

チルノ

「…くっ!」

 

チルノが攻撃を受ける覚悟を決め、

 

目を瞑ったその時だった。

 

 

 

 

刃物と刃物がぶつかり合い、

 

火花が散り、

 

金属音が鳴り響く。

 

 

 

チルノが瞼を上げると、

 

目の前が黒に染まっていた。

 

チルノ

「お姉さん!?」

 

それはルーネの背中で、

 

彼女は低い姿勢で

 

何やら不思議な構えを取り、

 

チルノの前で静止していた。

 

天子

「ぐッ…!?」

 

天子は攻撃を弾かれた様子で

 

こちらから距離を取り、後退する。

 

ルーネ

「私は別に構わないが…

 我々のいざこざにこの娘を

 巻き込むというのは

 筋違いというものだ…」

 

天子

「…!」

 

天子は即座に体勢を立て直し、

 

ルーネに緋想の剣を差し向ける。

 

チルノ

「お姉…さん?」

 

ルーネ

「………」

 

チルノの声に静寂を貫くルーネ。

 

ルーネ

(君の怒りはごもっとも、

 私もよく理解しているよ。

 せめてチルノちゃんが

 居ないところでお願い出来ないかな。)

 

天子

(…ふざけないで…何を今さら…!)

 

ルーネ

(この子は大事な時期に入っている。

 我々が刺激を与え過ぎると

 妙な結果になりかねない。

 大いなる母もそれは望んでいない。)

 

天子

(…ッ!?

 あんた…あのクソババァと…)

 

天子とルーネは口では

 

言葉を発さずに、

 

精神的なイメージを送り合い、

 

会話を成立させていた。

 

いわゆる念話と呼ばれるものだ。

 

ルーネ

(欲求不満ならいつでも

 戦いに応じよう…

 だが今は状況が悪い。

 ここは退いてくれないか? 地子。)

 

天子

「………ふん、ほら。」

 

天子は本をチルノへ向けて放り投げる。

 

チルノ

「おおっとっと!」

 

それを無事にキャッチしたチルノを

 

確認すると天子は踵を返す。

 

天子

「覚えてなさい…」

 

去り際に吐き捨てた言葉には

 

どうにも納得がいかないという

 

感情がこもっていた。

 

チルノ

「なんだあいつ

 逃げていきやがったぜ…」

 

ルーネ

「いやぁ良かったね。

 本が戻ってきたよ。」

 

チルノ

「お、そーだ!

 まさかあいつが盗んでたなんて。」

 

ルーネ

「怪我は無いかい?」

 

チルノ

「おう!」

 

ルーネ

「良かった良かった…」

 

ルーネはチルノに被害が無いことを

 

確認するとチルノの頭にぽんと

 

右手を置いて撫でる。

 

ルーネ

「さて、それじゃ

 本も見つかったし、

 そろそろ帰って寝ようか。」

 

チルノ

「あ、うん。

 なんかいろいろありがと!」

 

ルーネ

「気にしないで、また会ったら

 たくさん話をしよう。」

 

チルノ

「おう! またなー!」

 

飛び去っていくチルノの背中を

 

見えなくなるまで眺めたルーネ。

 

近くの木に視線を送る。

 

ルーネ

「居るんだろう?」

 

ルーネの声に応じ、

 

木の陰から大妖精が姿を現した。

 

大妖精

「いったいどういうおつもりですか?」

 

ルーネ

「どうもこうも、

 君が地子を利用した結果、

 チルノちゃんが危ない目に

 あうと思ったから、

 お守についていたんだ。」

 

大妖精

「余計な真似を…

 大いなる母が容認するとでも?」

 

ルーネ

「どうかな、君が暴走する地子を

 チルノちゃんから引き剥がす為に

 やったことも、大いなる母が

 容認するとは思えないがね。」

 

大妖精

「…っ…」

 

ルーネ

「まぁ…君は演技派だから

 隠蔽も十八番だろうけど。」

 

大妖精

「問題児のあなたに

 どうこう言われる

 筋合いはありません。」

 

ルーネ

「ああ、すまない。

 いやなに、今回は

 イレギュラーが過ぎていてね。

 面白くて仕方が無いんだよ。

 減らず口になってしまうのは

 どうか許して欲しい。」

 

大妖精

「そもそも天子さんが、

 チルノちゃんに襲い掛かったのは

 あなたが居たからですよ。

 あなたさえ居なければ…」

 

ルーネ

「そうだね…私がチルノちゃんに

 絡んだせいで結果的には

 そうなってしまった。

 でもその分フォローは

 きっちりしたつもりだけど。」

 

大妖精

「とにかく、今後は

 チルノちゃんに

 絡むのはやめてくださいよ…」

 

ルーネ

「ええ、面白いのに。」

 

大妖精

「やめてください。」

 

ルーネ

「頼むよ大ちゃん」

 

大妖精

「あなたにその呼ばれ方は

 したくないのですが…」

 

ルーネ

「あ、そうなの?

 でも周りの子達は

 皆そう呼んでるみたいだけど。」

 

大妖精

「…」

 

ルーネ

「安心したまえよ。

 この『身体』で下手な事はしない。

 少しでも解放しようものなら、

 崩壊は免れないし

 ろくな結果にはならないからね。」

 

大妖精

「いったい何を企んでいるのですか…」

 

ルーネ

「さぁ? 君こそ…

 いったい何を企んでいるんだい…」

 

大妖精

「………」

 

ルーネ

「………」

 

大妖精

「チルノちゃんは…

 大切な私の…『ともだち』なんです…」

 

ルーネ

「ああ、聞いたよ。」

 

大妖精

「だから…私は何があっても

 チルノちゃんを守ると

 決意したんです…

 例えこの身が滅びようとも…」

 

ルーネ

「失望したよ。」

 

大妖精

「え?」

 

ルーネ

「ああ、そんな戯言を吐く

 連中はごまんと見てきたが、

 体現出来る者は皆無に等しい。」

 

大妖精

「嘘じゃありません!

 私は本気で…!」

 

ルーネ

「嘘ではないだろうね。

 でも君は守ろうとはしても

 本当の意味で守る事は出来ない。」

 

大妖精

「どういう…ことです?」

 

ルーネ

「君が消えたら、

 チルノちゃんはどうなるか…

 想像したことはあるのか?」

 

大妖精

「それは…」

 

ルーネ

「自己犠牲の精神は

 美しいものだと皆

 よく勘違いをするものだが、

 そんなものじゃない。」

 

ルーネは近くの倒木に腰をかけ、

 

膝に肘をつく。

 

ルーネ

「己を優先する思考と

 他を優先する思考は表裏一体。

 そのバランスは片方に

 傾けば途端に美しさを失う。

 君は前から他を優先し過ぎている。」

 

大妖精

「あなたに何がわかるの…」

 

ルーネ

「わからないさ。

 誰も、他人の事を完璧に

 理解することなど到底叶わない。

 錬金術をもってしてもね。

 ただ君に客観的な意見を

 率直に伝えているんだ。」

 

大妖精

「…大いなる母は

 チルノちゃんやあなたを

 優れた実験材料としか

 思っていないんです…」

 

ルーネ

「だから、君は

 チルノちゃんを守るために

 自ら材料になろうと言うのかい?」

 

大妖精

「………」

 

ルーネ

「大いなる母の敷いたルールで…

 レールの上だけで物事を

 考えているのか。」

 

大妖精

「規則や規律に

 準じないあなたにはわかりません。」

 

ルーネ

「はは、違いない。

 でも君も妖精の端くれなら、

 少しは抵抗してもいいんじゃないか。

 機械でも人形でも無いだろう?」

 

大妖精

「…!」

 

ルーネ

「そうさ、私達は人形だった。

 でも今はこうやって

 感情を…心を持っている。

 心があれば、

 それはもう人形じゃない。」

 

大妖精

「あなたらしく無い言葉ですね…」

 

ルーネ

「ああ、この前新しく出来た

 『ともだち』の受け売りさ。」

 

大妖精は俯く。

 

大妖精

「…私は…」

 

ルーネ

「君のやることに

 ちょっかいを出すつもりは

 無いが、くれぐれも

 チルノちゃんを

 刺激しないように

 気をつけることだ。

 大いなる母が動き出せば

 見たくないものを

 嫌でも見なければいけなくなる。」

 

大妖精

「わかっています。

 あなたこそ…

 気をつけてくださいよ。」

 

ルーネ

「はは、善処はするよ。

 さて私は人里にでも駆り出して

 大好きな団子でも

 食べに行こうかな。」

 

大妖精

「好きですね、団子。」

 

ルーネ

「まぁ…遠い親戚に

 顔を出しているだけさ。

 もちろんあそこの団子は

 一級品、素晴らしい…

 あ、いる? 買ってこようか?」

 

大妖精

「結構です、

 今度チルノちゃんと行きますから。」

 

ルーネ

「へぇ…デートか、いいな。」

 

大妖精

「な…違いますよ!」

 

ルーネの一言に

 

顔を朱に染める大妖精。

 

慌てて首をぶんぶんっと振る。

 

ルーネ

「いいコンビだよね、君たちは。

 エーリにもそういう接し方を

 続ければ良かったと思うんだが…」

 

大妖精

「…わかっています…

 でもあの時は…」

 

大妖精は拳を強く握りしめる。

 

ルーネ

「…私達は負の遺産…

 『負の人形』だったとも言えるか。」

 

大妖精

「『正義』には輝かしい表面…

 裏面にはあらゆる犠牲が

 転がっている…」

 

ルーネ

「さっきも言ったけど、

 心を取り戻した私達は

 人形じゃないだろう。

 人形から抜け出すのは

 君の『意志』次第だと思うよ。」

 

大妖精

「…考えておきます…」

 

大妖精は苦悩に満ちた様子で

 

その場から立ち去る。

 

 

 

ルーネ

「…アリスに頼んでみるかな…

 磨けばもっと良くなりそうだし。」

 

暗闇に包まれた空間で、

 

ルーネは一人、不敵に笑う。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

チルノ

「そろーりそろーり…」

 

チルノは霧雨魔法店の寝室に戻る。

 

大妖精は寝たままだ。

 

チルノ

「よし…」

 

そっとベッドに潜り、

 

本を抱え込みながら瞼を下ろす。

 

大妖精

「チルノちゃん…」

 

チルノ

「はひ!?」

 

大妖精

「私が…守るからね…」

 

チルノ

「…大…ちゃん…?」

 

大妖精

「………」

 

チルノ

「寝言かな…」

 

少し切なさを感じて、

 

チルノは大妖精に

 

身を寄せて眠りについた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

魔理沙

「アリス、悪いことは言わない。

 そのルーネってやつとは関わるな。」

 

アリス

「どうして?」

 

魔理沙はアリスの家で机を挟み、

 

話をしている。

 

魔理沙

「謎が多すぎる…」

 

アリス

「…ええ、言いたいことはわかるわ。」

 

魔理沙

「探りを入れてるのか?」

 

アリス

「とっくに入れたわ。

 悪い人では無い。」

 

魔理沙

「く…」

 

アリスが言うのならば

 

そうなのだろうと魔理沙は

 

どうにか納得しようとするが、

 

この前、自宅前で

 

向けられた未知の威圧感。

 

疑問を抱かざる負えない。

 

魔理沙

「私のじいさんの事は話…したよな?」

 

アリス

「ええ、人里の暗い噂…

 黒い悪魔の被害者でしょう?」

 

魔理沙

「ああ、私はそいつが

 犯人だと睨んでるんだぜ。」

 

アリス

「…なるほどね…」

 

アリスはティーカップに

 

注がれた茶が作る水面に

 

ぼんやりと映った自分の顔を見つめる。

 

アリス

「変わるのって難しい事よね…」

 

魔理沙

「どうしたんだ?」

 

アリス

「あの人は…ルーネは…

 きっと後悔しているのよ…

 過去に様々な選択をして、

 ずっと後悔しているの。」

 

魔理沙

「後悔だ? どうしてそう思う?」

 

アリス

「…わからない…でも…

 見ちゃったのよ…あの人の記憶…」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ルーネはアリスの家に連日通っている。

 

妙な真似をする兆しは無い、

 

そればかりかアリスに花束を

 

届けに来る日もあった。

 

アリス

「掴みどころのない人ね、あなたは。」

 

ルーネ

「そうかな? アリスほどでは無いよ。」

 

アリス

「…ねぇ、どうして私の力が要るの?」

 

ルーネ

「それは君の持つ能力が

 非常に有用で、私の復讐に

 大いに役立つからだよ。」

 

アリス

「私の能力…つまり、

 人形を操る力が?」

 

ルーネ

「うん、人形を操る…

 実は私が目の敵にしている

 相手も人形を操るのが得意でね。」

 

アリス

「へ…そうなの?」

 

ルーネ

「ああ…君よりも繊細に…

 自由に操ってしまう…私も無様に…」

 

アリス

「え?」

 

ルーネ

「アリス、君はこの世界が

 『本物』だと思うかい?」

 

アリス

「…夢だって言うの?」

 

ルーネ

「いいや、夢や幻では無く、

 『偽物』だとしたら…」

 

アリス

「『偽物』ね…

 仮にそうだとして、『本物』は

 いったいどんな感じなのかしら。」

 

ルーネ

「…教えようか。」

 

アリス

「教えるって…?」

 

ルーネはスカートに付いたポケットから

 

ヘルメットのようなものを取り出す。

 

アリス

「え、ちょっと待って

 その大きさのものを懐から

 出すってサイズ感どうなってるの?」

 

ルーネ

「ああ、私のポケット

 四次元に繋がってるからさ。

 ひょひょいと出せるんだ。」

 

アリス

「理解が追いつかない…

 それで? なにそれ。」

 

ルーネ

「古代文明の遺産。

 幻想郷で発掘されるものとは

 厳密には違うんだけど、

 この前、メガネをかけた

 気の良い道具屋の店主から

 買い取ったんだ。

 何せ、誰も使い方がわからず

 処分に困っていたんだとか。」

 

アリス

「あなたはわかるの?」

 

ルーネ

「錬金術士ですから」

 

アリス

「え…錬金術士って

 そういうのもわかるものなの…」

 

ルーネ

「あはは、冗談だよ。

 ちょっと考古学に通じててね。」

 

アリス

「あなたってほんと

 よくわからないわね…

 錬金術とか考古学とか

 政治とかいうのも詳しいし…」

 

ルーネ

「スキルは持っておいて

 損はしないからね。

 色々かじってただけだよ。」

 

アリス

「何に使うものなの?」

 

ルーネ

「えーっと…

 膨大な記憶や経験のデータを

 脳に直接インプットする装置。」

 

アリス

「記憶? 経験?」

 

ルーネ

「うん、例えば

 アリスの今までの経験とかを

 データにして、私が体験するとか…

 逆に私の経験を

 アリスが経験したり…」

 

アリス

「え、なにそれ

 めちゃくちゃ凄い代物じゃない。」

 

ルーネ

「あ、でもリスクもあるよ。

 何十年分のデータを

 数秒で注ぎ込むから

 受けた人が発狂しちゃったり、

 精神崩壊を起こしたり…」

 

アリス

「え…それって…」

 

ルーネ

「そこはリスク回避のために

 私が改造して、

 ゆっくり入れるようにしてるから

 大丈夫なんだけどね。」

 

アリス

「改造って…ほんとに考古学だけ?」

 

ルーネ

「錬金術士ですから」

 

アリス

「それは無理がある。」

 

ルーネ

「で、私の恥ずかしい経験が

 詰まってるこのカートリッジを

 差し込んで、その遺産を

 被ると追体験出来るってわけさ。」

 

アリス

「なんか色々つっこみたいけど

 要はあなたの記憶を

 直接、私が吸収出来るのね。」

 

ルーネ

「そういうこと、どう?」

 

アリス

(ルーネの事を探るチャンス…

 ちょっと恐いけど

 やるしかないわね…)

 

 

 

アリス

「お願いするわ。」

 

ルーネ

「え…アリスってえっちだね。」

 

アリス

「怒るわよ。」

 

ルーネ

「はい…すぐ準備しますので…」

 

 

 

数分後

 

アリスは古代の遺産を被り、

 

約三分で六年分の記憶を

 

脳から身体へと刻み込まれる。

 

 

 

ルーネ

「お疲れ様。」

 

ルーネが遺産を取り外すと、

 

アリスは放心状態となっており、

 

言葉を発する余裕は無かった。

 

ルーネ

「ふむ…初体験用に

 少し緩めたんだけど

 アリスには刺激が強すぎたか。」

 

しばらくの間、

 

アリスは過呼吸気味に

 

息を切らし、

 

涙を流しつつも、

 

どうにか精神を回復させるよう努めた。

 

アリス

「もう…落ち着いたわ…」

 

ルーネ

「本当かい? 感想が聞きたいな。」

 

アリス

「本当に錬金術士だったのね…」

 

ルーネ

「隠すことでも無いからね。

 本当の事を言ってたんだよ。

 私のことわかってくれたかな。」

 

アリス

「ええ、あなたは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリス

「心を失った人形よ。」

 

 

 

 

 

to be continued ~




【皆様お疲れ様です】
最近は大ちゃんゲェム(仮)を制作したりしてます。

今回はルーネさんの人柄に焦点を当て(たつもりです)ました。親睦を深めていたアリスから放たれた一見冷たいようにも感じる一言。ルーネさんが復讐に燃える存在とは…映姫さまや大ちゃんと裏で繋がるルーネさんはいったい何を企んでいるのか…明らかになるのはまだ先ですが、お楽しみいただければ幸いです。



毎度の如くキャラについて書きかきしますね。



【天子ちゃんについて】
ワガママお嬢様モードの天子さま。一応、この作品の中では大いなる母は上司に当たるのですがクソババァが止まりません。ルーネさんとは因縁があり、とにかく殺す(封印する)ために捜索していました。なお、普段は非常に礼儀正しく、頭も良いエリートなのですが、どうもチルノたちのような賑やかな連中に絡まれるとポンコツっぽくなります。かわいい。自分が天人と呼ばれることが少しコンプレックスになってたりします。とにかく硬い。

【映姫さまについて】
閻魔なので『正義』に関しては迷いなどないように思えますが、罪人を裁く時でなければ、ある程度、私情も挟むようです。大いなる母の意向が絶対であるというスタンスを持ちながらも、大いなる母がいったい何を考えているのか、疑っています。キャラの年齢などは少なくとも私はわからないので、おいくつだとかは控えますがルーネさんから見ると赤子同然の様子。貧乳、ロリ、うわえろっ

【ルーネについて】
冥哭童をお読みくださった方には言わずもがなですが、『裂空異変』のラスボス。河城にとり一行に敗北して黒い本に自ら封印されたはずなのに何故か幻想郷を自由に闊歩してます。しかもなんだか性格が変わってるので『身体』はそのままに、ルーネという『別人格』が発現しているということでしょうか。チルノとルーミアのやり取りを窓から覗き見したりしているのでロリコンだと勘違いされそうですが、彼女が興味を持っているのは『身体』だけなので性的な目で見ているわけではありません。たぶん…
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