東方人妖期   作:黎悠明

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~寂しさ紛らす二つの想い~

 

 時間を同じくして、妖怪の山の麓。自らを最強と謳っている妖精がいる湖を越えると、大きな紅い洋館がある。ここには人なぞ寄り付かない。もし寄り付いた人間が居たら、吸血鬼が現れ、死ぬまで血を吸い取られるという。人はそこを「紅魔館」と呼ぶ。

 

?side   *     *     *     *

 

 最近、何もなさ過ぎてつまらない。巫女や魔法使いは来るには来るけど、いつもお姉様や居候ばかり。私なんかには構ってくれない。

 「……つまんない。この漫画も読み飽きたー!」

 「フラン様、図書館ではお静かに……」

 ふいに私の名前を呼ばれ、その声の主にムッとした。

 

フランside *     *     *     *

 

 「あーきーたー!! こあー! 他の持ってきてー!」

 「わかりましたから、お静かに……」

 小悪魔は呆れたように本を取りに行った。でも、持ってきてもらっても結果は見え切っている。どうせつまらない。

 なにか面白い事は無いのだろうか。数百年も地下に居たからか、部屋で出来うる遊びには興味すら惹かれない。

 「――ううぅー!! つーまーんーなーい!!」

 椅子に座った状態で手足をばたつかせると、バランスを崩してかそのまま椅子ごと倒れこんでしまった。

 「……いたた」

 「妹様。図書館ではお静かに、ですよ」

 見上げると、そこにはこの館のメイド長が立っていた。

 「咲夜! 今日のお菓子は何っ?」

 すぐさま起き上がる。さっきの不機嫌はどこかに行ってしまった様だ。

 咲夜が大図書館に来る理由は決まって、喘息魔法使いに紅茶とお菓子の差し入れに来る時である。私も決まってそれを食べにくる。

 「クッキーとマドレーヌです。妹様の分もありますよ」

 「わーい! 咲夜大好き!」

 お菓子の入ったバスケットを受け取ると、その場でクッキーを一つ口に運んだ。バターの風味が鼻孔をくすぐり、香ばしさと丁度よい甘さが口の中で広がった。

 「んー美味しっ!」

 「ありがとうございます、では私はパチュリー様に紅茶を届けて参りますね」

 図書館の奥に向かおうとする彼女の荷物は、トレイに乗った紅茶とお菓子。それに、エプロンのポケットからなにやら顔を出している何か。

 「咲夜、なに持ってるのっ」

 私はそれをひょいと掴み、姿をあらわにした。

 「ああ、新聞です。天狗が書いている」

 「へー。でもなんでここに血が付いているの?」

 私が新聞についた血痕を指差すと、咲夜は呆れた様な顔をして、

 「新聞が投げられても気付かずにお昼寝している方を起こした時の返り血かと」

 「あぁ、そっか」

 答えがわかると、その血には一切興味が無くなる。咲夜は図書館の奥に姿を消した。私は三つ折りで畳まれた新聞を開き、流す様に読む。畳まれた内側には血は付いていない様だ。

 「へー。人里に新しいお菓子のお店が出来たんだー……」

 クッキーをつまんでは食べ、つまんでは食べ。

 「河童の新作機械ねぇ。ま、興味ないからいいけど」

 読んではいるけど、記憶には残らなそうな記事ばかり。流石は天狗の新聞。内容が薄い。

 そんな中。ひと際目出つ記事が私の目に映る。

 「――鈴宮、雪正。変な名前」

 でもその記事を舐める様に読む。

 「……あの兎に、巫女がねぇ」

 記事の通り、にわかには信じがたいものだったが――なぜか、気持ちが高ぶっていた。

 この子なら、もしかしたら私と遊んでくれるのではないか。私を無視せず、一緒に居てくれるのではないか。

 「なんだか会ってみたくなっちゃった」

 そうと決まれば準備にかかろう。部屋に戻り、身支度をしよう。まだ日が出ているため、夜に抜け出せるよう。

 「思い立ったが吉日、よね!」

 

 「フラン様~……持ってきましたよー……ってあれ?」

 用事を頼んだ本人は居なく、そこには食べかけのクッキーとマドレーヌ、まだ湯気を出している紅茶がテーブルの上にあった。

 

*     *     *     *     *

 

 「大丈夫? 顔、とっても赤いよ」

 一目で顔が赤いのがわかる。息も荒く、目もおぼろげだ。

 「大丈夫、じゃない感じです……」

 「どうする? 神奈子さん呼んでくる?」

 そう言うと、早苗さんは首を横に振り、

 「雪正さんが、居てくれるだけで、いいんです」

 彼女は僕の服を掴んできた。そう言われると言い返す言葉もない。

 「風邪引いた時って、なんだか、寂しく、なりませんか?」

 もっと近くに寄って下さい、と僕の巫女服を引っ張る。僕は仕方なく布団に寄る。

 「服、着てくれて、いるんですね。なんだか、嬉しいな」

 「まぁ、この服しかないからね」

 言葉を紡ぐ度に、息が続かず何度も区切ってはまた話し、を繰り返す。僕はいつの間にか、彼女の頭を撫でていた。

 「あ、あの。この手、なんですか?」

 「嫌だった? ならやめるけど」

 「いえ……や、じゃないです」

 よかった、そう言って僕は早苗さんの頭をゆっくり撫でる。こうしてると、昔を思い出すな。

 「僕もね、風邪を引いた時、よく母様に頭を撫でてもらっていたよ。父様にはお粥を作ってもらってね」

 早苗さんの髪の毛はさらさらで、緑の髪が――白い枕の上だからか――とても映える。

 「そう、なんですか。なんだか、気持ちいいです」

 気持ち良さそうに目を細める。こう見ると、女の子というのは少し猫に似ている。

 不意に彼女は僕の名前を呼んだ。僕はそれに反応すると、

 「毎日永遠亭に、足を運んだりして、迷惑ではないですか?」

 突然、可笑しな事を聞く早苗さん。僕は首を横に振り、

 「全然。むしろ早苗さんが来てから、もっと楽しいよ」

 うどんげとの喧嘩は遠慮だけど、僕はそう言ってほんの少しだけど釘を刺す。

 「そっか。よかった……です……」

 声が小さくなっていったと思うと、彼女は眠りに落ちていた。とても可愛らしい寝顔をしている。

 「風邪を引いてる時は、不安にもなるしね」

 その声に反応してか、僕の袴を強く握り、自分の顔に寄せる。

 僕はうどんげが迎えに来るまで、彼女の頭を撫でるのをやめなかった。

 

 




 13話です。切れが悪く、ちょっと短めです。どうも明です。
 風邪の時って寂しくなったり、不安になったりしませんか? 誰かいると、その人に縋りたくなります。(私だけかもしれませんが)そんな思いを早苗さんに演じてもらいました。
 私事ですが、この頃音楽を聞かなくなりました。イヤホンは耳に付けているのですが、曲は掛けずに耳栓代わりに、です。物書きの先輩が「音楽は思考を遮る。特に歌詞付きは脳裏に歌詞が浮かんでネタが浮かばない」「いい感じに乗ったかと思うと、曲が変わると考え方も変わって纏まらない」などなど。
 最初はそんなことあるか。って思っていたのですが、いざ本当に小説にハマってしまうと、音楽ってあんまし必要性を感じないもんですね。まぁ、人それぞれの集中法はあるので、あまり強く言えませんが。音楽自体は好きなんですよ。石鹸屋とか、TaNaBaTaとかですが(両方東方アレンジから知った)。

 なお、「誤字脱字」「この表現おかしくない?」「○○ってなに?」等がございましたら、感想とともに記載して頂けると大変嬉しゅうございます。
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