「――それで、これも発明品の一つ、光学迷彩スーツさ」
「すーつ? 一見ただの服ですよ?」
「ふっふっふ。侮るなかれ……」
「――えっ!! にとりさんが消えた!」
あれから僕たちは、山頂に向かって歩いていた。
うどんげのために、休んでいた木には『山頂に居ます』と名前付きで張り紙をしてきたし大丈夫だろう。
にとりさんは、発明好きで、色々な面白いものを持っていた。微妙に役に立ちそうで立たなそうな物もあったけど。僕はその話を聞きながら、2人で山道を歩いていた。
「おっ、階段が見えてきたね。それじゃ、私はここで」
「ありがとうございます、にとりさん」
僕は頭を下げお礼を言う。
「いや、私はお礼を言われる程の事はやって無いよ」
「そんなことないですよ。道案内、とても助かりましたし」
そう言うと、にとりさんは少し顔を赤くして、
「そ、そうかな、えへへ」
照れているにとりさんがとても可愛らしかった。
「――そ、そうだ雪正。雪正はどこに住んでるの?」
にとりさんはいきなり顔を上げ、質問してきた。
「永遠亭ですよ。あ、今度遊びに来て下さい。居候の身ですから、なんのお構いも出来ませんが」
そう言うと、赤らみながらも笑顔になり、
「ホント?! 今度発明品、色々持って遊びに行くね!」
バイバイと手を振り、踵を返し走り去る大きい鞄を背負った少女。手を振ってたから、ばいばいって言い返しちゃったんだけど、どういう意味なんだろう。
色んな子が住んでるんだなと思いつつも、僕は階段を上がり始めた。
* * * * *
昇っては休み、昇っては休み、ようやく見えてきたのは大きい鳥居。
「……や、やっと着いたぁ」
僕は階段に腰掛け、少し休む。
「――凄い景色……」
山頂から見る景色は壮大で、本当に色んな建物が見える。里、神社、湖、花畑、竹林。
これから、僕は色々な所に出向くのだろうか。あそこに行くのかな。そう思っていると、僕の背中に声がかけられた。
「おや、神社に妖怪とは珍しい。参拝かい?」
振り向くと、青い髪の女性が立っていた。赤い服に下は臙脂色のひらひらした物――すかーと、と言ったか――胸には、なにやら鏡がある。
「……妖気はない、か。なんの用だい?」
「いえ、ちょっと此処の巫女さんに会いに」
そう言うと、彼女はいきなり優しげな眼に変わり、
「もしかして貴方、鈴宮雪正?」
「え、はい。どうして知ってるんですか?」
「知ってるも何も、新聞がね」
僕はすぐさま納得できた。
「貴方も災難だね。あの天狗に目をつけられるだなんて。プライバシーの欠片も無くなるよ」
ぷらいばしー? また聴きなれない言葉が。まぁでも僕の事を知っているなら話が早い。
「あの、早苗さんはいらっしゃいますか?」
そういえば、いきなりうどんげに妖怪の山まで連れて来られたんだ。行き違いで早苗さんが永遠亭に行ってる可能性もある。
「早苗かい? いるよ。今日も永遠亭に行くんだーって言ってたけど、アレじゃあね」
呆れたように息を吐く。アレってなんだろう。
「おいで。貴方と会った方があの子も元気になるでしょう」
「は、はい」
神社に向かって歩き出す青髪の女性。僕はそれに着いて行った。
「少し待ってておくれ」
連れて来られたのは、神社の廊下。女性は目の前のふすまに手を掛け、人一人分開けると、中に入っていった。
中から話し声が聞こえる。僕は狗の耳を使って、耳を澄ませてみた。
「――え。お客さんだよ」
「――私に、ですか? でも今は風邪を引いてしまって。神奈子様、その方にお帰り頂く様にお伝え願えない――ょうか」
早苗さんの声だ。風邪引いちゃったのか。大丈夫かな。
「遠路はるばる来たんだろう――ぇ」
「非常に申し訳ないです。まさか永遠亭に出向い――るのが疲労として溜まっていたなんて」
「まぁ、仕方ないさね。愛す――の為だろう?」
「愛っ――! げほっこほっ」
「おや――、大丈夫かい」
「神奈子様が変なこと言うからでしょう!」
「ごめんよ。つい面白くなっちゃって」
「もう。……あーあ。今頃は鈴仙さんと楽しくお話してる――しょうねー、いいなー私もお話ししたかったなぁ」
「そんな事無――もよ」
「え、神奈子様、今――て仰いました?」
「いいえ。何でもない。じゃあ私はお客を帰――くるよ」
「すみません。お願いします」
「気にしないの」
所々は声が小さく聞き取れなかったが、多少は把握できた。
こちらに向かってくる足音がだんだんと大きくなり、ふすまが開いた。神奈子様と呼ばれた女性がにやにやとした顔で出てくると、僕に、いや、早苗さんが居る部屋に向かって大きな声で言った。
「今日は体調が悪いから帰ってくれってさ、雪正君!!」
「ちょぉっとまってくださぁぁぁあああい!!」
奥のふすまから、寝巻姿の早苗さんが息を切らしながら出てきたのは、数秒もしない内だった。
大声で笑っているこの女性は、どうも早苗さんをからかうのが好きらしい。
* * * * *
「ごめんなさい。いきなり来てしまって」
「いえ、いいんです。むしろ来てくれて嬉しいですから……えへへ」
目の前には、布団の中で横たわる早苗さん。その横で正座する。
神奈子さんは「お茶を持ってくるよ、早苗と話していておくれ」と言って席をはずしている。
「それにしても、なんで雪正さんが此処に居るんです?」
「ああ。実はうどんげに連れられて――」
僕は経緯を説明した。
「鈴仙さんもあの記事を読んだんですね。私も殴りこみにでも行こうと思っていたんですけど、体調がですね」
殴り込みって、また乱暴だなぁ。僕は苦笑いをしながらも、辺りを見回す。鏡や箪笥、座卓などがあるが、ひと際眼を引くのは、枕元にある可愛らしい蛙と蛇の人形。その視線に気づいてか、
「可愛いでしょう、そのぬいぐるみ。お気に入りなんです」
「ぬいぐるみ?」
また聴きなれない言葉。此処に来てから、どうも知らない言葉が多い気がする。
「これです。もふもふしてて抱き心地も良いんですよ」
触ってみます? と僕にそのぬいぐるみ、とやらを差し出してくる。
手に取ると、僕は衝撃を受けた。
「――や、柔らかい! もふもふってこういうのを言うんだ!」
僕はぬいぐるみを抱いて感銘を受けていると、
「そうやって遊んでると、本当に女の子の様だねぇ」
初めて聞く声だと思い、動きを止め声の方に顔を向ける。またも見知らぬ人がふすまを開けて立っていた。
「諏訪子様」
「早苗、体調は大丈夫?」
諏訪子、と呼ばれたその子は、僕よりも幼く見える。目のついた帽子をかぶり、紫を基調とした服。下は神奈子さんのとは長さは違うが、すかーとを穿いていて、下着が見えそうになるほどに短い。早苗さんが、様と付けているなら、少なくとも年は僕より上なんだろうな。
「あ、お邪魔しています」
「雪正、だっけ? はじめまして。守矢 諏訪子(もりや すわこ)、この神社の神様をしているんだ。よろしくね」
「あ、はい。鈴宮雪正です。よろしくお願いします。守矢の神様」
僕がそう言うと、彼女はケタケタと笑いながら、
「そんな堅苦しいのは良いの。此処には神だってわかってても呼び捨てにする奴なんて五万といる。諏訪子でいいよ」
「あ……は、はい」
「はいお茶だよ。挨拶が遅れたね、八坂 神奈子(やさか かなこ)よ。ちなみに、私も神様だから」
ふすまが開いて出てきたのは、神奈子さん。
「え、2柱もおられるのですか!?」
「まぁ、訳ありなのさ。私も、神奈子でいいからね」
どうぞ、とお茶を差し出してきた、神奈子さん。僕はそれを頂き、口をつける。この意味不明な状況下で味はわからなかった。
神奈子さんは、お盆を横に置いて座り、一気にお茶を呷ったかと思うと、すぐに立ち上がり、
「とりあえず、あとは若い二人にでも任せようかね」
「……はい?」
素っ頓狂な声を出したのは僕。隣で横になってる早苗さんは、少しばかり顔が赤い様な。体調が悪いからかな。
「そうだね、病人の前で大勢いても良くないしね」
その台詞に便乗したのは諏訪子さん。
「じゃー、後は頑張ってねー」
「早苗、負けるんじゃないよ」
二人はそそくさと部屋から出ていってしまった。
諏訪子さんは手を振り、神奈子さんは目配せを送り。再度ふすまが閉じられると、早苗さんは大きなため息をついた。
「お二方とも、もうちょっとやり様があったんじゃないですかね……」
「やり様って?」
「いえ、なんでもないです」
彼女は身体を僕の方に向け、小さく呟くように僕に話しかけた。
「雪正さん……私、身体が熱いんです」
この頃小説を書いている時、ココアシガレットを咥えて執筆してます明です。
一二話ですか。長いものです。下書きのWordも4万字を越しました。まだまだ書きたいシチュは尽きません。お付き合いください。
皆様から頂いた感想はとてもありがたく、感想が一件でも増えていると嬉しく思います。返信は遅いですが。
感想は、「○○との絡みがよかった。今度は●●ともして欲しい」等の要望を書くのもアリです。イチャネタの反響によって、他の東方キャラとの絡みにも採用いたしますので、ドシドシ感想をお待ちしております。多少のアレンジは加えます。
なお、「誤字脱字」「この表現おかしくない?」「○○ってなに?」等がございましたら、感想とともに記載して頂けると大変嬉しゅうございます。